更新日
事業譲渡の株主総会について
事業譲渡では、事業全部や重要な事業の一部の譲渡は原則として株主総会の特別決議が必要。相手方が特別支配会社の「略式事業譲渡等」、重要でない一部譲渡、対価が純資産の20%以下の「簡易の事業譲受け」などは例外となる。株主総会を開催する場合は、招集→特別決議→議事録作成・保存などの手続きを行う。必要な株主総会の承認を得ずに事業譲渡を行った場合、事業譲渡が無効となる可能性や、取締役の任務懈怠責任が問題となる可能性がある。
事業の全部または重要な一部を動かす事業譲渡は、会社の進路を左右する重大事項です。そのため原則として株主総会の特別決議が求められ、適切な招集・審議・記録が欠かせません。一方で、相手方が特別支配会社に当たる略式事業譲渡等や、重要でない一部譲渡、対価規模が小さい簡易の事業譲受けなど、例外的に株主総会の承認を要しないケースもあります。
本記事では、株主総会で特別決議が必要な理由と、手続きの流れについて詳しく解説します。事業譲渡の株主総会議事録に記載する項目のほか、株主総会が必要な場合に開催しないとどうなるのかについても、わかりやすく説明します。
なお、事業譲渡全体の仕組みや手続きの流れは「事業譲渡とは?」で解説しています。
事業譲渡の株主総会では特別決議が必要?
事業譲渡の過程で原則として必要となるのが、株主総会での特別決議です。この決議の特徴は、重要度の高い議案の採決に用いられる点です。原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
ただし、すべての事業譲渡において、株主総会の開催が必要なわけではありません。例外的に、株主総会の開催が「不要」となる事業譲渡も存在します。
事業譲渡で株主総会の決議が必要なケース
事業譲渡のなかでも、事業全部の譲渡や重要な事業の一部譲渡を行う場合には、原則として株主総会での特別決議を要します。
事業全部の譲渡を行う場合
事業承継などで事業全部の譲渡を行う場合は、会社の存続に直接関わる重大な決定であるため、株主総会での特別決議が必要です。特別決議は、企業の全体的な経営の方向性を変える可能性があり、株主全体の合意を得ることが重要です。
具体的には、企業が新たな事業領域に進出するために、既存の事業すべてを譲渡し、資本を新事業に集中させるケースが該当します。
重要な事業の一部譲渡を行う場合
一方、重要な事業の一部を譲渡する場合も、その事業が企業の収益やブランドイメージに大きな影響を与える可能性があるため、株主総会での決議が必要です。会社の将来に影響を及ぼす恐れがあり、株主全体の意見を反映させることが求められます。
具体例として、企業が自社の主力事業の一部を他社に譲渡し、得た資金を新たな事業開発や研究開発に投資するケースが考えられるでしょう。
事業譲渡で株主総会の承認が不要なケース
上記に対して、事業譲渡には、例外的に株主総会での承認が不要なケースがあります。
略式事業譲渡等に該当する場合
事業譲渡の相手方(譲受会社)が譲渡会社の総株主の議決権の90%以上(定款でこれを上回る割合を定めている場合は、その割合)を有する「特別支配会社」に該当する場合、「略式事業譲渡等」に該当し、当該事業譲渡に関して譲渡会社における株主総会での決議は不要となります。
これは、譲渡会社の株主総会における議決権の大半(90%以上)を譲受会社が保有しているケースで、その事業譲渡が承認されることが明らかであり、株主総会を開催する必要性に乏しいためです。
重要でない事業の一部譲渡を行う場合
譲渡する資産の帳簿価額が譲渡企業の総資産の20%(定款でそれを下回る割合を定めたときはその割合)以下であるときは、取引の迅速性や相手方の取引の安全性を図る趣旨により、株主総会での決議は不要です。
例えば、企業が自社の補助的な事業を他社に譲渡するケースが考えられます。この場合、株主総会による承認は不要です。なお、取締役会設置会社では、取締役会決議など社内の意思決定手続きが必要となる場合があります。
簡易の事業譲受けに該当する場合
