零細企業とは? 概要やM&Aにおけるメリット、注意点まで簡単に解説

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零細企業とは、法律上の明確な定義がないものの、一般的には中小企業のなかで小規模な企業(小規模事業者)を指します。
経済産業省 近畿経済産業局、および、中小企業庁の発表では、2025年における70歳以上の中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人であり、その約半数を占める127万人では後継者未定であるとされています。そこで注目されているのが、零細企業におけるM&Aです。
この記事では、零細企業の概要と共に零細企業におけるM&Aの動向やメリット、実施方法の他、注意点を説明します。

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1. 零細企業とは

零細企業とは、法的に明確な定義はされていませんが、慣例的には、資本金1,000万円以下で従業員数が5人以下など、中小企業のなかでも小規模なものを指します。中小企業基本法において、零細企業に該当するのは「小規模企業」の区分です。
従業員が何人かといった具体的な基準は、中小企業基本法によって業種ごとに定められています。例えば、卸売業・小売業などの商業およびサービス業では、従業員5人以下、製造業・建設業・運輸業・その他の業種(宿泊業や娯楽業など)では、従業員20人以下が該当します。なお、この基準は、政府によって範囲変更が可能です。

1-1. 大企業・中小企業との違い

零細企業と大企業・中小企業との違いは、次の通りです。

  • 大企業:唯一の定義があるわけではないものの、会社法上の大会社は「資本金5億円以上、または、負債が200億円以上の企業」が該当する
  • 中小企業:中小企業基本法第2条において規定されているが、業種により定義が異なる。一般的には、業種ごとの資本金や従業員数で分類される

先述のように、零細企業と大企業・中小企業とは、資本金や従業員数の点で大きく異なります

1-2. ベンチャー企業との違い

零細企業とベンチャー企業は、共に法的な定義がないビジネス用語ですが、その対象が違います。
零細企業は、資本金や従業員数などの企業規模で区分し、小規模企業を指す名称です。一方、ベンチャー企業とは、新しいアイデアや独自的なスキルでビジネスを展開し、成長を目指す企業を指します。
ベンチャー企業も初期においては、資本金が低額で従業員数が少ないことから、零細企業に該当するでしょう。ただし、将来的にビジネスの拡大を目指して従業員を増やしていく点では、異なる思想を持っています。

2. 零細企業が全体に占める割合

区分 2016年(企業全体に占める割合)
中小企業・小規模事業者 357.8万者
(99.7%)
うち小規模事業者 304.8万者
(84.9%)
大企業 1万1157者(0.3%)
全規模(大企業と中小企業・小規模事業者の合計) 358.9万者

引用:中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果を公表します|中小企業庁
零細企業が全体に占める割合を、上記、中小企業庁発表のデータをもとに検証すると、国内企業の全体数が358.9万者である一方で、小規模事業者数は304.8万者であり約84.9%を占めることがわかります。小規模事業者は零細企業に該当するため、つまりは、8割以上の企業が零細企業であるといえるでしょう。
このことから、零細企業は日本経済を支え、多様な経済社会の創出に寄与しているといえます。しかし、それと同時に、その衰退が日本経済全体に大きな影響を与えることにも留意しなければなりません。

3. 零細企業におけるM&A

国内における零細企業は、経営者の高齢化に伴う後継者不足が課題となっており、廃業に至るケースが少なくありません。その打開策として注目されているのが、M&Aによる事業承継です。
ここでは、零細企業におけるM&Aの動向や、M&Aを実施する方法を解説します。

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3-1. 零細企業におけるM&Aの動向

近年の零細企業におけるM&Aの動向は、増加傾向にあります。その理由として挙げられるのが、零細企業を含む中小企業における経営者の高齢化と、深刻化する後継者不足です
経済産業省 近畿経済産業局、および、中小企業庁の調査によると、2025年における経営者約381万人のうち約245万人が70歳以上となり、その半数を占める約127万人が後継者未定との回答をしています。この数は日本企業全体の約3分の1に該当し、現状を放置すると廃業が急増、2025年頃までの10年間の累計で、約650万人に及ぶ雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性が示されています。
そこで、打開策として注目されているのが零細企業におけるM&Aです。全国47都道府県に設置される「事業承継・引継ぎ支援センター」での支援実績も年々増加しており、2011年の発足から2022年にかけて、約10万件の相談と約8,000件の事業引継ぎを実現しています。
今後も後継者不足は続くことが予想されるため、M&Aは零細企業の存続において重要な役割を果たすといえるでしょう。

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3-2. M&Aを実施する方法

零細企業が事業承継のためにM&Aを実施する主な方法に、「株式譲渡」と「事業譲渡」が挙げられます。

  • 株式譲渡
    株式譲渡とは、株主が保有する対象企業の株式を、対価と引き換えに買い手企業に譲渡して事業承継させるM&Aの手法です。零細企業の株式譲渡においては、株主と買い手企業が株式譲渡契約を締結し、発行済み株式の過半数を買い手企業が買い取ることで経営権を取得します。
    株式譲渡では、株主総会による承認や債権者保護手続きが不要である点など、手続きが簡便であり、買収後も企業を存続できるといったメリットがあります。ただし、売り手である株主が個人の場合、譲渡所得税や住民税、復興特別所得税が課される点に留意が必要です。
  • 事業譲渡
    事業譲渡とは、対象企業が営む事業の全部または一部を、買い手企業に譲渡するM&Aの手法です。
    事業譲渡では、会社の全部に限らず、売却したい特定の事業を選択して譲渡することが可能です。また、買い手企業においても必要となる資産や負債を選択して承継できるため、簿外債務を引き継ぐリスクを軽減できます
    ただし、複数事業を譲渡する場合は手続きが煩雑となる点や、譲渡対象に含まれる消費税法上の課税資産に対して買い手企業に消費税が課され、さらに不動産を譲渡する場合には登録免許税、不動産取得税などの税金もかかる点に注意しなければなりません。
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4. 零細企業におけるM&Aのメリット

