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事業譲渡類似株式について
事業譲渡類似株式とは、株式の種類そのものを指す言葉ではなく、一定の条件のもとで株式を譲渡した場合に、その譲渡益が日本国内で課税される取扱いを指します。日本法人の株式について、海外の親会社や非居住者による支配関係などがある場合に、実質的に国内企業の事業譲渡と同様とみなされる点が特徴です。
株式譲渡益に対する課税は、原則として株主の居住国の税制に従って行われます。しかし、その原則には例外があり、日本法人の株式を一定の条件のもとで譲渡した場合には、事業譲渡類似株式の譲渡として日本国内で課税されることがあります。実際の判断では、国内法上の要件だけでなく、相手国との租税条約や日本での課税範囲まで確認しなければなりません。そのため、制度の定義と条件、確認すべき論点を正確に押さえることが重要です。
本記事では、事業譲渡類似株式の定義やその条件、譲渡に関する注意点などの情報について、具体例も交えて解説します。
また、M&Aの意味や基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
事業譲渡類似株式とは
事業譲渡類似株式とは、どのような株式のことでしょうか。はじめに、その定義を整理したうえで、事業譲渡類似株式となる条件について説明します。
事業譲渡類似株式の定義
株式には普通株式や種類株式など、さまざまな種類がありますが、事業譲渡類似株式は、こうした株式の種類の一つではありません。
後述する「ある特定の条件下」で株式を売却すると、その売却は「事業譲渡類似株式の譲渡」として譲渡益に対して日本国内で課税されます。
日本に拠点を置く企業が発行した株式のうち、50%以上を海外の親会社や非居住者が保有している場合などには、その株式を他企業や個人に譲渡した際に生じる譲渡益に対して、海外ではなく日本で課税が行われます。
これは、日本国内の会社が海外に居住する株主(法人・個人を問わず)の支配下にある場合、当該株式の譲渡は、実質的に国内企業の事業譲渡と同じであると考えられるためです。
事業譲渡類似株式となる条件
株式の譲渡が「事業譲渡類似株式の譲渡」とみなされるためには、内国法人の株主などの「特殊関係株主等」が、内国法人の発行する株式の50%以上を保有していることに加え、以下の2つを満たさなければなりません。
- 特殊関係株主等が譲渡を実施した年度以前3年内の、内国法人の発行済株式や出資総額のうち、25%以上に相当する株式や出資などを、特殊関係株主等が所有していたこと
- 非居住者を含めた内国法人の特殊関係株主等が、その譲渡を行った年度時点において、内国法人の発行済株式や出資のうち、総額の5%以上に相当する金額の株式や出資の譲渡を行ったこと
また【2】に関しては、法人税法施行令第178条第7項において、会社分割などの組織再編が実施された場合等について別途規定されているため、留意が必要となります。
事業譲渡類似株式に関する注意点
事業譲渡類似株式に際しては、以下の2点に注意しなければなりません。
いずれも重要なことを含みますので、順番に見ていきましょう。
国内法と租税条約を確認する
一つ目の注意点は、国内法と租税条約を確認することです。
法律には、日本国内にのみ通用する「国内法」と、国同士でお互いの税金の在り方を約束した「租税条約」の2つがあります。国内法よりも、国と国とで約束した租税条約のほうが優先されるため、まず国内法と租税条約を確認しなければなりません。
国内法人の株式を売却した株主がどの国に居住しており、その国と日本国との間でどのような租税条約が締結されているかによって、事業譲渡類似株式の譲渡に対する日本の課税が認められたり免除されたりします。
このように、国ごとに課税要件や規定が異なるため、どの国の租税条約が適用され、その適用条件は何かを詳しく把握することが極めて重要です。
日本での課税範囲を確認する
2つ目の注意点は、日本の課税範囲を確認することです。法人の事業譲渡類似株式の譲渡に関する課税関係については、日本での課税範囲を把握しておくことも大切です。
内国法人の課税所得は国内源泉所得だけでなく、国外の源泉所得も対象となります。したがって、こうした所得がある場合は、日本で法人税を納めなければなりません。
