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M&Aにおける失敗について
M&Aにおける失敗とは、買収や売却が成立しなかったことではなく、成立後に想定していたシナジー効果が得られない、のれんの減損損失を計上する、買収先の不祥事が発覚するといった形で、当初見込んでいた成果を実現できなかった状態を指します。
M&Aには事業拡大や事業承継などの目的がありますが、想定どおりに進まない場合には、買収後に期待したシナジーが生まれない、統合が難航する、減損損失を計上するといった結果につながることがあります。こうした失敗の背景には、デューデリジェンス不足や戦略設計の甘さ、PMIの進め方など、複数の要因があります。
本記事では、日本企業によるM&Aの失敗事例や中小企業で起こりやすい失敗例をもとに、主な原因と対策を解説します。
また、M&Aの意味と基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
M&Aにおける失敗の定義
M&Aにおける失敗の定義は、以下のとおりです。
失敗の定義を知ることで、M&Aを成功させるための対策をとりやすくなります。
想定どおりのシナジー効果を生み出すことができない
M&Aでは、期待していたシナジー効果が実現せず、投資額に見合う成果を得られない場合、失敗と判断されることがあります。
シナジー効果とは、企業同士が統合することで、単独では得られない付加価値や成果を生み出すことです。多くのM&Aでは、事業拡大や収益性向上といった効果を前提に計画が立てられます。
しかし、経営環境の変化や統合の難航などにより、想定どおりの効果が発揮されないケースもあります。その結果、買収資金を十分に回収できないと、投資対効果が見合わず、失敗と判断されがちです。
こうした事態の背景には、買収前の見通しが楽観的だったことや、業務プロセスや企業文化の違いによる統合後の摩擦などが挙げられます。統合後の具体的な運営イメージを十分に描かないまま進めると、期待した効果を得にくくなります。
のれんの減損損失を計上する
M&Aにおける失敗の定義は、のれんの減損損失を計上することです。
M&Aで想定どおりのシナジー効果を生み出せず、当初の見込みよりも将来のキャッシュフローの獲得が難しい場合、のれんの減損損失を計上することになります。
のれんの減損損失の計上は、M&Aの買収対価が高すぎた「高値づかみ」であったことを意味します。決算数値に大きな影響を与える要因となり、株価の下落につながるため「M&Aの失敗」とされるのです。
買収後に不祥事が発覚する
買収先企業に不祥事が発覚した場合、M&Aの失敗となります。グループのイメージが悪化するだけでなく、グループの業績にも大きな打撃を与えることになるからです。
また、デューデリジェンスが不十分であることが主な要因となり、買収先企業に不祥事が発覚することもあります。そのため、不祥事が起こる要因が無いか、買収先となる企業の評価をさまざまな観点から行うことが大切です。
大企業のM&A失敗事例12選
大企業によるM&Aであっても、必ずしも成功するわけではありません。ここでは、国内外の代表的な失敗事例を12個取り上げ、それぞれの経緯と要因を解説します。
株式会社東芝のWestinghouse Electric UK Limited買収
株式会社東芝(以下、東芝)は2006年、将来のエネルギー不足に備えるため、約6,600億円でアメリカのWestinghouse Electric UK Limited(以下、ウェスティングハウス)を買収しました。ウェスティングハウスは、原子力発電設備や燃料関連事業を展開している企業です。
買収によって東芝のグループ企業にすることで、原子力事業の強化を図ろうとしたのです。しかし、2011年に起きた東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故が契機となり、原子力発電所の安全性が世界的に問われ、疑問視されるようになりました。
東芝はウェスティングハウスとのPMI(経営統合プロセス)に失敗。さらには不正会計なども発覚し、合計約7,000億円もの巨額の損失を計上することになります。それが一つの大きな要因となり、東芝グループはその後、上場廃止となりました。
日本郵便株式会社のToll Holdings Limited買収
2015年、日本郵便株式会社(以下、日本郵便)はオーストラリアの物流大手Toll Holdings Limitedを約6,200億円で買収し、国際物流事業の強化を図りました。しかし、買収後の業績は日本郵便の想定を大きく下回り、2017年3月期決算において多額ののれん減損を計上しています。その後も事業再編や一部事業の売却を繰り返すなど、統合効果の実現には長期にわたって苦戦しました。
