事業承継における課題とは? 後継者不足・資金・税負担と解決策を解説

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事業承継における課題について

事業承継における課題とは、後継者不足、承継資金の確保、税負担の重さ、個人保証の引継ぎが難しい点など、事業の引き継ぎを妨げる要因を指します。これらは中小企業に多く見られ、承継の遅れや断念につながる原因となります。そのため、制度の活用やM&Aなどの代替手段を含め、早期に対策を検討することが重要です。

事業承継は、中小企業の未来を左右する極めて重要なテーマです。しかし現実には、後継者の不在や資金の確保、税金の負担、個人保証といった多くの課題が立ちはだかり、スムーズな承継を阻んでいます。特に中小企業においては、こうした課題を放置すると廃業という選択肢を余儀なくされ、地域経済や雇用にも悪影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、事業承継における具体的な課題を丁寧に解説し、それぞれに対する現実的な解決策を紹介します。

事業承継で起こりうる問題についてや、それに対する対策の考え方については、「事業承継問題とは?」で、事業承継全体に潜む社会的・経営的なリスクや障壁について解説しています。

事業承継について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。


事業承継における課題とは

事業承継にはさまざまな課題が存在します。主な課題は、以下の4つです。

一つずつ説明しますので、理解していきましょう。

後継者が不足している

事業承継における大きな課題といえるのが、後継者の不在です。後継者の選定が難航する理由には、以下の要因が挙げられます。

  • 後継者候補がいない
  • 後継者候補にその気が無い
  • 後継者候補に、経営者としての能力や資質が無い
  • 後継者の育成にかける時間が無い
  • 従業員を後継者とするのが難しい

帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」によると、2023年の後継者不在率は53.9%です。「各自治体や地域金融機関をはじめ事業承継の相談窓口が全国に普及した」、「第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継などの支援体制が整備・告知された」、その結果として「現経営者のみならず、後継者候補においても事業承継の重要性が認知・浸透されてきた」といったことを要因に、同調査が開始された2011年以降、最も低い水準となりました。

(単位:%)
年代別 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 対22年比(1年前)
30代未満

94.1

91.9

92.7

91.2

89.3

85.3

△4.0pt

30代

92.7

91.2

91.1

89.1

86.3

82.9

△3.4pt

40代

88.2

85.8

84.5

83.2

79.3

75.1

△4.2pt

50代

74.8

71.6

69.4

70.2

65.7

60.0

△5.7pt

60代

52.3

49.5

48.2

47.4

42.6

37.7

△4.9pt

70代

42.0

39.9

38.6

37.0

33.1

29.8

△3.3pt

80代以上

33.2

31.8

31.8

29.4

26.7

23.4

△3.3pt

全国平均

66.4

65.2

65.1

61.5

57.2

53.9

△3.3pt

出典:2023年の「後継者不在」状況|株式会社帝国データバンク 情報統括部

一方で、日本政策金融公庫の調査によると、中小企業のうち後継者が決定している企業は、わずか10.5%に過ぎません。
また、60歳以上の経営者のうち6割近くが将来的な廃業を予定しており、そのうち「後継者難」を理由とする廃業が3割程度だという結果が出ています。特に中小企業においては、依然として、後継者問題は「事業承継の課題」といえます。

事業承継のために使える資金が不足している

事業承継の後継者は、株主(多くの場合、現経営者やその親族)から株式を買い取ることが必要です。しかし、株式の買取資金は多額になることもあるため、特に後継者が役員や従業員の場合には、買取資金の調達が課題となるケースが多いです。
資金調達の方法は、金融機関からの借入が選択肢にありますが、経営者の交代により会社の信用力が低下していると難しい場合もあります。また、株主がたくさんいて株式が分散している場合、一般的には事業承継の前に現経営者に集約させる必要があり、その資金も必要です。
事業承継の際には後継者自身、あるいは会社が必要資金を捻出できれば問題ありませんが、必要資金が高額となり、自身でまかなうことが困難になるケースもあります。

