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産業再生法について
産業再生法は、過剰設備や過剰債務を抱えた企業の経営再建を支援するために制定された法律です。正式には産業活力再生特別措置法とされ、認定を受けた事業再構築計画に対して、税制や金融面の支援を講じる枠組みとして運用されました。
産業再生法と産業競争力強化法は、日本企業の再編や成長を支える法制度として理解しておきたいテーマです。制度の変遷を確認することで、事業再編やM&Aに関する支援措置がどのように整理されてきたのかを把握しやすくなります。
本記事では、産業再生法と産業競争力強化法の概要、M&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)への影響について解説します。
また、M&Aの意味や基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
産業再生法の概要
産業再生法とは?
産業再生法とは、産業活力再生特別措置法ともいわれ、過剰な設備や債務を抱えた企業の経営再建を支援する目的で、1999年8月6日に成立、10月1日に施行されました。
企業が生産性を高めるために不採算部門からの撤退など事業再構築計画を所管官庁に提出して認定を受ければ、設備廃棄に伴う欠損金の繰越期間の延長、登録免許税や不動産取得税の軽減、日本政策投資銀行の低利融資などの恩典が受けられます。
その後、2009年の改正によって、金融危機による急激な売上高の落ち込みで自己資本が減少し、融資に加え、資本増強が必要となった企業を対象とする公的資金による資本増強支援策が追加されました。例えば、仮に出資先企業が倒産した場合には、政府が日本政策金融公庫を通じ損失の5~8割程度を補填することになります。
また、2011年の改正で、認定を受けた事業再編計画に従って、自社の株式を対価とする公開買付けを実施する場合には、現物出資規制、有利発行規制等は適用されないこととする会社法の特例が創設されました。しかし、同特例は、株式公開買付(TOB)により対象会社株式を取得する場合に適用範囲が限定されており、それ以外の方法による買収(非上場会社の買収等)には利用できないものでした。こうした適用範囲の狭さもあったためか、同特例を用いた株式対価M&Aはあまり活用されませんでした。
以上のように、産業再生法は、生産性の向上等を図る事業者に対して、税制上の優遇や金融を受ける際の支援などを受けることができる制度などを定める法律ですが、再編の形や目的ごとに細分化された事業再編を支援する側面が強く、必ずしも使い勝手の良い法律とはいえませんでした。
そのため、産業再生法は、2014年1月20日に産業競争力強化法の施行に伴い廃止され、その後の産業競争力強化法では、事業再編の類型を大きく分けるなどして事業者の前向きかつ自由な取組を広く支援できるような内容になっています。
産業競争力強化法とは
産業競争力強化法は、日本の経済を再興すべく、日本産業を中長期にわたる低迷から脱却させ、持続的発展の軌道に乗せるため、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正し、我が国の産業競争力を強化するためのキードライバーとしての役割を果たすものとして、2013年12月4日に成立、2014年1月20日に施行されました。
具体的には、新たな事業活動の創造につながる規制改革を推進するための措置、ベンチャー投資や事業再編の円滑化等の産業の新陳代謝を活性化させるための措置、地域中小企業の創業・事業再生の支援のための措置等を講じました。
その後、日本経済の成長軌道を確かなものとし、産業の発展を持続させ、企業の経営基盤を強化するため、2018年に改正を行いました。あわせて、IoT、ビッグデータ、AI等の新たな情報技術の社会実装が世界規模で拡大する中、こうした変化に対応し、生産性向上を短期間で実現するため、生産性向上特別措置法を制定しました。
この改正では、長期・大規模の成長投資を中心としたリスクマネー供給を強化するための措置、事業再編の推進のための措置、事業者の技術等の情報の適切な管理を促進するための措置等を講じました。また、生産性向上特別措置法では、革新的な技術やビジネスモデルの実証を可能とするための措置(規制のサンドボックス制度)、データを収集・共有・連携する事業者の取組を促進するため措置、中小企業の生産性向上のための先端設備等の設備投資の促進を支援する措置等を講じました。
また、新型コロナウイルス感染症の影響、急激な人口の減少等の短期及び中長期の経済社会情勢の変化に適切に対応して、「新たな日常」に向けた取組を先取りし、長期視点に立った企業の変革を後押しするため、2021年に改正を行いました。
