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M&Aご成約者事例
#72

白金鍍金工業株式会社 会長 笹野 恭史
日本ものづくり事業承継投資株式会社 代表取締役 髙村 徳康
白金鍍金工業株式会社
会長
笹野 恭史

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日本ものづくり事業承継投資株式会社
代表取締役
髙村 徳康

息子に最適なかたちでバトンを渡すために

自動車の街・愛知県で70年以上にわたり「めっき加工」を手がけてきた白金鍍金工業株式会社。プラスチックめっきのパイオニアとしても知られ、業界を牽引してきた同社は、2023年7月、社長交代を機に、セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社と新生企業投資株式会社との共同投資ファンドである日本ものづくり事業承継投資株式会社に譲渡を行い、出資を受けた。なぜM&Aを検討し、決意したのか。これまでの経緯と今後について、白金鍍金工業株式会社 会長の笹野恭史様と、譲受企業である日本ものづくり事業承継投資株式会社 代表取締役、セレンディップ・ホールディングス株式会社 取締役CIOである髙村徳康様に伺った。

  • 譲渡企業

    会社名
    白金鍍金工業株式会社
    所在地
    愛知県名古屋市
    事業内容
    表面処理加工(樹脂めっき、金属めっき、塗装、成形、組付等)
    資本金
    4,000万円
    従業員数
    200人
    M&Aの検討理由
    更なる成長発展、業界の先行き不安
  • 譲受企業

    会社名
    日本ものづくり事業承継投資株式会社
    所在地
    愛知県名古屋市
    事業内容
    製造業を中心とした投資ファンド
    資本金
    従業員数
    M&Aの検討理由

クルマづくりの歴史とともに、めっき加工の技術を蓄積してきた

最初に、白金鍍金工業株式会社の沿革、事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

笹野
白金鍍金工業株式会社 会長 笹野恭史様(以下、笹野)

1949年、私の祖父が合資会社白金鍍金工業所として立ち上げた、めっきをはじめとした表面加工を強みとする会社です。自動車の街・愛知県で70年以上にわたり「めっき加工」を手がけており、日本が誇るクルマづくりの歴史とともに、我々のめっき加工の技術も進歩してきました。
創業時は総合電機メーカーの東芝がメインの取引先で、主に金属へのめっき加工を行っていました。祖父が爪の中まで黄色くして朝から晩まで仕事に励んでいたのを覚えています。その頃私は幼かったですが、見様見真似で祖父の仕事を手伝っていました。子どもの頃から家業を継ぐものだと当然のように考えていたので、なんの迷いもなく入社しました。ですが入社してみると会社の経営状況が悪いことに驚きました。ちょうど私が入社したころ、創業時からの主な取引先であった東芝からの仕事が激減しているタイミングで、会社はひどい状態でした。私は経理を担当していたのですが、資金繰りに困り、とても苦労する日々が続きました。経営も毎月が綱渡りで、「大変な会社に入ってしまった」と思ったものです。

どのように事業を伸ばしていったのでしょうか。

笹野

まず、プラスチックめっきの開発が挙げられます。白金鍍金工業では1966年にプラスチックめっきの生産を開始しました。その頃、自動車部品の軽量化が進み、世の中でも金属からプラスチックへの転換が図られている時期でした。そこで、大手自動車メーカーで、同じ愛知県の企業であるトヨタ自動車に、プラスチックにめっきを施した製品を提案したところ、採用していただいたのです。これが第一の転機でした。プラスチックめっきは材質が多種多様で独自のノウハウが必要です。顧客からのさまざまな要望に対応する中で試行錯誤を繰り返し、プラスチックめっき加工の独自の技術を開発していきました。この技術開発は業界に先駆けた取り組みでした。その後、エンジニアリングプラスチックやガラス繊維を含む特殊なプラスチック材料へのめっき技術の確立に成功し、成形から表面処理、組み立てまでの一貫生産体制を実現できている点が強みと言えます。

