M&Aで株価が上がる? 買い手と売り手の株価への影響を詳しく解説

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M&Aは結果により、株価に大きな影響を与えます。しかしながら、M&Aによる株価の変動は、複数の要因によって決まると考えられているため、実際に与える影響は一概にはいえません。
本記事では、M&Aが株価に与える影響について、わかりやすく解説します。M&Aの成功や失敗、市場の反応、企業の業績など、株価が変動する要因はさまざまです。これらの要素を理解することで、投資家はより賢明な投資判断ができます。また、企業の経営者にとっても、M&Aの戦略的な選択を行ううえで有益な知識となるでしょう。

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1. M&Aで株価は上がるのか

M&Aは、企業の成長や新規事業展開のための、重要な戦略の一つです。買い手企業は、株式市場において注目を浴びます。投資家が買い手企業の成長を期待して株を購入した場合、株価は変動します。
ただし、その変動は必ずしも「上がること」を意味するわけではありません。M&Aの結果として、株価がどのように変動するかは、さまざまな要因によって決まります。M&Aの成功と、株価の動きの関連性を理解することで、より賢明な投資判断が可能です。

1-1. 買い手企業の株価への影響

M&Aの実施により、企業の規模拡大や業績改善が期待できます。その結果、買い手企業の株価が上がる傾向にあります。M&Aにより新たなビジネスチャンスが生まれ、会社の収益性が向上する可能性があるためです。
しかしながら、すべてのM&Aが株価の高騰をもたらすわけではありません。買収先の負債を抱える不安があるほか、成果の見込みが無いと判断される場合、投資家の懸念が生じ、株価が下がる可能性もあります。これは、M&Aがリスクを伴うためです。投資家によってリスクがあると評価されてしまうと、株価にマイナスの影響を及ぼすことがあります。
M&Aの成功は、買収先の選定、買収後の経営戦略、その実行力に大きく依存します。M&Aで株価を向上させるためには、投資家の信頼を得ることが必要です。買収先の選定をはじめ、これらの要素が不十分な場合、株価は下がる恐れがあります。
このように、M&Aは、買い手企業の株価に大きな影響を与えます

1-2. 売り手企業の株価への影響

M&Aの成立には、買い手側と売り手側、双方にとって有益な条件が必要です。買い手側にとって重要な条件の一つに、「対象企業の価値に対し、長期的に企業価値を高められる潜在能力が、より高いものであると判断できる」というものがあります。
売り手企業が上場企業である場合、株価にプレミアムと呼ばれる付加価値をのせたうえで買収価格を算出し、TOB(株式公開買付)で買収を持ちかけることが一般的です。これにより、対象企業の株価は上がります。
売り手側対象企業の株価は、M&Aの条件や市場の評価により、上がる場合が多いでしょう。ただし、株価が上がることは保証されるわけではなく、各企業の具体的な状況によります

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2. M&Aで株価が上がるケース

M&Aは、株価に影響を与えます。そこで、買い手企業と売り手企業の視点から、M&Aが株価に与える影響について詳しく解説します。

2-1. 買い手がM&Aを強く希望している

買い手企業が、相手企業の特定の価値を高く評価している場合、株価が上がりやすくなります。
これは、買い手側が望む要素が売り手側にあると判断され、高額な買収価格が支払われるためです。このような状況は、買い手企業が相手企業のビジネスモデルや技術、人材などに大きな価値を見出し、その結果として企業価値が向上すると期待されるからでしょう。
投資家からも、M&Aによる企業価値向上が期待されます。買収が成功すれば買い手企業の業績は向上し、その結果、株価が上昇するかもしれません。また、売り手側の株価も、買収により企業価値が再評価されることで上がる可能性があります。

2-2. 買い手が有名企業である

買い手企業が有力で業績が良好であると、その企業がM&Aを行うというニュースは市場に大きな影響を与え、株価が上がる要因になります。有名な企業が新たな投資を行うことは、新たな成長機会を見つけたと解釈でき、投資家からの評価が高まるからです。
一方、売り手企業の業績が悪かったり、規模が小さかったりしても、M&Aでの改善が見込まれる場合には期待が高まり、株価は下がりにくいでしょう。M&Aによって売り手企業の経営環境改善につながり、業績回復の可能性が生まれることが理由とされています。
有力企業がM&Aを行うと、その企業の株価に大きな影響を与える可能性があります。特に、有力企業が対象企業を高く評価し、その価値を認めると、市場では対象企業の企業価値が再評価され、その結果、対象企業の株価が上昇する可能性があります。これは、有力企業の評価が市場における対象企業の評価を高めるからです。
このように、買い手が有名企業である事実は、M&Aの結果としての株価変動に大きな影響を与えます。

2-3. 敵対的買収が実施される

敵対的買収とは、相手企業の同意を得ずに株式を買い占める方法です。敵対的買収による大量の株式購入は、市場で「需要増」と見なされ、買い占め過程において株価が上がることがあります。
しかしながら、日本での敵対的買収の実施件数や成功例は、まだ少ないといえるでしょう。日本の企業文化や法制度、株主の態度など、さまざまな要因によりますが、グローバル化の進展と共に今後、敵対的買収の動きが活発化する可能性もあります。
企業が置かれる状況変化に対応するためにも、M&Aの知識を深めておくことは重要です。

