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日本の企業間におけるM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)の動きは、近年増加しています。M&Aは企業の成長戦略の一環として行われる一方、敵対的な買収として進められる場合もあります。企業が敵対的な買収から身を守るための数々の手段のひとつとして認識されているのが「バックエンド・ピル(Backend Pill)」です。今回は、バックエンド・ピルの概要、ポイズン・ピル(Poison Pill)との違い、バックエンド・ピルの目的について、詳しく説明します。
1. バックエンド・ピルとは?
バックエンド・ピルは、買収防衛策のひとつの手法です。これは、敵対的な買収の対象となった企業が、株主に一定の条件を満たした場合に、保有する株式を債券や現金に交換できる権利を付与するものです。これによって買収にかかる費用が高くなり、買収意欲を減退させる効果があります。
2. ポイズン・ピルとの違い
ここでバックエンド・ピルと似た用語でポイズン・ピル(Poison Pill)があります。ポイズン・ピルは、敵対的な買収から企業を守るための戦略的な手段のひとつであり、「毒薬条項」とも呼ばれています。この語源は、株の買い増しを進める敵対的買収者にとって、議決権比率の低下につながる新株予約権の発動は、毒を飲まされるようなイメージがあるためです。
具体的には、特定の投資家が会社の株式の一定比率以上を取得した際に発動します。発動すると、既存の株主に新しい株式を割安価格で購入する権利が与えられます。これにより、敵対的な買収者が標的となる相手企業の株式の大部分を保有することが難しくなります。
一方、バックエンド・ピルは、特定の株主への株式発行を制限することで、敵対的な買収者が標的となる相手企業の所有権を過半数取得するのを防ぎます。これにより、敵対的な買収者は、標的となる相手企業の買収を成功させるためには、既存の株主からさらに多くの株式を購入する必要があります。そのため、敵対的な買収の費用が増加し、買収することが難しくなります。
このようにバックエンド・ピルは、買収の標的となった企業が、株主に対して一定の条件が満たされれば持株を債権や現金に交換できる権利を付与するポイズン・ピルの一種であり、株式の未発行枠がない場合などに利用されます。
3. バックエンド・ピルの目的
バックエンド・ピルを実施する目的は主に企業の自主性と独立性を保つことと株主の利益を最大化することにあります。つまり、バックエンド・ピルは企業が敵対的買収から自身を守るだけでなく、株主にとっては買収価格を引き上げる効果があります。これにより、株主は自分の持株をより高い価格で売却する機会を得ることができます。そのため、バックエンド・ピルは株主の利益を最大化する役割も果たしていると認識されています。
4. まとめ
バックエンド・ピルはポイズン・ピルの一種であり、買収防御策のひとつとして位置づけられています。
敵対的買収の阻止は企業の継続的な経営や文化を保つ上で重要な要素となる場合もありますが、その手段によって企業価値を自ら損なう行動は、長期的な視点での経営の健全性や株主の利益をどう捉えるかという観点からも慎重な判断が求められると考えられます。
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