合併公告とは? 掲載のタイミングや期間、費用を解説

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合併公告は、合併により複数の会社が一つに統合したときに行う公告のことです。法律で義務付けられており、怠れば罰則の対象となるため、必ず実施しなければなりません。
本記事では、企業合併において不可欠な「合併公告」について、わかりやすく解説します。合併公告は、目的・掲載内容・公告方法・タイミング・期間・費用など、多くの要素を考慮する必要があります。これらの要素を総括し、合併公告を適切に行うためのポイントを紹介しますので、最後までご参照ください。

このページのポイント

~合併公告とは?~

合併公告とは、企業が合併を行う際に必要となる法定公告を指します。法定公告は、会社法等の法令により義務付けられている公告であり、株主に重大な影響を及ぼす可能性がある事項を伝えるものである。法定公告の実施には期間が定められており、期間内に行わない場合は、罰則の対象となる。

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1. 合併公告とは?

合併公告とは、企業が合併を行う際に必要となる法定公告を指します。法定公告は、会社法等の法令により義務付けられている公告であり、株主に重大な影響を及ぼす可能性がある事項を伝えるものです。

1-1. 合併公告は法定公告の一つ

合併公告は、法定公告の一つです。企業の合併では債権者や顧客、取引先や株主など、多くの関係者に影響が及ぶこととなります。そのため、合併を決定した際は、債権者や世間に対して広く知らせることが必要です。
合併の実施を決定した場合、法定公告の実施には期間が定められており、規定の期間中に公告を掲載しなければなりません。期間内に行わない場合は、罰則の対象となります。

1-2. 合併公告と決算公告の違い

決算公告は、企業の売上高や利益などの決算内容を周知するための公告であり、合併公告を行う場合には、決算広告として貸借対照表の開示が義務付けられています。
掲載を欠くと公告要件不備扱いになるため、登記が受理されない可能性があります。また、義務付けられている公告はほかにもあり、合併公告の官報への掲載も対象です。
一方、決算公告は、官報・日刊新聞・電子公告のいずれの媒体に掲載するかを選択できます。これらの違いを理解したうえで、企業は適切な公告手続きを行います。

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2. 合併公告に記載する内容

合併公告に掲載する内容は「法定記載必要事項」と「情報開示事項」に大別されます。
法定記載必要事項は、合併公告で記載が義務付けられている事項です。吸収合併等をする旨、消滅会社等の商号および住所、存続株式会社および消滅会社等の代表者名などが含まれます。
一方、情報開示事項は、任意での開示となるのが特徴です。企業の財務状況や業績予想、経営方針など、投資家や取引先が知りたいと思われる情報が含まれます。
法定記載必要事項については、下表をご参照ください。

合併公告の内容

・当該公告が合併公告であることを明記する
・継続する会社と解散する会社が明らかになるように記載する
・異議の申し立てを受け付ける旨を記載する

当事者事項

・当該事業所の所在地
・当該事業所の名称
・会社代表者

貸借対照表事項

・最終貸借対照表の内容を示す
・決算公告で開示している旨を記載し、該当官報の掲載日や掲載ページを記すのが一般的

合併公告における具体的な記載例は、以下のとおりです。

官報 会社法 法定公告について

出典:官報 会社法 法定公告について -公告掲載例-(令和3年度適用版)|国立印刷局

なお、合併の効力発生日の変更と新設合併に関する合併公告のフォーマットは、1種類のみです。新設合併という特殊な形態の合併に対応するためのもので、その内容は法律で厳密に定められています。
一方、吸収合併についての合併公告は、記載内容により、以下のような複数のフォーマットがあります。

  • 連名標準型
  • 連名通知併用型
  • みなし総会・連名標準型
  • 簡易吸収合併・連名通知併用型
  • 簡易&略式吸収合併・連名標準型
  • 有限会社&清算会社・連名標準型
  • 簡易吸収合併・存続会社単独標準型
  • 存続会社単独簡略型
  • 消滅会社単独簡略型

これらは、吸収合併の具体的な状況や条件によって選択されます。合併内容に則した最適なフォーマットをもとに、相応の公告を行うことが肝心です。

3. 合併公告のタイミングと公告期間

合併公告のタイミングと公告期間は、企業が合併を行う際に守るべき重要な事柄です。関係者への情報提供と権利保護、企業の法的責任を果たすために必要となります。

3-1. タイミング

合併公告は、合併の効力発生日前日を基準とし、遅くても1ヶ月以上前に行う必要があります。そもそも合併公告は、合併実施を通知すると共に、株主や債権者に対して異議申し立てを受け付ける旨を伝え、彼らの権利を保護することが目的です。
異議申し立ての受付期間は1ヶ月以上設ける必要があるため、公告のタイミングもこれに準ずることが求められています。また、公告方法のなかから官報公告を選択する場合は、申し込みから掲載まで7~14日程度かかる点にも注意しなければなりません。
事前の準備を行ったうえで、時間的に余裕を持ち、最適なタイミングで公告掲載を実施することが重要です。

