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事業継承では、依頼する専門家の選び方が成否を左右します。事業承継を成功させるためには、多岐にわたる専門的な知識が求められます。そのため、自社のケースに合った専門家に依頼し、適切な支援を受けることが大切です。
本記事では、事業承継における専門家の必要性や、各専門家ごとの特徴を紹介したうえで、その選び方についても詳しく解説します。
このページのポイント
~事業承継の専門家とは?~
事業継承を適切に行うためには、法律、税務、財務など、多方面に渡る豊富な知識が必要で、手続きや契約におけるミスや不備、相続・贈与における問題など、トラブルが発生する可能性が小さくない。このような課題を解決するためにが、豊富な知識と経験を持つ専門家の支援が欠かせない。事業承継の専門家を探す方法としては、「公的機関を活用する」「金融機関・取引先からの紹介」「M&A仲介業者の利用」が挙げられる。
目次
1. 事業承継における専門家の必要性
事業承継において専門家が必要な理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 事業承継の制度・手続きの複雑さ
- 事業承継におけるトラブルの発生リスク
- 事業承継に関する制度や補助金の活用
事業継承を適切に行うためには、法律、税務、財務など、多方面に渡る豊富な知識が必要です。また、手続きや契約におけるミスや不備、相続・贈与における問題など、トラブルが発生する可能性は小さくありません。このような課題を解決するためには、豊富な知識と経験を持つ、専門家の支援が欠かせないのです。
また、専門家は制度や補助金にも精通しているため、事業継承における経済的負担を減らせる可能性があります。もちろん依頼には費用がかかりますが、総額でみると依頼したほうが出費を少なくできる場合もあるでしょう。
2. 事業承継を支援する専門家の種類と支援内容
事業継承を支援する専門家のうち、代表的なものは以下のとおりです。
カテゴリ | 該当の専門家 |
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専門領域特化型 |
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包括的支援型 |
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その他の支援機関 |
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ひとつずつ見ていきましょう。
2-1. 専門領域特化型
特定の分野や領域に特化した専門家としては、以下が挙げられます。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
- 公認会計士
弁護士
弁護士は、法律の専門家として事業承継をサポートします。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 遺留分を意識した法律上の課題の検討
- 遺言書作成時の遺言能力に関する法的助言
- 会社の支配権に関する問題の対策
- 事業承継に関する契約書の作成やチェック
また、事業承継に際して後継人や従業員との間でトラブルが生じた際にも、弁護士への相談がおすすめです。
司法書士
司法書士は、不動産や会社登記等を強みとする法律の専門家です。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 不動産登記の実施
- 会社支配権を集中させるための種類株式発行のサポート
- 商業登記に関する助言と手続き
- 会社法に基づく各種手続きの支援
相続や贈与対象に不動産が多く含まれる場合、登記申請等の手続きが煩雑になるため、司法書士に依頼することが一般的です。
税理士
税理士は、会計や税務に関する専門家です。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 相続税や贈与税に関する税務アドバイス
- 資産移動に伴う税金負担の検討
- 顧問税理士としての事業承継サポート
- 事業承継に伴う税務計算の作成
行政書士
行政書士は、行政へ提出する書類作成および手続きを強みとする専門家です。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです
- 許認可申請に関する支援
- 親族内事業承継の手続き
- 事業承継に関連する行政手続き全般のサポート
