有限会社の株式譲渡はできる? メリットや手続きの流れ、注意点を詳しく解説

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会社法の施行にともない、2006年5月以降は有限会社を設立できなくなりました。現存している有限会社は法律上は「特例有限会社」となり、株式会社の一形態という扱いになっています。
有限会社も、相続やM&Aのために株式を譲渡することは可能です。有限会社の株式譲渡にはどのようなメリットがあるのでしょうか?また、実際に譲渡をする場合、どのような手続きをすれば良いのでしょうか?
本記事では、有限会社の株式譲渡について、さまざまな角度から解説していきます。

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1. 有限会社も株式譲渡はできる

有限会社であっても、株式譲渡は可能です。
冒頭で述べたように、2006年5月1日に会社法が施行され、有限会社法は廃止されました。これにともない、有限会社は新たに設立できなくなりました。以降、旧有限会社は「特例有限会社」となり、株式会社の一形態として扱われています。
※本記事ではこれ以降、特例有限会社は「有限会社」と表記しています。
有限会社では、株式の譲渡に関する規定が定款に「ある」「なし」に関わらず、株式譲渡には株主総会での承認が必要です。すべての株式に譲渡制限が設けられた会社を株式譲渡制限会社といい、特例有限会社は実質、株式譲渡制限会社に該当します。
繰り返しになりますが、有限会社は、株主総会で承認を得なければ原則として株式の譲渡は行えません。これは逆にいえば、株主総会での承認が得られれば、有限会社であっても株式譲渡は行えるということです。
なお、有限会社では、株主間での株式の譲渡は会社が承認したものとみなされており、株主総会での承認は必要ありません。

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2. 有限会社を株式譲渡するメリット

有限会社の株式譲渡にはさまざまなメリットがあります。そのなかでも特に重要なものを4つ紹介します。

2-1. 事業承継が可能になる

有限会社の株式譲渡により、事業承継が可能になります。
後継者の不在に悩む有限会社の経営者は少なくありません。後継者が見つからずに廃業となってしまえば、せっかく大切にしてきた事業を失うことになります。しかし、他社に株式譲渡すれば事業は引き継がれ、後継者問題を解決できます。事業の拡大や成長も見込めるでしょう。
ただし、事業承継後に、新たな経営者が経営方針などを変更するケースもあります。

2-2. 取引先との関係が継続できる

取引先との関係を継続できるのも、株式譲渡のメリットです。
有限会社の後継者が見つからずに廃業してしまえば、これまで築き上げてきた取引先や顧客との関係は途絶えてしまいます。しかし、株式譲渡による事業承継を行えば、取引先との関係を継続でき、自社の製品やサービスも提供を続けられるのです。
ただし、取引先との契約にCOC(チェンジオブコントロール)条項などがあると、株式譲渡後に契約が解除される可能性があります。事業承継前に契約書類などをチェックしておくと良いでしょう。

2-3. 従業員の雇用を継続できる

株式譲渡によって有限会社の事業を承継すれば、会社の資産・負債だけでなく、従業員との契約もそのまま譲受企業(買い手側)に引き継がれます。事業承継後は株主の構成が変わるだけで、基本的にそれ以外に大きな変更は無いため、従業員は同じ職場で引き続き働くことができます。
このように、会社と従業員の間で結んだ労働契約は基本的に継続されるのが一般的です。ただし、人事制度や査定方法などは譲受企業に統合される場合が多い点には注意しましょう。

2-4. 創業者利益が得られる

株式譲渡による事業承継を選択することで、譲渡企業である有限会社の創業者は創業者利益を得られます。株式の売却によって多くの資金を得られるかもしれません。
創業者利益によって獲得した資金は老後の生活費などに使うのはもちろん、別のビジネスを立ち上げる原資とすることもできます。

3. 有限会社を株式譲渡する手続きと方法

ここからは、有限会社の株式を譲渡する際の手続きとその方法について解説します。
有限会社には取締役会を設置できません。株式の譲渡には、原則として株主総会による承認が必要となります。
ただし、定款の変更により、株式譲渡の承認機関を代表取締役に変更することは可能です。株式譲渡を代表取締役が承認できるようにすれば、株主総会を開催せずにすみ、株式譲渡の手続きが簡単になります。
なお、株主の間で株式を譲渡する場合は、株主総会等の承認は必要がありません。いつでも自由に譲渡できます。

4. 有限会社を株式譲渡するときの注意点

有限会社の株式を譲渡する場合の注意点を4つ、解説します。

4-1. 株式の譲渡制限がある

これまで述べてきたように、有限会社の株式には譲渡制限が設けられています。株式を譲渡する際には、原則として株主総会の承認を得なければなりません。規程に沿った手続きも求められます。こうした規程を変更したい場合、株式会社へと組織を変更する必要があります。

4-2. 従業員の処遇や取引先との関係が悪化する可能性がある

株式譲渡により事業承継をすると、有限会社の経営権は譲受企業(買い手側)に移ります。前述のとおり雇用契約自体は維持されますが、従業員の待遇は悪化する可能性があります。そうならないよう、株式譲渡契約書には譲渡後の従業員の待遇についても明記しておくと良いでしょう。
また、株式譲渡後に取引先が離れてしまう場合もあります。取引先には事業承継前に十分な説明を行い、関係が悪化しないように努めましょう。

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4-3. 株式の譲渡先が見つけにくい可能性がある

有限会社は、株式の譲渡先を探すのが難しい可能性があります。
有限会社は2006年5月1日以降は設立できないため、全法人に占める有限会社の割合は減少し続けています。加えて、株式の譲渡には制限があります。有限会社の株式取得に魅力を感じる企業や個人は多くは無いでしょう。
だからこそ、従業員や取引先のためにも株式譲渡して事業承継をしたいと考えている経営者の方には、専門家に頼ることをおすすめします。マッチング能力に優れ、さまざまなコネクションや情報を持つ専門家に依頼すれば、理想的な買い手に出会える可能性が高くなるはずです。

5. まとめ

すべての有限会社の株式には譲渡制限が設けられています。譲渡には原則として株主総会の承認を得る必要があり、通常の株式会社と比べるとハードルは高いといえます。
また、事業規模が拡大し上場を目指す場合は、有限会社のままでは上場ができないため、どこかのタイミングで株式会社に組織を変更しなければなりません。
こうした理由から、有限会社の株式の譲渡先探しは難度が高くなりがちです。株式譲渡による事業承継を考えている経営者の方は、まずは専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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