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合併契約書について
合併契約書とは、会社が合併を行う際に、当事会社間で合併の条件や手続きを定めて締結する契約書です。会社法に基づき作成が求められ、吸収合併か新設合併かによって法定記載事項の内容も異なります。記載漏れや不適切な内容があると、合併手続きの進行に支障を生じるおそれがあるため、記載事項と締結時の注意点を正確に押さえることが重要です。
合併とは「M&A(合併と買収)」の一種で、複数の会社が一つになることを指します。合併する際には会社法に基づき、合併契約書を作成する必要があります。また、作成時には、必要事項を正確に記載しなくてはなりません。記載事項に漏れや間違いがあると、合併の進行に支障をきたします。
本記事では、合併契約書の概要や、具体的な記載事項について解説します。
また、M&Aの意味と基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
合併契約書とは
合併契約書とは、企業同士が合併を行う際に、条件や手続きを定めて締結する重要な契約書です。会社法第748条に基づき、合併を行うすべての会社に締結が義務付けられています。
合併には、既存の会社が他の会社を吸収する「吸収合併」と、合併する会社をすべて消滅させて新たな会社を設立する「新設合併」の2種類があります。いずれの場合も、合併契約書の締結が不可欠です。
合併契約書は、基本的に株主総会での承認を得る前に締結します。取締役会を設置している会社であれば取締役会決議の後、設置していない会社であれば取締役の過半数による決定を経た後に締結するのが一般的です。
また、会社法で定められた「法定記載事項」に漏れがあったり、違法な内容が含まれていたりすると、合併契約自体が原則として無効となるため、作成時には細心の注意が必要です。
吸収合併契約書
吸収合併を行う際には、吸収合併契約書を作成しなければなりません。吸収合併とは、一方の会社の権利義務を、存続する会社へ移転することです。吸収合併契約書には、法定記載事項として指定された事項の記載が必須となります。
なお、吸収合併の手続きにおいて、会社法第782条1項、および第794条1項に基づき、株主や債権者の保護のために、合併契約書を含む書類一式を備え置かなければなりません。
新設合併契約書
新設合併の際には、新設合併契約書を締結します。新設合併とは、合併する会社を消滅させ、消滅する会社の権利や義務を新設会社が引き継ぐことです。
新設合併契約書には、会社法第753条で定められた法定記載事項(法的義務のある項目)を記載しなければなりません。
合併契約書の記載事項
合併契約書には、会社法で記載が義務付けられている「法定記載事項」と、当事会社間で任意に取り決める「任意的記載事項」の2種類を記載します。
法定記載事項は吸収合併か新設合併かによって内容が異なるため、自社の合併形態に応じた内容を正確に盛り込むことが重要です。
吸収合併契約書の記載事項
吸収合併契約書には、会社法で定められた法定記載事項を必ず記載しなければなりません。加えて、当事会社間で合意した任意的記載事項を盛り込むこともできます。
法定記載事項
吸収合併の手続きにおいては、会社法第749条および第794条に基づき、株主や債権者を保護するために、以下の法定記載事項を契約書に含めることが定められています。
- 吸収合併により消滅する会社と存続する会社の商号と住所
-
吸収合併により消滅する会社の株式と引き換える対価の総額や種類、割当てなどの条件
※株式を交付する場合、合併契約に準備金と資本金の額に関する事柄も記載
- 消滅会社の株主に対する、前述の対価(株式や現金など)の配分ルール
- 消滅会社の新株予約権者に対して交付する対価(新株予約権や現金など)とその割当
- 吸収合併の効力発生日
参考:会社法|第七百四十九条
これらを盛り込んだ契約書は、効力発生日の前日までに株主総会で承認を得ることが必須です。そのため、株主総会で合併契約の承認を受ける期日も、吸収合併契約書に明記しておく必要があります。
なお、効力発生日とは、存続会社が消滅会社の権利義務を承継し、消滅会社の株主が存続会社の株主となる日のことです。
任意的記載事項
吸収合併の際に、法定記載事項に記載していない内容を双方の企業間で取り決めたうえで記載するのが任意的記載事項です。
任意的記載事項の例は、次のとおりです。
- 存続する会社の定款変更に関する事項
- 存続する会社に就任する取締役や、その他役員の選任にまつわる事項
- 効力発生日までの余剰金の配当制限に関する事項
- 効力発生日までの新株発行、増資、減資、組織再編に関する事項
- 効力発生日の変更に関する事項
- 退職慰労金の支給についての事項
- 消滅する会社の財産承継に関する事項
なお、任意的記載事項は「合併の本質」や公の秩序に関する「強行規定」に違反していないこと、事項ごとに必要な手続きを実施することが前提となります。
新設合併契約書の記載事項