めっき加工 工場
めっき加工 サンプル

プラスチックめっきの開発以降も、遊技機部品のハンドル等への金めっき加工、半導体の部品やゴルフクラブへのめっき加工、ペットロボットへの塗装などを行い、さまざまな技術を蓄積していきました。その頃、遊技機部品の生産は順調でしたが、今後は依頼が減少するとの予測のもと、国内拠点を1つにまとめることにしました。これが第二の転機でした。実際、その後遊技機部品の依頼は激減し、現在は自動車部品へのめっき加工と、それに付随する塗装や組み立ての仕事が主体となっています。工場の一元化に踏み切ったことで、製造の安定化を図るとともに、新技術の開発やその実用化にも、素早く対応できる体制を整えることができたと考えています。
また、めっき加工は環境負荷の大きな業種であるため、環境に対する取り組みにも力を入れ、太陽光発電の導入や、無排水処理システムの開発を手がけたほか、2015年には環境負荷の低減に寄与するめっき装置を導入し、環境に配慮した工場へ刷新しました。「人と技術と環境の調和を図り、新しい時代に俊敏に対応できる企業づくり」の精神をもって、社会になくてはならない企業であり続けることをめざして経営を行ってきました。

異なる業種に新たな仕事を求めていく必要がある

笹野さんのご彗眼もあり、売上は順調と伺っています。そんななかM&Aを考えたのはなぜだったのでしょうか。

笹野
笹野

まず、仕事量の減少に対する懸念が挙げられます。一時は順調であったのに依頼が激減してしまった遊技機部品のように、現在主体となっている自動車関連分野の仕事もやがて減っていくことが予測されています。会社の永続的な発展のためには、異なる業種に新たな仕事を求めていく必要があると考えました。ですが我々だけで異なる業種に事業を拡大するには限界があり、成し遂げるのは相当な苦労があると感じていました。
また、息子(現社長の真矢様)に会社を託すに当たり、苦労はさせたくないという思いがありました。先ほども触れましたが、私が入社した時は、集金したその足で銀行に入金にいくほど会社は大変な状況でした。私と同じような苦労は、息子には味わわせたくありません。ますます業界環境が厳しくなることが予測される中、息子に最適な形で会社を託すには、強力なバックアップが不可欠であると考えていました。ただ、M&Aはあくまでも会社を成長させ、顧客への供給責任を果たすためのひとつの手段であると考えていました。

M&Aキャピタルパートナーズとの出会いはどのようなものでしたか。

笹野

M&Aは経営戦略のひとつの手段になると考えていたため資料やデータを見せていただきしっかり検討したいと感じていました。M&Aキャピタルパートナーズからお手紙やお電話を何度ももらっていましたので、M&Aキャピタルパートナーズの方と会ってみようかなと動いてみました。

ここからは、M&Aキャピタルパートナーズ担当アドバイザーの磯部さん、宮島さんにも参加してもらいます。笹野様の印象はいかがでしたか。

磯部
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 主任 磯部 正人(以下、磯部)

お会いしてお話させていただき、笹野会長は常に会社のため、従業員のために何ができるかを本気で考えていらっしゃる方だと感じました。決断が早く、将来を見据えた先見の明もお持ちで、とても尊敬しています。初めてお会いした時から会社の成長戦略についてご一緒に検討を深めたいと感じていました。

宮島
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長 宮島 豪太(以下、宮島)

私も同じ印象です。物事の本質を見ていらっしゃる方であると感じました。これまでもいろいろなパートナーシップのご提案があり、検討されていたと伺いました。当初は譲受も検討されていましたので、我々もさまざまな提案をさせていただきました。多彩な選択肢があるなか、私たちに何ができるのか、どうにかお役に立ちたいと考えていました。

笹野

お二人とお会いし、譲渡も視野に入れて検討を進めていきましたが、なかなかうまくまとまらない期間もありました。磯部さん、宮島さんからいろいろな会社をご紹介いただいたのですが、我々の要望も厳しく、お相手先を見つけるのに思いのほか時間がかかりました。磯部さん、宮島さんと初めてお会いしてから、かれこれ2年半ほど経ちましたね。

磯部

白金鍍金工業は、国内トップクラスの会社であるため、マッチングには時間を要しました。規模の大きな会社の場合、同業でマッチングできる会社を探すことが難しい場合もあります。
笹野会長は、自動車業界全体のトレンドが目まぐるしく変化し、対応力が求められるなかでどう生き残りをかけるか──、経営課題をクリアにすることに重きを置かれていました。その指針に寄り添った提案を丁寧に行いたいという想いのもと、お相手探しをさせていただきました。そんななか、今回のお相手先で、中小製造業に特化した支援を行う日本ものづくり事業承継投資株式会社が設立されました。この会社であれば笹野会長が求めている、自動車関連分野以外への取引拡大が実現できるのではないかとおつなぎさせていただきました。

