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M&Aを実施する場合、ステップごとに契約書を締結したり、書類を作成・提出しながら進捗していきます。売買の具体的な交渉をする前の段階から、資料の準備や契約書の締結が必要です。
本記事では、売り手企業・買い手企業・双方に関わる契約書や書類について解説します。M&Aを実行する際には、複数の契約書や各段階で必要な書類があるため、それぞれの内容について理解することが重要です。
1. M&Aにおける必要書類
まずは、M&Aに関連する必要書類を紹介します。
「売り手企業に関わる書類」「買い手企業に関わる書類」「売り手企業・買い手企業の双方に関わる書類」に分かれるため、順番に説明します。各書類の概要は、以下のとおりです。
■売り手企業に関わる書類
必要書類 | 内容 |
---|---|
秘密保持契約書 |
自社の機密情報を第三者に漏洩しないように締結する契約書 |
アドバイザリー契約書 |
売り手がM&Aアドバイザリー事業者に業務を依頼する際に締結する契約書 |
各種資料 |
会社の概要資料や決算書、販売先など、売り手の情報がわかる資料 |
M&Aアドバイザーからの |
ロングリストやショートリストといった、買い手候補先をリスト化した資料など |
■買い手企業に関わる書類
必要書類 | 内容 |
---|---|
ノンネームシート |
売り手から提出される簡易資料 |
秘密保持契約書 |
売り手の情報を第三者に漏洩しないように締結する契約書 |
企業概要書 |
売り手企業の名称や所在地、事業内容や財務状態などの詳細な資料 |
意向表明書 |
買い手企業候補が売り手企業に対して、譲り受けることを意思表示する書面 |
■売り手企業・買い手企業の双方に関わる書類
必要書類 | 内容 |
---|---|
基本合意書 |
売り手企業と買い手企業の双方で交渉して合意した内容が記載された書面 |
最終契約書 |
M&Aの最終的な合意を示す契約書 |
1-1. 売り手企業に関わる書類
ここからは、売り手側に関係する書類を説明していきます。
当然ながら、売り手企業よりも買い手企業のほうが、早い段階で契約書や書類の準備が必要になります。売り手として必須となる書類を理解しておきましょう。
秘密保持契約書
売り手企業は、自ら買い手企業を探すことは難しいため、専門家としてM&Aアドバイザーに依頼して探してもらうのが一般的です。
M&Aアドバイザーに依頼した際、容易に関係者以外へ情報を漏らされてしまうと、取引先や従業員に影響が出る可能性があるため、第三者に漏洩しないよう、自社の機密情報を取り扱う目的で「秘密保持契約書」を締結します。
これにより、売り手企業は安心して情報を仲介会社に提出できます。
アドバイザリー契約書
秘密保持契約書を取り交わしたら、案件を進めるため、売り手企業(譲渡企業)と仲介会社で「アドバイザリー契約書」を締結します。アドバイザリー契約書は、仲介会社へ正式に依頼する際に交わされる契約書で、これをもってM&Aがスタートします。
アドバイザリー契約書には、成功報酬の取り決めや直接交渉の禁止、免責事項などが記載されており、初めて見る人にとっては難解な項目が並んでいる契約書です。
理解したうえで締結をしないと、問題が生じた場合に困惑する恐れがあるため、内容をしっかり押さえておきましょう。
各種資料(会社概要・財務資料など)
売り手企業は、買い手企業を探してもらうために、会社の概要資料や決算書、販売先や仕入先などの資料をM&Aアドバイザーに提出します。自社を理解してもらえるよう、ある程度材料を整えてから共有します。
M&Aアドバイザーは、買い手企業となる会社に興味を持ってもらい成約につながるよう、資料をまとめていくのが通常の流れです。
M&Aアドバイザーからの提案資料
売り手企業の提出資料をもとに、M&Aアドバイザーはどのような会社にどれくらいの金額で売却できそうか、考えていきます。買い手候補先については、「ロングリスト」と呼ばれる、広範囲の買い手候補先を集めた資料を提出します。
売り手企業は、ロングリストから買い手候補先を絞っていき、さらに厳選したものが「ショートリスト」として、M&Aアドバイザーから提出される手順です。
また、売り手企業をどの程度の値段で売却可能かを評価した「企業評価レポート」も、M&Aアドバイザーから提案されます。
1-2. 買い手企業に関わる書類
先述の売り手企業と同様、買い手企業にも、M&Aに関係する書類が複数あります。契約の締結、書類の作成・提出が必須となるため、それぞれの資料を確認しましょう。
ノンネームシート
秘密保持契約書の締結前に、売り手企業のM&Aアドバイザー(委託者)から買い手企業(譲受候補企業)に提出されるのが、「ノンネームシート」と呼ばれる資料です。ノンネームシートは、売り手側の企業自体が特定できないような簡易資料となっています。
