事業譲渡でかかる費用とは? 売り手と買い手それぞれの費用負担と、費用を抑える方法を解説

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事業譲渡を実行するなかで、譲渡費用のほかに仲介会社に支払う手数料や税金などがあります。その費用や内訳は、売り手側と買い手側とで異なります。
事業譲渡に際しては、専門的な知識や経験が欠かせません。M&Aの専門家に依頼して進めることで、成功させる確率を上げることができますが、専門家に支払う手数料などの費用がかかるため注意が必要です。
本記事では、事業譲渡に関連する費用について詳しく解説します。事業承継を検討している中堅企業の後継者様や、譲渡にまつわる情報を把握したい方は、最後までご参照ください。

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このページのポイント

~事業譲渡でかかる費用とは?~

事業譲渡でかかる費用や内訳は、売り手側と買い手側とで異なります。売り手側と買い手側双方に発生する費用としては、事業譲渡における諸経費としての税金、仲介会社に依頼した場合は仲介手数料があげられ、細かい内訳は譲渡内容により異なります。これらの支出を合理的に抑えるためには、専門的な知識や経験豊富な専門家に依頼することが選択肢の一つとなります。

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1. 【売り手側】事業譲渡で必要な費用

まずは、売り手側が、事業譲渡で必要になる費用について解説します。

1-1. 手数料

手数料は、M&Aの専門家である仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に対して、依頼するときに生じる費用です。
仲介会社の場合は、売り手と買い手の間に入って交渉を仲介し、中立的な立場で助言業務を行います。一方、FAに関しては、どちらか一方について助言業務を行います。

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1-2. 税金

事業譲渡を行うことで発生する利益などに対して、売り手は税金を納めることとなります。売り手側に生じるものとして、「法人税」や「消費税」が挙げられます。

法人税

事業譲渡を行った際、譲渡対象となる資産と負債の差額よりも事業譲渡の対価が高い場合、利益が生じます。その利益に対して、他の事業で生じた利益などと共に法人税等が課されることが通常です。

法人税の税率は、資本金が1億円以下の法人であれば

  • 所得が800万円までは15%
  • 所得が800万円を超えると23.2%

それ以外の法人であれば、所得に関係無く23.2%と定められています。その他、住民税なども加えられ、概ね30%前後の税率が、法人税等として課されます

消費税

事業譲渡を行うに際して、消費税が課されることとなります。事業譲渡の対象の資産すべてに対して課されるわけではなく、課税対象にならない資産もあるので注意が必要です。

課税対象資産 非課税対象資産

・土地を除く有形固定資産(建物、機械装置など)
・無形固定資産(特許権、ソフトウェアなど)
・棚卸資産(原材料、商品、製品など)
・のれん(営業権)

・土地
・有価証券(株式など)
・債権(売掛金、貸付金など)

なお、消費税は買い手が売り手に支払い、徴収した売り手側が、消費税を納付する方法がとられています。

1-3. 売却に必要なその他の費用

事業譲渡で売却を進めていく際に、以下のような費用も発生します

  • 事業譲渡承認にかかる費用
  • 不動産鑑定にかかる費用
  • 株式発行にかかる費用
  • 退職にかかる費用

事業譲渡は、取締役会で進められるケースもありますが、株主に影響が大きい場合、株主総会の決議が必要です。そういった承認に向けての費用が生じます。
また、不動産などを保有している場合、事業譲渡を進めるうえで不動産鑑定書の取得が求められるケースがあります。その際は、不動産鑑定士に依頼して、不動産の鑑定および鑑定書の作成を行ってもらわなければなりません。
事業譲渡対価として株式を発行する場合には、その発行費用も発生します。その他、事業譲渡で退職する役員などがいれば、退職費用も必要になるでしょう。

2. 【買い手側】事業譲渡で必要な費用

買い手側においても、事業譲渡を進めるにあたって必要な支出があります。買い手側にかかる費用について解説しますので、順番に確認しましょう。

2-1. 手数料

売り手側と同様に、買い手側でも手数料が発生します。仲介会社であれば売り手側と同額の、FAだとしても売り手側とほぼ同額の手数料が生じます。これは、レーマン方式と呼ばれる、取引金額をベースとした計算方法で算出されるためです。
また、手数料の支払方法として、着手金や中間報酬、成功報酬などがあります。金額は概ね同じですが、支払方法が委託先によって異なるため注意が必要です。

2-2. デューデリジェンス費用

事業譲渡をする際に買い手側は、売り手側から譲り受ける事業について、詳細な調査を行います。いわゆる「デューデリジェンス」と呼ばれるもので、弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。
業務内容や依頼する専門家、規模によって異なりますが、50万円から300万円程度が相場とされます。ただし、事業譲渡が不成立となっても、デューデリジェンス費用は返金されないので留意しなければなりません。

2-3. 買収費用

事業自体を買い取る買収費用は、事業譲渡をするうえで一番大きな支出です。売り手側の事業を譲り受けるために発生する経費のうち、通常、最も高額となります。
なお、買収費用を計算するうえで「企業価値評価」と呼ばれるものがあります。企業価値評価は、インカムアプローチであるDCF法などが有名です。事業計画をもとに算出された事業価値などによって交渉が進められ、金額が決定します。

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2-4. 登記費用

事業譲渡で譲り受けた資産のなかに不動産が含まれている場合、不動産の商業登記や所有権移転登記が必要です。これらの登記に際して、費用が発生します。
また、所有権移転登記には、後述する登録免許税が含まれるため、併せてご確認ください。

