更新日
M&Aにおけるロングリストとは、M&Aの初期段階における候補企業をまとめたリストを指します。M&Aによってシナジー効果を得るためにも、正しい手順でロングリストを作成し、質の高いショートリストによって候補企業を絞り込むことが必要です。
本記事では、ロングリストの定義や活用方法、ショートリストとの違いの他、メリットや作成方法について説明します。
このページのポイント
~ロングリストとは?~
M&Aの初期段階においてターゲット候補となる企業を一定条件で絞り込み、作成した企業リストである。ロングリストの作成目的は、M&Aの候補として少しでも可能性がある企業を漏れなく網羅すること。ロングリストに記載される項目は一般的に公開されている企業情報が中心である。一方、ショートリストは、一定数を選出したロングリストから、より「M&Aの実現可能性が高そうなもの」「自社の理想とする候補企業に近いもの」を選定して精度を高めていくことを目的に作成される。
関連タグ
- #M&A
- #M&A関連記事
- #M&Aの流れ
- #ロングリストとは?
目次
1. ロングリストとは
ロングリストとは、M&Aの初期段階でターゲット候補となる企業を一定の条件で絞り込み、作成された企業リストのことです。M&Aの提案候補をなるべく広く検討するために、事業内容や売上高、事業エリアなどの情報により絞り込み、候補先になりそうな企業を拾い上げて作成します。
なお、ロングリストに掲載される企業数は一概にはいえず、ケースにより異なる点に留意が必要です。
例えば、譲渡希望の会社に対して初期的な検討のために提示する場合は、概ね数十から100社前後となりますが、検討初期の段階からある程度条件が明確である場合には、ロング・ショートの区分なく20~30社前後にまで絞り提示するなど、ケースに応じてリストの扱いやそのボリュームが変動します。
1-1. M&Aにおけるロングリストの活用方法
M&Aにおけるロングリストは、候補先企業の一覧として利用されます。ロングリストの意味は相対的であり、買い手企業にとっては売り手企業のリストを、売り手企業にとっては買い手企業のリストを指します。
ロングリストの作成によりターゲットの候補となる相手先企業を明確にでき、効率的なアプローチが可能となるでしょう。
1-2. ロングリストを作成するタイミング
ロングリストは、M&Aにおけるスクリーニングの初期段階で利用されます。そのため、ロングリストを作成するタイミングは、スクリーニングの前段階となります。
スクリーニングとは、日本語で「条件にあうものを選別する」という意味を持ち、M&Aにおいては、買い手企業・売り手企業の候補先としてふさわしいターゲット(法人・個人問わず)は、どこであるかを検討・明確化するプロセスです。
具体的には、次の流れでスクリーニングを進めます。
- スクリーニング基準の策定
- ロングリストの作成
- ショートリストの作成
- ターゲットの優先順位付け
2. ロングリストとショートリストの違い
ロングリストとショートリストの違いは、作成目的と記載項目です。
ロングリストの作成目的は、M&Aの候補として少しでも可能性がある企業を漏れなく網羅することです。一方、ショートリストは、一定数を選出したロングリストから、より「M&Aの実現可能性が高そうなもの」「自社の理想とする候補企業に近いもの」を選定して精度を高めていくことを目的に作成されます。
また、記載項目も異なります。ロングリストに記載される項目は一般的に公開されている企業情報が中心であるのに対し、ショートリストはM&Aで具体的に必要となる情報などが中心です。
ロングリストの記載項目例 | ショートリストの記載項目例 |
---|---|
・会社名 |
・ビジネスにおける事業の強み・弱み |
3. ロングリストのメリット
ロングリストを作成するメリットは、M&Aの候補となる企業に対し、高精度なスクリーニングを行える点です。
例えば、M&Aの初期となる企業スクリーニングの段階で候補となる企業が外れてしまうと、満足のいくショートリストを作成できず、最適な候補企業を絞り込めなくなります。一方で、M&A仲介会社などが有するデータからさまざまな企業の詳細を精査するには、膨大な時間と手間がかかってしまいます。
ロングリストを作成すればこれらの課題を解決でき、精度の高い候補企業を絞り込めるでしょう。
4. ロングリストの作成方法
ロングリストの作成は、次の手順で進めます。
- 現状の自社課題を分析する
- リストアップする基準を策定する
- 基準に沿った抽出と絞り込み
4-1. 現状の自社課題を分析する
ロングリストの作成前に、自社が抱える課題やM&Aを実施する目的を明確にします。
M&Aの成功につながるロングリストを作成するには、M&Aによりシナジー効果を十分に発揮できる企業や、自社の弱点を補完できる企業を掲載する必要があります。そのためには、自社が抱えている課題を分析しなければなりません。