海外M&AにおけるPMIの難しさと、事業環境の見通し精度の重要性を改めて示した事例です。
キリンホールディングス株式会社のSchincariol Participações e Representações S.A.買収
キリンホールディングス株式会社(以下、キリンHD)は2011年、清涼飲料水事業やビール事業を展開するブラジルのSchincariol Participações e Representações S.A.(以下、スキンカリオール)を約3,000億円で買収しましたが、M&Aに失敗してしまいました。
スキンカリオールの買収を機に、人口増加や経済発展を背景とする有望なブラジル市場への展開を試みましたが、ブラジル経済の失速が要因となりました。これにより、キリンHDは2015年に、約1,100億円の減損損失を計上しています。
株式会社LIXILのGlacier Luxembourg One S.à r.l.買収
株式会社LIXIL(以下、LIXIL)は2014年、ドイツの水回り製品大手のGlacier Luxembourg One S.à r.l.(以下、グローエ)を約4,000億円で買収しました。しかし2015年、中国にあるグローエ傘下のJoyou AGで不正が発覚したことにより、減損損失等で約600億円の損失を被りました。
その後、2016年にLIXILは再発防止策として、海外のすべての子会社に関して専門部署を設置し、9つの定量的な基準で監視することにしています。
パナソニックホールディングス株式会社の三洋電機株式会社買収
パナソニックホールディングス株式会社は2009年、電池事業などの強化を狙い、数千億円規模の買収額を投じて三洋電機株式会社(以下、三洋電機)を子会社化しました。しかし、2012年には約2,500億円の減損損失を計上し、過去最大の赤字を記録することとなります。
家電事業における両社の技術のシナジーを想定していたものの、海外企業との競争や円高により、三洋電機のリチウムイオン電池の収益が悪化したことが主な要因です。
第一三共株式会社のランバクシー・ラボラトリーズ社買収
2008年に第一三共株式会社(以下、第一三共)は、インドの後発医薬品大手メーカーであるランバクシー・ラボラトリーズ社(以下、ランバクシー)を約4,900億円で買収しましたが、わずか1年後の2009年に約2,100億円の赤字を計上しました。
M&A失敗の要因となったのは、ランバクシーの品質問題です。買収合意がなされた直後に、ランバクシーの主力となる2つの工場で品質問題が露見したため、アメリカの食品医薬品局より、アメリカへの製品輸出禁止措置を受けました。
第一三共は生産管理と品質問題に対処するため、ランバクシーに経営陣を送り込みましたが、現場レベルに行き届くまでの指導がなされず、改善策の徹底が遅れたのです。
株式会社ディー・エヌ・エーのiemo株式会社、株式会社ペロリ買収
株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、インテリア系の情報サイトを運営するiemo株式会社と、女性向けファッションやメイクの情報サイト「MERY」を運営する株式会社ペロリを2014年に買収しました。買収額は合わせて約50億円です。2015年には、10媒体のジャンル特化型キュレーションメディアの提供を開始しています。
しかし2016年、月間利用者数が約2,000万人に達していた、ヘルスケア・医療関連の「WELQ」をはじめとするキュレーションサイトで問題があり炎上しました。具体的には、根拠が不明瞭であったり、外部の記事を無断で利用・リライトしていたりする記事が数多くあったことが発覚。これにより、2017年に約39億円の減損損失を被り、M&Aが失敗しています。
丸紅株式会社のGavilon Agriculture Investment,Inc.買収
2013年に丸紅株式会社(以下、丸紅)は、米穀物の集荷や販売の大手となるGavilon Agriculture Investment,Inc.(以下、ガビロン社)を約2,700億円で買収しました。丸紅は当初、ガビロン社を農業事業の中核として評価していたのですが、アメリカと中国との貿易摩擦や穀物価格に左右されたことが影響し、経営が悪化してしまいます。
そのため、2015年に約500億円の減損損失を計上して、2020年には過去最大の赤字となりました。2022年にはガビロン社の一部事業を丸紅に移管したのち、オランダのViterra Limitedに売却しています。
