ペーパーカンパニーとは? 設立目的やリスクについて解説

ペーパーカンパニーとは?設立目的やリスクについて解説のメインビジュアルイメージ

更新日


ペーパーカンパニーについて

ペーパーカンパニー」と聞くと、どこか後ろ暗い印象を持たれる方も少なくありません。これは、実態の見えにくい企業形態に対する不信感や、過去の一部事例が大きく取り上げられてきた影響によるものと考えられます。
しかし実際には、ペーパーカンパニーは節税や資産管理、事業リスクの切り離しなど、企業経営上の目的に応じて正当かつ有効に活用される場面も多く存在します。重要なのは、その設立目的と運用実態により、法的な評価が大きく異なるという点です。
また、「SPC(特別目的会社)」と混同されることがありますが、両者は法的な根拠や設立目的が異なります。SPCは特定事業のために設計された合法的な法人形態であり、特に不動産やM&Aの分野でよく活用されます。

⇒SPCについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください

本記事では、「ペーパーカンパニー」の基本的な概要から、具体的な活用方法、そして注意すべきリスクまでを網羅的に解説していきます。

このページのポイント

~ペーパーカンパニーとは?~

登記上存在しながら実態のない法人であるペーパーカンパニーは、節税や資産管理の目的で利用されますが、使用方法によっては重大な法的リスクを伴います。信用調査や実態確認を通じて、慎重な運用と取引判断が求められます。

無料で相談する

関連タグ

  • #M&A
  • #M&A関連記事
  • #M&A用語集
  • #ペーパーカンパニーとは?

~その他 M&Aについて~

ペーパーカンパニーとは

ペーパーカンパニーとは、登記上は存在しているものの、実態として事業活動を行っていない法人のことです。明確な法的定義は無いため、一般的に使われる俗称ではありますが、「ダミー会社」や「ゴースト会社」と呼ばれることもあります。
ペーパーカンパニーの設立目的はさまざまです。節税や資産管理、M&Aスキームの一環として合法的に使われることもあれば、詐欺やマネーロンダリングといった違法行為に悪用されるケースもあります。
ペーパーカンパニーを設立すること自体は決して違法ではありませんが、その活用方法によっては違法行為や脱税に該当すると見なされるリスクがあるため、設立の際には、法令等に抵触しないように注意深く進めて行かなければなりません。

ペーパーカンパニーを設立する目的

ペーパーカンパニーは、単なる「存在しない会社」ではなく、明確な目的をもって設立されるケースもあります。合法的な活用方法としては、主に以下が挙げられます。

一つずつ解説します。

利益分散による法人税負担軽減のため

法人税の負担軽減は、ペーパーカンパニーを設立する主要な目的の一つです。本体の企業とは別に法人を設立し、利益を分散させることで、課税所得を調整し、全体としての法人税率を抑えることが可能になります。
また、課税所得を調整し、消費税の免税事業者制度を利用すれば、新設法人を通じて消費税の納税を回避することも可能です。さらに、法人税率が低いタックスヘイブン(租税回避地)に設立することで、より大きな節税効果を狙うケースも存在します。
ただし、これらのスキームは形式上合法であっても、税務当局から「実体の無い会社」と判断されれば、脱税とみなされるリスクもあるため、十分に検討したうえで運用するようにしなければなりません。

交際費枠拡大のため

ペーパーカンパニーを設立すれば、損金として計上できる交際費の枠を拡大することが可能です。資本金1億円以下の中小企業であれば、年間800万円までの交際費を損金に算入できるため、この制度を活用して法人を分ける場合があります。
例えば、グループ内に複数の法人を設立すれば、それぞれの会社で交際費の損金枠を個別に使えるため、他の利益と相殺することにより、全体としての課税所得を引き下げることが可能です。
しかし、実態の無い法人で経費を操作したり、不自然な費用配分を行ったりした場合は、税務調査で否認される可能性があります。過度な節税はかえって追徴課税などのリスクを高めるため、こうした点には注意しなければなりません。

不動産売却損による利益の減額のため

価値が下がった不動産をペーパーカンパニーに売却し、その売却損を計上すれば、課税所得を減らすことができます。このスキームを活用すると、売却損と他の利益が相殺されるため、法人税の負担を軽くすることが可能です。
ただし、実態の無い取引や意図的な損失操作とみなされるような過度な計上は、税務当局から否認されるリスクがあります。そのため、節税効果を目的とする場合は、適切な取引と実態に基づいた取引を行わなければなりません。
なお、上記に関するリスクについては、後述する「ペーパーカンパニーに関するリスク」で詳しく解説します。

ペーパーカンパニーの種類

ペーパーカンパニーと一口に言っても、その性質や目的によっていくつかのタイプに分類されます。ここではその代表例として、法的リスクの高いものも含めた以下の3種類を紹介します。

