新規事業のM&Aとは? 増加の理由やメリット、成功させるためのポイントを解説

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M&Aによる買収は、新規事業を立ち上げる際の効果的な手法の一つです。
新規事業の立ち上げは企業にとって大きなチャレンジですが、M&Aを活用すれば、リスクを大きく軽減することができます。
本記事では、新規事業のM&Aの概要について解説したうえで、メリットや成功させるためのポイント、実際の企業の事例などを紹介していきます。

このページのポイント

~新規事業のM&Aとは?~

新事業をゼロから始めるにはコストや手間がかかるうえに、必ずしも成功するとは限らないため、既に軌道に乗った事業をM&Aで買収し、リスクを抑えて新規事業を始めるを事を指す。大手企業とスタートアップの連携が顕著に見られ、国内スタートアップを対象としたM&Aの件数は2020年から2021年までのあいだに58%増加した。M&Aを通じた新規事業のスタートでは、買収側と売却側が統合することによる相乗効果(シナジー効果)が期待できるが、M&Aである以上、期待通りのシナジー効果が得られない場合もあるため、留意が必要である。

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1. 新規事業のM&Aとは

新規事業のM&Aは、買収側の企業が新規市場開拓や事業を拡大することを目的に行うことが一般的です。
新事業をゼロから始めるにはコストや手間がかかるうえに、必ずしも成功するとは限りません。しかし、既に軌道に乗った事業をM&Aで買収すれば、リスクを抑えて新規事業を始めることが可能です。

2. 新規事業立ち上げのM&Aは増えている

新規事業立ち上げを目的としたM&Aは増加傾向です。コロナ禍のなかで一時停滞したM&Aですが、現在は大手企業とスタートアップの連携が顕著に見られます。EYによると、国内スタートアップを対象としたM&Aの件数は2020年から2021年までのあいだに58%増加しました。国によるスタートアップの推進策も展開されていることから、今後も増加を続ける可能性は高いでしょう。

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3. 新規事業のM&Aを行うメリット

新規事業のM&Aのメリットは以下のとおりです。

  • 現在の事業との相乗効果が生まれる
  • 企業の規模や事業エリアを拡大できる
  • 販路の拡大が期待できる
  • 素早く新規事業に参入できる
  • 信頼やブランド力を買うことができる
  • 優秀な人材や技術を確保できる

それぞれ見ていきましょう。

3-1. 現在の事業との相乗効果が生まれる

M&Aを通じた新規事業のスタートでは、買収側と売却側が統合することによる相乗効果(シナジー効果)が期待できます。例えば、革新的な商品を生み出しながら知名度が無いために伸び悩んでいた機能を、誰もが知る大企業が買収した場合、両者の強みがかけ合わされて大きな利益を生み出すことが考えられるでしょう。

3-2. 企業の規模や事業エリアを拡大できる

単純に事業規模を大きくできることも、M&Aによる買収のメリットです。規模が拡大すれば、スケールメリットによって仕入れ価格を抑えることができ、事業の成長につながります。

3-3. 販路の拡大が期待できる

M&Aによる買収は、販路の拡大にも有効です。販路を広げようと馴染みの無い土地へ進出すると、地域の事情や慣習を理解できず、失敗してしまうおそれがあるでしょう。しかし、既存の地元企業を合併・買収すれば、そういったリスクを軽減できます。

3-4. 素早く新規事業に参入できる

素早く効率的に新規事業を始められることも、M&Aによる買収のメリットです。
新規事業の立ち上げは、本来ゼロからのスタートです。しかし、既にある事業をM&Aで買収すれば、売却側の企業が持っている資源や企業価値を引き継ぐことができます。また、売り手が許認可を得ている場合には、そのまま許認可も引継げるため、スピーディにスタートすることが可能です。

3-5. 信頼やブランド力を買うことができる

新規で事業を立ち上げる場合、周囲からの信頼やブランド力がゼロの状態からスタートすることになります。しかし、M&Aによる買収ならば、買収側の企業が培った信頼やブランドも引き継ぐことが可能です。また、売り手企業のブランドのファンも獲得できるでしょう。

3-6. 優秀な人材や技術を確保できる

M&Aによる買収では、売却側の企業が持つ人材や技術を獲得することができます。これにより、ノウハウを持つ人材を新たに採用したり、社内で育成したりする時間やコストを省けるため、新規事業を素早く展開することが可能です。

