会社分割の税金とは? 会社分割に関わる税金の種類や繰越欠損金の扱いについて解説

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会社分割の税金について

会社分割の税金は、分割形態(新設/吸収)と対価の帰属(分社型/分割型)により課税対象が異なります。消費税は会社分割そのものには課されませんが、分割後の承継会社では納税義務が免除されない場合があります。不動産取得税・登録免許税・法人税の取扱いも類型や要件によって異なります。法人税は適格分割では簿価による承継、非適格分割では時価による承継が原則です。繰越欠損金は原則として承継されず、一定の場合に利用制限が課されます。

会社全体ではなく、一部の事業に限定して買収を行う際は、会社経営への負担を軽減すべく、通常の株式譲渡に代えて「会社分割」というM&A手法を選択することも有効です。
一方、会社分割を行う場合に検討すべき税金の仕組みは複雑なため、会社分割型M&Aの結果として思わぬ税務インパクトが生じ、あとから問題になるケースがあります。

本記事では、会社分割に関わる税金について詳しく解説します。会社分割の検討にご活用ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


会社分割に関する税金について

会社分割には「新設分割」と「吸収分割」の2種類があります。新設分割は、新たに設立した会社に対して事業を承継させる方法です。一方、吸収分割は、既存の会社に対して事業を承継させる方法です。

分割元の会社が、分割先の会社から受け取ることとなる分割の対価が、最終的に誰に帰属するのかにより、さらに「分社型分割」と「分割型分割」に分類されます。
したがって、対象企業がどの種類の分割に該当するかによって、課税対象が異なります。

会社分割の種類

分社型分割 分割型分割
新設分割
  • 分割した事業は新設会社が引き継ぐ
  • 分割対価は分割会社が受け取る
  • 分割した事業は新設会社が引き継ぐ
  • 分割対価は分割会社の株主が受け取る
吸収分割
  • 分割した事業は既存の他会社が引き継ぐ
  • 分割対価は分割会社が受け取る
  • 分割した事業は既存の他会社が引き継ぐ
  • 分割対価は分割会社の株主が受け取る

会社分割に関わる税金

会社分割を行う際に考慮すべき税金として、主に消費税、不動産取得税、登録免許税、および法人税が挙げられます。これらの税金について、会社分割の局面における取扱いのポイントを順に確認していきましょう。

消費税

会社分割による資産や負債の移転は、消費税の課税対象となる「資産の譲渡等」には該当しないため、会社分割そのものに消費税は課されません。
ただし、会社分割後の承継会社については、分割の形態や分割後の事業年度、分割会社・承継会社の課税売上高、資本関係などに応じて、消費税の納税義務が免除されない場合があります。

不動産取得税

不動産取得税は通常、取得した不動産の固定資産税評価額の3%または4%が課されます。
ただし、分社型分割の場合は以下の1〜4、分割型分割の場合は1〜5の要件を満たすと、それぞれ「非課税」となります。

  1. 分割対価資産として、分割承継法人の株式以外の資産が交付されないこと
  2. 主要な資産および負債が承継法人に移転している
  3. 分割事業が引き続き営まれる見込み
  4. 分割事業に係る従業者の概ね80%以上が、承継法人に従事する見込み
  5. 分割対価が分割会社の株主に按分(あんぶん)される

登録免許税

法人登記と不動産登記に際して、登録免許税が発生します。
法人登記に関しては、分割会社では一律3万円です。分割承継会社では、新設分割の場合は新設会社の資本金額の0.7%、吸収分割の場合は増加した資本金額の0.7%(いずれも3万円未満の場合は3万円)が生じます。
また、会社分割により不動産を承継する場合の所有権移転登記には、原則として不動産価額の2.0%の登録免許税が課されます。

法人税

会社分割では、原則として分割法人が承継法人に対して、その資産または負債を分割時の時価により譲渡したものとみなします。そのため、分割会社では「時価と簿価との差額」を譲渡損益として認識し、譲渡益が生じる場合には課税対象となります。一方、承継会社では時価により、資産または負債を承継することが基本です。
ただし、一定の要件を満たすことで、資産または負債が時価ではなく「簿価により譲渡されたもの」として扱われるケースがあります。その場合、分割法人で譲渡損益を認識する必要は無く、承継法人では簿価で資産または負債を承継します。