新設合併契約書についても、法定記載事項の記載が義務付けられています。会社法第753条では、第一号から第十一号にかけて記載すべき事項が定められており、吸収合併契約書とは異なる内容が含まれます。
- 新設合併により消滅した会社の商号と住所
- 新設会社の商号、本店所在地、目的、発行可能株式総数
- 新設会社の定款で定める事項
- 新設会社設立時の取締役の氏名
- 新設会社設立時の役員の氏名、もしくは名称
- 新設会社から、消滅する会社の社員や株主へ交付する株式数や算出方法、新設会社の準備金および資本金の額についての事項
- 上記に関する割当方法
- 新設会社から、消滅する会社の社員や株主へ社債などを発行する際の金額や算出方法についての事項
- 上記に関する割当方法
- 消滅する会社が新株予約権を発行している場合、新株予約権の数および内容、もしくは算出方法についての事項
- 上記に関する割当方法
参考:会社法 | 第七百五十三条
合併契約書の作成・締結時の注意点
合併契約書を作成・締結する際には、以下の注意点を押さえることが非常に重要です。合併契約そのものの可否を左右するものもあるため、一つずつ確認していきましょう。
- 法定記載事項は必ず漏れなく記載する
- 実行前提条件が適切か確認する
- 「無対価合併」となる場合は契約書内に明記する
- 紙の書面で作成した場合は印紙の貼り付けが必要
- 商号を変更する場合は任意的記載事項内に記載する
法定記載事項は必ず漏れなく記載する
合併契約書を作成する際は、会社法で定められた法定記載事項がすべて網羅されているかを慎重に確認することが不可欠です。これらの事項が一つでも欠けていたり、違法な内容が含まれていたりすると、合併契約自体が原則として無効となる可能性があります。
内容は複雑になりやすいため、専門家への依頼も視野に入れながら、作成・締結を進めることをおすすめします。
実行前提条件が適切か確認する
合併契約書においては、実行前提条件が適切に設定されているかどうかを確認することも大切です。まず、自社が対応不可能な義務を負っていないかを精査すると共に、相手企業の財務状況などに隠れた問題が無いことを保証させる「表明保証」が盛り込まれているかを確認しましょう。
また、取引先からの同意取得に関するCOC条項が設定されているかの確認も欠かせません。この確認を怠ると、契約締結後に取引先から契約解除を申し出られるケースがあります。その結果、合併取引が頓挫したり、想定していたシナジー効果を得られなくなったりするリスクも生じます。
「無対価合併」となる場合は契約書内に明記する
100%親子会社間の吸収合併など、消滅会社の株主に対して対価を交付しない「無対価合併」を行う場合は、その旨を合併契約書に明記しておくことが重要です。単に対価に関する記載を省略するのではなく、対価を交付しない旨を明確に示すことで、契約内容の誤解や手続き上の不備を防ぎやすくなります。
また、無対価合併は税務上の取扱いが問題になるケースもあります。適法性や税務リスクに不安がある場合は、税理士や弁護士に確認しながら慎重に進めなくてはなりません。
紙の書面で作成した場合は印紙の貼り付けが必要
合併契約書を紙の書面で作成・締結する場合は、収入印紙の貼付が必要です。合併契約書は印紙税法上の課税文書(第5号文書)に該当するため、原則として1通につき4万円の収入印紙を貼付し、消印を行う必要があります(2026年3月12日時点)。
一方、クラウドサインなどの電子契約サービスを利用して締結する場合は課税文書に該当しないとされており、収入印紙の貼付は不要です。
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
商号を変更する場合は任意的記載事項内に記載する
合併に伴い商号(社名)を変更する場合は、その内容を合併契約書の任意的記載事項として明記しておかなくてはなりません。
新設合併では新会社の商号を定めることになりますが、吸収合併においても存続会社が商号を変更するケースがあります。商号は定款に記載される重要事項であるため、変更する場合は定款変更の手続きが必要です。合併契約書の任意的記載事項として、存続会社が商号を変更する旨を明記しておかなくてはなりません。
また、合併契約の承認後は、効力発生日から2週間以内に法務局で商号変更の登記手続きを行うことも忘れずに対応することが求められます。
まとめ
合併契約書は、会社法に基づき、合併の当事会社が合併の条件や手続きを定めるために締結する重要な契約書です。吸収合併と新設合併では法定記載事項が異なるため、消滅会社・存続会社または新設会社に関する事項、合併対価、割当方法、効力発生日などを正確に記載する必要があります。
また、任意的記載事項を定める場合は、合併の本質や強行規定に反しない内容にすることが重要です。実行前提条件、表明保証、COC条項、無対価合併、収入印紙、商号変更など、作成・締結時に確認すべき点も多いため、不安がある場合は専門家に相談しながら進めることが大切です。
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よくある質問
- 合併契約書とはどのような契約書ですか?