それぞれ見ていきましょう。

休眠会社・ゴースト会社

休眠会社とは、登記上は存在していても、実際の事業活動は行っていない法人のことです。ゴースト会社(幽霊会社)も同様で、法人格は維持されているものの、実態の無い状態が続いている会社のことです。
これらの会社は、第三者に買収されて脱税や資金洗浄、粉飾決算などの不正目的に使われるリスクがあるため、注意しなければなりません。ただし、法令に基づいて休眠の届出を行い、税務申告や納税義務を果たしていれば、違法性はありません。
なお、最終登記から12年を超えて一度も登記がなされていない株式会社は、法務局から「みなし解散」と判断され、職権によって解散登記が行われる可能性があるため、管理には十分な注意が必要です。

関連記事
休眠会社とは?
~メリットやデメリットと手続き方法を解説~

ダミー会社

ダミー会社とは、実態のある事業活動を行うことなく、詐欺や悪徳商法などの違法行為を隠す目的で設立される法人のことです。犯罪組織や不正な取引グループによって利用されるケースが多く、外見上は通常の法人として登記されていても、その実態は架空または形式的なものに過ぎません。
こうした会社は、資金の流れを隠す隠れ蓑や、詐取した資産の受け皿として使われることがあり、ペーパーカンパニーのなかでも特にリスクが高い形態といえます。意図的な偽装や脱法行為が発覚した場合は、設立者や関係者には、刑事責任や行政処分が科される可能性があります。

特別目的会社(SPC)

特別目的会社(Special Purpose Company/SPC)とは、特定の事業やプロジェクトを実行するために設立される法人のことです。このSPCは、主に、不動産投資、資産の証券化、M&A、資金調達といった場面で活用されています。
親会社などから切り出した特定の資産を移管し、その資産の保有・運用・取引を行うことで、企業全体の財務リスクから切り離す「倒産隔離」を可能にする役割を担うのがSPCです。
こうしたリスクの分離や透明性の確保を目的として設立されるSPCは、投資家からの資金を集めやすくするなどの利点もあるため、適法かつ合理的な手段として幅広く用いられています。

関連記事
SPC(特別目的会社)とは?
~設立目的や主なスキーム図、活用事例を解説~

ペーパーカンパニーを作る方法

ペーパーカンパニーは、形式上は一般的な法人と同じであるため、その作り方も基本的に一般的な法人の設立手続きと同じです。したがって、設立の流れも一般的な法人と同様で、以下のようになります。

ステップ 概要
会社の基本事項を決定 商号、事業目的、本店所在地、資本金、役員構成などを明確にする
会社印鑑の作成 実印、銀行印、角印などを準備し、法的手続きに備える
定款を作成し、公証役場で認証 定款に会社の基本情報を記載し、認証により法的効力を持たせる
資本金の払い込み 発起人名義の銀行口座へ資本金を入金し、払い込み証明を取得
登記申請書類の作成・提出 法務局へ登記を申請し、法人として正式に設立される
税務署・自治体への届出 法人設立届出書、青色申告承認申請書などを提出
会社名義の銀行口座を開設 事業資金の管理や対外取引のために口座を開設
社会保険・労働保険の加入/許認可取得(必要に応じて) 従業員がいる場合や、特定事業を行う場合に必要

ただし、上述のようにペーパーカンパニーの設立や運営には、法的リスクや税務上の問題が生じる可能性があります。したがって、設立にあたっては専門家に相談し、必ず適切な手続きを行うようにしなければなりません。

ペーパーカンパニーに関するリスク

ペーパーカンパニーの設立や活用には、税務や法務におけるさまざまなリスクが伴います。そこで本章では、設立時や取引時に起こりうる代表的なリスクを整理して解説します。

ペーパーカンパニー設立におけるリスク

ペーパーカンパニーを設立する際には、税務的なリスク設立のコストを負担しなければなりません。ここでは、そのなかでも特に代表的なものを2つ紹介します。

税金逃れを疑われる可能性がある

ペーパーカンパニーを利用して節税や資金管理を行おうとする場合、税務当局から租税回避行為とみなされ、厳しくチェックされる恐れがあります。
特に、実態の無い会社を通じて取引を行うようなケースでは、調査対象として目をつけられやすくなるでしょう。税務調査でこうした取引が発覚した場合、経費として否認され、多額の追徴課税が課されてしまいます。
また、海外のペーパーカンパニーを利用している場合には、タックスヘイブン対策税制の対象となり、海外法人の所得を国内法人の所得と合算して課税される可能性があります。
もし、意図的な所得隠しや形式だけの取引と認定されれば、「脱税」と判断され、法人だけでなく関係者個人も刑事罰や重加算税などの対象となりかねません。近年は、国際的に規制が強化されているため、注意が必要です。

法人の管理コストが発生する

ペーパーカンパニーであっても、法人格を維持する以上、一定の管理コストが発生します
例えば、法人住民税の均等割(年間で約7万円)は、たとえ休眠状態であっても原則として支払う必要があります。
それだけでなく、決算申告のための税理士報酬も毎年発生し、本店所在地にバーチャルオフィスなどを設定している場合は、月々の賃料も負担しなければなりません。
また、役員改選に関する登記手続きを怠ると、12年間登記がなかった法人は「みなし解散」となるため、最終的には法務局によって自動的に解散手続きが行われてしまいます。
そのため、節税目的での設立であっても、法人維持の手間とコストは軽視できません。

