逆さ合併とは? 目的や注意点、事例について解説

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逆さ合併について

逆さ合併とは、通常とは逆に、事業規模が小さい会社を存続会社として、大きい会社を消滅会社とする吸収合併のことです。形式上の存続会社と実質的な支配関係が一致しない場合もあり、逆取得とあわせて語られることがありますが、逆さ合併は合併の形式を指す言葉です。実務では、税務、会計、手続きの各観点を分けて理解することが重要です。

M&Aにおいて規模が大きい会社と小さい会社が合併する場合、一般的には規模が大きい会社が存続会社となって合併されます。一方で、規模の小さい会社が存続会社になる合併もあり、「逆さ合併」と呼ばれます。

本記事では、逆さ合併の概要やメリット、注意点とあわせて、事例や仕訳も解説します。

また、M&Aの意味と基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


逆さ合併とは

まずは、逆さ合併の概要や税務上のメリットが享受できる要件について解説します。

逆さ合併とは

事業規模が小さい会社が存続会社となる吸収合併

吸収合併をする際には、一般的に規模の大きな会社が存続会社、小さい会社が消滅会社となり、合併が行われます。しかし、逆さ合併の場合には規模の小さい会社が存続会社、大きい会社が消滅会社となって合併が行われます。逆さ合併は、吸収合併のなかでも特殊なケースです。

吸収合併後に規模の小さな会社が残り、規模の大きい会社が消滅する形となり、通常とは逆の関係になります。

逆さ合併と逆取得の違い

逆さ合併と逆取得は関連して語られることが多いですが、指す概念はそれぞれ異なります。逆さ合併は合併のスキーム(形式)を、逆取得は会計上の状態を表す言葉です。

逆さ合併とは、規模の小さい会社が存続会社となり、規模の大きい会社が消滅会社となる吸収合併の手法を指します。一方、逆取得とは、合併の対価を受け取った側(消滅会社の株主)が存続会社の議決権の過半数を握り、実質的な経営支配権を獲得する会計上の状態のことです。

実務上では、逆さ合併を行った結果として逆取得に該当するケースも少なくありません。ただし、あくまで「逆さ合併」は合併の形式を、「逆取得」は会計処理上の判定を指すものであり、同じ取引を異なる観点から表現した言葉である点を押さえておくことが重要です。

要件を満たせば適格合併として認められる

税務上、適格要件を満たし「適格合併」となった場合には、繰越欠損金を引き継ぐことができるなどのメリットがあります

従来、逆さ合併は適格要件を満たすことが難しかったため、税制上の優遇措置などを受けることができませんでした。しかし、2019年の税制改正により、逆さ合併であったとしても一定の要件を満たせば適格合併として認められるようになりました。

逆さ合併が適格合併として認められる要件は、次のとおりです。

  • 100%支配関係のあるグループ内での再編(金銭等不交付 + 継続保有)
  • 50%超えの支配関係のあるグループ内での再編(金銭等不交付 + 継続保有 + 事業移転 + 事業継続)
  • 共同事業を実施するグループ外企業との再編(金銭等不交付 + 継続保有 + 事業移転 + 事業継続 + 事業関連性 + 同等規模 or 双方経営参画)

上記の要件のうちいずれかを満たしたうえで、存続会社において株主総会の特別決議が実施されることで、逆さ合併が実施可能になります。

逆さ合併を行うケース・目的

逆さ合併は、どのような状況下で行われるのでしょうか。具体的なケースを紹介します。

繰越欠損金がある場合

存続会社に繰越欠損金がある場合、逆さ合併によって含み益と相殺する目的で行われることがあります。規模の小さい会社に繰越欠損金があり、規模の大きい会社が含み益を抱えている場合、両者を合併させることで法人税負担を抑えることが可能になるためです。

ただし、先述した適格要件を満たさない場合、繰越欠損金を引き継ぐことはできないため注意が必要です。

SPCが対象会社を買収し、合併する場合

ファンドによる買収では、SPC(特別目的会社)を設立し、そのSPCが対象会社を買収したうえで逆さ合併を行うケースがあります。これは、対象会社の屋号や権利関係を引き継ぐことを目的として実施されるものです。

このようなスキームはLBOと呼ばれ、ファンドが直接借入を行うのではなく、SPCを通じて資金調達を行います。その後、対象会社と合併することで借入を対象会社側に残しつつ、屋号や事業を引き継ぐことが可能になります

逆さ合併の注意点

逆さ合併に限らず、合併の手続きは煩雑です。株主総会の特別決議で調整が生じるほか、債権者保護手続きや、後述する会計・仕訳処理合併契約書等の書類作成なども含めて手間がかかる点に注意しなければなりません

また、合併前に消滅会社の評価額を下げる手立てなどの対策を打たなければ、合併差損が生じてしまいます。

手続きの不備や漏れなどをなくすためには、専門家への相談が有効です。合併を考え始めたら、早めに相談すると良いでしょう。

逆さ合併の仕訳方法

ここでは、逆さ合併の仕訳例を紹介します。

<前提条件>

  • A社が親会社(規模が大きい)、B社が子会社(規模が小さい)とする
  • A社とB社の吸収合併を前提とするが、一般的な合併と異なり、Aを消滅会社、Bを存続会社とする
  • B社はA社の純資産をそのまま承継するものとする

個別のB/S

合併前

A社個別B/S
資産
B株式
3,000
1,000
負債
資本金
利益剰余金
2,000
1,500
500
合計 4,000 合計 4,000

合併前

B社個別B/S
資産 2,000 負債
資本金
利益剰余金
1,300
500
200
合計 2,000 合計 2,000

合併後

B社個別B/S
資産A
資産B
3,000
2,000
負債A
負債B
資本金
利益剰余金
自己株式
2,000
1,300
2,000
700
-1,000
合計 5,000 合計 5,000

