個人で会社を買う方法は? メリットやデメリット、手続きの流れを詳しく解説

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個人でも会社を買うことは可能ですが、事業監査・企業価値評価を経て適切な手続きを踏む必要があり、専門家の支援は欠かせません。
一方で、ひとたび会社の買収に成功すると、いちから起業した場合に伴う仕組み化・効率化の手間や許認可を通すための手続きが不要となり、スムーズかつ迅速に成長目標を達成できるメリットがあります。
そこで本記事では、個人で企業買収を行うメリット・デメリットのほか、手続きの流れなどについて、わかりやすく解説します。

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1. 個人でも会社を買うことはできる

近年では、大企業や中小企業だけでなく、個人でも企業を買収する事例が増えてきました。増加の背景には、後継者問題の解決策としてM&Aを選択する売り手の増加や、小規模なM&Aを専門に扱う仲介会社やマッチングサイトの出現などがあります。
個人で買える企業の目安は、300万円から500万円程度です。主に従業員数が少ない会社や、個人経営の会社が該当します。

2. 個人で会社を買うメリット

個人で会社を買うメリットは、事業立ち上げや事業規模の拡大がスムーズに進むことです。企業価値を高めて売却益を得る、経営者として関わる間も不労所得を手に入れるなど、利益の面でも期待できます。

2-1. 事業立ち上げのスタートを切りやすい

個人で起業して経営状態を軌道に乗せるには、コストと時間がそれなりにかかります。また、投下した資本の回収に予想以上の時間がかかってしまうなど、失敗のリスクからも目を逸らせません。
会社を買えば、リスクやコストを抑え、スピーディに事業を立ち上げることができます。既に、ある程度まで仕組み化・効率化されている組織を手に入れられるため、取引先や顧客を引き継ぐことも可能です。

2-2. 許認可が必要なビジネスに参入できる

許認可が必要なビジネスをすぐに開始したい場合、これから会社を興して申請するとなると、時間を要します。許認可を持っている会社を買えば、そのまま引き継ぐことができるため、タイムロスがありません。
許認可が必要な業種としては、運送業や旅行業、一定の規模以上の建設業などが挙げられます。なかでも特に取得条件が厳しい事業を行いたい場合は、既に事業を行っている企業を買うのが有効です。

2-3. 短期間での事業規模拡大が期待できる

自分自身で事業を始めた場合、ゼロから規模を拡大させるのは難しいと言わざるを得ません。会社を買うことで、売り手企業が有する設備・資源・許認可・仕入れ先などの必要最低限の資産や、ブランド力、お得意様その他の関係者とのつながりを引き継ぐことができます。
上記のような理由から、短期間での事業規模の拡大が可能であり、スケールメリットの享受も期待できるでしょう。

2-4. 既存事業の拡大にもつながる

既に複数の事業を行っている場合には、既存事業の拡大にもつながる可能性があります。会社を買うことで、売り手の技術や人材の引継ぎなどによりシナジー効果が発揮され、事業の成長や効率化につながるかもしれません。
また、買収した企業の販路を既存事業にも活かすことで、新たなビジネスチャンスの創出も期待できます。

2-5. 企業が成長したら高額な売値がつく可能性がある

個人で会社を買収して育成できれば、買収時の価格よりも高値で売却することによる差益が期待できます。成長途中の会社を買収対象とすれば、買い手の有するスキルやノウハウを活かし、成長を概ねコントロールできるでしょう。
成長に直接関与することで、企業価値が高まり、売却の際に多額の資金を得られれば、これ以上のことはありません。そうはいっても、必ず成功する・常に成長させられるとは限らないため、撤退の基準は明確にしておいたほうが良いでしょう。

2-6. 不労所得を期待できる

会社の買収により役員に就任すれば、株式の配当や役員報酬による実質的な不労所得が期待できます。もっとも、役員報酬を得るには、原則として経営に関与し、労務を提供しなければならない点には留意すべきです。
しかしながら、既に利益を得る仕組みができあがっている場合や、従業員がある程度働いている会社の場合には、買収した人の労務提供はそれほど必要ではありません。さらなる仕組み化と効率化を続けることによって、不労所得は十分に期待できます。

3. 個人で会社を買うデメリット

個人で企業買収する際は、手続きのミスや、リスクごと承継してしまう可能性に注意すべきです。既存事業を買収する以上は、買収した事業をメインとして運営していく必要があります。そのうえ、体制が変わることで、人材離れが起きる可能性にも留意しなければなりません。

