株式譲渡に消費税はかかる? 非課税・課税それぞれのケースや仕訳方法を解説

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株式譲渡と消費税について

株式譲渡は、通常「非課税取引」として消費税の対象外とされていますが、場合によっては消費税の影響を受けるケースもあります。特に、株式の売却額が大きい、または頻繁に株式取引を行っている場合、課税売上割合が変動し、結果として企業の納税額に影響を与える可能性があります。

本記事では、「株式譲渡とは?株式譲渡とは?|詳細記事へ」の基本的な理解を踏まえたうえで、株式譲渡と消費税の関係性、例外的に課税対象となる条件、具体的な仕訳方法や注意点について、分かりやすく解説します。

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株式譲渡とは?
~事業承継の手続きと中小企業でよくある論点~

このページのポイント

~株式譲渡に消費税はかかる?~

株式譲渡は原則として非課税取引ですが、手数料や課税売上割合によっては消費税負担が生じる場合があります。正確な会計処理と課税区分の理解が必要であり、適切な対応により税務上のリスクを回避できます。

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株式譲渡に消費税はかかる?

株式譲渡に際して、基本的に消費税は発生しません。国債や株式といった有価証券の譲渡は下記のとおり、原則として消費税の非課税取引と定められています。
国債や株式などの有価証券の譲渡は、原則として、消費税の非課税取引とされています。
株式の信用取引による売付けも現物の株式を借りて売却しているため、有価証券の譲渡として取り扱われ非課税取引となります。

出典:国税庁|No.6245 有価証券の先物取引

消費税は、商品の売買やサービス提供による消費行動に対して課されるものです。株式の譲渡は資本の移転であるため、課税対象には該当しません。
ただし、例外は存在し、税制上は「課税売上割合」が関係します。譲渡代金の支払いなどの際には手数料がかかるのが通常で、この部分については課税取引となる点に注意しなければなりません。
なお、株式譲渡によって得た売却益に対しては、所得税や法人税などの税金が発生します。詳細は、以下のページをご参照ください。

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株式譲渡で消費税が発生するケース

譲渡する際の株式の金額が高額であったり、頻繁に売買を繰り返したりすると、課税対象となる場合があります。その理由として挙げられる「課税売上割合」の概要と、消費税との関係を確かめてみましょう。

課税売上割合とは

課税売上割合は、課税対象の取引で得た「課税売上高」と、非課税の取引で得た総売上高(免税売上含む)のうち、課税売上高が占めている割合を表します。計算式で示すと、次のとおりです。

  • ■ 課税売上割合とは
  • 課税売上割合(%)= 課税売上高 ÷ (課税売上高+非課税売上高+免税売上)× 100

課税売上割合は、企業が支払う消費税額にかかる数値として使用されます。事業者であれば、正確に把握しておかなくてはいけません。

課税売上割合が小さいと消費税が増える

会社が納付する消費税額は、課税売上で受け取った消費税から、仕入れのため払った税額を控除した金額です。ただし、仕入税額の全額を控除対象にできるのは、課税売上割合が95%以上の場合に限られます。95%未満の会社では、支払った仕入税額のうち、課税売上割合に対応する部分しか控除できません。つまり、課税売上割合が小さければ、控除できる額が減る(支払う消費税が増える)ことになります。
前述の計算式に当てはめると、非課税売上高である株式譲渡の金額が増えることで、課税売上割合は少なくなり、支払う消費税額が増加する仕組みです。
なお、有価証券等の譲渡など資金運用をビジネスとする会社では、課税売上割合が極端に下がり、結果として消費税納税額が極端に高くなることが起こり得ます。
この場合は、会社間の税制上の不利が生じないよう「有価証券や金銭債権等の譲渡については、譲渡額の5%のみを課税売上割合の分母に加算する」とする、例外規定が設けられています。

株式譲渡時の消費税の仕訳・会計処理

株式譲渡を行うときの会計処理は、非課税売上としてシンプルに処理することはできません。課税売上割合を適切に算定できるよう、株式の売却額がわかるように記載する必要があります。

基本の仕訳・会計処理例

株式譲渡での会計処理は、利益が出る場合と損失になる場合のどちらであっても、得た対価(=消費税がかかる部分)がわかるよう帳簿に記載する必要があります。このように記載することで、ほかの課税売上と合算し、総売上のうち消費税の課税対象が占める割合を正確に計算できます。
なお、消費税がかかる譲渡対価については「非売有価証券」と記載します。処理の例を実際に確かめてみましょう。
下記の例は、簿価1,000円の株式を1,500円で売却できて利益が出たケースです。この場合、簿価と売却益をどちらも「非売有価証券」として表します。

有価証券売却益が出る場合

借方 金額(円) 貸方 金額(円)
現金 1,500 有価証券
(非売有価証券)
1,000
有価証券売却益
(非売有価証券)
500

次に紹介する例は、簿価1,500円の株式が500円で売買成立し、損失が出たケースです。売却額は「非売有価証券」として表し、簿価から売却額を除いた部分は「消費税の対象外」とすることで、正しく算出できます。

有価証券売却損が出る場合

借方 金額(円) 貸方 金額(円)
現金 500 有価証券
(非売有価証券)
500
有価証券売却損
(対象外)
1,000 有価証券
(対象外)
1,000

3-2. 消費税や手数料を含めた仕訳・会計処理例

それでは、実際に株式譲渡したときの会計処理を考えてみましょう。
一般的には、決済や手続きのため「支払手数料」などが発生します。支払手数料には消費税が課されるため、次のような仕訳になります。

借方 金額(円) 貸方 金額(円)
現金 16,900 有価証券
(非売有価証券)
10,000
支払手数料 1,000 有価証券売却益
(非売有価証券)
8,000
仮払消費税 100

上記の例は、簿価1万円の株式が1万8,000円で売却できて利益が出たケースです。売却手数料を1,000円と仮定すると、手数料に消費税10%が課せられるため、消費税額は100円と計算されます。

4. まとめ

原則として、株式譲渡消費税の課税対象外ですが、譲渡手数料などの付随費用には課税が行われるため注意が必要です。また、非課税取引が多くなると課税売上割合が低下し、結果として控除できる仕入税額が制限され、企業の納税負担が増す可能性もあります。適切な会計処理と仕訳記録によって、税務リスクを回避し、正確な納税に繋げることができます。株式譲渡を含むM&A取引においては、専門家のアドバイスを受けながら、税務面の確認を怠らないことが重要です。

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よくある質問

  • 株式譲渡に消費税はかかりますか?
  • 原則として非課税ですが、手数料部分には消費税が課されます。また、課税売上割合にも影響を与えます。
  • 株式譲渡で課税対象になるのはどんな場合ですか?
  • 高額の取引や頻繁な売買があると、課税売上割合に影響し、控除対象が制限される可能性があります。
  • 課税売上割合とは何ですか?
  • 課税対象となる売上高が総売上高に占める割合で、仕入税額控除の可否に影響を与えます。
  • 支払手数料にかかる消費税はどう処理しますか
  • 支払手数料には消費税が発生するため、「仮払消費税」勘定で仕訳し、納税額の計算に反映します。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社執行役員 コーポレートアドバイザリー部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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