世界的な食料需要を考慮し、ガビロン社の肥料事業やアメリカ北部の穀物保管設備などは丸紅の子会社に残しており、日本やアジアへ穀物提供を継続中です。
HOYA株式会社のペンタックス株式会社買収
2006年、HOYA株式会社(以下、HOYA)とペンタックス株式会社(以下、ペンタックス)は経営統合に基本合意していました。しかし、ペンタックス側で統合反対の動きがあり、合併が白紙化。その後、筆頭株主から企業価値向上策を求められたため、単独成長による経営計画を示しましたが、理解を得ることができませんでした。
このような経緯により、2007年にHOYAは、デジタルカメラ部門となるペンタックスに対して株式公開買付を実施します。その後、吸収合併を行いましたが、業績は伸び悩み、2009年に減損損失を計上。2011年にはリコーにデジカメ事業を売却することとなりました。
株式会社資生堂によるDrunk Elephant Holdings, LLC買収
株式会社資生堂(以下、資生堂)の米国子会社であるShiseido Americas Corporationは、2019年、米スキンケアブランドDrunk Elephant Holdings, LLC(以下、Drunk Elephant)を約907億円で買収しました。SNSでの高い支持を背景に成長していたDrunk Elephantを取り込むことで、若年層向けブランドの強化と米州事業の拡大を狙った戦略でした。
しかし、買収後にブランドの成長が鈍化し、競合環境の激化も重なったことで、業績は期待を下回ります。その結果、米州事業に係るのれんの減損損失を計上するに至り、海外ブランド買収におけるポジショニング設計と統合戦略の難しさを示す事例となりました。
株式会社セブン&アイ・ホールディングスの株式会社そごう・西武買収
株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)は2006年、株式会社そごう・西武(以下、そごう・西武)を約2,000億円で買収し、コンビニエンスストアを核とした総合小売グループとしての成長を目指しました。しかし、消費構造の変化や百貨店業界全体の長期低迷、そしてグループ内でのシナジー不足が重なり、業績は改善されないまま評価損や減損損失を繰り返すことになります。
最終的に2023年、セブン&アイはそごう・西武を米投資ファンドのFortress Investment Group LLCへ売却しましたが、多額の債権放棄を伴うなど、厳しい結末を迎えました。
コンビニ主導の事業モデルが百貨店再生に結び付かなかった現実を示す、大型M&Aにおける代表的な失敗事例として広く知られています。
株式会社グリーの株式会社ポケラボ買収
2012年にグリー株式会社は、ゲーム開発を担当している株式会社ポケラボ(以下、ポケラボ)を約138億円で買収しましたが、買収後はヒット作が出ず、2015年に約93億円の減損損失を計上しました。
ポケラボは設立からわずか5年の新しい会社で、2011年の売上高は約5億円でした。バリュエーションで企業価値が過大評価された結果、M&Aに失敗したと考えられます。
中小企業で想定されるM&Aの失敗例
中小企業のM&Aでは、大企業のような巨額損失とは異なる形で失敗が生じることがあります。判断の遅れや準備不足、関係者間の認識のズレといった、身近なところに潜む落とし穴が原因となるケースも少なくありません。
ここでは、中小企業のM&Aで起こりがちな失敗パターンを紹介します。
売却判断の遅れによる条件の悪化を招くケース
中小企業では、後継者不足を背景にM&Aを検討し始めたものの、日々の業務に追われるなかで具体的な行動に移すタイミングが遅れてしまうことがあります。検討段階では一定の収益を確保していたとしても、時間の経過と共に業績や資金繰りが悪化するケースは珍しくありません。
そして、いざ本格的に売却を進めようとした段階では、当初想定していた条件での交渉が難しくなっていることがよくみられます。結果として選択肢が狭まり、条件面で不利な交渉を余儀なくされるなど、早期に動いていれば避けられた可能性のある失敗につながることがあるのです。
人間関係のトラブルによって交渉がまとまらないケース
M&Aは、売り手と買い手の双方が合意して初めて成立します。そのため、人間関係のトラブルが交渉の大きな障害となることがあります。特に同族経営の会社では、経営者と親族の間で意見が一致しないまま交渉を進めてしまい、途中で方針が揺らぐケースが少なくありません。
