TOB(株式公開買付け)の規制とは? 規制の必要性や主なルールについて解説

TOB(株式公開買付け)の規制とは?規制の必要性や主なルールについて解説のメインビジュアルイメージ

更新日


TOBの規制について

TOBの規制とは、株式公開買付けによって会社支配権に大きな影響を及ぼす株式取得が行われる際に、透明性と公正性を確保するため設けられたルールです。一定規模以上の株式を取得する場合には、買付期間や買付価格などをあらかじめ開示したうえで公開買付を実施する必要があり、代表的なものに5%ルールや1/3ルールがあります。

TOBは、取引所外や市場内の立会外取引で大量の株券等を取得する際に用いられる重要な手法ですが、会社支配権に大きな影響を与える以上、自由に行えるわけではありません。特定の株主だけが有利な条件で売却し、他の株主が不利益を受ける事態を防ぐためには、買付条件を事前に開示し、公平な取引機会を確保する必要があります。さらに、形式的な持株分散による規制逃れを防ぐため、特別関係者の考え方も設けられています。

そこで本記事では、TOBに設定された規制がなぜ必要なのかを整理したうえで、規制に関する主なルールや海外のTOB規制を解説します。今後のTOB規制に関する流れについても紹介しますので、最後までご参照ください。

※なお、本記事の情報は2024年5月10日時点での情報です。あらかじめご了承ください。

また、M&Aの意味や基本知識、TOB自体について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


TOBの規制とは

はじめに、TOBの規制とはどのようなものかについて明らかにしたうえで、規制の対象となる「特別関係者」の概念を、2つの類型に分けて解説します。

義務的公開買付の必要性

義務的公開買付とは、一定規模の株式等の買取を行うにあたり、法律によりTOBの実行が義務付けられていることをいいます(金融商品取引法 第27条の2)。この義務的公開買付は、会社支配権等に大きな影響を及ぼすような、証券取引の透明性や公正性を確保する目的で制定されたものです。
TOBは、一部の株主から大量の株式を買い付ける行為ですが、これをもし非公開で行ったらどうなるでしょうか。一部の株主が大きな利益を得る一方で、株価の変動などにより、不利益を被る株主も多数発生してしまいます。
これでは株式の公正な取引が阻害されてしまうため、株主に公平な取引機会を設ける目的で制定されたのが、義務的公開買付です。
なお、TOBのルールには後述する規制がありますが、それらに違反した場合は、刑事責任や課徴金などの対象となってしまうため、注意しなければなりません。

特別関係者概念について

TOBは、株式の買付者が一定割合を超える場合に求められるものです。しかし、法人をいくつも設立し、形式上の持株数を減らしてしまえば、TOBを行う必要はなくなってしまいます。
そのため、「特別関係者」という概念を設け、2種類の基準によってTOBが形骸化されないための対策が講じられています

実質基準

実質基準とは、表面上は同一の買付者ではないものの、実際には買付者との間で共同して対象株券等の取得・譲渡、議決権その他権利の行使、買付後に相互の株券等の譲渡・譲受を合意している者を「特別関係者」と規定する基準のことです(金融商品取引法 第27条の2 第7項 2号)。
形式的には別人同士であっても、あらかじめ買付後の譲受などにお互いが合意している場合は、買付人および特別関係者の株券等所有割合が合算されます。
したがって、買付人の保有割合が後述するTOBの水準に満たない場合でも、実質基準による特別関係者に該当する際は、特別関係者の持つ株式を合算し、改めて保有割合を計算しなければなりません。

形式基準

形式基準とは、株券等の買付者と、株式の所有を巡る関係や血縁の関係にある人物を「特別関係者」と規定する基準のことです(金融商品取引法 第27条の2 第7項 1号)。
買付者が個人の場合は、買付者の配偶者および1親等以内の親族が特別関係者となります。また、買付者が法人の場合は、役員や当該法人と特別資本関係にある個人・法人などが特別関係者として扱われます。

TOBの規制に関する主なルール

TOBの規制に関しては、複数の重要なルールが設けられています。以下の3つに分類し、それぞれの詳細について解説します。

5%ルール

TOBの規制に該当する一つ目のルールが、いわゆる「5%ルール」です。証券取引所外で買い付けし、買付後に保有する株式等の割合が、発行株式全体の5%を超える場合には、公開買付を実施する義務が設けられています。
発行済株式の5%以上を保有すると、企業経営などに及ぼす影響が大きいと考えられるため、このルールが設定されています。
ただし、TOBで買付を行う対象となる人数と、TOB実施日より60日以前の証券市場外で買付を行った人数の合計が10人以下の場合は、このルールの適用外となるため注意が必要です。その際は、保有率が5%を超えたとしても、TOBを行う必要はありません。

1/3ルール

TOBの規制に該当する2つ目のルールは「1/3ルール」です。証券取引所の内外に関わらず、買付後の株式等の保有割合が1/3を超える場合、必ず公開買付を行うことが義務付けられています。
1/3ルールに抵触する具体的なケースは、主に以下の3つです。

