株主間契約とは? 目的や効力、記載事項と注意点を紹介

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株主間契約とは、ある企業の株主同士が結ぶ契約であり、ベンチャー企業などの非公開企業で多く見られます。本記事では、株主間契約の概要や、混同しやすい用語との違い、メリット・デメリット、契約で定められる項目の具体例などを紹介します。

このページのポイント

~株主間契約とは?~

株主間契約(株主間協定)とは、ある会社の株式を持っている複数の株主が、特定の事柄についてルールを設けたり、そのルールを守るよう契約したりすること。株主間契約では、会社法の原則には無いルールを、株主間の合意のもとで定めることもできるため、会社の運営を効率的に行い、素早い判断を可能にするために、株主間契約を結ぶことがある。ただし、株主間契約は法的な拘束力はないため、内容が競合した場合は定款が優先される。

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1. 株主間契約とは?

株主間契約 イメージ画像

株主間契約(株主間協定)とは、ある会社の株式を持っている複数の株主が、特定の事柄についてルールを設けたり、そのルールを守るよう契約したりすることです。株主間契約の具体的な内容は、株式の売却や譲渡、経営への関与などさまざまです。

1-1. 実施する目的・意義

株主間契約では、会社法の原則には無いルールを、株主間の合意のもとで定めることもできます。そのため、会社の運営を効率的に行い、素早い判断を可能にするために、株主間契約を結ぶことがあります。
少数株主が、会社の意思決定に自身の意思を反映しやすくすることを目的に、議決権比率が50%を超える株主と株主間契約を結ぶケースもあるでしょう。

1-2. 締結するタイミング・場面

株主間契約は、株主同士の合意さえあれば、どのようなタイミングでも締結することができます。具体的には、以下のような場面で締結されます。

  • 合弁会社の設立時
  • 設立後に第三者による資本参加があったとき
  • 株式譲渡を自由にできないようにしたいとき
  • デットロックを避けたいとき
  • M&AやIPOを効率的に進めたいとき
  • 少数派株主が意向を反映させたいとき

1-3. 効力発生の範囲

株主間契約は、契約当事者の間でしか効果を発揮しません。よって、対象会社の株主のなかに、株主間契約を結んだ株主と、結んでいない株主がいる場合、結んでいない株主には、契約の効果はおよびません。

2. 株主間契約と混同しやすい用語との違い

株主間契約と混同しやすいものとして、以下の2つがあります。

  • 定款
  • 種類株式

株主間契約との違いをそれぞれ確認していきましょう。

2-1. 定款

定款とは、会社を経営するうえでのルールをまとめた書類です。会社を設立する際に作成することが、会社法第26条によって義務付けられています。
また、記載する内容についても、会社法第27条によって、以下のように定めがあります。

  • 会社の目的
  • 商号
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額、あるいはその最低額
  • 発起人の氏名もしくは名称、住所

株主間契約は、あくまで当事者のあいだだけで結ばれるルールなので、法的な拘束力はありません。このため、株主間契約と定款の内容が競合する場合は、定款が優先されます。

2-2. 種類株式

株式には、普通株式と種類株式があります。種類株式とは、権利の内容を普通株式とは異なるものに設定できる株式です。種類株式には次の9種類があります。

  • 剰余金の配当
  • 残余財産の分配
  • 議決権の制限
  • 譲渡の制限
  • 取得請求権
  • 所得条項
  • 全部取得条項
  • 拒否権
  • 役員選任権

また、種類株式は定款によって定められるため、契約を締結している当事者間に限り効力が生じる株主間契約と異なり、あらゆる当事者に対して効力を生じます。
種類株式と株主間契約の違いは、株式が第三者の手に渡った際にも、その効果が残るか否かです。種類株式の権利は、株式そのものに付与されています。そのため、株式が第三者に譲渡された際には、付与された権利も一緒に譲渡されます。
一方で株主間契約は、株式ではなく、株主同士で締結され、当該株主に限って効力を生じるため、株式が第三者の手に渡った場合であっても、契約の効果が移ることはありません。

3. 株主間契約による3つのメリット

株主間契約のメリットとして、次の3点を紹介します。

  1. 手続きが簡単
  2. 柔軟なルール設定が可能
  3. 契約内容の公開が不要

3-1. 手続きが簡単

株主間契約は簡単な手続きで締結できる点がメリットです。定款を変更する場合、株主総会での決議を経なければなりません。しかし株主間契約であれば、当事者同士の合意と契約書の作成だけで、契約を成立させることができます。

3-2. 柔軟なルール設定が可能

株主間契約では、柔軟なルール設定が可能です。種類株式は株主間契約よりも優先されるルールを持った株式ですが、設定できるルールは前述の9種類しかありません。しかし株主間契約では内容に制限が無いため、細かな内容まで決めることができます。

3-3. 契約内容の公開が不要

内容を公開しなくても良い点も、株主間契約のメリットとして挙げられます。定款は誰でも閲覧することができますが、株主間契約であれば部外者に知られることがありません。そのため、外部に知られたくない内容を盛り込みたい場合も、株主間契約は適しています。