ほかにも、買い手側が短期的な利益を重視した提案を行った結果、譲渡側が従業員や事業の将来に不安を感じ、合意に至らないこともあります。コミュニケーション不足や認識のズレが積み重なると、一度は進みかけた交渉が不成立に終わることもあるため、関係者間での事前の意思統一と丁寧なコミュニケーションが大切です。
情報漏えいによって交渉が破談となるケース
M&A交渉中の情報が、意図せず社内や取引先に伝わってしまうケースも考えられます。
交渉の噂が広がれば、従業員が将来に不安を感じて離職を検討したり、主要な取引先から取引継続に関する確認が入ったりするなど、事業運営に影響がおよびかねません。このような状況が続くと、企業価値が不安定になり、買い手側から条件の見直しを求められたり、最終的に交渉が破談となったりすることもあります。
情報管理や公表のタイミングを誤ると、M&Aそのものだけでなく、その後の経営にも長く影響を残します。守秘義務契約(NDA)の締結、情報共有範囲の明確化などといった対策は、交渉の初期段階から徹底しましょう。
従業員の反発によって事業運営が停滞するケース
M&Aによって経営体制が変わると、会社の方針や評価制度、職場の雰囲気が大きく変化することがあります。これまで慣れ親しんできた環境との違いに戸惑い、従業員の間で不安や不信感が広がるケースも少なくありません。
特に、譲渡側と譲受側で企業文化に大きな差がある場合、従業員が強いストレスを感じ、業務へのモチベーションが低下することがあります。その結果、事業運営がスムーズに進まなくなったり、優秀な人材が離職してしまったりするリスクが高まるのです。
こうしたM&A後の混乱を防ぐため、従業員への丁寧な説明や、双方が働きやすい環境づくりを意識した対応が求められます。経営統合の目的や今後の方向性を早期に共有し、従業員が安心して働き続けられる環境を整えることは、M&Aを真の意味で成功させるため必要です。
M&Aが失敗した場合の影響
中小企業庁のガイドラインによると、M&Aで失敗が起きた場合、譲渡側と譲受側は以下のような影響を受ける可能性があります。
【譲渡側が受ける影響】
- 人員整理やイグジット(会社売却)が検討される
- M&Aに関する噂で従業員が不安を募らせ、離職者が出る
- 譲渡側経営者が、M&A実施後に抵抗勢力となってしまう
【譲受側が受ける影響】
- 業務が停滞する
- 重要な技術やノウハウを喪失する
- 取引先から取引を停止される
- 譲渡側従業員の協力を得られない
M&Aで失敗が生じた場合の影響について、それぞれ詳しく解説します。
譲渡側が受ける影響
M&Aによる想定以上のシナジーが発揮できず、譲受側にとって負債となった場合、人員整理やイグジット(会社売却)が検討されることがあります。
また、譲渡側の従業員へM&Aについて説明を行う前に噂が広まってしまうと、離職者が出やすくなります。会社の将来性や従業員自身の処遇、業務などについて不安を募らせるからです。
譲渡側の離職者を増やさないために、M&Aの目的や経緯、譲受側の情報などを「すべての譲渡側従業員に対して」伝えるようにしましょう。重要なのは「遅滞なく、同時に、等しく、正確に」伝えることです。
M&A実施後、引継ぎのために譲渡側経営者が在籍するケースがありますが、事前に在籍期間を決めていないと、譲渡側経営者の影響力によりM&Aで目的としていた改革の抵抗勢力となることがあるため、注意が必要です。
M&A成立前に、譲受側と協力関係を築くことを前提として、譲渡側経営者の役割や報酬、在籍期間などを書面に明記しておくことで争いを抑制できます。
譲受側が受ける影響
生産や営業などに関する意思決定について、これまで譲渡側経営者の承認が必要だった場合、M&Aにより失敗が起きる可能性があります。譲渡側経営者の退任後、現場での判断ができないと業務が停滞するからです。
M&A実施後、業務の停滞を防ぐために、譲渡側の業務運営について広範・詳細に把握しましょう。M&A前のデューデリジェンスでは下記のように、業務に関することがブラックボックス化しているケースがあるため、譲渡側の業務運営について検知できないことがあります。
- 業務に関する帳票や規定が存在しない
- 業務に関する重要なことを、特定の担当者や経営者しか把握していない
日常的に「従業員はどのような業務を行っていたのか」「どういった取引先なのか」などを把握していないと、譲渡側の従業員の退職に伴い、重要な技術やノウハウを喪失しやすいです。
防止策として、経営者や従業員へのヒアリングにより、現状を把握する方法があります。ただし、なかには記憶が曖昧だったり、不利な取引の発覚を恐れ意図的に引継ぎ内容について伝えなかったりすることがあるため、注意が必要です。円満な引継ぎができるように、専門家への依頼を検討すると良いでしょう。
