M&Aマッチングサイトとは? 種類や選び方のポイント、利用するメリット・デメリットを解説

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M&Aマッチングサイトは、M&Aの相手企業をインターネット上で探せるサービスです。業種や地域を問わず、幅広い案件にアクセスでき、自社のニーズに合った相手が見つけやすくなります。特に、事業承継が難航している場合や、新規事業の拡大・起業を検討している企業にとっては、有効な手段の一つです。
本記事では、概要や種類、選ぶポイントや利用の流れを詳しく解説します。メリット・デメリット、注意点も紹介しますので、M&Aを検討中の経営者様は最後までご参照ください。

このページのポイント

~M&Aマッチングサイトとは?~

M&Aの相手企業をインターネット上で探せるサービスで、業種や地域を問わず、幅広い案件にアクセスでき、自社のニーズに合った相手が見つけやすくなる。特に、事業承継が難航している場合や、新規事業の拡大・起業を検討している企業にとっては、有効な手段の一つであるが、登録していない企業とは出会えないことや、マッチングサイト毎のサポート体制の差、情報漏洩のリスクなどを理解しておくことが重要。

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1. M&Aマッチングサイトとは

M&Aマッチングサイトは、インターネット上のシステムを介して、M&Aの売り手(譲渡企業)と買い手(譲受企業)を引き合わせるサービスです。業種や希望条件に応じて、最適なビジネス相手を見つけられるため、事業承継や事業拡大などの場面で活用されています。

1-1. M&Aマッチングサイトは売り手と買い手のマッチングサービスのこと

M&Aマッチングサイトとは、Web上でM&Aの売り手と買い手を結びつけるサービスのことです。売り手と買い手はそれぞれ、業種や希望条件などを登録し、自分たちのニーズにマッチする相手を検索できます。
これにより、海外や遠方を含めた幅広い地域の多様な案件を閲覧でき、希望に合った相手が見つけやすくなるという特徴が見られます。

1-2. M&Aマッチングサイトが活用されるケース

企業や個人事業主が、M&Aマッチングサイトを活用する背景には、事業承継や事業拡大を想定したケースがあります。

事業承継が難航しているケース

M&Aマッチングサイトが活用される場面の一つとして、事業承継に難航しており、後継者を探しているケースが考えられます。
近年では経営者の高齢化が進んでおり、2025年までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業経営者約245万人のうち、約半数が後継者不在になると見込まれています。

※参考:中小 M&Aガイドライン(第2版)第三者への円滑な事業引継ぎに向けて|中小企業庁

後継者が見つからず廃業すれば、多額の廃業費用が発生するだけではありません。培ってきた技術力や人材の損失のほか、地域経済や日本経済への悪影響が及ぶでしょう。
このような状況を避けるために、後継者を見つけ、事業の継続を実現する目的でM&Aマッチングサイトが活用されるケースがあります。

事業拡大・起業を検討しているケース

事業拡大や起業を検討している場合にも、M&Aマッチングサイトが活用されます。
新しい事業を展開する際、自社で一からはじめるよりも、既存の企業を買い取るほうが効率が良く、リスクを回避しながら事業を展開することが可能です。
多くの案件が登録されているM&Aマッチングサイトを利用すれば、自社が望む事業形態や規模などの条件に沿う売り手を見つけやすくなります。

2. M&Aマッチングサイトの5つの種類

M&Aマッチングサイトは、売り手と買い手を結びつける便利なツールです。しかしながら多くのサイトが存在し、それぞれ特徴や機能も異なるため、利用者のニーズに応じた最適なサイト選びが求められます。

2-1. 売り手と買い手のマッチングサイト型

1つ目は、最も典型的な、売り手と買い手のマッチングサイト型です。
目的は、売り手と買い手を紹介することであり、その後の手続きなどの支援には関わりません。「紹介のみ」を目的としているため、低コストで利用できる点が特徴です。
ただし、M&Aの相手企業が見つかった場合、その後の手続きや支援を受けるためには別途、アドバイザリー契約の締結が必要となります。

