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株式交換の適格要件について
株式交換の適格要件とは、株式交換について税制上の特例を受けるために満たす必要がある条件のことです。適格株式交換に該当すると、株式を譲渡した株主に生じる譲渡損益等の課税を繰り延べられる場合があります。一方、要件を満たさない場合は非適格株式交換となり、譲渡損益などが課税対象になります。要件は、完全支配関係、支配関係、共同事業目的によって異なります。
株式交換は、会社を完全子会社化する際に用いられるM&A手法の一つです。「適格」と「非適格」の区分があり、どちらに該当するかによって課税関係が変わる点に注意が必要です。一定の要件を満たす適格株式交換では、譲渡損益などの課税を将来に繰り延べられる場合があります。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、株式交換の適格要件とは何かを整理したうえで、適格・非適格の違いや、関係性ごとの具体的な要件について解説します。
株式交換の適格要件とは
株式交換の適格要件とは、株式交換について税制上の特例を受けるために、満たさなくてはいけない条件のことです。
株式交換では、一定の要件を満たすと「適格株式交換」として扱われ、株式を譲渡した株主に生じる譲渡損益等の課税を繰り延べられるほか、みなし配当課税を回避することができます。反対に、要件を満たさない場合は「非適格」として扱われ、譲渡損益などが課税対象となります。
なお、適格要件は一律ではありません。株式交換の前に完全支配関係があるのか、支配関係があるのか、それとも共同事業目的に当たるのかによって、確認すべき条件が異なります。以下に、適格要件の全体像を表で整理します。
| 判定条件 | 完全支配関係 | 支配関係 | 共同事業目的 |
|---|---|---|---|
| 完全支配関係・支配関係の継続 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 株式交換の対価 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 従業員の引継ぎ | ー | ◯ | ◯ |
| 事業の継続 | ー | ◯ | ◯ |
| 事業の関連性 | ー | ー | ◯ |
| 株式の継続保有 | ー | ー | ◯ |
| 事業規模の要件もしくは経営参画 | ー | ー | ◯ |
株式交換における適格・非適格の違い
株式交換における「適格」と「非適格」の大きな違いは、税務上の取扱いです。適格株式交換に該当すると、一定の課税を将来に繰り延べられる一方、非適格株式交換に該当すると、税務上の影響が生じる可能性があります。
| 条件 | 適格 | 非適格 |
|---|---|---|
| 税制上の優遇措置 | 適用可 | 不可 |
| 課税 | 課税は発生しない | 譲渡損益が発生して課税される |
| 資産の移転 | 帳簿価額で行われる | 時価で行われると見なされる |
| 譲渡損益等の課税関係 | 繰り延べになる | 即時に課税される |
非適格株式交換に該当すると、株式交換の時点で譲渡損益などに課税が生じる可能性があります。また、資産や取得した株式の評価の考え方も適格株式交換とは異なるため、税務処理に影響が及ぶ点に注意が必要です。
具体的な仕訳や税務処理については、「株式交換の仕訳とは? 方法や税務処理のポイントを解説」で詳しく解説しています。
【関係性別】株式交換の適格要件の詳細
株式交換の適格要件は、すべてのケースで同じではありません。株式交換前に完全支配関係があるのか、支配関係があるのか、それとも共同事業を目的とするものなのかによって、確認すべき条件が異なります。ここでは、3つの関係性ごとに適格要件の内容を整理して解説します。
完全支配関係における適格要件
完全支配関係とは、株式交換の前から、完全親法人が完全子法人の発行済株式の全部を直接または間接に保有している関係をいいます。つまり、既に100%支配しているグループ内で行う株式交換です。
この場合の適格要件は、支配関係や共同事業目的の場合と比べるとシンプルです。基本的には、株式交換後も100%の支配関係が継続することが求められます。また、税制上の優遇を受ける前提として、対価が株式のみで交付されることも重要です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 完全支配関係の継続 | 株式交換後も、完全親法人と完全子法人との100%支配関係が継続することが求められる |
| 株式のみの交付 | 税制上の繰延べを受けるには、対価として金銭などを交付せず、原則として株式のみを交付する必要がある |
支配関係における適格要件
支配関係とは、株式交換の前から、完全親法人が完全子法人の発行済株式の50%超を直接または間接に保有している関係をいいます。完全支配関係のような100%保有ではないものの、親法人が子法人を実質的に支配している状態です。
この場合は、完全支配関係における株式交換よりも適格要件が増えます。株式交換後も支配関係が継続することに加え、従業員が引き続き事業に従事することや、主要な事業が継続して行われることなども求められます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 支配関係の継続 | 株式交換後も、完全親法人と完全子法人との支配関係が継続することが求められる |
| 株式のみの交付 | 株主における譲渡損益課税の繰延べを受けるには、対価として原則として株式のみを交付する必要がある |
| 従業員要件 | 完全子法人の従業員の概ね50%以上が、株式交換後も完全子法人またはその完全支配関係法人の業務に引き続き従事することが見込まれている必要がある |
| 事業継続要件 | 完全子法人の主要な事業が、株式交換後も完全子法人またはその完全支配関係法人において引き続き営まれることが見込まれている必要がある |
共同事業目的における適格要件