他の会社の事業をすべて譲り受ける際、譲受けの対価として交付する財産の帳簿価額が、譲受会社の純資産の20%(定款でそれを下回る割合を定めたときはその割合)を超えない場合、「簡易の事業譲受け」に該当し、原則として譲受会社における株主総会での決議は不要となります。ただし、一定数以上の株式を有する株主が、所定の期間内に反対の旨を通知した場合には、株主総会の承認が必要です。
前述のケースと異なり、これは譲受側における規定です。そもそも会社が他の会社から事業の全部を譲り受ける場合には、譲受企業において原則として株主総会の特別決議による承認が必要となります。事業の全部を譲り受けることは、譲受会社の事業や財産に大きな影響を与える可能性があるためです。
ただし、上記のとおり譲受けの対価が譲受企業の純資産に比べて影響が小さい事業譲受けの場合には、株主への影響も小さいと考えて株主総会での承認が不要とされています。
事業譲渡の株主総会の流れ
事業譲渡の際には、株主総会での決議が必要となるケースがあります。手続きの主な流れは、下記のとおりです。いずれのステップも大切なポイントを含むため、一つずつ詳細を確認しましょう。
株主総会開催の決定と株主への招集を行う
取締役会設置会社では、株主総会の招集に関する事項について、取締役会の決議で決定します。そのうえで、株主に対して株主総会の招集通知を行います。
非公開会社の場合、株主総会の開催は、原則として1週間前までに株主への通知が必要です。この通知は、株主総会の日時・場所・議題などを明記したもので、株主が総会に参加するための重要な情報を提供します。
事前の準備を行う
株主総会の開催に向けて、事前準備を行います。準備に含まれるものは、スケジュールの作成、報告内容の整理、質疑応答への対策などです。
なかでも、事業譲渡の詳細な計画や、影響に関する説明資料の作成は、株主からの質問に対応するためにも欠かせません。
株主総会の特別決議で承認を得る
株主総会では、事業譲渡のための特別決議が必要です。この決議では、事業譲渡の意向を株主に伝え、承認を得ます。株主への説明は、誠意をもって行うことが重要であり、そのための資料作成や質疑応答への対策も不可欠です。
議事録の作成・保存を行う
株主総会の開催後は、すみやかに議事録を作成しましょう。
議事録の記録媒体については、電磁的データ、もしくは書面で行います。書面で作成した場合、押印について会社法上での定めはありません。ただし、定款で押印を定めている場合には必要となるため、あらかじめ確認してください。
また、議事録には保存義務があります。原本・コピーそれぞれに保存期間が定められており、債権者や株主から謄写(とうしゃ)や閲覧の要求がある際には、応じる必要があります。
事業譲渡の株主総会議事録に記載する項目
事業譲渡における株主総会後には、議事録を作成する必要があります。会社法では、議事録に記載すべき項目と、作成・保存・閲覧について厳格な規定が設けられています。
具体的な項目については、下表をご覧ください。
| 記載内容 | ポイント・注意点 |
|---|---|
| 開催日時・開催場所 | オンライン等で開催場所にいない者が出席した場合は、その出席方法も記載 |
| 議事の経過の要領および結果 | 事業譲渡の承認議案について、審議の概要や決議結果を記載 |
| 法令上記載が必要な意見・発言 | 会社法施行規則72条3項3号に該当する意見・発言があった場合、その概要を記載 |
| 出席した取締役・監査役等 | 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名または名称を記載 |
| 議長の氏名 | 議長がいる場合に記載 |
| 議事録作成に係る職務を行った取締役の氏名 | 議事録作成を担当した取締役を記載 |
これらの情報は、株主総会の進行と結果を正確に記録するために重要な項目です。
議事録は、株主総会終了後に作成し、株主総会の日から10年間、本店に備え置かなければなりません。また、株主や債権者から所定の閲覧・謄写請求があった場合には、対応する必要があります。
株主総会が必要な場合に開催しないとどうなる?