会社分割の法人税の扱い

会社分割は、税務上「適格分割」と「非適格分割」に分けられます。これは、合併や会社分割などの組織再編に伴う課税関係を定めた「組織再編税制」に基づく考え方です。

会社分割のうち、資産または負債を時価で譲渡したものと取り扱われる場合を、税務上の「非適格分割」、簿価で譲渡したものとみなされる場合を「適格分割」といいます。適格分割に該当するかどうかによって、分割会社や株主に生じる税務上の扱いが異なります。

適格分割と非適格分割

法令で定められた、一定の要件を満たす場合は「適格分割」に分類されます。

適格分割

適格分割に該当するための要件は、分割会社と承継会社の関係などに応じて、主に以下の4つの類型に分けて定められています。また、原則として、金銭など所定の株式以外の資産を対価として交付しないことが共通の要件となります。

  1. 会社分割の実行前と実行後で完全支配関係(100%)が継続している場合
  2. 会社分割の実行前と実行後で支配関係(50%超)が継続している場合
  3. 共同で事業を営むために会社分割を行う場合
  4. 独立して事業を行うために会社分割を行う場合(一定のスピンオフ)

【2】の場合には、次のような条件が加重されます。

  • 分割対象事業に関する主要な資産や負債を承継会社に移転すること
  • 分割対象事業の従業者の80%以上が、承継会社の業務に従事すること
  • 分割対象事業が承継会社で継続される見込みであること

3の場合には、上記に加えて、分割対象事業と承継会社の事業に関連性があることや、事業規模または役員の引継ぎなど、一定の要件を満たす必要があります。

適格分割に該当すると、移転する資産や負債の譲渡損益に対する課税が繰り延べられます。また、適格分割型分割では、分割会社の株主に対する課税も原則として繰り延べられます。

非適格分割

適格分割に関する要件を満たさない会社分割は、非適格分割とされます。非適格分割の場合、分割対象事業の資産および負債は「時価で譲渡される」ことが原則です。この際、時価と簿価との差額は譲渡損益として認識され、譲渡益の場合には法人税の課税対象となります。
また、非適格の分割型分割では、分割会社の株主が交付を受けた対価のうち、分割会社の資本金等の額に対応する部分を超える金額が、「みなし配当」として扱われる場合があります。

会社分割の繰越欠損金の扱い

繰越欠損金は、ある年度のマイナスの課税所得を繰り越し、将来の課税所得と相殺できる仕組みです。繰越欠損金は発生後、最大10年間繰り越すことができます。
会社分割では、原則として、分割会社の繰越欠損金は承継会社に引き継がれず、分割会社に残ります。
一方、適格分割では、分割会社と承継会社の支配関係が一定期間継続していない場合で、共同事業に関する要件などを満たさないときは、承継会社が分割前から保有していた繰越欠損金の一部について、利用が制限されることがあります。
これは、繰越欠損金を有する法人を利用した租税回避を防止するための措置です。

分割条件 分割会社 承継会社
適格分割 会社分割による特別な利用制限は原則なし 一定の場合、利用制限あり
非適格分割 会社分割による特別な利用制限は原則なし 会社分割による特別な利用制限は原則なし

まとめ

会社分割の税務は、分割形態(新設/吸収)と対価の帰属(分社型/分割型)で整理することが出発点です。消費税は不課税ながら、承継会社に納税義務が発生し得る例外があり、不動産取得税は要件充足で非課税、登録免許税は法人登記と不動産登記で水準が異なります。法人税は適格なら簿価、非適格なら時価での譲渡損益計上が原則で、分割型ではみなし配当の視点が必要です。繰越欠損金は原則承継不可で、一定の適格分割等に使用制限が生じ得ます。本文の枠内を踏まえ、自社の分割スキームに即して税務インパクトを事前に見極めることが重要です。