この改正では、「グリーン社会」への転換、「デジタル化」への対応、「新たな日常」に向けた事業再構築等を促進するため、カーボンニュートラル実現、デジタル技術を活用した全社レベルのビジネスモデルの変革(DX)及び「新たな日常」に向けた事業再構築を促進するための措置、バーチャルオンリー株主総会実現のための措置、ベンチャー企業の成長支援のための措置、事業再編の推進のための措置、事業再生の円滑化のための措置等を講じました。
あわせて、生産性向上特別措置法を廃止し、同法に措置されていた規制のサンドボックス制度を産業競争力強化法に、中小企業の生産性向上のための先端設備等の設備投資の促進を支援する措置を中小企業等経営強化法に移管しました。
産業競争力強化法の改正によるM&Aへの影響
M&Aへの影響については、主に2018年の改正が挙げられます。この改正により、株式を対価とするM&Aを利用しやすくするための会社法の特例措置や税制上の措置が講じられることとなりました。現金ではなく、株式を対価とするM&Aは、資金の準備の必要がないため、M&Aを行うことが容易となります。特に資金的な余裕はないが、将来の成長が期待されている新興企業では、その成長を期待した高い株価を利用して大規模なM&Aを行うことも可能となります。また、被買収会社の株主にとっては、買収後に買収会社の株式を保有することになり、買収後も買収会社や被買収会社の成長や業績向上による利益を享受することができるというメリットもあります。
このように株式を対価とするM&Aは、欧米では一般的な手法と認識されています。そこでこの株式を対価とするM&Aに関して、2011年に産業活力再生特別措置法が改正され、株式公開買付(TOB)を用いた株式を対価とするM&Aについては、会社法における現物出資規制や有利発行規制等が緩和されましたが、上述のように要件が厳しいこともあり、あまり活用されることはありませんでした。
しかし、2018年の産業競争力強化法の改正によって、株式公開買付(TOB)以外の方法を用いた株式を対価とするM&Aについても、会社法上の有利発行規制等の緩和の対象となりました。
まとめ
産業再生法は企業再建を支える制度として出発し、その後は産業競争力強化法へと発展することで、事業再編や投資促進をより広く支援する枠組みに再整理されました。M&Aの実務では、特に2018年改正によって株式対価M&Aの活用余地が広がった点を押さえることが重要です。法制度の変遷を理解しておくことで、どの再編手法が自社に適しているかを整理しやすくなります。制度改正の影響を踏まえてM&Aを検討する際は、法務や実務の論点まで含めて専門家の支援を活用しながら進めることが望ましいでしょう。
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よくある質問
- 産業再生法とは何ですか?
- 過剰な設備や債務を抱えた企業の経営再建を支援するために、1999年8月6日に成立し、10月1日に施行された法律です。正式には産業活力再生特別措置法とされ、認定を受けた事業再構築計画に対して税制や金融面の支援が講じられました。
- 産業再生法ではどのような支援が受けられたのですか?
- 不採算部門からの撤退などを含む事業再構築計画の認定を受けると、設備廃棄に伴う欠損金の繰越期間延長、登録免許税や不動産取得税の軽減、日本政策投資銀行の低利融資などの恩典を受けることができました。
- 産業再生法は現在も有効ですか?
- 現在は有効ではありません。2014年1月20日に産業競争力強化法の施行に伴って廃止され、その後は事業再編の類型を大きく分けるなど、事業者の前向きかつ自由な取組をより広く支援する枠組みに移行しました。
- 産業競争力強化法とは何ですか?
- 日本産業を中長期の低迷から脱却させ、持続的発展の軌道に乗せるために、2013年12月4日に成立し、2014年1月20日に施行された法律です。規制改革、ベンチャー投資、事業再編、事業再生などを支援する枠組みを整えています。
- 産業再生法と産業競争力強化法の違いは何ですか?
- 産業再生法は過剰設備や債務を抱えた企業の再建支援に重心がありました。一方、産業競争力強化法は、事業再編だけでなく規制改革、投資促進、デジタル化、事業再構築などを含めて、より広く産業競争力の強化を支援する法律です。
- 2018年改正はM&Aにどのような影響を与えましたか?
- 2018年の産業競争力強化法改正により、株式を対価とするM&Aを利用しやすくするための会社法上の特例措置や税制上の措置が講じられました。これにより、株式公開買付以外の方法を用いた株式対価M&Aについても、会社法上の有利発行規制等の緩和対象が広がりました。
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