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株式譲渡制限会社について
株式譲渡制限会社とは、自社が発行するすべての株式に譲渡制限を設けている会社を指します。株主は第三者へ自由に株式を譲渡できず、原則として会社の承認が必要です。経営権の維持や望ましくない第三者の流入防止に役立つ一方で、譲渡や資金調達には制約が生じます。
株式は自由に売買できるものという印象を持たれがちですが、中小企業ではすべての株式に譲渡制限を設けているケースが少なくありません。こうした会社では、望ましくない第三者への株式移転を防ぎ、経営権を安定させることができます。その一方で、株式の流動性が低下し、資金調達や譲渡時の手続に一定の制約が生じる点には注意が必要です。また、相続やM&Aの場面では、譲渡承認や買い取り対応が重要な実務論点になります。
本記事では、株式譲渡制限会社のメリットとデメリットを整理すると共に、相続やM&Aの際に譲渡制限の設けられた株式を譲渡する方法も解説します。
なお、株式譲渡の基本概要について詳しく知りたい方は、「株式譲渡とは?」の記事もあわせてご覧ください。
株式譲渡制限会社の概要
はじめに、株式譲渡制限会社の定義と公開会社との違いを解説します。
株式譲渡制限会社とは
自社が発行するすべての株式に譲渡制限を設けている会社のことを、「株式譲渡制限会社」といいます。株式譲渡制限会社が発行する株式は基本的に、株主が第三者などに自由に譲渡することはできません。
そもそも株式は、会社法で定められているように、自由に売買できるのが原則です。しかし、創業間もない企業や中小企業のように力が無い企業の株式が自由に売買され、望ましくない人物に譲渡されてしまうと、経営が乗っ取られてしまうかもしれません。こうした事態を防ぐための制度が、株式譲渡制限です。
現在、多くの中小企業が株式譲渡制限の制度を利用しています。
有限会社の株式も、譲渡制限の対象となっています。ただし、株主の間での譲渡に関しては制限が設けられていません。
なお、有限会社は、2006年5月に施行された会社法により「特例有限会社」に移行しており、現在では株式会社の一形態とみなされています。
株式譲渡制限会社と公開会社との違い
すべての株式に譲渡制限を設けている会社が「株式譲渡制限会社」です。株式譲渡制限会社は、「非公開会社」「閉鎖会社」とも呼ばれます。日本の中小企業の半数以上が株式に譲渡制限を設けているというデータもあります。
これに対し、株式の譲渡を自由に行える企業が「公開会社」です。公開会社の代表は上場企業で、発行する株式は株式市場で自由に売買されています。
なお、公開会社だからといって、上場しているとは限りません。また、大企業だからといって必ずしも公開会社ではありません。「上場会社」「大企業」と「公開会社」は、異なる概念であることを押さえておきましょう。
反対に、中小企業のなかにも、株式の譲渡を自由に行える公開会社もあります。
株式譲渡制限会社のメリット
株式譲渡制限会社には、さまざまなメリットがあります。ここでは、それらのメリットのうち特に重要なものを6つ紹介します。
取締役・監査役の資格を限定できる
株式譲渡制限会社は、定款に基づいて取締役や監査役の資格を限定できます。重要な役割を信頼性の高い相手に限定し、経営を安定させることができるのです。
一方、公開会社は、取締役や監査役の資格に制限が無く、株主でなくてもこれらの役職に就くことが認められています。これには、株主以外からも優秀な人材を登用できるというメリットがありますが、望ましくない人物が取締役などに就任してしまうリスクもはらんでいます。
取締役会の設置が不要となる
公開会社は、3名以上の取締役と監査役(もしくは会計参与)1名以上からなる取締役会を設置しなければなりません。
この取締役会の設置は、株式譲渡制限会社では不要となります。株式譲渡制限会社は最低1名の取締役さえいれば会社の運営が可能なため、意思決定の迅速化が図れます。
役員の任期を延長できる
役員の任期を延長できるのも、株式譲渡制限会社のメリットです。
公開会社では、取締役や会計参与の任期は2年以内、監査役の任期は4年以内と定められています。しかし、株式譲渡制限会社であれば、定款の定めによってそれぞれ10年まで任期を伸ばせるのです。