- 合併契約書とは、企業同士が合併を行う際に、合併の条件や手続きを定めて締結する契約書です。会社法に基づき作成されるもので、合併の当事会社の商号・所在地・合併の対価・効力発生日といった法定記載事項を漏れなく盛り込む必要があります。合併には、既存の会社が他社を吸収する「吸収合併」と、合併する会社をすべて消滅させて新たな会社を設立する「新設合併」の2種類があり、いずれの場合も合併契約書の作成が必須です。
- 合併契約書はいつ締結する必要がありますか?
- 合併契約書は、合併を実施する前に当事会社間で締結します。一般的には、取締役会設置会社では取締役会の決議を経た後、株主総会で合併契約の承認を得る前の段階で締結されます。取締役会を設置していない会社の場合は、取締役の過半数による決定を経た後に締結するのが通例です。
- 吸収合併契約書と新設合併契約書の違いは何ですか?
- 吸収合併契約書は、一方の会社の権利義務を存続会社に移転させる吸収合併を行う際に作成する契約書で、免許や許認可は原則として存続会社が引き継ぎ、合併対価を現金で支払うこともできます。一方、新設合併契約書は、合併する会社を消滅させ、その事業や権利義務を新たに設立する会社が承継する新設合併を行う際に締結する契約書であり、新設会社の商号や目的、発行可能株式総数など、新会社の内容に関する記載が求められる点が特徴です。
- 吸収合併契約書における法定記載事項にはどのような内容がありますか?
- 吸収合併契約書の法定記載事項としては、吸収合併により消滅する会社と存続する会社の商号と住所、合併条件(交付される対価の額や種類・割当方法など)、吸収合併後の準備金と資本金の額、対価の支払いに関する取決め、吸収合併の効力発生日が挙げられます。これらの法定記載事項が欠けている、または違法な内容が含まれている場合、契約書は原則として無効とされます。
- 吸収合併契約書の任意的記載事項にはどのようなものがありますか?
- 任意的記載事項は、法定記載事項以外で当事会社間が合意した内容を記載するもので、具体例としては存続会社の定款変更に関する事項、取締役など役員の選任に関する事項、効力発生日までの余剰金の配当制限、新株発行や増資・減資・組織再編に関する事項、効力発生日の変更、退職慰労金の支給、消滅会社の財産承継方法などがあります。これらは合併の本質や強行規定に反さない範囲で定める必要があります。
- 新設合併契約書にはどのような事項を記載する必要がありますか?
- 新設合併契約書には、消滅会社の商号と住所、新設会社の商号・本店所在地・目的・発行可能株式総数、新設会社の定款で定める事項、新設会社設立時の取締役や役員の氏名または名称を記載します。さらに、新設会社から消滅会社の社員・株主に交付する株式や社債などの数・内容・算出方法、それらの割当方法、新株予約権がある場合はその数・内容・算出方法および割当方法など、会社法第753条で定められた事項を盛り込む必要があります。
- 合併契約書作成時に商号変更を行う場合、どのような手続きが必要ですか?
- 新設合併で新会社を設立する場合はもちろん、吸収合併で存続会社の商号を変更する場合も手続きが必要です。まず株主総会で商号変更の承認を受け、その上で効力が発生する日から2週間以内に法務局で商号変更の登記申請を行います。あわせて、都道府県事務所、市区町村役場、年金事務所、労働基準監督署など、関係機関への変更届出が求められる場合もあります。
- 合併契約書作成時に確認すべきチェンジオブコントロール(COC)とは何ですか?
- チェンジオブコントロール(Change of Control)とは、M&Aに伴う経営権の移動を契約解除の事由としたり、経営権の移動を他方当事者に通知する義務を定めたりする規定のことです。取引先との契約書にCOC条項が含まれている場合、合併によって経営権が移動した際には速やかに通知する必要があります。信用に関わる重要な規定であるため、合併前に契約内容を確認し、適切なタイミングで報告できるよう専門家に相談することが推奨されます。
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