また、譲渡側経営者だからこそ取引が可能だった会社から、M&A実施後に取引を停止されることがあります。そのため、譲渡側経営者から取引先について、正確に引き継ぐことが重要です。
特に、主要取引先を引き継ぐ場合、取引経緯や取引条件などを十分に把握するため、主要取引先と関係性がある譲渡側の従業員から協力を得るようにしましょう。
M&Aが失敗する確率
M&Aの失敗確率は、何をもって失敗とするかによって異なります。単にディールが成立したかどうかではなく、M&A実行後に想定どおりの効果が得られたかを基準に見ると、期待を下回るケースもあります。
ディールとは、M&Aが成立するまでの、以下のような一連の過程を指します。
- 準備段階
- 戦略の策定や選定
- M&Aの成約
そのため、ディールの成立ではなく、M&A実行後に想定どおりの効果が得られたことを「M&Aの成功」ととらえるのです。
中小企業庁の中小PMIガイドライン(令和4年3月)によると、M&A実施後の総合的な満足度として、24%の企業が「期待を下回っている」と回答しています。
M&Aの満足度が「期待を下回った」と回答した理由と割合は、以下のとおりです。
- M&Aによる相乗効果が出なかった(44.7%)
- 相手先の経営・組織体制が脆弱だった(36.8%)
- 相手先の従業員への不満(28.9%)
- 買収価格が高すぎた(23.7%)
- 企業文化や組織風土の融合が難しい(22.8%)
- 経営・事業戦略の統合が難しい(7.9%)
- その他(5.3%)
(複数回答)
次章で説明するように、「M&Aの失敗」となる多くのケースでは、デューデリジェンス不足や戦略の甘さが起因しています。
【事例から見る】M&Aの失敗要因と対策
M&Aが失敗する主な要因は、以下のとおりです。
M&Aが失敗する要因がわかると、失敗を抑制するための対策を立てやすくなりますので、ぜひ参考にしてください。
デューデリジェンス不足
M&Aが失敗する代表的な要因は、デューデリジェンス不足です。買収先となる企業の評価をさまざまな観点から行うことを、デューデリジェンスといいます。
M&Aにおけるデューデリジェンスで、調査・評価の対象となるのは、主に次の項目です。
- 税務
- 財務
- 法務
- 人事
このような多方面にわたる調査を行い、売り手側である譲渡企業のリスクや、相乗効果の有無・程度などを検証します。
なお、M&Aによる相乗効果によって、以下のようなことが期待できます。
- 技術開発の発展
- 生産能力の拡大
- 販路の拡大
- ブランド力の向上
デューデリジェンスの際、買収先となる企業との相乗効果を期待し過ぎて過大評価を行い、M&Aが失敗する要因となることがあるため、気をつけましょう。
なかには買収先となる企業からの情報開示が不十分であることから、デューデリジェンスが不足するケースがあります。M&Aの失敗を抑制するには、先方から十分な情報を引き出し、現実的な事業計画を検証することが重要です。
デューデリジェンスは専門性が高く、情報整理や関係者との調整にも多くの手間がかかるため、自社だけで十分な調査を行うことが難しい場合も少なくありません。そのような場合には、M&Aの実務に精通した専門家の支援を受けると良いでしょう。
M&A戦略の甘さ
M&Aの戦略が甘いと、失敗する可能性が高まります。通常、M&Aを実行するときは、以下のような戦略を立案します。
- どのようなシナジー(相乗効果)が生まれるのか
- 自社グループにとって、どのような有益性があるのか
それでも、買収に対する過度な期待や、楽観的な将来計画によってM&Aが失敗に終わるケースがあります。「なぜこの会社とM&Aを行うのか」「統合後に何を実現したいのか」を明確にしておくことが大切です。売上がどのくらい伸びるのか、人材はどう活用するのかなど、できるだけ具体的に考えておきましょう。期待だけで判断せず、現実的な計画を立てることが失敗防止につながります。
M&Aの実行が目的となってしまう
前述した「M&A戦略の甘さ」に大きく関連しますが、M&Aの実行自体が目的となってしまうと、失敗に終わることが多い傾向にあります。
M&Aを行う本来の目的は、事業の発展や相乗効果を得ることです。しかし、次のようなことが続くと、M&Aの実行自体が目的となってしまう可能性があります。
- M&Aの交渉の失敗が続いている
- M&Aの相手が見つからない
このようなことが原因となり、M&Aの実行自体が目的になってしまうと、多少の高値づかみとなっても「取引を終わらせたい」という心理が働きやすくなります。