2-2. アドバイザー紹介型

2つ目は、アドバイザーと交渉相手を同じM&Aマッチングサイト内で選べるサービスです。
売り手と買い手がマッチングしたあと、アドバイザーを通じて相手企業との交渉を進めていくため、サポートを受けながらスムーズに手続きを行える点が特徴です。
一般的に、マッチングサイト自体の利用料は発生しません。一方で、アドバイザーとの契約は必須です。

2-3. 特定の仲介企業提供型

3つ目は、M&A仲介会社がサービスの一つとして立ち上げたマッチングサイトです。
サイト内でM&Aの相手先を見つけた場合、交渉に進むためには、当該仲介会社との契約が必要です。また、仲介会社と契約したうえで、サイト利用が可能になるケースもあります。

2-4. 業種特化型

4つ目は、業種特化型のM&Aマッチングサイトです。M&Aの目的が、特定の業界で規模を拡大したい場合や、特定の新規分野に進出したい場合など、希望する業種が決まっているときに活用できます。
例えば、自社が小売業で事業を行っており、「同業種でM&Aを検討している」といった際に利用が可能です。

2-5. クロスボーダー型

5つ目は、国内ではなく、国境を越えて国外企業との合併・買収を支援するM&Aマッチングサイトです。世界中に点在している企業とのマッチングを可能にします。
海外へ事業を拡大しようとしている企業にとっては、一ヶ所の仲介会社で情報収集が行えるため効率的です。言語や文化の違いにも対応できるので、M&Aの手続きがスムーズに進みます。

3. M&Aマッチングサイトを選ぶときのポイント

M&Aマッチングサイトを選択する際は、いくつかの重要なポイントがあります。
案件の登録数やサポート体制、料金体系、得意とする業種の傾向などをもとに、自社に最適なサイトを選ばなければなりません。

3-1. 案件の登録数

登録されている案件数と成約実績は、M&Aマッチングサイトを選択する際の重要な指標です。案件が多ければ多いほど、適切な取引相手とマッチし、迅速に成約まで進む可能性が高まります。
ただし、あまりに登録数が多い場合には、M&Aの実施を本気で考えていない企業や、取引相手として問題のある会社が多く登録されている可能性もあります。
過去1年間や直近1ヶ月の成約実績、登録時の条件や審査の必要性などから、信頼できるサイトであるかをチェックしなければなりません。

3-2. サポート体制

M&Aマッチングサイト選びに際しては、サポート体制もチェックしておくべき重要なポイントです。M&Aは、相手探しから成約に至るまで多くの手続きが必要となり、各プロセスで専門的な知識が求められます。
トラブルを避け、スムーズかつ正確にM&Aを進めるためには、「専門家のサポートを受けられるか」「必要書類の作成を依頼できるか」といった点も考慮すべきといえます。
サポート内容はサイトによって異なるため、自社に必要な範囲を事前に確認したうえで、適切なものを選択することが大切です。サポートの充実度に比例して手数料が高くなる傾向があるので、サポート体制と手数料のバランスを考慮しましょう。

3-3. 料金体系

M&Aマッチングサイトの利用料や手数料も確認しておく必要があります。
M&Aマッチングサイトには種類があり、

  • 登録時点で料金が発生するもの
  • 売り手は無料だが、買い手は有料なもの
  • 成約時点で料金が生じる「完全成功報酬制」のもの など

異なる料金体系が設けられています。
一般的に、サポート体制が厚くなるほど料金も高くなる傾向にあり、費用負担がM&A成約までの障壁となる可能性も否定できません。
完全成功報酬制のサイトを選択すれば、売り手の初期費用を抑えられる一方で、買い手の支払う報酬額や手数料の低いサイトを選択すれば、交渉の幅が広がります。
取引のサポート内容や双方のメリットとコストのバランスを考慮し、適切なマッチングサイトを選ぶことが重要です。

3-3. 得意とする業種の傾向

得意とする業種や強みを把握したうえで、M&Aマッチングサイトを選択することも大切です。サイトによって、取り扱う業種や得意とするスキームは異なります。同業種で事業を広げたい場合には、特定業界でのマッチングに特化したサイトが適しています。
異業種とのM&Aによりシナジー効果を期待する場合には、幅広い業種の案件が登録されているサイトを選択すると良いでしょう。売り手と買い手のマッチングサービスのみを提供するものから、専門家によるサポートを受けられるものまで、サービスの提供形態も異なります。
自社が求める業種、M&A手法、サポート内容を明確にしたうえで、適したサイトを見つけることが重要です。