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2-4. M&Aによって業績上昇が見込まれる

M&Aで買い手企業の業績改善が期待されると、投資家は将来の成長を狙って、事前に安価で株を購入します。これにより、買い手側の株式の需要が高まり、株価が上がる可能性が生じます。
株価が上昇する要因は、M&A前に購入動向が活発化し、M&A後には業績改善により企業価値が上がることです。M&Aが成功すれば企業の収益性が向上し、株価も上がる可能性があるためです。

3. M&Aで株価が下がるケース

M&Aは企業の成長戦略の一つですが、結果は必ずしも株価が上がることを意味しない場合があります。そこで、M&Aが株価に与えるネガティブな影響について詳しく解説します。

3-1. 投資家からの期待値が低い

M&Aのメリットや業績改善が見込めない場合、株価は下がる可能性があります。投資家がM&Aによるリターンを期待できないと判断した場合、その企業への投資意欲が低下し、結果として株価に影響を与えるからです。
また、高額な買収価格に対する資金調達の繰り返しや、自社の企業規模に見合わない大企業を買収する場合も影響を与えます。これらの行為は、投資家から見ればリスクが高いと判断され、株価が下がる要因です。M&Aは大きな投資であり、成功しなければ甚大な損失を招く恐れがあることを意味します。
したがって、株価を上げるためには、投資家の期待に応えるM&Aが必要です。投資家がM&Aによる企業価値の向上を期待し、その期待が実現すれば株価は上がります。一方で、その期待が裏切られると、株価は下がるかもしれません。

3-2. M&A後に業績が悪化した

M&A後に業績が悪化してしまうと、企業価値が低下し、株価は下落傾向になる可能性があります。M&Aが企業の成長や業績改善を目指す戦略であるため、その期待が裏切られると投資家の信頼が失われ、株価にネガティブな影響を与えるからです。
また、M&Aにはシナジー効果が期待されます。買収で新たなビジネスチャンスが生まれ、企業の収益性を向上させることが狙いですが、逆にアナジー効果(ディスシナジー効果)が生じ、M&Aによる統合が想定よりもスムーズに進まない可能性もあります。
業績が悪化すると、買い手企業の株式売買を行う投資家の期待値が下がり、株価への悪影響が生じるケースが一般的です。

4. M&Aで株価が上がった事例

M&A実施後、株価が上昇した具体的な企業について紹介します。

4-1. ダイキン工業

ダイキン工業株式会社は、2010年から2012年にかけて、アメリカの大手空調機器メーカーであるグッドマン社を買収しました。このM&Aは、ダイキン工業における海外戦略の一環であり、北米市場でのシェア拡大を目指したものです。
買収により、ダイキン工業はグッドマン社の豊富な販売網とブランド力を活用することで、北米市場での競争力を強化しました。また、製品ラインナップの拡充や生産効率の向上など、シナジー効果も大きく期待されました。
その結果、2013年以降、ダイキン工業は日経平均の上昇率を上回る株価の高騰を見せています。これは、M&Aによる業績改善が投資家から高く評価され、結果として株価が上がったためと考えられます。

4-2. ソフトバンクグループ

ソフトバンク株式会社は2013年1月、イー・アクセス株式会社を株式交換で子会社化しました。このM&Aは、ソフトバンクの通信事業の拡大を目的としたものです。イー・アクセスの豊富な通信インフラと顧客基盤を活用することで、ソフトバンクの競争力強化を図りました。
しかしながら報道後、ソフトバンクの株価は2%下がりました。これは、M&Aによる負担やリスクが市場に反映された結果と考えられます。
一方で、イー・アクセスの株式は、株式交換に伴い1株5万2000円まで上がりました。ソフトバンクによる買収が、イー・アクセスの企業価値を高めたと市場から評価されたためです。

4-3. 三菱電機

三菱電機株式会社は2003年、半導体部門を分社化し、株式会社ルネサステクノロジを設立しました。その後、NECエレクトロニクス株式会社と経営統合を行い、ルネサスエレクトロニクス株式会社となります。
この経営統合により、三菱電機はルネサスエレクトロニクスの株式を25%保有しましたが、2017年に保有比率は4%に減少します。
それにも関わらず、三菱電機の株価は2003年から2017年12月までの間で、ほぼ6倍に増加しました。三菱電機がその他の事業領域での成長を達成し、投資家からの評価が高まった結果と考えられます。

4-4. NEC

NEC(日本電気株式会社)は2016年、中国のレノボ・グループにパソコン事業を約200億円で譲渡しました。NECは日本のパソコン市場から撤退したものの、社会インフラ事業強化のためには資金が必要であると判断し、M&Aを実施した事例です。
最初はネガティブなM&Aかと思われたこの動きですが、投資家からは将来性のある企業と認識され、株価の高騰につながりました。NECがパソコン事業から撤退することで、より利益率の高い社会インフラ事業に注力できると期待されたからです。

5. まとめ

M&Aを実施することで、買い手企業と売り手企業の株価には、それぞれ影響が出ます。株価の変動を生み出す主な要因としては、M&Aの成功や失敗、市場の反応、企業の業績などが関係します。
M&Aを検討する際は、自社ではどのような影響が考えられるのかを理解することが大切です。また、不安な場合には、専門家のアドバイスを得ることも必要でしょう。
有益なアドバイスを提供するM&Aキャピタルパートナーズは、東証プライム上場企業であり、信頼性とサービスに定評があります。M&Aの専門家として、企業の成長戦略の一環であるM&Aをサポートします。より賢明な戦略を立てられますので、M&Aを検討中の経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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