2-5. 税金

事業譲渡の場合、買い手側にも税金が課されます。買い手側にかかる税金について解説しますので、詳細を見ていきましょう。

消費税

先述のとおり、消費税を納付するのは売り手側ですが、消費税を負担するのは買い手側です。課税対象資産に関して消費税が課されるため、その金額だけ買収金額に上乗せして支払うこととなります。
消費税の計算は、課税資産に税率を乗じて算出するため、取引規模や譲り受ける課税対象資産が大きくなればなるほど、消費税は増加します。その結果、買収金額に上乗せされる額も膨らむので注意が必要です。

不動産取得税・登録免許税

事業譲渡で譲り受ける対象資産のなかに不動産が含まれている場合、買い手側では不動産取得税が発生することになります。具体的な対象資産は、下表をご覧ください。

対象 税額の計算方法

土地

課税標準額(不動産の価格等)× 税率3%

住宅用の家屋

課税標準額(不動産の価格等)× 税率3%

住宅用以外の家屋

課税標準額(不動産の価格等)× 税率4%

また、先述のように、不動産の商業登記や所有権移転登記を行う必要があり、その際に登録免許税が課されます。

2-6. 買収に必要なその他の費用

事業譲渡で買収を進めていくうえで、以下のような費用も発生します。

  • 融資に関する費用
  • 印紙代

買い手側は買収金額の準備が必要ですが、すべて手持ちの現預金で対応できるとは限らず、銀行からの融資により賄う場合もあります。融資を進めるにあたっては手数料などの費用が発生するため、留意しましょう。
また、契約書などには収入印紙を貼らなければならないため、印紙代が必要です。これは買い手側だけでなく、売り手側でも求められます。

3. 事業譲渡にかかる費用を抑える方法

ここまで、事業譲渡に関連する費用を説明してきましたが、そうした支出は極力少ないほうが望ましいです。最後に、事業譲渡にかかる費用を抑える方法について解説します。

3-1. 買収金額の適正な算出と見積もりを行う

事業譲渡を進めるうえで最も多額の支出となるのは、買収金額です。そのため、買収価格が高額にならないよう、妥当な金額で買収する必要があります。
買収金額に関しては、適正な価格になるよう見積もりを行うことが、支出を抑えるための重要なポイントです。
買収金額のベースは事業計画であるため、事業計画を緩めに見積もると、投資金額を回収できないリスクが生じます。したがって、無理が生じない範囲で慎重に事業計画を検討し、対象事業の価値評価を適切に行うことが大切です。

3-2. 複数の専門家・仲介会社の相見積もりをとる

専門家にまつわる費用も、事業譲渡を進めていくうえで大きな負担となるため、慎重に検討しなければなりません。
事業譲渡に関わるM&Aアドバイザリーや仲介会社は数多く存在し、専門家ごとにサポート内容や範囲、依頼金額などが異なります。そのため、複数の専門家から見積もりを取得し、それぞれの特徴や料金体系を比較して検討すると良いでしょう。
ただし、費用を抑えるために業務の範囲を絞ってしまうと、事業譲渡を円滑に行うことができない恐れが出てくるため、注意が必要です。
専門家や仲介会社を選ぶ際は、費用や業務範囲だけでなく、信頼できる相手であることや、良い関係性を築くことができるかなどもポイントになります。費用と実績、信頼性などのバランスを踏まえ、自社に適した仲介会社やプラットフォームを選ぶことが重要です。

3-3. 節税対策を行う

先述のとおり、事業譲渡では売り手と買い手の双方に、さまざまな税金が発生します。税金もコストの大きな部分を占めるため、節税対策によって、事業譲渡で生じる支出を抑えることが可能です。
例えば、事業譲渡に伴い、売り手企業で退職を申し出た役員がいるとします。その場合は、当該役員に対して役員退職慰労金を支給することで譲渡益を削減でき、結果的に納める税金が下がるでしょう。
一方、買い手企業の場合、法人税の対象となる営業権を均等償却することで、課税額を下げられます。営業権は「のれん」と呼ばれ、人材など財務諸表には反映されていない超過収益力を表すことが一般的です。この営業権は税務上、5年で償却すると考えられており、5年間は利益を抑える効果があります。
このように、事業譲渡全体の費用を抑えるため、各税金に適した節税対策を組み合わせることも検討すると良いでしょう。

3-4. デューデリジェンスの範囲と費用のバランス

事業譲渡で譲り受ける事業について、あらゆる角度からデューデリジェンスを実施すると費用がかさみます。デューデリジェンスの範囲と費用のバランスを考慮して選択することも、費用を抑える方法の一つです。
デューデリジェンスは、事業譲渡を行う前に法務や会計、税務など複数の観点で実施されるものです。弁護士や公認会計士、税理士などへ依頼する際に費用が発生し、多岐に渡って実施すると、多額の費用がかかります。
そのため、やみくもに範囲を広げず、必要な範囲に絞ってデューデリジェンスを実施し、合理的に費用を抑えることが必要です。

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4. まとめ

このコラムで解説してきたとおり、事業譲渡においては、売り手側も買い手側も費用負担が発生します。これらの支出を合理的に抑えるためには、専門的な知識や経験豊富な専門家に依頼することが選択肢の一つとなります。
自分たちで進めることも可能ですが、M&Aに関するお悩みは専門家への相談がおすすめです。自社が信頼するM&A仲介会社に担当してもらい、成功させる確率を高めていきましょう。
事業譲渡をはじめとするM&Aの相談であれば、専門知識を有しており、着手金無料で対応するM&Aキャピタルパートナーズへ、お気軽にご相談ください。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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