共同事業目的における株式交換とは、株式交換の前に完全支配関係や支配関係が無い場合に、両社が共同で事業を行う組織再編として一定の要件を満たすケースをいいます。完全支配関係や支配関係に比べると、確認すべき適格要件は多くなります。
この場合は、支配関係の継続や対価の条件に加え、事業に関連性があること、一定の規模要件または特定役員に関する要件を満たすこと、株主が取得した株式を継続して保有することなども求められます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 事業の関連性 | 完全親法人と完全子法人の事業に関連性があることが求められる |
| 支配関係の継続 | 株式交換後も完全親法人と完全子法人との完全支配関係が継続することが求められる |
| 株式のみの交付 | 株主における譲渡損益課税の繰延べを受けるには、対価として原則として株式のみを交付する必要がある |
| 従業員要件 | 完全子法人の従業員の概ね50%以上が、株式交換後も引き続き業務に従事することが見込まれている必要がある |
| 事業継続要件 | 完全子法人の主要な事業が、株式交換後も引き続き営まれることが見込まれている必要がある |
| 株式継続保有要件 | 支配株主が取得した対価株式を継続して保有することが求められる |
| 事業規模要件または特定役員要件 | 両社の事業規模が概ね5倍以内であること、または完全子法人の特定役員が株式交換後も継続して経営に関与することが求められる |
株式交換の適格要件に関する税制改正について
株式交換の適格要件に関する税制改正は、企業の組織再編を円滑に進めるために重要です。平成28年度から令和元年度までの税制改正について、順番に見ていきましょう。
平成28年度の改正
平成28年(2016年)の改正で、従業員引継ぎ要件が80%以上から50%以上に緩和され、親会社が子会社の株式を50%以上保有している場合でも、適格要件として「金銭不交付」「支配関係継続」「事業継続」を満たすことが可能となりました。
また、事業関連性要件も緩和され、完全親会社と完全子会社の事業の関連性が無い場合でも、一定の条件を満たせばその要件を満たすことが含まれています。
平成29年度の改正
平成29年(2017年)の改正により、完全子会社の株主が取得した株式を株式交換後に譲渡しても、一定の条件を満たせば適格要件を満たすことが可能になりました。
親会社と同じ企業グループが株式を50%以上継続保有する場合、ほかの株主が20%以上の株式を売却しても、その要件を満たせるという緩和措置です。
平成31年・令和元年度の改正
平成31年ならびに令和元年(2019年)では、株式継続保有要件が撤廃され、完全子会社の株主が取得した株式を譲渡しても、要件を満たすことになりました。
また、完全支配関係継続要件も緩和され、交換後に完全親会社が完全子会社株式の全部を保有しなくなった場合でも、一定の要件を満たせば容認されます。これらの改正により、諸条件は以前に比べて緩和されたのが特徴です。
まとめ
適格株式交換では、支配関係の継続や株式以外の不交付、従業員・事業の継続などの条件を満たすことで税務上の特例を活用できます。判定は完全支配関係・支配関係・共同事業目的の類型ごとに確認事項が異なり、満たさない場合は非適格として課税影響が生じます。加えて、平成28〜令和元年度にかけて要件の緩和が行われていますので、最新の枠組みに沿って検討することが重要です。
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よくある質問
- 株式交換の適格要件とは何ですか?
- 株式交換の適格要件とは、株式交換について税制上の特例を受けるために満たす必要がある条件のことです。一定の要件を満たすと適格株式交換として扱われ、株式を譲渡した株主に生じる譲渡損益等の課税を繰り延べられるほか、みなし配当課税を回避できる場合があります。
- 適格株式交換と非適格株式交換の違いは何ですか?
- 適格株式交換と非適格株式交換の大きな違いは、税務上の取扱いです。適格株式交換では、一定の課税を将来に繰り延べられる一方、非適格株式交換では譲渡損益などが課税対象となります。また、適格株式交換では資産の移転が帳簿価額で行われ、非適格株式交換では時価で行われたとみなされます。
- 適格株式交換として認められる主な条件は何ですか?
- 適格株式交換として認められるための条件は、株式交換前の関係性によって異なります。主な条件には、完全支配関係または支配関係の継続、株式のみの交付、従業員の引継ぎ、事業の継続、事業の関連性、株式の継続保有、事業規模要件または特定役員要件などがあります。
- 完全支配関係における株式交換の適格要件は何ですか?
- 完全支配関係における適格要件では、株式交換後も完全親法人と完全子法人との100%支配関係が継続することが求められます。また、税制上の繰延べを受けるには、対価として金銭などを交付せず、原則として株式のみを交付する必要があります。
- 支配関係や共同事業目的の場合、適格要件はどう変わりますか?
- 支配関係の場合は、株式交換後も支配関係が継続することに加え、株式のみの交付、従業員要件、事業継続要件が求められます。共同事業目的の場合は、さらに事業の関連性、株式継続保有要件、事業規模要件または特定役員要件なども確認する必要があります。
- 株式交換が非適格になった場合、どのような影響がありますか?
- 株式交換が非適格株式交換に該当すると、株式交換の時点で譲渡損益などに課税が生じる可能性があります。また、資産や取得した株式の評価の考え方も適格株式交換とは異なるため、税務処理に影響が及ぶ点に注意が必要です。
- 株式交換の適格要件に関する税制改正では何が変わりましたか?
- 平成28年度から令和元年度までの税制改正では、従業員引継ぎ要件や事業関連性要件、株式継続保有要件、完全支配関係継続要件などについて緩和が行われました。これにより、一定の条件を満たす場合には、従来よりも適格要件を満たしやすくなった点が特徴です。
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