3-2. 公告期間

先述のとおり、公告の掲載期間は1ヶ月間設ける必要があり、掲載日の翌日からカウントが始まります。例えば、4月10日に掲載を開始した場合は、4月11日からカウントが始まり、5月10日が満了日です。
3月や5月のように、ひと月が31日の月であれば公告期間は31日間となる一方、2月ならば28日間、うるう年ならば29日間、4月や6月ならば30日間と若干短くなります。
これらの期間を正確に把握し、適切な計画を立てることで、企業は法的な要件を満たせるでしょう。

4. 合併公告する方法

合併公告を行う方法は、主に3つあります。それぞれ特徴と注意点が存在しますので、企業は自社の状況に合わせて、最適な手法を選択することが重要です。

4-1. 官報公告

官報は、行政機関の休日を除き、内閣府によって毎日発行されています。官報公告にて合併公告を行う場合は、最寄りの取次所に申し込む必要があります。全国どこの取次店に申し込んでも料金は同じで、値引きはできません。
日刊新聞紙に比べると公告費用は安いため、コストを抑えることが可能です。また、国の広報誌であるため、信頼性が高いといえます。

4-2. 日刊新聞への公告

日本経済新聞などの全国紙や、地方新聞において公告する方法もあります。新聞への掲載を選択した場合、官報公告の取次所で同時に申し込むことができます。
メリットは、組織再編などを行う場合に個別の催告を省略できることや、購読者が官報より多いため広く通知することが可能なことなどです。しかし、官報に比べると掲載費用が高額であり、注意が必要です。

4-3. 電子公告

公告を、インターネット上のホームページに掲載する方法もあります。

自社のホームページにて公告を行うため、掲載のための手間や費用がかかりません。ただし、電子公告の実施には、以下のような条件が定められているため、留意が必要です。

  • 電子公告するためには、定款にその旨を定めておく必要がある
  • 法務大臣の登録を受けた電子公告調査機関の調査を受けなければならない(会社法第941条、一般法人法第333条)
  • 電子公告調査機関の作成に係る調査結果通知が、客観的証拠資料となる
  • 貸借対照表(大会社の場合は加えて損益計算書)の全文の記載が必要
  • ホームページのアドレスを法務局に登記しなければならない
  • 5年間はずっと掲載していなければならない

これらの方法を理解し、適切な計画を立てることで、企業は法的な要件を満たすことができます。また、関係者への情報提供と権利保護が可能となります。

5. 合併公告する場合の費用

合併公告を行う際は、それぞれの方法により必要な費用が異なります。企業は自社の状況と予算に合わせて、最適な方法を選択することが不可欠です。

5-1. 官報公告

官報への掲載は、料金が一律で決められています。最低でも1行22文字で3,589円(税込)です。掲載するページを指定する場合は、下表よりも費用が高額になることがあります。

1行

3,589円

10行

3万5893円

20行

7万1786円

30行

10万7679円

また、官報にて合併公告を記載した旨を、債権者に郵送で通知する必要がある場合は、郵送費が上乗せされることになります。

5-2. 日刊新聞

日刊新聞への公告は、掲載する新聞によって費用が大きく異なります。差額は10~100万円程度となることも珍しくありません。
3つの公告方法のなかでも、日刊新聞への公告は掲載費用が高額になるといえます。

5-3. 電子公告

自社のホームページで公告を行えば、掲載料自体は0円です。しかし、情報の改ざんや修正しやすさなどのリスクを含むため、電子公告調査によって、適正な公告であることを証明しなければならないという制約があります。
調査申請には別途費用がかかり、令和6年(2024年)4月時点で42万600円です。これらの費用を考慮に入れ、適切な予算計画を立てることで、企業は法的な要件を満たすことができます。企業の信頼性を高めたうえで、スムーズな合併を実現しましょう。

6. まとめ

合併公告は、企業の合併を関係者や世間に対して広く知らせるための重要な手続きであり、そのタイミング・公告期間・掲載内容・公告方法・費用など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
公告を行う方法は主に、官報公告・日刊新聞への公告・電子公告の3つがあり、それぞれに特徴と注意点が存在します。これらを理解し、適切な計画を立てることで、企業は法的な要件を満たし、関係者への情報提供とその権利保護を確保できるでしょう。
ただし、合併公告を実施する際は、各種条件を満たさなければなりません。企業にとっては複雑で難解な作業となることもあります。専門家に依頼したい場合は、M&Aキャピタルパートナーズへご相談ください。経験豊富なアドバイザーがサポートします。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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