3-1. 手続きが複雑である

会社の買収にあたっては、適正な企業価値の評価方法や事業経営、会社法、M&A実施の方法など、多方面の知識が不可欠です。これらの知識が乏しい場合、手続きが複雑になり、交渉がなかなか進まないケースが多いのが現状です。
自分で企業買収に関する情報を仕入れても、最終的に誤りがあると、トラブルに発展する可能性は否めません。買収に際しては、金融機関や専門の仲介業者に依頼することを推奨します。

3-2. リスクを引き継ぐ可能性がある

会社を買う場合には、思いもよらぬリスクを引き継ぐ恐れがあります。よくあるのは、簿外債務(帳簿や会計資料には記載されていない債務)です。企業と共に債務を弁済する義務も承継することになり、支払いを求められる可能性が生じます。
ほかには公的機関や地域住民とのトラブル、取引先との訴訟リスク、解決すべき労働問題などが潜んでいる可能性もあります。そのため、徹底したデューデリジェンス(買収監査)を行い、開示情報が真実だと売り手に保証してもらう「表明保証」をつけておくことが大切です。

3-3. 事業が制限される

会社を買って新規事業を立ち上げる場合、売り手会社の事業とまったく関係の無いビジネスを始めることはできません。購入した会社で行ってきた事業を軸にして、拡大や展開を進めることになります。
会社の買収のメリットは、スピーディに事業を立ち上げられる点ですが、制約も存在します。ときには、買い手が望む事業展開を妨げる要因になってしまう可能性があることを理解しておきましょう。

3-4. 従業員の離職や取引先が離れるリスクがある

会社の買収では、従業員や取引先も同時に引き継ぐのが一般的ですが、それぞれの意思により、買収を機に離れてしまうリスクはゼロではありません。
客観的に見れば良い意味での変化だったとしても、経営者が変わることで不安が生じたり、やり方が変わることで不満を抱いたりする可能性は否定できないでしょう。
特に、従来とは異なる新たな経営方針の導入は、現場に混乱を招きがちです。一時的であったとしても、業務品質の低下を招きやすく、従業員の離職や取引先が離れるリスクにもつながります。

4. 個人で会社を買う流れ

個人で会社を買う場合や、企業買収を行う際は、最初にしっかりと目的と条件を定めておくことが大切です。
手続きについては、秘密保持契約や基本合意書を交わしながら、慎重にリスクと譲渡価格を見極めていきます。これらのプロセスは、M&Aの支援・仲介に関わる専門家を通して行うことが一般的です。

4-1. 会社を買収する目的や条件を明確にする

個人で会社を買う場合、まずは目的や条件、戦略や予算を明確に定めましょう
企業買収の過程で問題が発生したときに、当初の目的や条件を改めて見直すことで、トラブルに対処しやすくなるためです。追加の対応を無用に増やすことなく、効率的に買収を進められるメリットもあります。

4-2. 買収する企業を探す

会社を買う目的や条件を決めたら、それに見合う相手を探しましょう。自分で相手を探す場合は、マッチングサービスや仲介会社、支援機関を利用するのが一般的です。よく取引する金融機関や、税理士や公認会計士が紹介してくれるケースもあります。
なお、中小企業庁による2021年の調査では、買い手として意向のある人の45%※が「専門仲介機関に探索を依頼する」と回答しています。(※複数回答)

参考:第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用|2021年版中小企業白書│中小企業庁

4-3. 秘密保持契約を結んで情報交換をする

買収先の候補が決まれば、秘密保持契約(NDA)を締結し、情報交換を行いましょう。
企業の概要や組織だけでなく、財務データや事業計画などを入手して分析します。最初に決めた目的などに見合っているかを確かめ、買収を希望するか慎重に検討します。

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4-4. トップ面談を行う

買収に向けてある程度意思が固まったら、売り手側のトップである代表取締役などと面談を行い、直接交渉します。売り手会社の文化や経営理念、戦略、今後の計画などをヒアリングしながら、買い手側は今後の方向性や戦略について開示していきます。
売り手側にとっては、買い手に企業を任せられるかどうかを判断する重要なステップです。買い手側は、会社の持つポテンシャルをトップから直接聞き取りつつも、一方的に要望や質問をぶつけることなく、しっかりとコミュニケーションをとりましょう。

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4-5. 基本合意書を締結する

買収先との交渉がまとまると、基本合意書を交わします。基本合意書には買収に関する法的な拘束力は無いものの、取引形態・譲渡価格・今後のスケジュールなどを定める、最終契約に向けた方向性を明記した大切な書類です。
もっとも、譲渡価格に関しては、ある程度の幅を持たせて記載するケースも多々あります。デューデリジェンス次第で最終価格が変わることを折り込んで、契約金額の変更の可能性ごと、合意書内に盛り込みます。

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4-6. デューデリジェンスとバリュエーションを実施する

