事業譲渡における消費税とは? 計算方法や課税資産を解説

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経営者の高齢化が進む一方で、社会的な少子化が加速する現在、中小企業の後継者不足が問題となっています。こうした問題を解決するために、「事業譲渡」が選択肢の一つとして選ばれるようになってきました。
経営資源の有効活用として利用できる「事業譲渡」ですが、課税資産の扱い方や、のれん・棚卸資産の変動など、税金に関わる複雑な論点が存在します。
本記事では、事業譲渡にまつわる消費税の概要や取扱い、計算方法などについてわかりやすく解説していきます。

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1. 事業譲渡の消費税とは


事業譲渡において消費税の課税対象になるかは、譲渡される資産の種類、取引の形態などによって異なります。
資産の種類でいえば、譲渡された資産が「課税資産」か「非課税資産」かにより、税金の対象に該当するか判断が可能です。通常、課税資産は消費税が課される対象となります。
課税資産とは、消費税法上「課税」すなわち「税金計算の対象となる資産」のことで、課税資産に該当するものの、譲渡については消費税がかかる可能性があります
詳細や対象となる資産については、以下に説明します。

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1-1. 課税対象となる資産

消費税計算で対象になる「課税資産」は、消費税法4条および6条、別表1により規定されています。
具体的には、下記のような資産が対象です。

土地を除く有形固定資産

企業が営業活動をする際に、長期的に事業を営むために保有している「有形」の資産
具体的には、建物・建物付属設備・機械装置・車両運搬具・器具備品などが対象
上記のうち、土地は含まれないため留意が必要

無形固定資産

企業が営業活動をする際に、長期的に事業を営むために保有している「無形」の資産
特許権・商標権などが対象

棚卸資産

営業や販売活動を行うための資産
商品・製品・仕掛品・原材料・消耗品などが対象

のれん(営業権)

事業譲渡などにより生じた「のれん」
税務上認められるものに留意が必要

1-2. 非課税対象となる資産

消費税計算で対象にならない「非課税資産」は、前述と同様、消費税法4条および6条、別表1により規定されています。
具体的には、次のような資産が対象です。

土地

有形固定資産のなかでも土地だけは非課税資産のため、留意が必要

有価証券

株式・債券などのいわゆる有価証券

債権

法律上、他人に請求することができる請求権のことを指す
具体的には、売掛金・受取手形・未収入金などが対象

2. 事業譲渡における消費税の計算方法

事業譲渡にまつわる消費税の計算を、具体的に見ていきます。
消費税を計算するうえでは「課税資産」と「非課税資産」に分類します。そのうち、課税資産に消費税率を乗じることで消費税を算出します。具体的な計算式は、次のとおりです。

  • 消費税額=課税資産 × 消費税率(10%)

ここで、事例を用いて計算を確認しましょう。
単位(万円)

売掛金 商品 土地 建物 機械装置 のれん 特許権 有価証券

1,000

1,500

8,000

5,000

2,000

2,500

1,000

1,200

上記のうち、売掛金・土地・有価証券は非課税資産となり、消費税計算に含まれません。
課税資産の合計は1億2,000万円(=1,500万円+5,000万円+2,000万円+2,500万円+1,000万円)となり、消費税率10%を乗じた消費税額が1,200万円(=1億2,000万円×10%)と計算されます。

3. 事業譲渡の消費税に関する注意点

前述のとおり、消費税計算には難しさが伴いますが、注意しなければならない点もいくつかあります。事業譲渡における消費税で留意が必要な項目について、順番に理解しましょう。

3-1. のれん代の上乗せによる課税資産の増加

中小企業が、事業譲渡をはじめとしたM&Aを実施する際の譲渡価格は、「純資産+営業利益3年分」といった計算式で算定されます。
その際、純資産との差額になる部分が「のれん」に該当しますが、上記の計算で算出された譲渡価格であれば、営業利益3年分が「のれん」となります。
のれんは、前述のとおり「課税資産」です。独自のノウハウやブランド力が大きい場合、その分営業利益が大きくなり、のれん代も膨らむため、消費税も多額になる可能性があり注意が必要です。

