TOBの規制とは? 規制の必要性や主なルールについて解説

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TOBとは、取引所外および市場内の立会外取引で、株券等を大量に買い付ける際に、買付者が買付期間や買付価格などをあらかじめ開示したうえで行う「株式公開買付」のことです。

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このTOBには、株主に公平な売却の機会を付与するために、いくつかの規制が設けられています。
そこで本記事では、TOBに設定された規制がなぜ必要なのかを整理したうえで、規制に関する主なルールや海外のTOB規制を解説します。今後のTOB規制に関する流れについても紹介しますので、最後までご参照ください。

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1. TOBの規制とは

はじめに、TOBの規制とはどのようなものかについて明らかにしたうえで、規制の対象となる「特別関係者」の概念を、2つの類型に分けて解説します。

1-1. 義務的公開買付の必要性

義務的公開買付とは、一定規模の株式等の買取を行うにあたり、法律によりTOBの実行が義務付けられていることをいいます(金融商品取引法 第27条の2)。この義務的公開買付は、会社支配権等に大きな影響を及ぼすような、証券取引の透明性や公正性を確保する目的で制定されたものです。
TOBは、一部の株主から大量の株式を買い付ける行為ですが、これをもし非公開で行ったらどうなるでしょうか。一部の株主が大きな利益を得る一方で、株価の変動などにより、不利益を被る株主も多数発生してしまいます。
これでは株式の公正な取引が阻害されてしまうため、株主に公平な取引機会を設ける目的で制定されたのが、義務的公開買付です。
なお、TOBのルールには後述する規制がありますが、それらに違反した場合は、刑事責任や課徴金などの対象となってしまうため、注意しなければなりません。

1-2. 特別関係者概念について

TOBは、株式の買付者が一定割合を超える場合に求められるものです。しかし、法人をいくつも設立し、形式上の持株数を減らしてしまえば、TOBを行う必要はなくなってしまいます。
そのため、「特別関係者」という概念を設け、2種類の基準によってTOBが形骸化されないための対策が講じられています

実質基準

実質基準とは、表面上は同一の買付者ではないものの、実際には買付者との間で共同して対象株券等の取得・譲渡、議決権その他権利の行使、買付後に相互の株券等の譲渡・譲受を合意している者を「特別関係者」と規定する基準のことです(金融商品取引法 第27条の2 第7項 2号)。
形式的には別人同士であっても、あらかじめ買付後の譲受などにお互いが合意している場合は、買付人および特別関係者の株券等所有割合が合算されます。
したがって、買付人の保有割合が後述するTOBの水準に満たない場合でも、実質基準による特別関係者に該当する際は、特別関係者の持つ株式を合算し、改めて保有割合を計算しなければなりません。

形式基準

形式基準とは、株券等の買付者と、株式の所有を巡る関係や血縁の関係にある人物を「特別関係者」と規定する基準のことです(金融商品取引法 第27条の2 第7項 1号)。
買付者が個人の場合は、買付者の配偶者および1親等以内の親族が特別関係者となります。また、買付者が法人の場合は、役員や当該法人と特別資本関係にある個人・法人などが特別関係者として扱われます。

2. TOBの規制に関する主なルール

TOBの規制に関しては、複数の重要なルールが設けられています。以下の3つに分類し、それぞれの詳細について解説します。

2-1. 5%ルール

TOBの規制に該当する一つ目のルールが、いわゆる「5%ルール」です。証券取引所外で買い付けし、買付後に保有する株式等の割合が、発行株式全体の5%を超える場合には、公開買付を実施する義務が設けられています。
発行済株式の5%以上を保有すると、企業経営などに及ぼす影響が大きいと考えられるため、このルールが設定されています。
ただし、TOBで買付を行う対象となる人数と、TOB実施日より60日以前の証券市場外で買付を行った人数の合計が10人以下の場合は、このルールの適用外となるため注意が必要です。その際は、保有率が5%を超えたとしても、TOBを行う必要はありません。

2-2. 1/3ルール

TOBの規制に該当する2つ目のルールは「1/3ルール」です。証券取引所の内外に関わらず、買付後の株式等の保有割合が1/3を超える場合、必ず公開買付を行うことが義務付けられています。
1/3ルールに抵触する具体的なケースは、主に以下の3つです。