税の負担が大きい

贈与や相続によって親族が株式を引き継いで事業承継を行う場合、贈与税や相続税の納付が必要です。
現経営者が後継者に税金を負担させることに苦痛を感じたり、後継者が税負担を避けるために事業承継を嫌がるなど、税負担の大きさが課題となり事業承継を断念するケースもあります。
税負担を軽減する方法として「事業承継税制」があります。特に、平成30年度に改正された事業承継税制の「特例措置」は、負担を大幅に軽減できる内容です。
ただし、特例措置の適用を受けるためには「事業承継計画書」を作成しなければならず、手続きが煩雑です。事前に専門家に相談して、税負担の軽減方法を考えておくことが求められます。

個人保証の引継ぎが難しい

中小企業が金融機関から融資を受ける際、会社代表者による個人保証をつけているケースが見受けられます。従来の金融機関の慣行上、事業承継の際に個人保証を後継者が引き継ぐよう金融機関から求められてきました。
個人保証の解除を金融機関に依頼することも可能ですが、後継者の信用度に不安があると、解除できないことも少なくありません。そのため、個人保証の引継ぎが嫌がられ、事業承継が進まない場合もあります。
こうした個人保証の問題を解消するために「経営者保証に関するガイドライン」という指針が示されており、以前よりも解除しやすくなっています。ただし、経営者への普及度は限定的なため、内容をよく理解したうえで利用を検討しましょう。

事業承継の課題を解決する方法

事業承継の課題を解決する主な方法は、次のとおりです。

いずれも、問題の解消が期待できる手法ですので、順番に見ていきましょう。

事業承継税制を活用する

事業承継税制の適用により、相続税や贈与税の負担軽減につながります。
日本税理士会連合会では、事業承継税制の概要における「法人の概略」について、以下のように定めています。
中小企業の後継者が非上場株式等を先代経営者から贈与又は相続等により取得した場合、その贈与又は相続等により取得した株式等に係る贈与税又は相続税の一定額を一定の期間まで猶予又は免除する制度

出典:事業承継税制の概要|日本税理士会連合会事業承継ポータルサイト

事業承継税制は、2028年(令和10年)までの時限措置で、納税猶予の割合が100%に拡大されます。条件も制度も複雑なため、実際に適用する場合には専門家に相談する必要があります。

事業承継ローンや公的な支援制度を活用する

事業承継のための融資である「事業承継ローン」を受けることで、事業用資産や株式を買うための資金調達ができます。相続税や贈与税の納付資金としても活用可能です。
事業承継ローンを活用する主な資金使途は、以下の3つです。

  • 事業用資産および株式の購入
  • 相続税や贈与税の納付
  • 事業承継後の経営安定化

ただし、事業承継ローンは融資に該当するため審査が必要であり、結果的に後継者の債務が膨らむ可能性があります。
ほかに、公的な支援制度として「事業承継・引継ぎ補助金」を活用することも可能です。
中小企業を支援する制度で、申請条件を満たしたうえで審査を通過する必要があります。補助金のため、返済の義務はありません。

M&Aを活用する

M&Aの実施は、第三者を後継者として事業を継続できるため、後継者問題が解決できます。廃業を回避でき、従業員の雇用継続も可能です。
個人保証の問題も、M&Aを活用することで買い手企業が引き継ぐケースがあり、現経営者の負担を軽減できます。
そのため、現経営者にとってM&Aで会社を売却することは、創業者利益を獲得することにつながります。

M&Aで事業承継する場合の課題

M&Aで事業承継を行う場合、以下のような課題があります。

  • 適切な相手企業を見つけられない
  • 想定した価格で売却できない
  • 買い手企業との企業文化の違いから社内が混乱
  • 取引先からの信用低下
  • 従業員の離職

M&Aにおいて適切なパートナーを見つけ、企業文化の違いを調整し、信用を維持しながら想定価格で売却することは困難です。
さらに、M&Aによる変化に不満を持つ従業員が離職する可能性があり、これらを防ぐことも求められます。事業譲渡による退職の取扱いも、重要な課題です。