4. M&Aマッチングサイトを利用するときの流れ

M&Aマッチングサイトを利用するときの流れは、以下のとおりです。

手順 内容
マッチングサイトの選定 自社のニーズに合った、信頼性の高いM&Aマッチングサイトを選定。サイトの評判、取扱い案件数、利用者の評価などを考慮に入れる
マッチングサイトに登録 選定したマッチングサイトに登録。必要な情報を入力し、プロフィールを作成
案件検索と選定 マッチングサイト上で検索し、自社のM&Aの目的に合った案件を選定
M&Aの実施 選定した案件に対してM&Aを実施。具体的な手続きは案件やマッチングサイトによって異なり、一般的には事前調査、価格交渉、契約締結、統合などへ進む

※スライドしてご覧ください

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5. M&Aマッチングサイトを活用するメリット・デメリット

M&Aマッチングサイトには、多くの企業とマッチングできるメリットがある一方、サポート体制の差や情報漏洩リスクなどのデメリットもあります。これらの点を踏まえ、効果的に活用することが肝要です。

5-1. M&Aマッチングサイトを活用するメリット

まずは、M&Aマッチングサイトを利用するメリットを見ていきましょう。マッチングの可能性が広がるだけでなく、スピーディかつ安価に利用できる強みもあります。

多くの企業とマッチングできる

M&Aマッチングサイトを利用するメリットは、多様な案件から検討が可能な点です。マッチングサイトは、さまざまな業種や地域の案件を提供しており、選択肢の豊富さが特徴です。
取引先の中からM&Aの相手を探したり、専門家による紹介を受けて検討したりする場合よりも自由かつ手軽に情報にアクセスできるため、各企業を比較しながら候補先を探し、マッチングできます。

マッチングまでのスピードが速い

マッチングサイトでは、売り手自身が登録から公開までを設定するため、マッチングまでスピーディに進められる点がメリットです。仲介会社や専門家を介さず、ダイレクトにやりとりできるため、一般的なM&Aのプロセスに比べて迅速な契約進行が可能です。
また、事前に設定した選定基準に基づき、自社が希望する条件でピンポイントに候補を絞り込むだけでなく、候補企業を早期に見つけられます。
さらに、候補となる案件に対して直接コンタクトを取ることができ、売り手・買い手双方が効果的にアプローチできる点も強みです。

安価に利用できる

マッチングサイトの利用によって、専門家や仲介会社を利用する場合よりもコストを抑えて候補企業を見つけ出すことが可能です。着手金無しで多様な候補先から選べるため、M&Aへの敷居も低くなります。
また、売り手は無料、買い手も成果報酬型の料金体系を採用しているサイトもあるので、大企業に比べて資金力が限られている中小企業でも、費用を抑えたマッチングが可能です。

5-2. M&Aマッチングサイトを活用するデメリット

M&Aマッチングサイトにはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。
登録していない企業とは出会えないことや、サポート体制の差、情報漏洩のリスクなどを理解しておくことが重要です。

登録していない企業とは出会えない

M&Aマッチングサイトでは、多くの候補先を検討できる点がメリットですが、登録していない企業とのマッチングはできません。
案件が多いからといってやみくもにM&Aマッチングサイト上で候補先を探しても、自社の求める条件の企業とは出会えない可能性があることを理解しておく必要があります。

サポート内容に差がある

マッチングサイトによって、サポート体制には大きな差があります。すべてを事業主に任せる場合があるものの、専任担当者が付くケースは少なく、M&Aの各プロセスを当事者間で行わなければならないこともあります。
法務や会計などの専門知識が必要なサポートを受けられるサイトは限られているため、特に初めてのM&Aである売り手にとっては、不利な状況になる恐れも否定できません。
M&Aに関する知識やノウハウが不足している場合には、サポート体制が不十分だと感じることも多いため、専任担当者や専門家によるサポートを受けられるサイトの利用を検討すると良いでしょう。