買収するか否か、譲渡価格をどうするかを決めるための最も大切なステップは、デューデリジェンス(買収監査)とバリュエーション(企業価値評価)です。
デューデリジェンスが、組織や財務・法務・ビジネスの構造や成長性を評価する対応であるのに対し、バリュエーションは、純資産や負債などから株価を評価する対応です。

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4-7. 最終条件を調整して最終契約を行う

デューデリジェンスおよびバリュエーションの結果に基づいて、買収の最終条件を調整します。この際、譲渡価格だけでなく、契約書の条件を細かく決めていく作業が必要です。
最終契約書には、クロージング前後に果たすべき義務である「コベナンツ(誓約条項)」や、発見されたこと以外にリスクが無いと表明・保証する「表明保証」も含まれます。ほかには、一定期間の「競業避止義務」なども挙げられます。

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5. 個人で会社を買う際のポイント

個人で会社を買うときは、自分のリソースをしっかり把握しておきましょう。
買いたい企業の調査も、買収の具体的なプロセスに移る前から十分に行っておきたいものです。買い手企業の人材ともコミュニケーションを図るなどして、買った後に後悔する失敗は避けなければなりません。

5-1. 自身のリソースを把握して会社を買う

個人が会社を買うにあたっては、自分がどこまでリソースを割けるのかを把握しておかなければなりません。お金だけでなく、手続きにかかる時間や、売り手企業との交渉を取りまとめるための精神的リソースも考慮に入れましょう。
自分のリソースを把握しておかなければ、購入する会社の規模を適切に判断できなかったり、購入の目的に沿った手続きや投下する資本の見通しが立たなかったりします。

5-2. デューデリジェンスを適切に行い簿外債務などを把握する

デューデリジェンスでは、未払いの残業代や債務保証といった簿外債務をはじめとする、目に見えないリスクをしっかりと把握する必要があります。万が一リスクに気付かないまま買収を実行すると、債務や訴訟の当事者などとして逃れることができません。
会社が抱える潜在的なリスクには、専門家でないと見極められないものが多数含まれます。買収後に問題点に気付くことが無いよう、案件の細部に至るまで、プロに徹底してチェックしてもらうと良いでしょう。

5-3. 買いたい会社の事前調査を行う

企業買収のプロセスに入る前から、買いたいと思う会社の事前調査を行うことも大切です。展開する事業や、会社の立地条件、取引先・周辺住民・退職者などの評判等をリサーチしておくことで、トップ面談やデューデリジェンスの際に確認したい事項を絞り込むことができます。
また、事業内容について理解を深めておくことで、買収成立後に「自分の望む事業と違った」と、後悔するような失敗を防ぐことが可能です。

5-4. 人材流出に気をつける

会社をせっかく買収しても、従業員の退職が相次ぐなどして人材がいなくなってしまうと元も子もありません。人に属する事業のスキルやノウハウが失われ、本来の目的を果たせずに終わる可能性が高いといえます。
そのため、退職してほしくない人材には、買収後の事業計画を丁寧に説明し、理解してもらう必要があるでしょう。従業員へ買収について伝えるタイミングについても、先に気取られないようにしつつ、十分な配慮が必要です。

5-5. 買収後を見越して準備を行う

会社は買うこと自体が目的ではなく、その後の成長が肝心です。相当に価値の高い会社を買ったとしても、事前に作った万全な事業計画は欠かせません。
また、これまで個人として収益を得てきた人が会社経営者となるうえでは、財務・会計の知識や経営学、経営戦略といった知識を身につけておくことも大切です。これらの知識は買収の交渉でも問われるため、あらかじめ学びを深めて準備をしておきましょう。

5-6. 専門家に相談する

例えば、事業承継や起業のために会社を個人で買う場合、専門的な知識や経験がなければ、実現はほとんど不可能に近いといえるほど困難です。細部まで相談でき、かつ買収に必要な複数分野のノウハウを持ったプロの支援が欠かせません。
自己判断で会社の購入を決めず、まずは、M&Aの仲介・支援を行う専門家に相談しましょう。

6. まとめ

個人でも、適切な監査・調査と手続きを踏めば、会社を買うことができます。買収が成功すれば、自分で起業するよりも早く事業をスタートでき、許認可ビジネスや、得意先でネットワークができているビジネスにも容易に参画が可能です。
一方で、買収にあたっての手続きは複雑であり、思ったほどの成果を得られないケースもあります。人材流出や想定外の簿外債務など、リスクを引き継いでしまう失敗も考えられるでしょう。専門家の協力のもと、目的と条件に合った企業を探し、スムーズなプロセスを踏むことが成功へのカギとなります。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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