M&Aにおける課題の解決策

専門家に相談し、適切な相手探しや企業価値評価、条件交渉、PMI(M&A後の統合プロセス)などに関するアドバイスを受けながらM&Aを進めることが重要です。
取引先や従業員の理解を十分得られるような対応も求められます。従業員への説明は、M&A実施後すぐに行うことが必要です。
ほかに、中小企業のM&Aでは、買収およびアドバイザリー費用が高いという課題があり、人事やシステム統合などの分野でも注意が欠かせません。
M&Aに関する専門的業務や適正な手数料相場について、自社のみで適切に判断することは難しい場合があります。

事業承継課題の相談先

一般的に、株式の譲渡や資産の譲渡には多額の税金が発生します。そのため、事業承継に関する税金や相続については、税理士や公認会計士に相談することが有効です。
事業承継全般に関する相談は、事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点、商工会議所といった公的機関に相談することが推奨されます。
多くの事例を取り扱っており、中立的な立場から具体的なアドバイスが受けられます。一部サービスを無料で提供することがあるため、概要を知りたい経営者の方には有益です。
その他、後継者不足でM&Aについての相談が必要な場合は、M&Aの仲介会社への相談がおすすめです。M&Aなど第三者への事業承継が選択肢に入り、自社の買収・合併を希望する企業を探すところから始めます。

まとめ

事業承継における課題は多岐にわたりますが、いずれも放置すれば企業の存続を脅かす重大なリスクとなります。後継者不足、資金・税負担の問題、個人保証の引継ぎといった壁に対しては、国の支援制度や税制の活用、M&Aといった柔軟な手段を組み合わせて対応することが求められます。事業承継は単なる経営の引き継ぎではなく、企業の将来を託す重要な経営判断です。これらの課題は一人で抱え込まず、早期から専門家の助言を得ながら進めることで、より現実的な解決が可能になります。

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よくある質問

  • 事業承継における主な課題とは何ですか?
  • 事業承継における主な課題には、後継者がいないこと、株式取得や事業引継ぎに必要な資金の確保、相続税や贈与税といった税負担の重さ、金融機関から求められる個人保証の引継ぎが難しい点などがあります。これらの課題は中小企業で特に顕在化しやすく、事業承継の遅れや断念につながる要因となっています。
  • 後継者不足はなぜ事業承継の課題になるのですか?
  • 後継者候補がいない、または後継者候補に経営の意思や能力が十分でない場合、事業承継を進めることが難しくなります。さらに、後継者育成に時間を割けないケースも多く、結果として廃業を選択せざるを得ない状況に陥ることがあります。後継者不足は事業承継における代表的な課題です。
  • 事業承継の資金不足とはどのような問題ですか?
  • 事業承継では、後継者が株式を買い取るための資金や、株式を集約するための資金が必要となります。しかし、これらの資金が高額になる場合も多く、後継者個人や会社だけで用意することが困難なケースがあります。資金不足は事業承継を進めるうえで大きな障壁となります。
  • 事業承継における税負担の課題とは何ですか?
  • 親族内承継などで株式を贈与や相続により引き継ぐ場合、贈与税や相続税の納付が必要となります。税負担が大きいことで、後継者が事業承継を敬遠したり、経営者が承継をためらうケースもあります。税負担の重さは事業承継を断念する要因の一つです。
  • 個人保証の引継ぎが課題になる理由は何ですか?
  • 中小企業では、金融機関からの融資に際して経営者個人が保証人となっている場合が多くあります。事業承継時にこの個人保証を後継者が引き継ぐことを求められると、後継者の負担が大きくなり、承継が進まない原因となります。
  • 事業承継の課題を解決する方法には何がありますか?
  • 事業承継税制の活用による税負担軽減、事業承継ローンや補助金など公的支援制度の活用、第三者への承継としてM&Aを選択する方法があります。課題の内容に応じて、これらの手段を組み合わせて検討することが重要です。
  • M&Aは事業承継の課題解決につながりますか?
  • M&Aを活用することで、後継者がいない場合でも第三者に事業を引き継ぐことが可能になります。廃業を回避できるだけでなく、従業員の雇用継続や個人保証の問題解消につながる場合もあり、事業承継の有効な選択肢の一つとされています。

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