連結のB/S

合併前

連結B/S
資産A
資産B
のれん
3,000
2,000
300
負債A
負債B
資本金
利益剰余金
2,000
1,300
1,500
500
合計 5,300 合計 5,300

合併後

連結B/S
資産A
資産B
のれん
3,000
2,000
300
負債A
負債B
資本金
資本剰余金
利益剰余金
2,000
1,300
2,000
-500
500
合計 5,300 合計 5,300

B社の個別B/Sでは、のれんが発生しません。共通支配下の取引であるため、簿価でA社を引き継ぐためです。

また、逆さ合併後のBの連結B/Sと合併前のAの個別B/Sは実態の変化はなく、実質同じとなります。ただし、合併後のBの資本金は連結・個別共に同額となる点が異なります。

合併前の連結資本金との差額は資本剰余金と振り替えることとなります。

逆さ合併の事例

ここでは、逆さ合併で節税メリットを享受した事例などを見ていきましょう。

株式会社三井住友銀行と株式会社わかしお銀行の合併

2003年に、規模の大きい「株式会社三井住友銀行」(以下、三井住友銀行)と規模の小さい「株式会社わかしお銀行」(以下、わかしお銀行)が逆さ合併によって合併しました。

当時、三井住友銀行が保有する株式は含み損を抱えていた状態でしたが、一方で保有している不動産などの資産は含み益がある状態でした。逆さ合併により、当該含み損をなくすことが主な目的です。

なお、存続会社の「わかしお銀行」は合併後に商号を三井住友銀行に変更し、旧三井住友銀行とは別の法人格でありながら、商号を承継しています。

株式会社東京証券取引所グループと株式会社大阪証券取引所の合併

2011年に、子会社だった株式会社大阪証券取引所(以下、大阪証券取引所)が、非上場の親会社である株式会社東京証券取引所グループ(以下、東京証券取引所)と逆さ合併を実施しました。

上場していた存続会社の大阪証券取引所は、自社よりも大きい非上場の東京証券取引所を合併する形で統合しました。さらに、「日本取引所グループ」と商号を変更したうえで上場を果たしました。

両社の運営効率化などのシナジー効果や国際競争力向上、上場廃止対策などを目的に実施された事例となっています。

イオントップバリュ株式会社とアイク株式会社の合併

2013年に、共にイオングループであったイオントップバリュ株式会社(以下、イオントップバリュ)とアイク株式会社(以下、アイク)が逆さ合併を実施しました。アイクが存続会社となりましたが、商号は「イオントップバリュ」に変更・承継されています。

アイクは元々、大手や中堅のGMSの5社が、海外商品の共同仕入のために設立した専門商社でしたが、その後、イオンの子会社となりました。イオントップバリュはトップバリュの商品開発を行っており、それぞれを統合することで効率的な運営を実現しています。

まとめ

逆さ合併は、通常とは逆に、規模の小さい会社を存続会社とし、規模の大きい会社を消滅会社とする吸収合併です。合併の形式を指す言葉であり、会計上の状態を表す逆取得とは区別して理解する必要があります。

一定の適格要件を満たす場合には、繰越欠損金と含み益の相殺によって税務上のメリットを得られる可能性があります。また、SPCを用いた買収後の合併や、屋号・権利関係の承継を目的として活用されることもあります。一方で、株主総会の特別決議、債権者保護手続き、合併契約書の作成、会計・仕訳処理など実務上の確認事項は多く、合併差損が生じる可能性にも注意が必要です。検討する際は、税務・会計・法務の観点を整理し、必要に応じて専門家に相談しながら進めることが重要です。



よくある質問

  • 逆さ合併とはどのような合併ですか?
  • 逆さ合併とは、規模の小さい会社が存続会社となり、規模の大きい会社が消滅会社となる吸収合併のことです。一定の適格要件を満たす場合には、存続会社の繰越欠損金を活用し、消滅会社の含み益と相殺することで法人税負担を抑えられる可能性があります。
  • 逆さ合併で節税はできますか?
  • 一定の要件を満たして「適格合併」として認められた場合、逆さ合併によって税務上のメリットを得られる可能性があります。例えば、存続会社に繰越欠損金がある場合、消滅会社が保有する含み益と相殺することで、法人税負担を抑えられるケースがあります。
  • 逆さ合併はどのような目的で行われますか?
  • 逆さ合併の主な目的は、税務上のメリットを得ることです。例えば、存続会社に繰越欠損金がある場合、消滅会社の含み益と相殺することで法人税負担を抑えられる可能性があります。また、ファンドによる企業買収では、SPC(特別目的会社)を設立して対象会社を買収し、屋号や権利関係を引き継ぐ目的で逆さ合併が行われるケースもあります。
  • 逆さ合併を行う際の注意点はありますか?
  • 逆さ合併は、通常の合併と同様に手続きが複雑である点に注意が必要です。株主総会の特別決議のほか、債権者保護手続きや合併契約書の作成、会計処理など、多くの手続きが必要になります。また、消滅会社の評価額の調整を行わないと合併差損が発生する可能性もあります。手続きの不備を防ぐためにも、専門家への相談が有効とされています。
  • 逆さ合併ではどのような会計処理が行われますか?
  • 逆さ合併では、共通支配下の取引として処理されるケースでは、簿価で資産や負債を引き継ぐため、存続会社の個別財務諸表ではのれんが発生しません。一方、連結財務諸表では、合併前の実態と大きな変化はなく、資本金などの項目の整理が行われます。合併前後で資本構成が調整される点が会計上の特徴です。

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