零細企業におけるM&Aの実行に際しては、売り手・対象企業、買い手企業共にメリットが生じます。

4-1. 売り手のメリット

零細企業がM&Aを実行するメリットは、次の2点です。

  • 事業承継を実現できる(売り手企業)
  • 事業展開や成長の機会を得られる(対象企業)

先述の通り、零細企業の多くが後継者不足の課題を抱えています。後継者が不在であっても、M&Aの実行により事業の継続はもちろん、これまで築いてきたブランドや顧客基盤、従業員を維持することも可能です
また、零細企業は資本規模が乏しいことから事業を拡大する場合、新たな資本投下が必要となります。M&Aを通じて経営基盤の安定した企業と統合することで資本や経営リソースを獲得でき、将来的な事業展開や成長が促進される点もメリットといえるでしょう。

4-2. 買い手のメリット

零細企業に対するM&Aにおいて、買い手企業のメリットは次の2点です。

  • 新たな顧客基盤の獲得
  • 人材育成の手間とコストの削減

M&Aにより、これまで買い手企業が関与していなかった市場や顧客層へのアクセスが可能になります。例えば、自社とは異なる業界の零細企業の買収によって、新たな顧客基盤を取得する機会が生まれるでしょう。地域との結びつきが強い零細企業を買収する場合は、その地域における強固な顧客基盤を獲得できるため、ビジネス展開のきっかけにもなります。
買収によって、高度なスキルや専門知識を持つ従業員を得られる点もメリットです。新規事業や成長に必要となる優秀な人材を迅速に確保できるので、採用・育成にかかる時間や手間、コストの削減につなげられるでしょう。

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5. 零細企業におけるM&Aの注意点

ここからは、零細企業におけるM&Aを実行する際の売り手側、買い手企業にとっての注意点を解説します。M&Aを成功に導くためにも、注意点に留意して手続きを進めましょう。

5-1. 売り手の注意点

売り手側が注意したいポイントは、次の2点です。

  • 従業員など関係者への情報共有
  • 買い手企業の選定における条件の明確化

売り手にとって、特に注意したいのが、従業員をはじめとする関係者への情報共有です。従業員数が少ない零細企業では人と人との結びつきが強いため、M&Aにより経営権が移行することに対して、従業員が不安を抱いたり業務へのモチベーションが低下するリスクが否定できません。このようなリスクを放置しておくと離職に発展しかねないため、不安を解消できるよう、積極的な情報提供やコミュニケーションを図りましょう
また、零細企業にはのれんなど、目に見えない独自の価値を有するケースもあります。企業価値を見極め、妥当な価格で自社を売却できるように、買い手企業を選ぶ際の譲れない条件を明確化しておくことも大切です。

5-2. 買い手の注意点

零細企業に対するM&Aにおいて、買い手企業が注意したいポイントは次の2点です。

  • デューデリジェンスの徹底
  • 対象企業の適正な価値評価

零細企業を対象とする小規模なM&Aにおいては、買収後に簿外債務が発覚したり管理体制の問題が生じやすい傾向にあります。また、労使関係や情報セキュリティなどの対策が乏しいといった、コンプライアンス上の課題を有するケースも少なくありません。
買収後に問題が発覚した場合、その責任を負うのは買い手企業です。想定外の損失を被らないためにも、デューデリジェンス(事前調査)を徹底する必要があります。
また、企業価値は、デューデリジェンスなどの調査結果をもとに決定されますが、零細企業は地域における強力な顧客基盤や技術上のノウハウなど、財務諸表上に現れない価値を有しているケースも多くあります。M&Aを成功させるには、対象企業の隠れた価値を見極める力も必要です

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6. まとめ

国内企業の8割以上を占める零細企業ですが、昨今は経営者の高齢化や後継者不足が深刻化しており、打開策としてのM&Aが注目されています。売り手側は、M&Aにより事業展開や成長の機会を得られる一方、買い手企業にも新たな顧客基盤の獲得や、人材育成コストの軽減などのメリットがあります。
ただし、零細企業におけるM&Aは大手企業とは異なるため、零細企業のM&Aに強い仲介会社やM&Aアドバイザーの知見を借りながら進めるのが得策です
M&A仲介業界であるM&Aキャピタルパートナーズでは、零細企業のM&Aに関する相談も受け付けております。お悩みの経営者様は、ぜひご相談ください。

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零細企業に関するよくある質問

零細企業に関する、よくある質問と回答を掲載します。
  • 零細企業がM&Aを成功させるコツは?
  • 零細企業がM&Aを成功させるコツは、零細企業のM&Aにおいて実績のある仲介会社やアドバイザーなどの専門家を相談先として選ぶことです。また、買い手企業に自社の価値を伝えられるよう、独自のノウハウや技術力、ブランドなどの強みを明確にしておくことも大切です。

  • 零細企業のM&Aの課題は?
  • 零細企業のM&Aの課題は、資金面での余裕が無い点です。M&Aの仲介会社や、アドバイザーを依頼する場合に支払う手数料が負担となってしまいます。また、零細企業では、経営者が中心となって業務を行うことが多いため、買い手企業に対象事業に関するノウハウがない場合に、経営が難航する可能性がある点にも注意が必要です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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