3-2. 消費税率の変動

消費税率が法令により変更されると、事業譲渡に適用される消費税率も変動します
2014年4月以降は「8%」でしたが、2019年10月以降は「軽減税率8%と標準税率10%」に変更され、事業譲渡においては「10%」が適用されます。
2019年10月以降の変更においては、飲食物や新聞紙などの一部の商品に軽減税率が設定されていますが、事業譲渡に関しては適用されていません。税法の変更に伴い、適用される税率が変わるため、留意が不可欠です。

3-3. 棚卸資産の変動

商品などの棚卸資産は、企業が販売する目的で保有しています。多額の棚卸資産を抱えている企業では、どれくらいあるかを把握して、事前に消費税額を見積もる必要があります。
あらかじめ把握しておくことが重要ですが、棚卸資産は変動も大きいため、事業譲渡のタイミングには気を付けなければなりません。
季節性など対象企業の棚卸資産に影響するようなことはないか、あるいは棚卸資産の量をコントロールできないかなど、事前の対策を考えておきましょう

4. 事業譲渡時にできる消費税対策

事業譲渡の際、ほかのスキームであれば納税額が無いケースがあります。事前に対応できる消費税対策を知ったうえで、必要な手続きやスキームの検討などを進めましょう。

4-1. 消費税の還付申請

事業譲渡により消費税が発生した場合、特定の条件を満たすと消費税の還付が可能です。
具体的には、「譲渡対象の資産がすべて課税対象ではない場合」や、「消費税を計算した結果、還付額が発生する場合」などが挙げられます。
還付の申請に関しては、一定の条件が必要です。手続きには専門知識が必須で、手続きの複雑さから、専門家に依頼して進めた方が確実に進捗できます

4-2. 会社分割や合併を選択肢に

事業譲渡に限らず、異なるスキームを使うことにより、消費税を課されずに進めることが可能です。
会社分割は事業の全部または一部を別の法人に分割し、新たな法人として独立させる組織再編行為のため、課税取引に該当せず、消費税は課されません
一方、事業譲渡は資産の譲渡とみなされ、課税取引に該当します。
事業譲渡だけを考慮するのではなく、合併やほかの選択肢も検討し、手続きの煩雑さなどを加味したうえで最適なスキームを決めましょう。

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5. 事業譲渡で課税される消費税以外の税金

事業譲渡の際は、消費税だけではなく、売り手側・買い手側それぞれに税金が課されます。消費税以外の各税金について、以下に解説します。

5-1. 【売り手側】法人税

事業譲渡において、譲渡する資産と負債の差額を超える金額で譲渡した場合には「譲渡益」が生じ、その譲渡益に対して「法人税」が課されます
譲渡益に関しては、本業から生じた利益に加算され、合算した所得金額に対して法人税が課されます。法人税には、本税の他に地方法人税・事業税・法人住民税が含まれ、各税金を合計した税率は約30%です。
参考までに、株式を譲渡した場合で、保有しているのが個人であれば「所得税」となります。

5-2. 【買い手側】不動産取得税や登録免許税

譲渡した資産のなかに土地や建物といった不動産がある場合には、資産を取得することになる買い手側に「不動産取得税」「登録免許税」が発生します。
不動産取得税は、不動産を取得した際に課される税金で、取得した不動産の課税標準額に3%(2024年3月31日までの軽減税率)を乗じて算定されます(2024年4月1日以降は4%)。
一方の登録免許税は、土地や建物などの売買や贈与の場合に所有権移転登記をする際に課される税金で、不動産の課税標準額に1.5%(土地の売買、2026年3月31日までの税率。建物の売買は2.0%)を乗じて計算されます。

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6. まとめ

ここまで事業譲渡における消費税について、課税資産・非課税資産の分類、計算方法などを見てきました。事業譲渡の際は、資産の分類や税金計算など、さまざまな専門知識と経験が必要な場面があります。
適切な方法を選択するには、専門家への相談が推奨されます。多様なM&Aのスキームを検討する必要があるため、M&Aの専門家へ意見を求めるのも有益な選択肢の一つです。
M&Aの専門家のなかでも、東証プライム上場で信頼性の高いM&Aキャピタルパートナーズへぜひご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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