情報漏洩の可能性がある

登録情報から企業が特定されるリスクがあるため、情報提供には注意が必要です。
マッチングサイトに掲載する内容は匿名性を保持したうえで、企業の概要のみを記載する「ノンネームシート」を活用するのが一般的です。
内容によっては企業が特定されたり、悪意のある人によって情報が拡散されたりする恐れもあり、企業の信用力の低下につながる可能性も含みます。
掲載する情報は慎重に選定し、信頼に値する相手と「秘密保持契約」を交わしたうえで情報交換を行い、詳細な情報を開示することが重要です。

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自身で手続きを進めなければならない

M&Aマッチングサイトでは、アドバイザーのサポートを受けられるケースは稀です。基本的には自身で登録から募集、マッチングに至るまでの手順を進める必要があります。そのため、企業情報の作成や候補企業とのメッセージのやり取りなどの手間がかかるデメリットが生じます。
企業情報作成の際には、情報漏洩への対策として、詳細な情報記載を避けなければなりません。曖昧でありきたりな内容では、買い手の関心を引きにくくなるため、掲載情報の見極めにも労力が必要です。
多くの企業から連絡があった場合には、一つひとつのメッセージへの対応や選別に時間を要します。掲載期間が長引けば、その都度情報を更新する必要があり、自社の負担が増える点も理解しておかなければなりません。

相手の関心度が見えない

相手の関心度が見えない点も、M&Aマッチングサイトを利用するデメリットの一つです。
サイト上には多くの企業が登録しているため、複数企業とのやり取りを同時に進めることが考えられます。別の企業との取引が進むと、やり取りが急に途切れるケースも想定しなければなりません。
また、M&Aを検討しているものの、現時点では関心が高まっていない企業も多く存在します。案件数が豊富でも、M&Aを早急に進めたい企業にとっては適さない場合もあるため、注意が必要です。

6. M&Aマッチングサイトを利用する際の注意点

M&Aマッチングサイトを利用する際は、サポート体制の確認やスケジュール管理、公開する情報の選定に注意しなければなりません。これらのポイントを押さえることで、円滑なM&Aが可能になります。

6-1. サポート体制を確認しておく

M&Aマッチングサイトの利用時は、サポートやフォロー体制を事前に確認することが必要です。トラブル発生時の対応がしっかりしていなければ、万が一のときにフォローが無く、M&Aの成立までに時間を要してしまいます。
一部のサイトでは、売り手からのみアプローチができ、買い手からは交渉できない仕組みを設けているケースもあります。サポート体制や仕組みをしっかりと理解したうえで、利用することが大切です。

6-2. スケジュールに余裕を持たせる

自社にとって最適な相手を見つけるには、ある程度の時間が不可欠です。余裕のあるスケジュールを組むことで、複数の企業の中から検討できます。
アドバイザーや専門家によるサポートを受けられない場合には、手続きにも多くの時間がかかる可能性があります。余裕の無いスケジュールを組んだ場合、手続きの遅延が原因となり、M&Aが失敗に終わるリスクが生じるかもしれません。
多少遅れても対応できるよう、ゆとりを持って計画を立てることが求められます。

6-3. 公開する情報の内容に注意する

M&Aマッチングサイトを利用する場合は、公開する情報の選定とその粒度について留意が必要です。詳細な情報を開示してしまうと、会社名が特定される恐れがあります。
また、誤った情報を掲載してしまうと、自社が望む相手とのマッチングが難航する可能性も生じます。
サイトによっては、法人企業のみが情報を閲覧できるものと、個人・法人の両方が閲覧できるものがあるため、多くの人の目に情報が触れることを踏まえ、開示する情報の選定を慎重に行うことが重要です。

7. まとめ

M&Aマッチングサイトは案件数が多く、コストを抑えられるなどのメリットがあります。一方で、情報漏洩のリスクや自社の負担が増えるといったデメリットも存在します。
また、マッチングサイトで相手が決まったあとにサポートが必要になっても、基本的にはM&A仲介会社のサポートは受けられません。依頼する場合にも、マッチングサイトの運営先や提携先のM&A仲介会社が請け負うことになるため、費用感は一般的に変わらない、または、それ以上となる可能性があります。正確かつ効率的にM&Aを行うためには、デューデリジェンス(DD)などを弁護士や税理士といった専門家に相談するのが有効です。
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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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