例えば、海外の親会社が日本国内の子会社の株を譲渡して利益が生じれば、事業譲渡類似株式の譲渡とみなされるため、法人税の課税対象となり、日本国内で申告の義務が生じることになります。
また、現地で外国法人税が課された場合には、二重課税を防止する観点から、一定の範囲内で「外国税額控除」の適用が認められています。
なお、外国税額控除の限度額は、国内法人の法人税額に、全世界所得に対する国外所得額の割合をかけることで算出が可能です。
事業譲渡類似株式の具体例
最後に、事業譲渡類似株式の譲渡に関する具体例について、シンガポールと香港のケースをそれぞれ紹介します。
シンガポールの例
例えば、シンガポールにある法人が、日本法人の株を保有しているとします。仮にこの法人が内国法人の株式を100%保有している完全親会社であり、そのうちの30%を譲渡して利益を得ていた場合は、事業譲渡類似株式における譲渡の要件を満たすこととなります。
ただし、事業譲渡類似株式の譲渡に際しては、上述のように、国内法だけでなく租税条約も確認しておかなければなりません。
日本国とシンガポール政府との間で交わされた租税条約の第十三条を確認してみると、事業譲渡類似株式についてシンガポール在住の居住者が日本法人の株式譲渡によって利益を得た場合、日本によって課税できることになっています。したがって、シンガポールでのケースでは、事業譲渡類似株式の譲渡所得が日本で課税されることとなります。
香港の例
次は、香港の場合です。こちらも同様に、香港にある法人が日本法人の株式を100%保有しており、そのうち30%を譲渡して利益を得て、事業譲渡類似株式の要件を満たしたと仮定します。
両国間の租税条約を確認すると、日本国政府と香港特別行政区政府との間で締結された租税条約の第十三条には、事業譲渡類似株式を含む譲渡による利益への課税は、利益を得たものの居住地でのみ認められています。したがって、香港と日本における事業譲渡類似株式の譲渡益については、日本では課税されず、香港でのみ課税されることが通常です。
まとめ
事業譲渡類似株式は、特定の支配関係や譲渡要件を満たした株式譲渡について、日本国内で課税される取扱いです。原則として株式譲渡益は株主の居住国で課税されますが、この取扱いに該当する場合は日本で法人税の課税対象となることがあります。ただし、実際の課税関係は国内法だけで決まるものではなく、租税条約の内容によって大きく変わります。さらに、日本での課税範囲や外国税額控除の可否も確認が必要です。クロスボーダーで株式譲渡を検討する際は、国内法と租税条約の双方を踏まえ、専門家に相談しながら慎重に判断することが重要です。
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よくある質問
- 事業譲渡類似株式とは何ですか?
- 株式の種類の一つではなく、一定の条件のもとで株式を譲渡した場合に、その譲渡益が日本国内で課税される取扱いを指します。
- 事業譲渡類似株式の譲渡とみなされるのはどのような場合ですか?
- 内国法人の株主などの特殊関係株主等が、内国法人の発行する株式の50%以上を保有していることに加え、一定期間内の保有割合と譲渡割合に関する要件を満たす場合です。
- 事業譲渡類似株式となる具体的な条件は何ですか?
- 特殊関係株主等が、譲渡を実施した年度以前3年内に内国法人の発行済株式や出資総額のうち25%以上に相当する株式や出資などを所有していたこと、さらに譲渡を行った年度時点で、特殊関係株主等が発行済株式や出資のうち総額の5%以上に相当する金額の株式や出資の譲渡を行ったことが必要です。
- 事業譲渡類似株式の判断ではなぜ租税条約の確認が必要ですか?
- 国内法よりも租税条約が優先されるためです。株主の居住国と日本との間で締結されている租税条約の内容によって、日本で課税されるか、免除されるかが変わります。
- 事業譲渡類似株式の譲渡では日本での課税範囲も確認すべきですか?
- 確認が必要です。法人の事業譲渡類似株式の譲渡に関する課税関係では、日本での課税範囲を把握しておくことが重要であり、日本国内で申告義務が生じる場合があります。
- 外国で法人税が課された場合に二重課税への対応はありますか?
- あります。現地で外国法人税が課された場合には、二重課税を防止する観点から、一定の範囲内で外国税額控除の適用が認められています。
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