適切なデューデリジェンスに基づき、「条件が合わなければやめる」という基準をあらかじめ決めておくことが大切です。焦らず、自社に本当に必要なM&Aかどうかを立ち止まって考えることが、結果的に失敗を防ぎます。
PMIが不十分で事業運営に支障をきたす
PMI(Post Merger Integration)とは、M&Aに伴い、人事制度や業務ルール、経営方針などを異なる企業間ですり合わせ、統合していくプロセスを指します。このプロセスを適切に行わないと、想定していたシナジー(相乗効果)が創出されず、「M&Aは成立したが、経営面ではうまくいっていない」と評価される恐れがあります。具体的には、以下のような支障が考えられます。
- 業務の進め方が統一されず非効率が生じる
- 従業員の不満や混乱が高まる
PMIは成立後に着手するのではなく、成立前から統合責任者を定め、「100日プラン」などの具体的な行動計画を策定しておくことが重要です。
M&Aに対する経験不足
M&Aの失敗要因となるのは、M&Aに対する経験不足です。M&Aには専門性が伴うため、経験を有するメンバーと共に進めたほうが、失敗を回避しやすいです。
例えば、M&Aの実施には、以下のような高度な専門知識が必要となります。
- 相手先企業の選定項目において、漏れている観点はないか
- デューデリジェンスが十分であるか
- 円滑に契約手続きを進められるか
したがって、外部の専門家をうまく利用しながら進めることが、M&Aが成功するカギとなるでしょう。
まとめ
M&Aの失敗は、シナジーの未実現や減損損失、不祥事の発覚といった形で表れますが、その背景にはデューデリジェンス不足、戦略の甘さ、実行の目的化、PMIの不備、経験不足などが重なっていることが少なくありません。大企業の事例でも中小企業の失敗例でも、成立前の見極めと成立後の統合準備が不十分だと、期待した成果を得にくくなります。事例を他山の石として捉え、必要な調査と準備を行いながら、必要に応じて専門家の支援も活用して進めることが重要です。
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よくある質問
- M&Aにおける失敗とはどのような状態を指しますか?
- M&Aの失敗とは、想定していたシナジー効果を生み出せなかった場合や、のれんの減損損失を計上した場合、買収後に不祥事が発覚した場合などを指します。単にディールが成立しなかったことではなく、成立後に期待した成果が得られなかったり、経営に大きな悪影響が生じたりした状態が失敗と評価されます。
- なぜM&A後にシナジーが実現できない場合があるのですか?
- 経営環境の変化や統合の難航、企業文化の違いなどにより、想定どおりに進まないことがあるためです。楽観的な計画や過度な期待のもとで買収価格を算定すると、投資額に見合う成果を回収できず、結果として失敗と受け止められることがあります。
- 中小企業ではどのようなM&Aの失敗が起こりやすいですか?
- 売却判断の遅れによる条件悪化や、人間関係のトラブルによる交渉停滞、情報漏えいによる破談、従業員の反発による事業停滞といった失敗が起こりやすい傾向があります。準備や関係者間の意思統一が不十分なまま進めると、不利な状況を招きやすくなります。
- M&Aが失敗した場合、譲渡側と譲受側にはどのような影響がありますか?
- 譲渡側では、人員整理やイグジットの検討、従業員の離職、譲渡側経営者が抵抗勢力となることなどが考えられます。譲受側では、業務の停滞や重要な技術・ノウハウの喪失、取引先からの取引停止、譲渡側従業員の協力を得られないことなどが起こり得ます。
- M&Aの失敗要因として特に多いのは何ですか?
- デューデリジェンス不足、M&A戦略の甘さ、M&Aの実行自体が目的化すること、PMIの不十分さ、M&Aに対する経験不足が主な要因です。いずれも、成立前後の検討や準備が不足していると表面化しやすくなります。
- PMIが不十分だとどのような問題が起こりますか?
- 人事制度や業務ルール、経営方針のすり合わせが進まず、業務の非効率や従業員の不満・混乱が生じやすくなります。その結果、M&Aは成立していても、経営面では期待した効果が出ていないと評価されるおそれがあります。
- M&Aの失敗を防ぐにはどのような対策が必要ですか?
- 十分なデューデリジェンスを行い、現実的な事業計画と統合方針を定めたうえで進めることが重要です。また、条件が合わなければ見送る基準を持つこと、PMIを成立前から準備すること、必要に応じて専門家の支援を受けることが失敗防止につながります。
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