事業承継では許認可など行政への手続きが多数生じる可能性があります。行政書士に依頼すれば、手続きの漏れや誤りを確認してもらえるうえに、手続きを委託することも可能です。
公認会計士
公認会計士は、企業の会計と監査の専門家です。事業継承における、具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 財務デューデリジェンスの実施
- バリュエーションの実施
- 事業承継に伴う財務諸表の作成や分析
また、公認会計士は税理士業務も兼任している場合があるため、税務に関するサポートを受けられることも多いでしょう。
2-2. 包括的支援型
包括的支援型の専門家としては、以下が挙げられます。
- M&A仲介業者
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- コンサルティング会社
一つずつ見ていきましょう。
M&A仲介業者
M&A仲介会社は第三者との間で事業承継を行う場合、売り手企業と買い手企業の中立的な立場で助言等のサポートを提供します。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 事業承継の包括的支援
- 事業承継プロセス全体のサポート
- 業界・規模に応じた仲介業者の選定
- 事業承継に関する交渉のサポート
相談時点では料金が発生しない企業もあるため、複数の企業に相談を行い、比較のうえ依頼することが必要です。
また、売り手と買い手が事業承継の契約を結んだとしても、実際に事業を移行する際には、組織や従業員の混乱を最小限に抑えることが求められます。 M&A仲介事業者なら、この段階においても専門知識に基づいた支援を受けられます。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業への事業承継サポートを目的に国が設置した機関です。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 事業承継計画の策定支援
- 譲渡・譲受事業者間のマッチング
- 初心者でも安心して利用できる公的機関
- 事業承継に関するセミナーや研修の提供
親族内承継から第三者承継まで幅広いサポートを受けられる点が特徴です。
コンサルティング会社
コンサルティング会社では、事業承継に関する全般的な支援を受けられます。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- M&A戦略の策定
- 買い手か売り手の一方の立場での支援
- 事業承継に関する戦略的なアドバイス
M&A仲介会社と比較しても、より広い分野のサポートが受けられる点が特徴です。一方、料金が高額になりやすい点には注意しましょう。
2-3. その他の支援機関
専門領域特化型や包括的支援型以外では、以下のような専門家から支援を受けられます。
- 金融機関
- 事業継承士
- 中小企業診断士
- 認定事業再生士
- 事業継承アドバイザー
2-4. 金融機関
金融機関では、資金面に関わるサポートのほか、独自のネットワークを活用した譲受企業・専門家の紹介を受けられます。具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 事業承継専用窓口の設置
- 承継先の紹介
- 金融機関の支援内容や条件の確認
- 事業承継に伴う融資計画の作成
なお、金融機関に依頼する場合、承継先も金融機関の取引先の中から選ばれるケースが多い点を理解しておきましょう。
2-5. 事業承継士
事業承継士は、「一般社団法人 事業承継協会」が認定する民間資格で、事業承継に関する幅広い領域のアドバイスや総合的なプランニングを提供します。比較的安価なコンサルティング料金が設定されている点が特徴です。
中小企業診断士
中小企業診断士は、国家資格のなかで唯一の経営コンサルタントに関する資格です。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 経営戦略や事業承継についての支援
- 経営のアドバイスの一環としての事業承継支援
- 事業承継に関する経営診断
中小企業経営を対象に、経営戦略や事業承継についての支援、経営のアドバイスの一環としての事業承継支援、事業承継に関する経営診断などの支援を提供します。
認定事業再生士
認定事業再生士は、「一般社団法人 日本ターンアラウンド・マネジメント協会」が認定する民間資格です。事業継承における具体的な支援内容は以下のとおりです
- 不採算事業を承継した場合の対策
- 事業再生計画の策定
事業の再生に関する専門知識を有しており、特に経営が危うい状況下にある事業に対する事業承継支援を行います。