事業譲渡において株主総会の承認が必要であるにもかかわらず、必要な決議を経ずに事業譲渡を行った場合、事業譲渡が無効となる可能性があります。
なお、議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録によって同意した場合には、実際に株主総会を開催しなくても、株主総会の決議があったものとみなされます。
事業譲渡が無効となった場合には、取引関係に影響が生じるほか、損害賠償などの問題につながる可能性があります。
また、取締役が必要な会社法上の手続きを怠り、それによって会社に損害が生じた場合には、任務懈怠責任が問われる可能性があります。任務懈怠責任とは、取締役をはじめとする役員がその任務を怠った結果、会社に損害が生じた場合に、その損害を賠償する責任を負うものです。
まとめ
事業譲渡は、企業の成長や経営戦略の一部として行われることが一般的です。その過程で必要になるのが、株主総会での特別決議です。しかし、すべての事業譲渡が、株主総会の承認を必要とするわけではありません。また、株主総会を開催した場合の議事録の作成と保存には法律上の規定があり、これらを遵守することが求められます。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
よくある質問
- 事業譲渡ではなぜ株主総会の特別決議が必要になるのですか?
- 事業譲渡は、会社の事業や将来の経営に大きな影響を与える重要な取引であるため、一定の場合には株主総会の特別決議が必要です。具体的には、事業の全部の譲渡や重要な一部の譲渡などが対象となります。特別決議は原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成によって成立します。
- 事業譲渡で株主総会の決議が必要になるのはどのようなケースですか?
- 譲渡会社では、事業全部の譲渡や重要な事業の一部譲渡を行う場合に、原則として株主総会の特別決議が必要です。ただし、一部譲渡では、譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の20%以下(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)の場合は除かれます。また、他の会社の事業全部を譲り受ける場合も、譲受会社で原則として株主総会の承認が必要です。
- 事業譲渡でも株主総会が不要となる例外的なケースはありますか?
- はい。相手方が特別支配会社に該当する略式事業譲渡等や、譲渡資産の帳簿価額が総資産額の20%以下である重要でない一部譲渡、譲受けの対価が譲受会社の純資産額の20%以下である簡易の事業譲受けなどでは、原則として株主総会の承認は不要です。ただし、簡易の事業譲受けでは、一定数以上の株主が所定の期間内に反対した場合、株主総会の承認が必要になります。
- 事業譲渡の株主総会はどのような流れで進めるのが一般的ですか?
- 取締役会設置会社では、まず株主総会の招集に関する事項を取締役会で決定し、株主へ招集通知を行います。非公開会社では原則として株主総会の日の1週間前までに通知し、必要な資料などを準備したうえで株主総会を開催し、特別決議による承認を得ます。その後、議事の経過や決議結果などを記録した議事録を作成・保存します。通知期限は会社の機関設計や議決権行使方法、定款の定めによって異なる場合があります。
- 事業譲渡に関する株主総会議事録にはどのような内容を記載すべきですか?
- 株主総会議事録には、開催日時・場所、議事の経過の要領とその結果、出席した取締役・監査役等の氏名または名称、議長の氏名、議事録作成に係る職務を行った取締役の氏名などを記載します。また、法令上記載の対象となる意見や発言があった場合には、その内容の概要も記録します。
- 事業譲渡に関する株主総会議事録にはどのような保存義務がありますか?
- 株主総会議事録は、株主総会の日から10年間、本店に備え置く必要があります。支店では原則として議事録の写しを5年間備え置きますが、電磁的記録で一定の措置をとっている場合は例外があります。また、株主や債権者は、会社の営業時間内に議事録の閲覧や謄写を請求できます。
- 株主総会が必要な事業譲渡で株主総会を開催しなかった場合、どのようなリスクがありますか?
- 株主総会の承認が必要な事業譲渡について、必要な決議を経ずに実行した場合には、事業譲渡の効力が問題となる可能性があります。また、必要な会社法上の手続きを怠り、それによって会社に損害が生じた場合には、取締役の任務懈怠責任が問題となることもあります。なお、議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録で同意した場合は、実際に株主総会を開催しなくても決議があったものとみなされます。
- 非公開会社が事業譲渡に関する株主総会を開く場合、招集通知はいつまでに出す必要がありますか?