ペーパーカンパニーとの取引によるリスク

形式上は問題なさそうに見える法人であっても、実はペーパーカンパニーであった場合、その取引には多くのリスクが潜んでいます。ここでは特に注意すべきポイントを2つ紹介します。

企業の実態を把握しづらい

ペーパーカンパニーは実質的に業務を行っていないため、取引先としての信用性を見極めるのは非常に困難です。帳簿や登記簿上では存在していても、実際のオフィスや従業員が存在しないことも多く、財務状況や業務実態を正確に把握することはできません。こうした状況では、資金の流れが不透明になったり、契約上の責任や債権回収のリスクが高まったりします。また、信用調査が不十分なままで取引を開始すると、後になって問題が顕在化する恐れがあるため、十分な事前確認を行わなければなりません。

意図せず違法行為へ関与してしまう恐れがある

ペーパーカンパニーは、マネーロンダリングや脱税、架空取引による粉飾決算など、違法行為の温床として利用されることがあります。こうした会社と知らずに取引を行ってしまった結果、違法スキームに巻き込まれてしまうリスクも無視できません。
もし相手先の法令違反が発覚すれば、取引企業側も共犯関係にあるとみなされ、刑事責任や行政処分を受ける可能性があります。特に、資金の流れや契約の経緯に不自然な点がある場合には、注意が必要です。
こうしたリスク回避のためには、契約前に企業の実態調査や代表者情報の確認などを行い、高い与信管理を徹底することが重要です。

ペーパーカンパニーに関するポイント

ペーパーカンパニーを設立・活用する際や取引を行う際には、法的リスクや信頼性の問題を回避するために、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、特に注意すべきポイントを2つ紹介します。

設立する際のポイント

ペーパーカンパニーを設立する際は、まずその目的や使用方法を明確にしておくことが重要です。資産管理や投資スキーム、M&Aなど、正当なビジネス目的がある場合は、将来的なトラブルや誤解を避けるためにも、記録を残しておきましょう。
一方で、節税や租税回避を主な目的とした設立は、税務当局から厳しく監視される恐れがあるため、適切な税務処理を必ず行わなければなりません。また、ペーパーカンパニーであっても、最低限の法人住民税や税務申告の費用など、維持にかかるコストは無視できません。それ以外にも、最近では銀行口座の開設で難航するケースも多いため、資金管理に影響が出る可能性もあります。
こうしたリスクや負担を回避するためには、事前に税理士や弁護士などの専門家に相談し、目的に即した適切な法人形態を検討すると良いでしょう。

取引する際のポイント

ペーパーカンパニーとの取引では、事業実態や財務状況が不透明なケースも多いため、事前の調査とリスク回避策が欠かせません。まずは、登記情報やホームページなどを確認し、代表者名や所在地、連絡先などの基本情報が公開されているかどうかをチェックしておきましょう。

また、以下のような観点から信用性をチェックしてみるのも効果的です。

  • 決算書や納税証明書を入手し、納税状況や財務内容に不審な点が無いか確認する
  • 取引履歴を調査し、実際に商取引が行われていたか、関連企業との関係性を明確にする
  • 信用調査会社のレポートを活用して、経営状態や反社チェックを含む健全性を確認する

長期にわたる取引を予定している場合は、経営体制やコンプライアンス状況の変化を継続的にモニタリングしてみるのもおすすめです。さらに、取引条件や決済方法を明文化して契約書に明記し、支払いは現金ではなく銀行振込など記録が残る手段を用いれば、万が一のリスクも最小限に抑えられるでしょう。

まとめ

ペーパーカンパニーは、合法的な枠組みで適切に活用すれば、節税やリスク分散といった経営戦略の一環として有効に機能します。しかしながら、実態のない会社を安易に設立・運用した場合、税務調査や信用失墜といった深刻なリスクを招く可能性があるため、常に法令を遵守し、専門家と連携して慎重に対応することが重要です。
信頼性と透明性を確保したうえで、適正な目的のもとで活用することが、企業価値の向上に繋がると言えるでしょう。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬がすべて無料、簡易の企業価値算定(レポート)も無料で作成。秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。



よくある質問

  • ペーパーカンパニーとは何ですか?
  • ペーパーカンパニーとは、登記上は法人として存在するものの、実際には事業活動を行っていない会社のことです。
  • ペーパーカンパニーを設立する目的には何がありますか?
  • 節税や資産管理、交際費枠の拡大、不動産売却損の活用などが主な目的です。
  • ペーパーカンパニーに関するリスクは何ですか?
  • 税務調査の対象になる可能性や、違法行為への関与、管理コストの発生などが代表的なリスクです。
  • 特別目的会社(SPC)とペーパーカンパニーは違いますか?
  • SPCは特定事業のために設立される合法的な法人であり、明確な活動目的を持つ点で単なるペーパーカンパニーとは異なります。
  • ペーパーカンパニーと取引する際の注意点は?
  • 実態調査や財務確認、反社チェックを徹底することが重要です。契約内容を明文化し、記録が残る決済手段を利用することが推奨されます。

ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社執行役員 コーポレートアドバイザリー部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

詳細プロフィールはこちら

M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。