よくある質問

  • 会社分割にはどのような種類があり、分社型分割と分割型分割は何が違いますか?
  • 会社分割には、新たに設立した会社へ事業を承継させる新設分割と、既存の会社へ承継させる吸収分割があります。さらに、一般的には、分割によって受け取る対価の帰属先により、分割会社が受け取る分社型分割と、株主が受け取る分割型分割に分かれます。どの方式に該当するかによって、取り扱いや課税関係が異なります。
  • 会社分割で関係する主な税金には何がありますか?
  • 会社分割に関係する税金には、消費税、不動産取得税、登録免許税、法人税が含まれます。消費税は分割自体は不課税ですが、その後の承継会社の課税売上高などによって納税義務が発生する場合があります。不動産取得税は取得した不動産に課税されますが、一定の要件を満たす分割では非課税となることがあります。登録免許税は、法人登記や不動産登記の際に資本金額や不動産価額を基準に計算されます。法人税については、原則は時価譲渡として課税されますが、要件を満たせば簿価で承継できるケースがあります。
  • 会社分割における消費税の扱いと、新設分割で承継会社に納税義務が生じるケースはどのようなものですか?
  • 会社分割による資産や負債の移転には、消費税は課されません。ただし、分割後の承継会社については、分割の形態や分割後の事業年度、分割会社・承継会社の課税売上高、資本関係などに応じて、消費税の納税義務が免除されない場合があります。
  • 会社分割で不動産取得税が非課税となるのはどのようなケースですか?
  • 不動産取得税は原則として取得した不動産の固定資産税評価額に対して課税されますが、会社分割では一定の要件を満たすと非課税となります。分社型分割では、分割承継法人の株式以外の資産が交付されないこと、主要な資産と負債が承継会社へ移転すること、事業が継続される見込みであること、従業者の概ね80%以上が承継会社に従事する見込みであることが主な要件です。分割型分割では、これらに加えて分割対価が分割会社の株主へ按分されることが求められます。
  • 会社分割における登録免許税は、法人登記と不動産登記でどのように課されますか?
  • 会社分割の法人登記では、分割会社側は一律3万円、承継会社側は新設分割では新会社の資本金額の0.7%、吸収分割では増加した資本金額の0.7%が登録免許税として課され、最低税額はいずれも3万円です。不動産登記では、会社分割により所有権が承継会社へ移転する際、原則として不動産価額の2.0%が課されます。
  • 会社分割における適格分割と非適格分割の違い、および適格分割の主な要件は何ですか?
  • 会社分割では、原則として資産や負債を時価で移転したものとして課税関係を計算しますが、一定の要件を満たす適格分割では、簿価による承継が認められ、譲渡損益に対する課税が繰り延べられます。適格分割の要件は、完全支配関係が継続する場合、支配関係(50%超)が継続する場合、共同で事業を営む場合、独立して事業を行うための分割に該当する場合の4類型に分けて定められています。類型に応じて、主要な資産・負債の移転、従業者の引継ぎ、事業継続の見込みなどの要件を満たす必要があります。
  • 非適格分割になった場合、法人税やみなし配当はどのように取り扱われますか?
  • 適格分割の要件を満たさない非適格分割では、分割対象事業の資産および負債は原則として時価で譲渡されたものとして扱われ、時価と簿価との差額が譲渡損益として認識されます。譲渡益が生じた場合は法人税の課税対象となります。また、非適格の分割型分割では、分割会社の株主が交付を受けた対価のうち、分割会社の資本金等の額に対応する部分を超える金額が、みなし配当として扱われる場合があります。
  • 会社分割における繰越欠損金はどのように扱われ、承継会社で利用制限がかかるのはどのようなケースですか?
  • 会社分割では、原則として、分割会社の繰越欠損金は承継会社へ引き継がれません。一方、適格分割では、分割会社と承継会社の支配関係が一定期間継続していない場合で、共同事業に関する要件などを満たさないときは、承継会社が分割前から保有していた繰越欠損金の一部について、利用が制限されることがあります。これは、繰越欠損金を利用した租税回避を防止するための措置です。

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