基本的に、事業内容や売上規模などの会社概要が記載されているだけであり、買い手企業が興味を示すか否かを確認するために提出される資料です。
ノンネームシートで興味を示した会社は、秘密保持契約書を締結して、次のステップに進んでいきます。
秘密保持契約書
秘密保持契約書は、売り手企業と同様、買い手企業にも関わる契約書の一つです。
ただし、意味合いは少し異なります。売り手企業の情報について、第三者に漏洩しないことを約束するために締結する契約書です。
企業概要書
ノンネームシートを参照して興味を持った企業が、秘密保持契約書を締結し、さらに具体的な検討を進めていきます。その際の検討材料として提出されるのが「企業概要書」です。
企業概要書では、売り手企業の名称や所在地、事業内容や財務状態、組織形態を含めた詳細な情報が開示されます。買い手企業は企業概要書をもとに綿密な検討を行い、以降のステップにつなげていくか検討します。
なお、企業概要書は細密なデータが記載されているため、情報の取扱いに注意が必要です。
意向表明書
意向表明書は、買い手企業候補(譲受企業)が売り手企業(譲渡企業)に対して、譲り受けることを意思表示する書面です。企業概要書により、ある程度の想定費用を出したうえで、検討をさらに進めるか否かを判断します。
M&Aの推進を決定した場合に提出するのが「意向表明書」です。意向表明書は基本的に、法的拘束力の無いノンバインディングとなっています。
意向表明書では、譲り受ける目的や取引形態、希望する価格やその資金調達手段、スケジュールなどが記載され、売り手企業に提出されます。
1-3. 売り手企業・買い手企業の双方に関わる書類
売り手企業と買い手企業の両者に関係する、契約書や書類について説明します。双方に関する内容のため、交渉したうえで合意した書類がほとんどです。
基本合意書
基本合意書は、売り手企業(譲渡企業)と買い手企業(譲受企業)の双方で、交渉して合意した内容を確認するために書類化したものです。また、基本合意書の締結により、独占交渉権が与えられることもあります。
ただし、一部例外もありますが、基本合意書も上述の意向表明書と同様に、ノンバインディングであることが原則です。その後のデューデリジェンスなどで発見された内容を織り込む必要があるため、法的拘束力が無いものとなっています。
最終契約書
ここまでは、M&Aが成立する過程の書類が大部分でしたが、それらは最終契約書に向けて進めていた手続きに該当します。最終契約書は、M&Aの最終的な合意を示す契約書です。
ただし、最終契約書はあくまで便宜上の呼称で、実際にはM&Aスキームの内容が名前についた契約書となります。株式譲渡ならば「株式譲渡契約書」、事業譲渡ならば「事業譲渡契約書」といった形で、それぞれの名称がついています。
以下に、最終契約書のなかで代表的なものを挙げますので、一つずつ確認しましょう。
株式譲渡契約書
株式譲渡契約書は、名称通り、株式譲渡の際に使われる契約書です。会社の株式を、売り手企業の株主から買い手企業の株主に対して譲渡する内容を書面化したものです。
株式譲渡契約書には、譲渡価格・支払方法・支払条件、また、譲渡制限株式であれば譲渡手続きの内容、表明保証・損害賠償・競業避止義務などが記載されます。
株式譲渡契約書を締結する前に実施されるデューデリジェンスの内容が、株式譲渡契約書に反映される必要があります。
事業譲渡契約書
事業譲渡契約書も名前のとおり、事業譲渡の際に締結される契約書です。
事業譲渡では、会社の事業の一部を引き継ぐことになるため、該当する事業、具体的な資産や負債、契約なども詳細に記載されます。
株式譲渡のように会社ごと引き継ぐわけではないため、事業譲渡では個別に決めていき、後々のトラブルを防ぐために合意した内容を明確化して織り込みます。
吸収合併契約書
吸収合併契約書は、吸収合併を行う際に取り交わされる契約書です。
ちなみに「吸収合併」とは、合併によって消滅する会社の権利義務の全部を、存続会社が吸収して承継する手法です。
吸収合併契約書では、分割会社や承継会社の称号や住所、承継する資産や負債、契約などが記載されます。
ほかに、最終契約書には下記のような契約書があり、スキームに応じて用いられます。
- 会社分割契約書
- 株式交換契約書
- 株式交付契約書
- 資本提携契約書
- 資本業務提携契約書
2. まとめ
これまでに紹介したとおり、M&Aではさまざまな契約書や書類が必要となります。特に売り手側は、準備しなければならない書類が多数あります。不備なく作成し、準備を進めるためには、M&Aの専門家に依頼して実行することが有効な選択肢の一つです。
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