利益相反とは? 承認が必要なケースや禁止行為をわかりやすく解説

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利益相反(りえきそうはん)は、二者以上の利害が対立することを指します。特にM&Aの業界では、売り手と買い手の双方から手数料をとる仲介業者に対して利益相反となる可能性があります。
このような状況を適切に管理し、公正な取引を行うためには、利益相反の具体的なケースとその対応を理解することが重要です。本記事では、利益相反について、禁止行為の例も交えながら詳しく解説します。

このページのポイント

~利益相反とは?~

雇用者と経営者、自社と取引先などの二者以上の利害が対立する状況。利益相反を回避するための方法として、「判断が難しい場合はとにかく承認を得ておく」「利益相反取引に該当しないケースを把握しておく」ことが挙げられる。

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1. 利益相反とは

利益相反とは、雇用者と経営者、自社と取引先などの二者以上の利害が対立する状況です。具体的には、取締役が個人的な利益を追求することや、一方の行為が他方の利益に影響を及ぼす恐れがあるため、職務の適切な遂行が困難になるという問題があります。
M&Aの業界においては、売り手と買い手の双方より手数料をとる仲介業者に対して利益相反となる可能性があると指摘されています。両者にとって有利となるアドバイスができず、利害の対立を招く可能性があるためです。
経済産業省では、中小M&Aガイドラインを策定し、「利益相反となり得る旨を明記したうえで不利益情報を開示する」「契約時はセカンドオピニオンを許容する」といった規定を設けて、正当な取引が行われるよう対策がなされています。

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2. 利益相反で会社の承認が必要なケース

利益相反が生じる具体的なケースと対応について詳しく見ていきましょう。これらを理解することで、上場企業の経営者の方は利益相反を適切に理解し、正当な取引が行えます。

2-1. 競業避止義務

競業避止義務は、取締役が会社の事業領域に属する取引を自己または第三者のために行ってはならないという規則です。競合他社の取締役に就任することは、会社のノウハウや技術を利用する可能性が高くなるため、競業避止義務に該当し、承認が必要となります。
例えば、同じ地域(商圏)に同じ業種のお店や支店を開業する場合や、将来的に開業する場合も、利益相反の一例として競業避止義務に違反する可能性があります。

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2-2. 直接取引

利益相反となり得る直接取引とは、取締役が会社と行う直接取引です。取締役と会社の間の売買契約、会社から取締役への贈与などが挙げられます。このケースで承認が必要となる理由は、取締役が自身の利益を追求する可能性があり、結果として会社に不利益が生じる恐れがあるためです。
例えば、取締役が所有する自社株式を会社に売却する際、売却価額の設定を高くしたとします。そうすると自身の利益は増加しますが、取締役とは別人格を持つ会社にとっては不利になるため、利益相反と判断されます。

2-3. 間接取引

間接取引とは、会社が役員の債務保証や取引における利益相反を含む状況です。役員は直接的な利益を得ることはありませんが、債務保証や引受により間接的な利益が生じ、会社に不利益が発生する可能性があります。そのため、これらの取引は利益相反取引として、承認が必要です。
具体的には、A社の役員である個人の債務に対して、A社が債務保証や債務引受を行うケースがあります。この場合、役員個人は直接的な利益を得ることはないものの、間接的な利益が生じるため、利益相反となります。

3. 利益相反の禁止行為の例

利益相反の禁止行為の具体的なケースと対応について詳しく見ていきましょう。これらの情報を理解することで、上場企業の経営者の方が利益相反を正しく理解し、公正な取引が行えます。

3-1. 【直接取引】禁止行為の例

直接取引における利益相反の可能性と、その対応について解説します。

取締役と会社間の売買契約

取締役と自社の二者間で不動産の売買契約や賃貸借契約などを締結する場合は要注意です。取締役が自社に対し財産を販売する売買契約では、取締役は代金を高く設定し、自身の利益を増やす可能性があります。取締役の利益増と会社の不利益の両方が生じるため、事前に取締会(非上場会社で取締役会を設置していない会社においては、株主総会)での承認が必要となります。