息子をサポートしてくれる 中小製造業に特化した投資ファンドとの出会い

ここからは、譲受企業である日本ものづくり事業承継投資株式会社の代表取締役 髙村徳康様にも参加いただいて、お話を聞かせていただきます。まずは、M&Aに対する御社の基本的な考え方からお聞かせいただけますでしょうか。

髙村
日本ものづくり事業承継投資株式会社 代表取締役、セレンディップ・ホールディングス株式会社 取締役CIO 髙村 徳康様(以下、髙村)

日本ものづくり事業承継投資はセレンディップ・ホールディングス株式会社の子会社であるセレンディップ・フィナンシャルサービスと新生企業投資とが共同で立ち上げた投資ファンド会社で、中小製造業に特化した支援を行うことを特徴としています。セレンディップグループ及び新生企業投資の有する経営支援ノウハウを活用して、中小企業等の事業再構築、事業再編による生産性向上や地域経済の発展を後押しできればと、2023年2月に設立しました。
セレンディップ・ホールディングスは、製造業ではない人たちが製造業を経営するために立ち上げた会社で、最大のミッションは製造業を経営できるプロフェッショナルを育てることです。直近では製造業を中心に経営していますが、ベーカリーチェーンやアパレル店を譲り受けて経営したこともあります。今回のパートナーシップでは、優れた経営力をお持ちの笹野様から、製造業の経営について学ばせていただければと考えました。

お互いの印象はいかがでしたか。

笹野 髙村
笹野

見た目のとおり、人が良く、お話が上手な方です。そして、とても顔が広い方だなと感じました。あまりうまくいっていなかった会社を、再生させた実績もお持ちと聞き期待が膨らみました。髙村取締役CIOなら、自動車関連分野以外の取引先も拡大していっていただけるという期待感と安心感がありました。製造業の支援を多数行っていて、業界に強いというのも心強く感じました。また、製造業を経営できるプロフェッショナルを育てるという目標を掲げられており、息子の経営のサポートという点でも非常に頼りがいがあるように感じました。

髙村

失礼な言い方になるかもしれませんが、最初にお会いした時点で、すごく波長が合ったんです。また、ご子息にスムーズに会社を譲られるために、計画的に環境整備を進めておられました。後継者が継いだ後のことを考えて行動する、ということはなかなかできることではありません。本当に、人間ができていらっしゃると感じました。これも失礼なことを申し上げますが、「めっきを作る工場は雑多な町工場」という印象があったのですが、白金鍍金工業はとても清潔で整理されています。そういったところにも会社の姿勢が反映されるものだと考えています。お会いして会社に訪問させていただき、これはなんとしても口説き倒さなければならないと思いました。ご子息の真矢社長が、現場がお好きで、現場のことを知り尽くしていらっしゃるのも印象的でした。

笹野

息子は私から見ると頭でっかちなところもありますが、確かに現場のことは、私の知らないことを含め隅から隅まで把握しています。そういった点を評価いただけたのが良かったですね。

髙村

現場のことをしっかり把握されている真矢社長と一緒に会社を経営していくことにわくわくしました。うまくいっている会社ですから、私たちの出番はないのではないかとも考えましたが、真矢社長はまだ38歳とお若いですので、番頭という形でご協力できるのではないかと考えました。今回、経営面の支援として、セレンディップグループより製造業のPMI(M&A後の統合プロセス)に精通している取締役を派遣させていただいています。

笹野様、現在の率直な思いはいかがですか。

笹野
笹野

ほっとしているというのが正直なところです。現在は孫の面倒をみながら悠々自適に暮らしています。ですがやはり会社のことは気になります。繰り返しになりますが、2、3年後には、自動車関連業界のめっきの仕事は激減すると私は考えています。そうなった時にどう動けるかが大切で、将来を見据えて準備しておく必要性を感じています。日本ものづくり事業承継投資、セレンディップグループの皆さん、そして髙村取締役CIOという強力な支援体制の下、息子に生き生きと会社を引っ張っていってもらいたいと思っています。

髙村

白金鍍金工業にはめっきという武器がありますので、今後も様々な会社に対して営業活動をしていきやすいと考えています。既存の取引先とのさらなる信頼関係の強化を図るとともに、自動車関連分野以外の会社との取引の拡大等に取り組んでいこうと考えています。めっきという武器を活かして、真矢社長とともにこれからいろいろなことができそうで楽しくて仕方ありません。笹野会長に相談にも乗っていただきながら、力を合わせて取り組んでいきたいです。