【証券取引所外のケース】
60日間で10名以内の株主から株式を買い付けた結果、保有割合が1/3を超えた場合
【証券取引所内のケース】
ToSTNeT(※)などを利用する特定売買により、株式の保有割合が1/3を超えた場合
【証券取引所の内外で急速な買付を行うケース】
3ヶ月以内に10%を超える株券等を取得し、そのなかに市場取引外や特定売買が合計5%を超えて含まれている場合で、かつ株式の保有割合が1/3を超えた場合

※ToSTNeT(トストネット)とは、東京証券取引所にて立会時間外に行う取引のこと。

その他のルール

5%ルールや1/3ルールに抵触する場合以外にも、ルールは存在します。
他の買付者がTOBによる公開買付を行っている期間中に、保有割合が1/3を超えている株主が新たに5%を超える株式等の買い増しを実施する場合には、公開買付をしなければなりません
ただし、企業グループ内で株式の移転や新株予約権などを行使する場合は、この対象外となります。

海外のTOB規制

次に、海外のTOB規制について、アメリカとヨーロッパを例に、それぞれどのような規制が設けられているのかを解説します。

アメリカにおける規制・ルール

アメリカにおけるTOBに関するルールは、米国証券取引法(ウイリアムズ法)において定められています
なお、「上場会社の株式を5%を超えて取得する場合は、取得の開示を請求する」という日本の5%ルールに類似した規制はありますが、1/3ルールに相当する規制などはありません。
買付価格の下限に関する規制は無く、公開買付に関する期間の延長はいくらでも認められています。また、一度公表したTOBの撤回が認められているなどの特徴があります。

ヨーロッパにおける規制・ルール

ヨーロッパにおけるM&AのルールであるEU企業買収指令は、イギリスの法律がベースとなっており、日本の1/3ルールに類似したルールも存在します。ただし、基本的に義務的公開買付と全部買付義務がある点などは、日本のTOB規制とは異なります。
なお、ヨーロッパ各国の規制・ルールは、EU企業買収指令に基づき定められる面があるものの、それぞれに定められています。
また、イギリスにおいては、株式を現金で買い付ける場合は、資金調達に問題が無いことをファイナンシャルアドバイザーに証明してもらわなければなりません。株主の承認がある場合を除き、敵対的TOBに対して買収防衛策が打てないなどのルールが定められています。

昨今におけるTOBの規制に関する動き

日本の公開買付制度は1971年に導入され、米国や英国の制度を参考に、時代の変化に合わせて改正されてきました。しかし、2006年に金融商品取引法が成立して以降は、現時点においても大きな改正はなされていません。
資本市場を巡る環境は常に変化し続けており、こうした事態を踏まえ、TOB規制のあり方についての見直しを必要とする声が高まりつつあります
具体的には、以下の内容に関する提案が行われています。

  • TOB強制の適用範囲を見直し、市場内取引や1/3ルールなどを変更する
  • TOBを強制する要件を緩和するための方策を整備する
  • 例外的な取扱いなどを設け、TOB規制そのものを現在よりも柔軟に運用する

まとめ

TOBの規制は、株式公開買付けを通じた大量取得が市場や株主に与える影響を踏まえ、透明性と公正性を確保するために設けられています。実務上は、義務的公開買付の要否だけでなく、特別関係者に該当するかどうか、5%ルールや1/3ルールに抵触するかどうかを慎重に見極める必要があります。さらに、海外ではアメリカやヨーロッパで異なる制度設計が採られており、日本でも見直しの議論が進みつつあります。TOB規制は非常に複雑であるため、実際に株式取得を進める際には、法務やM&Aの専門家と連携しながら対応することが重要です。



よくある質問

  • TOBの規制とは何ですか?
  • 株式公開買付けによって会社支配権に大きな影響を及ぼす株式取得が行われる際に、透明性と公正性を確保するため設けられたルールです。一定の場合には、買付期間や買付価格などを開示したうえで公開買付を行う必要があります。
  • 義務的公開買付はなぜ必要なのですか?
  • 一部の株主だけが有利な条件で大量の株式を売却し、他の株主が不利益を受ける事態を防ぎ、株主に公平な取引機会を与えるためです。証券取引の透明性や公正性を確保することが制度の目的です。
  • 特別関係者とは何ですか?
  • TOB規制の適用を形式的に回避できないよう設けられた概念です。買付者と実質的に共同して株式取得などを行う者や、一定の資本関係・親族関係などにある者が該当します。
  • 5%ルールとは何ですか?
  • 証券取引所外で株式を買い付けた結果、買付後の保有割合が発行株式全体の5%を超える場合に、公開買付を実施する義務が生じるルールです。ただし、一定の場合には適用除外があります。
  • 1/3ルールとは何ですか?
  • 証券取引所の内外を問わず、買付後の株式等の保有割合が1/3を超える場合に、公開買付が義務付けられるルールです。市場外取引、特定売買、急速な買付などが対象になる場合があります。
  • TOB規制に違反するとどうなりますか?
  • 規制に違反した場合は、刑事責任や課徴金の対象となる可能性があります。したがって、買付者は適用ルールを慎重に確認しなければなりません。
  • 海外のTOB規制にはどのような違いがありますか?
  • アメリカには日本の5%ルールに類似する規制はありますが、1/3ルールに相当する規制はありません。ヨーロッパでは日本の1/3ルールに類似した考え方がある一方、義務的公開買付や全部買付義務など日本と異なる制度もあります。

ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。


M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)

M&A関連記事

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。