  • 【証券取引所外のケース】60日間で10名以内の株主から株式を買い付けた結果、保有割合が1/3を超えた場合
  • 【証券取引所内のケース】ToSTNeT(※)などを利用する特定売買により、株式の保有割合が1/3を超えた場合
  • 【証券取引所の内外で急速な買付を行うケース】3ヶ月以内に10%を超える株券等を取得し、そのなかに市場取引外や特定売買が合計5%を超えて含まれている場合で、かつ株式の保有割合が1/3を超えた場合

※ToSTNeT(トストネット)とは、東京証券取引所にて立会時間外に行う取引のこと。

2-3. その他のルール

5%ルールや1/3ルールに抵触する場合以外にも、ルールは存在します。
他の買付者がTOBによる公開買付を行っている期間中に、保有割合が1/3を超えている株主が新たに5%を超える株式等の買い増しを実施する場合には、公開買付をしなければなりません
ただし、企業グループ内で株式の移転や新株予約権などを行使する場合は、この対象外となります。

3. 海外のTOB規制

次に、海外のTOB規制について、アメリカとヨーロッパを例に、それぞれどのような規制が設けられているのかを解説します。

3-1. アメリカにおける規制・ルール

アメリカにおけるTOBに関するルールは、米国証券取引法(ウイリアムズ法)において定められています
なお、「上場会社の株式を5%を超えて取得する場合は、取得の開示を請求する」という日本の5%ルールに類似した規制はありますが、1/3ルールに相当する規制などはありません。
買付価格の下限に関する規制は無く、公開買付に関する期間の延長はいくらでも認められています。また、一度公表したTOBの撤回が認められているなどの特徴があります。

3-2. ヨーロッパにおける規制・ルール

ヨーロッパにおけるM&AのルールであるEU企業買収指令は、イギリスの法律がベースとなっており、日本の1/3ルールに類似したルールも存在します。ただし、基本的に義務的公開買付と全部買付義務がある点などは、日本のTOB規制とは異なります。
なお、ヨーロッパ各国の規制・ルールは、EU企業買収指令に基づき定められる面があるものの、それぞれに定められています。
また、イギリスにおいては、株式を現金で買い付ける場合は、資金調達に問題が無いことをファイナンシャルアドバイザーに証明してもらわなければなりません。株主の承認がある場合を除き、敵対的TOBに対して買収防衛策が打てないなどのルールが定められています。

4. 昨今におけるTOBの規制に関する動き

日本の公開買付制度は1971年に導入され、米国や英国の制度を参考に、時代の変化に合わせて改正されてきました。しかし、2006年に金融商品取引法が成立して以降は、現時点においても大きな改正はなされていません。
資本市場を巡る環境は常に変化し続けており、こうした事態を踏まえ、TOB規制のあり方についての見直しを必要とする声が高まりつつあります
具体的には、以下の内容に関する提案が行われています。

  • TOB強制の適用範囲を見直し、市場内取引や1/3ルールなどを変更する
  • TOBを強制する要件を緩和するための方策を整備する
  • 例外的な取扱いなどを設け、TOB規制そのものを現在よりも柔軟に運用する

5. まとめ

株式市場外や市場内における立会時間外の取引で、株券等を大量に買い付けるためには、買付者が買付期間や買付価格、買付株式数をあらかじめ開示したうえで、TOBを行わなければなりません。
TOBは、経営陣の了承を得て行われるMBOや、敵対的買収を目的とする株式取得などの際に必ず行われるものであり、規制に違反した場合には罰則が設けられています。
しかし、TOBの規制に関するルールは非常に複雑であり、特別関係者に該当するかどうかは、実質基準や形式基準に基づいて慎重に判断しなければなりません。高度な知識を要する判断を自社の人材だけで行うのは非常に難しいため、TOBによる株式の取得を行う際は、専門家にアドバイスを受けながら進めていくのが良いでしょう。
M&Aキャピタルパートナーズは、東証プライム上場のM&A仲介会社であり、弁護士や公認会計士などの専門家も数多く在籍しています。TOBを検討する際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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