4. 株主間契約による2つのデメリット

続いて、株主間契約のデメリットとして次の2つを見ていきましょう。

  1. 法的な位置付け・効力が曖昧
  2. 柔軟なルール設定が可能
  3. 複数の契約締結による複雑化

4-1. 法的な位置付け・効力が曖昧

株主間契約は、定款や種類株式に比べて、法的な位置づけが弱い点がデメリットです。締結者に契約違反があった場合に当該違反行為を無効としたり、契約に従った状態を法的に実現するよう強制したりすることは当然にはできません。
契約違反があった場合に違約金を支払う旨支払う条項があれば、契約違反があれば違約金を請求することはもちろん可能です。しかし、違反への責任追及はこれに限られるため、「契約違反があっても違約金を払えば済む」という安易な考えを持つ株主が出る可能性があります。

4-2. 複数の契約締結による複雑化

株主の人数が増え、株主間契約の数も多くなってくると、すべての契約に違反することなく会社を運営することが徐々に難しくなっていきます。また、別々の株主とそれぞれ異なる株主間契約を結ぶことで、どちらか一方を履行できなくなってしまうといった事態に陥る恐れもあります。

5. 株主間契約で定められる項目の例

ここでは、株主間契約で定められる内容の例として、5つの項目を紹介します。

5-1. 出資比率に関する内容

株主間契約で、出資比率についての条項を定める場合があります。例えば「この会社の出資比率は、株主Aが70%、株主Bが30%とする」などの決まりごとを設定することも可能です。
また、会社が資金調達のために新株を発行する際に出資比率が大きく変わらないよう「新株が発行されるとき、株主はそれぞれの出資比率に応じて、優先的に新株を購入することができる」などのルールを設定することもあります。

5-2. 会社の事業に関する内容

会社の事業内容についても株主間契約で定めることがあります。定める内容としては、会社と株主の間で行う取引の内容や条件、従業員の派遣、資金調達や配当、株主に対しての情報提供などさまざまです。

5-3. 株式譲渡に関する内容

株主間契約では、株式の譲渡に関わる内容を規定することもあります。具体的には以下のようなものです。

  • 先買権:株主が、自身の持つ株式を譲渡しようとするとき、特定の相手や他の株主が、優先的に購入できるという権利です。不本意な相手に株式が渡ることを防ぐ目的があります。
  • コールオプション:特定の出来事が起こったとき、相手の持っている株式を自身に売り渡すよう、請求できる権利です。
  • プットオプション:特定の出来事が起こったとき、自身が持っている株式を相手が買い取るよう、請求できる権利です。
  • 売主追加請求権:ある株主が、第三者に株式を売却しようとしたとき、他の株主も同じ相手に同じ条件で株式を売却できる権利です。
  • 共同売渡請求権:ある株主が、第三者に株式を売却しようとしたとき、他の株主も同じ相手に同じ条件で株式を売却するよう求める権利です。
  • 譲渡制限:第三者への株式の譲渡を禁止する内容です。

5-4. ガバナンスに関する内容

取締役会や監査役を設置するかどうか、取締役や監査役をどのように選任・解任するのかといった、会社のガバナンスに関わる事柄も株主間契約で規定することがあります。また、少数株主も経営に意向を反映できるよう、株主間契約による拒否権条項が設けられる場合もあります。

5-5. 契約終了やデッドロックに関する内容

株主間契約は、当事者が株主ではなくなったときに契約終了となりますが、それ以外にも契約終了となる条件を、契約のなかに盛り込むことがあります。具体的には、契約違反があった場合や信用不安があった場合などに契約解除とするケースが多くあります。
また、デッドロックが発生した場合に、どのように解決するのかを明記するケースもあります。デッドロックとは、株主間の意見が食い違うことで、会社が意思決定をできなくなり、経営が止まってしまうことです。
解決方法としては、例えば「まずは株主間で協議を行い、当事者同士の協議で結論が出なければ第三者が介入、それでも解決しない場合はコールオプションやプットオプションによって株式を譲渡する」のようなものが考えられます。より強い措置としては、会社の解散まで盛り込まれるケースもあります。

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6. 株主間契約において注意すべきポイント

続いて、株主間契約において注意するべきポイントを確認していきます。

6-1. 株主間契約書には株主当事者のニーズを適切に盛り込む

株主間契約を締結するときは、当事者のニーズが反映される形になるよう気を配ることが重要です。契約書を作成する際には、ニーズに即した内容になっているか確認するようにしましょう。

6-2. 専門家に相談する

株主間契約は、株主ごとの事情に合わせた細かなルール設定ができますが、法律の面で問題が無いか、締結する前にチェックする必要があります。相談相手としては、弁護士や、M&Aの専門家などが良いでしょう。

7. まとめ

株主間契約について解説しました。株主間契約は、当事者だけで結ぶことができ、内容も柔軟に決めることができるメリットがあります。一方で法的な拘束力を当事者間でしか主張できず、いかなる当事者に対しても法的拘束力を主張できる定款や種類株式に定められたルールよりは制限的である点には留意しておきましょう。
M&Aキャピタルパートナーズでは、株主間契約についての相談も承っています。適切な契約に向けたサポートが可能ですので、株主間契約の進め方にお悩みの場合はぜひご連絡ください。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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