事業承継アドバイザーおよび事業承継プランナー
事業承継アドバイザーは「一般社団法人 金融協定協会」、事業承継プランナーは「一般社団法人 事業承継協会」が認定する民間資格です。
心理的・実務的に経営者に寄り添い、事業承継が最適な選択肢であるか、という検討から、承継完了に向けた各種手続きまで総合的にサポートを提供します。
3. 事業承継を支援する専門家の選び方
事業承継を成功させるためには、適切な専門家の選択が重要です。以下に、専門家を選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。
3-1. 事業承継の取り扱い実績を確認する
専門家を選ぶ際には、過去に事業承継の取り扱い実績がどれくらいあったかを確認しましょう。実績数が多いほど適切なアドバイスが期待できます。
また、専門領域特化型の専門家に依頼する場合、サポート範囲が限定されているケースがあります。税理士や公認会計士の場合、資産税業務の実績があるか、など、事業承継に係る業務を対象としているかをあらかじめ確認することが重要です。
3-2. ネットワークの広さを確認する
事業承継は、さまざまな分野の専門知識が必要です。そのため、一人の専門家がすべての業務に対応することは難しいでしょう。
適切な支援を得るためには、各分野の専門家と連携できるネットワークを有しているかを確認することが大切です。特に、税理士や公認会計士、弁護士など専門領域特化型の専門家に依頼をする際には、他の専門家との連携が可能か、紹介を受けられるかといった点を、事前に確認しておくことをおすすめします。
3-3. 信頼できる担当者であるかを見極める
担当者の経験や人柄を確認することが重要です。気持ちに寄り添ってくれるかどうか、充分に意思疎通ができるか、やり取りがスピーディかといった点を確認して判断しましょう。
担当者のなかには伴走型で寄り添ってくれる人や、冷静で客観的な意見を出してくれる人など、さまざまなタイプがいます。実際に担当者と話をしてみて、自分と相性が良いか、信頼に値するかを確認するといいでしょう。
3-4. 事業承継の手法によって判断する
専門家ごとに得意とする事業承継の手法は異なります。例えば、親族内承継の場合は税理士や公認会計士、親族外承継の場合はM&A仲介業者や金融機関に、従業員承継の場合は税理士や金融機関に相談することが推奨されます。そもそも事業承継の実施に迷っている場合は事業承継士や中小企業診断士へ相談するのがおすすめです。自社のケースに応じた、適切な専門家を選定してください。
3-5. 予算と料金体系を確認する
専門家の支援範囲や専門性に応じて料金体系は異なります。代表的な料金体系は以下のとおりです。
- サポートを受ける業務内容に応じて料金が設定されているタイプ
- 月額報酬制:継続して依頼する場合に月に一度支払う
- 成功報酬制:M&Aなどの第三者承継の場合、主に案件完了時に発生する
必要とするサポートと、予算のバランスを考慮して専門家を選びましょう。
4. 事業承継の専門家の探し方
事業承継の専門家を探す際の方法として、以下を紹介します。
- 公的機関を活用する
- 金融機関・取引先からの紹介
- M&A仲介業者の利用
それぞれ解説していきます。
4-1. 公的機関を活用する
事業継承の専門家探しに利用できる公的機関としては、「事業承継・引継ぎ支援センター」や「よろず支援拠点」などがあります。これらは国が設けている機関であり、無料での相談が可能です。事業承継を検討している段階から実際の進行に至るまで、専門的なアドバイスを受けられます。また、専門家の紹介や派遣を受けられるケースもあります。
4-2. 金融機関・取引先からの紹介
融資を受けている金融機関や既存の取引先から紹介を受けるのも一つの方法です。お互いをよく知る相手であれば、信頼できる専門家を紹介してもらえる可能性も高いでしょう。
4-3. M&A仲介業者の利用
M&A仲介業者に依頼するのも効果的な方法です。仲介業者が実施する無料相談会に参加してみても良いでしょう。無料相談をきっかけに事業承継についての知識を深めた後、再度仲介業者に依頼するといった流れもおすすめです。
5. まとめ
事業継承では、専門的な知識が多く求められるため、その都度適切な専門家に依頼して支援を受ける必要があります。専門家の選択肢は、専門領域特化型から包括支援型、その他の支援機関など多岐にわたりますが、そのなかから自社の事情に合ったものを選んで依頼しましょう。
専門家を探す方法としては、公的機関の活用や、信頼できる金融機関・取引先からの紹介、M&A仲介業者の利用などが挙げられます。
M&Aキャピタルパートナーズは、事業承継の専門家として、経営者が抱える事業承継問題の解決を全力でサポートします。