会社から取締役へ財産を贈与

会社から取締役への財産贈与は、取締役が自身の利益を追求する可能性があり、結果として会社に不利益が生じる恐れがあるため、利益相反の対象になります。正当な相場があるものを、無償または相場よりも低い価格で取締役に譲渡する可能性があるといえます
財産の贈与取引を行う際には、会社側は取引の公正性を確保するために、取締役会や株主総会の承認を得ることが重要です。

3-2. 【間接取引】禁止行為の例

取締役に対して会社が債務保証や債務引受、資産担保提供を行う場合は間接取引です。この行為は、取締役に保証や担保のメリットが生じるのに対して、会社側には負担が生じます。取締役と会社の利益が相反するかどうかは、会社に生じるデメリットと取締役に生じるメリットが判断材料です。
間接取引は、会社の財務状況に影響を与える可能性があります。特に、会社が債務保証を行った場合、保証対象の債務が不履行となった際には会社がその債務を負担することになります。債務保証は会社の負債を増加させ、財務状況の悪化につながるため、注意が必要です。

3-3. 【会社以外】利益相反の例

会社以外の場所でも、利益相反が生じることがあります。以下に、その具体的な例をいくつか挙げるので、ご参照ください。

医療における利益相反

医療分野の取引でも利益相反を招く可能性があります。特に、医学研究においては、利益相反が生じることがあります。患者の利益に資する研究を行う研究機関と、当該研究機関に資金を提供する企業の利益が相反する状況などが対象です。
例えば、製薬会社が研究費を提供し、資金提供の結果、製薬会社に有利な結果をもたらす可能性がある場合、研究者の公正性が問われることがあります。

遺産相続における利益相反

遺産相続において、相続人に未成年者が含まれる場合、利益相反の可能性があります。具体的には、未成年の相続人の親や保護者が遺産管理人を務める状況です。
この場合、親や保護者は自身の利益を優先して遺産を管理する可能性があり、遺産の一部を自分の名義に移す、または遺産を自分の利益になるように使用するなどの行為が考えられます。そのため、第三者による適切な監督や法的な保護が必要です。

4. 利益相反を回避する方法

利益相反を回避するための方法について詳しく見ていきましょう。具体的には、次の2つが挙げられます。

  • 判断が難しい場合はとにかく承認を得ておく
  • 利益相反取引に該当しないケースを把握しておく

4-1. 判断が難しい場合はとにかく承認を得ておく

利益相反取引の判断が難しい場合、取引が無効になるリスクを避けるために、利益が相反する相手方から承認を得ておきましょう。トラブル防止や公正な取引維持につながります。
また、承認を得ることで関係者全員が取引の詳細を理解し、その結果に同意することが確認されます。組織内の透明性を高め、信頼関係を強化する効果も期待できるでしょう。承認プロセスを通じて、利益相反が生じる可能性のある取引を事前に特定し、適切な対策を講じることが可能です。

4-2. 利益相反取引に該当しないケースを把握しておく

取締役と会社との間で行われる直接取引でも、利害が相反しない場合であれば、取締役会の承認を得る必要は無いとされています。例えば、取締役が会社の業務とは無関係な個人的な取引を行う場合や、取締役が会社との取引で公正な価格を設定する場合などは、利益相反取引に該当しない可能性があります。
このような事例を理解しておくことで、適切な行動をとり、利益相反を避けられるでしょう。利益相反取引に該当しないケースの把握は、組織の意思決定を円滑に進めるためにも重要です。

5. まとめ

取締役と会社間の直接取引や間接取引、さらには医療や遺産相続など、会社以外の場所でも利益相反が生じることがあります。これらのケースを理解し適切な対応を行うことで、利益相反を避け、公正な取引を行えます。
利益相反の判断が難しい場合は、取引が無効になるリスクを避けるために承認を得ることが望ましいでしょう。また、利益相反取引に該当しないケースを把握しておくことも重要です。これらの情報を理解することで、上場企業の経営者の皆様が利益相反を適切に管理し、公正な取引を行うための参考になります。
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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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