役員の任期を延長できれば、新たな役員の選出や変更登記の手間を減らせます。そのための時間的・金銭的コストも削減でき、効率的で無駄の無い経営が可能になります。
会社乗っ取りの防止策になる
株式の譲渡を制限することは、会社乗っ取りの防止策にもなります。
一般的に、普通株式には1株につき1つの議決権が付与されています。したがって、株式を持てば持つほど株主総会での発言権は強くなり、会社の乗っ取りも不可能ではありません。
しかし、株式譲渡制限会社の場合、株式の取得には取締役会や株主総会での承認が必要です。結果として、第三者による会社の乗っ取りを防ぎ、経営権を保護することができます。
株主総会等の手続が簡略化できる
公開会社は、上述のように取締役会の設置が義務付けられています。取締役会は年に4回以上開催しなければならず、経済的な負担は決して軽いものではありません。
こうした負担を、株式譲渡制限会社であれば軽減できます。株式譲渡制限会社には取締役会の設置義務がありません。年に1度の株主総会を中心とした機関設計にすれば、効率的な運営とコスト削減が可能になるのです。
加えて、株式譲渡制限会社は株主総会招集通知の期限を短縮できる、株券の発行が不要といったメリットもあります。
スムーズな事業承継が可能となる
株式の譲渡を制限すると、スムーズに事業承継できる可能性が高まります。
株主が亡くなると株式は相続財産となり、最終的には相続人の所有となります。その際、相続人が複数いれば株式が分散し、株主対応が煩雑になったり、事業承継に問題が生じたりするかもしれません。
こうした事態に備え、株式譲渡制限会社は定款に売渡請求を定めることができます。売渡請求とは、会社側から相続人に対し、相続で移転した株式を売り渡すよう請求することです。
定款に定めておけば、望ましくない人物に株式が相続されても売渡請求により株式の分散を防げます。これにより、事業承継時に後継者に過半数の議決権を集中させやすくなり、事業承継をスムーズに進められるようになります。
株式譲渡制限会社のデメリット
株式譲渡制限会社にはさまざまなメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。そのなかでも特に注意する必要があるのが、以下の3つです。
新株発行による資金調達が制限される
株式譲渡制限会社のデメリットとしてまず挙げられるのが、新株発行による資金調達が制限されることです。
株式譲渡制限会社の株式は簡単に売買ができず、流動性が低いため、現金化は極めて難しいといえます。投資家にとって、株式譲渡制限会社は魅力的な投資先とはいえないでしょう。
また、非上場企業の配当金には上場企業より高い税率が課せられます。その点でも、投資先として選択されにくいといえます。
株式買取請求権が行使される可能性がある
株式譲渡制限会社の株式を売却するには、原則として取締役会や株主総会での承認が必要です。しかし、会社側が株式譲渡を承認しない場合、株主は当該株式を会社側に買い取るように求めることができます。これを、「株式買取請求権」といいます。
株主により株式買取請求権が行使されたら、会社側は公正な価格で株式を買い取らなければなりません。その際の株価や株式数によっては会社側が負担する金額が大きくなり、買い取り後の企業活動にマイナスの影響を及ぼすおそれがあります。
売渡請求のリスクがある
株式譲渡制限会社では、定款に定めることで、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、会社が当該株式を売り渡すよう請求できる場合があります。この制度は株式の分散防止に役立つ一方、相続人側から見ると株式を保有し続けられないリスクとなります。
そのため、相続や事業承継を見据える場合は、定款に売渡請求に関する定めがあるか、請求が行われる可能性があるかを確認することが重要です。なお、M&AやMBOで用いられるスクイーズアウトとしての株式等売渡請求とは、制度趣旨や要件が異なります。
株式譲渡制限会社の譲渡の流れ
ここからは、株式譲渡制限会社の株式を譲渡する方法について解説します。譲渡制限が設けられた株式は、概ね以下の流れで譲渡が成立します。
譲渡人から承認請求を受ける
譲渡制限株式の譲渡を考える株主を譲渡人、譲渡人から株式を譲り受ける人を譲受人といいます。