M&Aキャピタルパートナーズはどのようにお役に立てましたでしょうか。

笹野

マッチングには時間はかかりましたが日本ものづくり事業承継投資と進めると決まってからのスピードはとても早かったですね。磯部さん宮島さんには我々の要望に寄り添いながら、さまざまな提案をしていただきました。相談や問い合わせに対する返答も早く、いつ寝ているのかと心配になったほどです。とても優秀で、私どもの難しい要望にもきちんと対応していただきました。調整することも多いですし、M&Aを検討する場合はプロに相談するのが一番だと感じました。ありがとうございます。

髙村

笹野会長に同感です。非常にレスポンスが早く、丁寧に我々の要望にお答えいただきました。提案のひとつひとつがきちんと社内で話し合われ、検討したうえでお伝えいただいていることがよくわかりました。

最後にM&Aを検討している経営者に向けて一言ずつメッセージをお願いいたします

髙村
髙村

ひとりで悩む必要はありません。私たちは、M&Aで企業の成長を支援するプロフェッショナルを自負しています。ひとりで頑張るのではなく、全体で大きくなるというのも手段のひとつです。今、我々が見据えているのはグループや投資先全体で成長を目指す事です。セレンディップ・ホールディングスを中心に、今後も後継者がいらっしゃらない企業の株式を譲受け、100年企業を作るお手伝いができればと考えています。

笹野
笹野

譲渡の検討を進める上で譲れないこともありましたが、要望をしっかり伝えました。私の要望は、白金鍍金工業という社名を残す、息子が社長として率いる、全従業員の雇用を維持するということです。この3つの条件をお願いできるお相手先と一緒になりたいとM&Aキャピタルパートナーズのお二人にもお伝えして、お相手探しをしていただきました。高村取締役CIOが率いる日本ものづくり事業承継投資に支援いただくことになり、3つの条件も全て要望通りとなっています。
めっきの仕事はとても特殊で、例えば、めっきの部品は何十円という単位ですが、それを作るための機械に何十億という投資をしています。正気ではやれない商売であると考えています。ですので、新規参入がほとんどありませんし、将来のことも考える必要があります。経営や将来に対する不安を和らげるという点でも譲渡をして良かったと感じています。これは私どものケースですが、経営において少しでも不安があるのなら、M&Aを含めた選択肢を増やすのもひとつの手だと思います。

宮島

普段から仲介者としてM&A ありきの提案にならないように意識しています。M&Aはあくまでもオーナー様にとって選択肢のひとつです。M&Aにかかる費用、役職員の処遇、譲受候補先企業など様々な不安や疑問があると思います。その不安や疑問をひとつひとつ丁寧に解消し、他の承継方法と徹底的に比較検討した上で、M&Aが会社を次世代に託す最適な手段と思っていただいた時に、初めてベストな選択になると考えております。

笹野会長も譲受やご子息への承継の選択肢がある中で比較検討され譲渡を決断されました。今後もオーナー様の思いに寄り添いながら、本件のようにM&Aが最適な選択肢だと思っていただいた時には、全力で実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

 

磯部
磯部

笹野会長は、100年企業、売上拡大を見据えて会社やご子息、従業員のために何ができるかを本気で考えておられました。明確な思いをお伝えいただいたので、その思いに寄り添いたいと全力でサポートさせていただきました。日本ものづくり事業承継投資というものづくりに特化した投資ファンドとお繋ぎすることができ、さらなる成長に向けてどんな取り組みが行われていくのか私も楽しみにしています。
M&Aはあくまでも経営戦略における手段のひとつです。これからも譲渡側と譲受側双方の考えていることや悩んでいることなどをしっかりお聞きして経営者の皆様にとって最適な経営判断がしやすい提案をさせていただきたいと考えています。


(左から)弊社 宮島、髙村様、笹野様、弊社 磯部

文:長谷川 あや  写真:上野 貢希 取材日:2023/10/13

担当者プロフィール

  • 企業情報部 主任 磯部 正人

    企業情報部主任磯部 正人

    新卒より大手住宅メーカーにて、注文住宅の営業に従事。当社参画以降は、製造業や建築業、小売業、卸売業等幅幅広い分野にてM&A支援実績を有する。

  • 企業情報部 部長 宮島 豪太

    企業情報部部長宮島 豪太

    大手証券会社にて未上場企業オーナーおよび法人の資産運用コンサルティング業務に従事した後、コンサルティング会社でM&A、株主・投資家対応コンサルティング業務に携わる。

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