株式取得でかかる費用とは? 関連費用の詳細や会計上の処理を詳しく解説

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株式を取得する際に必要な費用には、M&A仲介会社に支払う手数料のほか、デューデリジェンスと呼ばれる企業監査のための費用や、取得手続きの実費にあたる費用があります。さらに、株主名簿の書き換えにあたっては、名義書換料も欠かせません。
そこで本記事では、これらの費用についてわかりやすく解説します。内訳を理解すると共に、会計・税務上の処理も把握しておくと予算感がつかみやすくなりますので、最後までご参照ください。

このページのポイント

~株式取得でかかる費用とは?~

株式取得には、購入代金のほかに取得関連費用がかかる。取得関連費用としては、主に、M&A仲介手数料やアドバイザリー報酬、デューデリジェンス費用、印紙代や登記にかかる費用、名義書換料などがそれにあたる。取得関連費用は会計処理上は取得価額に含まれるが、税法上では意思決定が行われるタイミングによって「取得費」もしくは「損金」のどちらかでの扱いとなる。

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1. 株式取得にかかる費用とは

株式取得にかかる費用には、株式などを取得したときに払った購入代金以外に、購入手数料や名義書簡料なども含まれます。これらは取得関連費用(付随費用)と呼ばれ、仲介業者への報酬や印紙代、登記に関する費用などが該当します。

2. 株式の取得関連費用として扱われる費用

株式の取得関連費用(付随費用)として扱われるものには、仲介手数料、取得前後のデューデリジェンス費用、その他の手続きの実費などが挙げられます。各費用の詳細を下記に解説しますので、順番に確認していきましょう。

2-1. M&Aの仲介手数料やアドバイザリー報酬

株式の取得は、事業承継や企業買収を目的とすることが多く、専門家であるM&Aの仲介会社に依頼するのが一般的です。依頼の際は、仲介手数料やアドバイザリー報酬を支払う必要があります。
仲介手数料は、M&Aを行う売り手企業と買い手企業の間に入り、中立的な立場からM&Aの成立に向けて進めてもらう際に払う費用であり、買い手と売り手の両方が負担します。アドバイザリー報酬は、売り手か買い手のどちらかについてもらうアドバイザーに対して、案件を進めてもらうために支払うものです。
さらに、非上場株式を取得した場合は、紹介者に対して紹介料や謝礼金などを払う場合もあります

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2-2. デューデリジェンス費用

株式の取得では、その目的上、会社の財務・法務・ビジネスモデルなどの監査(デューデリジェンス)を行うのが一般的です。デューデリジェンスには費用がかかり、株式取得決定の前後によって、取得関連費用に含まれるかどうかが変わります。
株式取得を決める前であれば、取得関連費用に含まれません。一方、取得を決めた後であれば、取得関連費用に含まれるのが通常です。ただし、意思決定の前であっても、買収先が既に決まっているケースでは、取得関連費用に含めるように求められます。

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2-3. 印紙代や登記にかかる費用

株式取得を実行するときは、そのスキーム(方法)に応じた契約書や計画書を作成する必要があります。これらの書類や株券、有価証券の受取書は「課税文書扱い」となり、課税額相当の印紙代も取得関連費用として扱われます。
加えて、会社組織が変わる場合には、商業登記・法人登記の際の費用も必要です。具体的には、登録免許税や必要書類の交付手数料などが挙げられます。

2-4. 名義書換料

株式を取得した人は、公に証明するため、株主名簿の書き換え請求を行わなければなりません。請求に応じて書き換えをしてもらうにあたり、名義書換料が必要です。
なお、株主が変わっても、発行会社が自ら名義変更することはありません。したがって、新しい株主から請求する必要があります。

3. 株式の取得関連費用の会計処理

法人が別法人の株式を取得して子会社化した場合、連結財務諸表上は、発生した事業年度の費用として処理しなければなりません。取得関連費用の内容と金額については、連結財務諸表の「注記事項」として開示するよう、会計基準で定められています。
同様に子会社化したケースでは、個別財務諸表上で取得関連費用は株式の「取得価額」に含めます。

4. 株式の取得関連費用の税務処理

株式の取得関連費用の税務上の処理はどうなるのでしょうか。結論として、取得関連費用(税込)は、取得費として扱うと定められています。
ただし、弁護士・司法書士やM&Aの仲介会社などの専門家に支払った費用を取得費にするか否かは、議論が分かれているのが現状です。一般的に、株式取得の意思決定が行われる前の費用なら「損金処理」、意思決定が行われた後の費用なら「取得費」として扱います
意思決定のタイミングと調査目的によって処理が分かれるため、株式取得の経緯や調査の意図は、資料として残しておくと良いでしょう。

5. 株式譲渡における不明な取得費の計算方法

株式譲渡において、購入した時期が古い株式や、相続によって得た株式である場合には、取得費が不明になっているケースも考えられます。該当するケースでは、同一銘柄の株式ごとに、取得価額を「株式譲渡した額の5%相当」にすることが可能です。
例えば、取得費を正確に計算することができない状態で、株式を1,000万円で譲渡したと考えましょう。この場合は、1,000万円 × 0.05 = 50万円を取得費に換算して問題ありません。

6. まとめ

株式取得には、購入代金のほかに取得関連費用がかかります。取得関連費用は、会計処理上だと「取得価額」に含まれますが、税務上では「取得費」と「損金」のどちらかとなり、取得の意思決定が行われるタイミングで変わることが留意点です。また、相続などで取得費がわからない場合には、譲渡金額の5%を取得費にすることが認められています。
株式取得にかかる諸費用の取扱いは、会計処理と税務処理で複雑な部分があります。取得目的や、その他の詳細な条件が決まっている場合であっても、専門家へ事前に相談しましょう。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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