4. 新規事業のM&Aを成功させるためのポイント

新規事業のM&Aを成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 経営者同士で信頼関係を築く
  • 徹底したデューデリジェンスを実施する
  • 人材マネジメントをしっかりと行う
  • ステークホルダーに対し慎重な説明を行う

こちらも一つずつ解説していきます。

4-1. 経営者同士で信頼関係を築く

M&Aには、経営者同士の信頼関係構築が大切です。売却価格や買収後の経営方針などで、一方が不本意な部分を残したままM&Aを実施してしまうと、期待通りのシナジー効果が発揮されなかったり、従業員が大量離職してしまったりするリスクに直結します。
経営者同士で綿密なコミュニケーションをとり、信頼関係を構築することが、新規事業のM&Aを成功させるためのポイントです。

4-2. 徹底したデューデリジェンスを実施する

デューデリジェンスは、たとえ費用がかかっても専門家に依頼し、適切に実施しましょう。デューデリジェンスとは、買収側が売却側に対して投資することの価値やリスクなどを調査することを指します。デューデリジェンスが不十分なままM&Aを実施してしまうと、買収前には予期していなかった負債を引き継いだり、訴訟に巻き込まれたりするおそれがあります。

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4-3. 人材マネジメントをしっかりと行う

M&Aでは、従業員に対するフォローやマネジメントが重要です。
特に売り手企業の従業員は、M&Aにより組織体制や企業文化、業務内容の大幅な変更に晒され、ストレスを感じる可能性があります。適切にケアしないと、モチベーションの低下や、大量離職につながる恐れもあるでしょう。
生産性の低下や人材の流出を防ぐために、M&A実施前に従業員に対し丁寧な説明を行う必要があります。さらにPMI後にも、それぞれの従業員に対する適切なマネジメントが求められます。

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4-4. ステークホルダーに対し慎重な説明を行う

M&Aには、ステークホルダーとの信頼関係に影響を及ぼすリスクが存在します。
例えば、売り手企業と既存の取引先が競合する場合、M&A後に取引先との関係が損なわれ、既存事業にマイナスの影響が生じる可能性があります。そういった事態を避けるため、事前に取引先に対し慎重な説明を実施することが重要です。

5. M&Aで新規事業へ参入した企業の事例

続いて、新規事業への参入にM&Aを活用した企業の事例を3件紹介します。

5-1. コクヨ

2021年、コクヨ株式会社は学習ノート共有サービス「Clear」を運営する株式会社CLEARを、株式譲渡により子会社化しました。このM&Aによって、コクヨは、国内外の顧客拡大と新規事業への進出を果たしました。またCLEAR側も、コクヨブランドによる認知度向上と既存事業の拡大を実現しています。

5-2. 富士フイルム

富士フイルム株式会社の新規事業には、化粧品、医薬品、再生医療の3つがあります。各分野において、国内外の企業に対しM&Aを実施することで、その技術を取り込み、成果をあげてきました。また、それぞれの事業分野で、写真フイルム技術との親和性を活かし、機能性や技術革新を成功させた点も特徴です。

5-3. ビジネス・ブレークスルー

2021年、株式会社ビジネス・ブレークスルーは、子供向け英会話オンライン市場に参入するために、株式会社ブレンディングジャパンを買収しました。
ビジネス・ブレークスルーは、社会人対象の人材育成教育事業や、幼児から高校生までを対象とするインターナショナルスクールなどを運営していましたが、このM&Aにより子供向けオンライン英会話スクールという新規事業に参入しています。また、規模の拡大によるスケールメリットも得られました。

6. まとめ

M&Aによる新規事業の立ち上げについて解説しました。
新規事業を始めるためM&Aを実施することには、リスク回避やコスト削減、売り手企業の人材やブランド力を享受できたり、シナジー効果を期待できるなどのメリットがあります。
一方、M&Aである以上、期待通りのシナジー効果が得られない、従業員の反感を招くなどのリスクを伴います。これらのリスクを避けつつ、M&Aによる利益を最大化するためには、専門家のサポートを受けながら進めるのがおすすめです。
M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つ、信頼性の高いコンサルタントです。新規事業のM&Aについてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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