- 非公開会社では、原則として株主総会の日の1週間前までに招集通知を行う必要があります。ただし、書面や電磁的方法による議決権行使を認める場合や、会社の機関設計、定款の定めなどによって期限が異なる場合があります。個別の会社の定款や議決権行使方法も確認することが重要です。
M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)
M&A関連記事
M&A基礎
目的別M&A
- 事業承継とは
- 事業承継とM&Aの違い
- 事業承継M&A
- 「事業承継」と「事業継承」の違い
- 事業承継問題
- 後継者不足の実態
- 事業承継における課題
- 事業承継対策の必要性
- 事業承継を実施するタイミング
- 事業承継の流れ
- 事業承継計画
- 事業承継計画書の記載項目
- 事業承継のチェックリスト
- 事業承継における後継者選定
- 事業承継における後継者育成
- 親族内承継
- 親族外承継
- 従業員への事業承継
- 第三者承継
- 親族内承継と第三者承継の比較
- 後継者のいない会社を買う
- 事業承継の主要スキーム比較
- 持株会社を活用した事業承継
- 事業承継信託
- 事業承継ファンド
- 医療法人の事業承継
- 事業承継に向けた資金調達方法
- 事業承継補助金
- 事業承継で活用できる融資
- 事業承継における生命保険
- 事業承継税制
- 事業承継の税務対策
- 事業承継と資産移転
- 事業承継時の消費税の取扱い
- 承継時の債権・債務の取扱い
- 地位承継
- 包括承継
- 許認可の承継
- 株式相続
- 株式の贈与
- 自社株贈与
- 事業承継士
- 事業承継の専門家
- 事業承継コンサルティング
- 事業承継特別保証制度
- 事業承継に潜むリスクと対策
- 事業承継に伴う労務管理リスク
- 会社売却と事業承継の違い
M&Aスキーム
M&Aプロセス
企業価値評価
M&Aリスク
デューデリジェンス
M&Aファイナンス
M&A税務
M&A法務
用語・その他
- バスケット条項
- 当期純利益
- 資産除去債務
- XBRL
- 特別決議
- 譲渡承認取締役会
- 大量保有報告
- 適時開示
- 法務のポイント
- インサイダー取引
- チャイニーズ・ウォール
- 匿名組合
- キラー・ビー
- クラウン・ジュエル
- グリーン・メール
- ゴールデンパラシュート
- ジューイッシュ・デンティスト
- スタッガード・ボード
- スケールメリット
- ストラクチャー
- 利益相反
- 源泉徴収
- プロキシー・ファイト
- パールハーバー・ファイル
- Qレシオ
- MSCB
- IFRS
- 現物出資
- コントロールプレミアム
- ゴーイング・プライベート(Going Private)
- バックエンド・ピル
- パックマン・ディフェンス
- EV(事業価値)
- 売渡請求
- 株主価値
- レバレッジ効果
- 減損価格
- アーンアウト
- シャーク・リペラント
- スーイサイド・ピル
- ティン・パラシュート
- 低廉譲渡
- 監査法人
- 相対取引
- 範囲の経済
- アナジー効果
- 債券
- 純有利子負債(ネット デット)
- ホールディングス
- COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)
- ディスクロージャー
- 会社法
- ROA(総資産利益率)
- 国際租税条約
- 役員報酬
- SWOT分析
- アンゾフの成長マトリクス
- サクセッションプラン
- ドラッグアロング
- 累進課税
- 総合課税と分離課税の違い
- キャピタルゲイン
- インカムゲイン
- 資本と負債の区分
- 益金不算入
- タックスシールド
- 繰越欠損金
- スタンドアローン・イシュー
- ロックド・ボックス方式
- 特定承継
- プットオプション
- 埋没費用(サンクコスト)
- マイノリティ出資
- 株式等保有特定会社
M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由
創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。
-
明瞭かつ納得の手数料体系
創業以来変わらない着手金無料などの報酬体系で、お相手企業と基本合意に至るまで無料で支援致します。
- 関連ページ -
-
豊富なM&A成約実績
創業以来、国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。
- 関連ページ -
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。