課題分析に活用できるのが、例えば「SWOT分析」という手法です。Strength(強み)Weakness(弱み)Opportunity(機会)Threat(脅威)の4つの要因から、自社の現状を分析することで、自社の課題が明確になり、どのような戦略を採るべきかが明らかになるでしょう。
「SWOT分析」の前段階で、外部環境には「PEST分析」、市場環境には「3C分析」など、さまざまなフレームワークを駆使して丁寧に整理しておくことで、より適切な課題抽出と戦略立案が可能となります。
4-2. リストアップする基準を策定する
次に、M&Aの候補となりうる企業をリストアップするための基準を策定します。事業内容や事業規模、従業員数などの条件により、企業を絞り込みます。さらに、M&Aを実施する目的にあわせ、事業エリアやビジネスモデル、取扱商品群といった条件を加味すれば、より精度の高いスクリーニングを実施できるでしょう。
また、予算・希望にあったM&Aを実施できるかという観点から財務情報も絞り込むことで、実効的なリストが選定可能です。
4-3. 基準に沿った抽出と絞り込み
続いて実施するのが、定めた選定基準に従った候補企業の抽出・絞り込みです。一般的には、帝国データバンクやM&Aの仲介業者などが保有しているデータベースなど、できるだけ多くの企業情報ソースから、選定基準に合致する企業を機械的に抽出します。
さらに、ロングリスト内での絞り込みと優先順位づけを実施します。前段階では機械的な抽出にとどまるため、実質的に基準を満たしていない可能性があるからです。
また、リストアップの基準内でも、より重要度の高い項目を満たしているかなどの視点から、ロングリスト内での優先順位付けも行いましょう。
5. ロングリストを作成する際のポイント
ロングリストを作成する際のポイントは、次の2点です。
- 候補企業の条件や戦略を明確化する
- 実績豊富なM&Aアドバイザーの協力も検討する
5-1. 候補企業の条件や戦略を明確化する
ロングリストの作成に際しては、M&Aの候補となる企業の条件をできるだけ明らかにする必要があります。なぜなら、条件が少ない場合、一定以上の精度でのスクリーニングが難しくなってしまうからです。
高精度でスクリーニングを行うためには、まずM&Aで達成したい目的を明確にし、想定する買い手企業(もしくは売り手企業)には、どのような条件が必要なのかを具体的に書き出します。また、企業選定における戦略も明確にしておくことで、ロングリストとしてふさわしい精度のリストが作成できます。
5-2. 実績豊富なM&Aアドバイザーの協力も検討する
実績が充実しているM&Aアドバイザーや仲介会社に協力を仰ぐことも肝要です。自社内でロングリストを作成しようとすると、不要な企業がリストに入ったり、重要な企業が抜けていたりするなどの問題が発生します。
網羅的で効果的なロングリスト作成のためには、実績が豊かなM&Aアドバイザーに協力してもらいましょう。実績豊富なM&Aアドバイザーは数々のM&Aを成約しているので、M&Aの成功確率を向上させられるロングリストの作成についても経験や知見を有しているからです。可能であれば、M&Aの初期段階からM&Aアドバイザーの協力を検討すると良いでしょう。
6. まとめ
ロングリストは、M&Aの初期段階において候補企業のスクリーニングに活用される重要な資料です。精度の高いロングリストを作成できれば、より質の高いショートリストで絞り込めるため、自社課題を分析して戦略を立案したうえで、まずは広い範囲から選定基準に合致する候補企業を抽出してみてください。
ただし、自社内でロングリストを作る場合は、候補企業が偏る可能性があります。実効性の高いロングリストを作成するためにも、実績豊富なM&Aアドバイザーや仲介会社の協力を仰ぐことをおすすめします。
M&Aキャピタルパートナーズは、M&A仲介業において多数の実績を有しており、ロングリストの候補となる企業情報も豊富に保有しています。M&Aにおけるロングリストの作成にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
よくある質問
- ロングリストに載る企業は大手企業や有名企業に限られる?
- ロングリストに載る企業は、大手企業や有名企業に限られません。なぜなら、ロングリストに載る企業には、買い手企業もしくは売り手企業のM&Aの目的に合致し、シナジー効果や成長性を期待できる企業が含まれるからです。そのため、中小企業であっても、ロングリストに掲載される可能性はあります。
- ロングリストの有効期限はどのくらい?
- M&Aにおけるロングリストの有効期限は、規模や状況によって異なります。一般的には、数週間から数ヶ月程度の期間が設定されますが、必ずしも固定的ではありません。自社のM&Aにおけるロングリストの有効期限が具体的にどれくらいかは、M&Aアドバイザーや仲介会社などから提供される情報を参考にすると良いでしょう。