はじめに、譲渡人が株式を発行する会社に対して譲渡の承認請求を行います。この請求は、譲渡人が「株式譲渡承認請求書」という書類を会社に送付するのが一般的です。書類には、譲渡を希望する株式数や譲渡の相手先などが記載されています。
株式譲渡承認請求は譲受人からも提出できます。ただし、譲渡人は単独でも請求が可能ですが、譲受人は譲渡人と共同で請求をしなければなりません。
会社が可否を決定して通知を行う
株式譲渡承認請求をされたら、会社は請求に対する可否を決定します。この決議は、取締役会設置会社であれば取締役会で、非設置会社であれば株主総会で行われます。
ただし、定款に特別の定めがある場合は、その定めに従い当該機関で可否を決定します。
譲渡承認請求の可否を通知する
可否の通知は、承認した場合と拒否した場合によって以下のように分かれます。
会社が承認した場合
株式譲渡承認請求が取締役会等で承認された場合、会社は請求人(譲渡人および譲受人)に対してその旨を通知します。
次いで、株式譲渡契約書を取り交わし、株式の譲渡を実行して、譲受人から譲渡人へ対価を支払います。
同時に株主名簿の書き換えを行い、手続きは完了となります。
会社が拒否した場合
株式譲渡承認請求を拒否する場合、会社側は必ず2週間以内に不承認の旨を請求人に通知しなければなりません。通知をしない場合はみなし承認となり、承認と同じ手続きを行うことになります。
なお、株式譲渡承認請求を拒否した際に、請求人から買い取り請求があった場合、会社または指定の買取人が公正な価格で株式を買い取ることになります。
まとめ
株式譲渡制限会社は、株式の自由な譲渡を制限することで、会社乗っ取りの防止や経営の安定、事業承継の円滑化につなげられる仕組みです。取締役会設置義務の緩和や役員任期の延長など運営面のメリットもある一方で、資金調達の制約や株式買取請求権への対応といった負担も生じます。さらに、譲渡承認請求を拒否する場合は通知期限を守らなければみなし承認となるため、手続の正確な運用が欠かせません。相続やM&Aを含めて株式移転を適切に進めるには、制度を正しく理解し、必要に応じて専門家の助言を受けながら対応することが重要です。
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よくある質問
- 株式譲渡制限会社とはどのような会社ですか?
- 自社が発行するすべての株式に譲渡制限を設けている会社です。株主は第三者に自由に株式を譲渡できず、原則として会社の承認を得る必要があります。
- 株式譲渡制限会社と公開会社は何が違いますか?
- 株式譲渡制限会社は、すべての株式に譲渡制限が設けられているのに対し、公開会社は原則として株式を自由に譲渡できます。なお、公開会社であっても必ずしも上場会社とは限りません。
- 株式譲渡制限会社の主なメリットは何ですか?
- 取締役や監査役の資格を限定できること、取締役会の設置が不要となること、役員の任期を延長できること、会社乗っ取りの防止策になること、株主総会等の手続を簡略化できること、事業承継を進めやすいことが主なメリットです。
- 株式譲渡制限会社の主なデメリットは何ですか?
- 新株発行による資金調達が制限されやすいこと、株式買取請求権が行使される可能性があること、売渡請求によって少数株主の株式が強制的に買い取られるリスクがあることが主なデメリットです。
- 譲渡制限株式を譲渡するにはどのような手続が必要ですか?
- まず譲渡人が会社に対して株式譲渡承認請求を行い、その後、会社が承認するかどうかを決定して通知します。承認された場合は株式譲渡契約書を取り交わし、対価の支払いと株主名簿の書換えを行います。
- 株式譲渡承認請求を拒否された場合はどうなりますか?
- 会社が譲渡を承認しない場合は、請求人に対して2週間以内に不承認の通知を行う必要があります。請求人から買い取り請求があったときは、会社または指定の買取人が公正な価格で株式を買い取ることになります。
- 株式譲渡制限会社は事業承継でどのように役立ちますか?
- 相続によって株式が分散する事態に備え、定款に売渡請求を定めておくことで、望ましくない人物への株式移転を防ぎやすくなります。これにより、後継者に議決権を集中させやすくなり、事業承継を進めやすくなります。
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