ゴーイング・プライベート(Going Private)とは? 概要、実施する理由、手法及び問題点について詳しく説明します

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現在、日本の株式上場会社数は約4,000社といわれていますが、会社が株式上場を目指す方向性がある一方で、非公開化を目指す上場会社もあります。その際にゴーイング・プライベート(Going Private)という言葉を耳にすることがあります。
今回は、ゴーイング・プライベートの概要、実施する理由、手法及び問題点について、詳しく説明します。

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1. ゴーイング・プライベートとは?

ゴーイング・プライベートとは、既に株式市場に上場している会社が全ての株式を買い取って証券市場から撤退し非公開化することをいいます。

広義のM&Aと狭義のM&Aの範囲の図(一部抜粋)

2. ゴーイング・プライベートする理由

ゴーイング・プライベートを選択する会社には、主に以下のような理由があると考えられます。

2-1. 低い株価と流動性

低い株価と流動性のために敵対的買収の脅威にさらされたり、市場からの資金調達が困難だったりという理由で非公開化をする場合があります。株式上場をすることは株式に流動性を与えることが目的のひとつです。しかし、上場している全ての株式が市場で活発に取引されている訳ではありません。また、その会社の知名度や事業内容が市場で認知されていない場合、本来の会社の価値に比べて株価が低かったり流動性が低かったりという場合があります。
その様な状態で市場に上場し続ければ、買収対象の会社としてファンドなどから狙われる可能性があります。そのため、株式市場に上場していてもあまりメリットを感じない会社が非公開化を選択肢としてとることがあります。

2-2. 支配権の集中

株式を公開すると、出資者である株主と運営を行う経営陣の考え方に対立の構図が出てきます。株主は短期的な利益を望み、配当や株主優待などの目に見えた形での利益の株主還元を望みます。その一方で経営陣は、長期的視点に立った会社の発展のために短期的な利益は追わないという選択をする場合もあります。上場している以上、株主の意見は無視できず、経営陣は長期的な事業運営を諦めざるを得ない場面が出てくるかもしれません。そこで、ゴーイング・プライベートを行う事で、支配権を経営陣に集中させ、会社が痛みを伴う長期的な事業改革を進めることが可能になります。

2-3. 上場コストの削減

上場会社では、上場を維持するために様々なコストがかかります。具体的には、年間上場料、情報開示書類作成費用、IR コスト、株主名簿管理費用、株主総会開催費用といっ たような様々なコストがかかります。この様に上場に関わる様々なコストが、上場していることで得られるメリットの割に合わないと感じた場合に、ゴーイング・プライベートを選択することがあります。

3. ゴーイング・プライベートの手法

ゴーイング・プライベートをするためには、市場に出回っている株式を回収することになります。発行済み株式数が多ければ当然に回収資金も多額になりますし、全ての株式を回収することになるので時間もお金も必要となります。

日本でよく用いられるのは、SPC(Special Purpose Company)を利用したMBO(Management Buyout) によるもので、主に以下のような方法があります。

  • 全部取得条項付種類株式型
  • 株式交換型
  • 株式併合型

4. ゴーイング・プライベートの問題点

次にゴーイング・プライベートの主な問題点は以下のとおりです。

4-1. 利益相反

ゴーイング・プライベートでは経営陣が SPC(Special Purpose Company)を通して自社株の買収を行います。その際に経営陣は、株式数が多い場合、少しでも安く株式を買い集めたいと考えます。一方で経営陣は、買収される会社の取締役として株主利益を優先する義務を負います。その中で、経営陣は買主と売主の利益を考えなければなりませんが、経営陣に買主としての側面がある以上、株主との間に利益相反の関係が生じてしまいます。そのため、経営陣はどのようにして利益相反を回避するかを考える必要があります。また、自社の株式を保有している経営陣が、MBO による公開買付けによって保有する自社株を売却して利益を得るためだけに、ゴーイング・プライベート を選択する場合もあります。この場合、上場していれば他の株主が得られる可能性のある将来の利益などを奪っていると考えられるならば、株主の利益に反するといえます。

4-2. 少数株主保護

ゴーイング・プライベートをする際には、少数株主の保護が問題となります。その理由は、非公開化されることで株式の取引機会が失われるためです。会社は少数株主が不利益を被らないようにするために、ゴーイング・プライベートの周知徹底と公開買付け価格及びスクイーズアウトを行う際の保有株式の買取り価格を適正に設定することなどが重要と考えられます。

5. まとめ

ゴーイング・プライベートは、M&Aにおいても利用できるケースはありますが、ゴーイング・プライベートを実施するスキームや問題点をよく理解し、進める必要があります。経営者であれば、ゴーイング・プライベートについて理解し、必要に応じてM&Aや法律及び税務の専門家に適宜相談することが望まれます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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