M&Aにおける独占禁止法とは? 規制や抵触するリスク、違反した場合の罰則について解説

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M&Aにおける独占禁止法について

独占禁止法は、公正な市場競争を維持するための法律です。M&Aにおいては、株式取得や合併、事業譲受などの企業結合が競争環境に与える影響を審査する役割を持ちます。一定の要件に該当するM&Aでは、公正取引委員会への事前届出が必要になります。

M&Aでは、当事者間で条件がまとまっても、そのまま自由に実行できるとは限りません。取引の内容や規模によっては、公正取引委員会への届出や審査が必要となり、実行時期の遅れやスキームの見直しにつながることもあります。

本記事では、独占禁止法の基本的な規制内容や、届出が必要となる要件、抵触するリスク、違反した場合の罰則を整理して解説します。

また、M&Aの意味や基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


M&Aにおける独占禁止法とは?

独占禁止法とは、市場で公正な競争を維持するためのルールです。日本では公正取引委員会がその監督を担当しています。M&Aを実施する際も、独占禁止法を遵守しなければなりません。

例えば、同じ企業の大手同士が結合すると、競争が減り、価格の高騰やサービスの質の低下を招くおそれがあります。こうした事態を防ぐために、一定の規模や条件を満たすM&Aでは、公正取引委員会に事前に届出を行うことが、独占禁止法によって義務付けられています。公正取引委員会は届出を受けると、そのM&Aが市場に悪影響を与えないかを審査し、可否を判断します。

M&Aを進める際には、独占禁止法の内容を事前にしっかり理解しておくことが大切です。

参考:公正取引委員会

届出が必要となるM&Aの要件とは

以下の要件に該当するM&Aを行う場合、独占禁止法に基づき、公正取引委員会に事前の届出を行うことが義務付けられています。

株式取得の場合
取得する企業グループの国内における売上高の合計額が200億円を超え、かつ株式発行会社およびその子会社の国内における売上高が50億円を超える場合。取得後の議決権保有割合が20%または50%を超える場合も、同様に対象となります(独占禁止法第10条第2項・第5項)。
合併の場合
合併する企業のうち、いずれかの会社の国内における売上高が200億円を超え、かつ、もう一方の会社が50億円を超える場合(第15条第2項)。
事業譲受の場合
譲受企業の国内における売上高が200億円を超え、かつ、譲り受け対象事業の国内における売上高が30億円を超える場合(第16条第2項)。

これらの基準に該当する場合は、取引の前に独占禁止法に基づく適切な対応をしなければなりません。

M&Aにおける独占禁止法のリスク

届出の要件を満たすM&Aでは、上述のとおり公正取引委員会に届出を行う必要があり、それに伴うさまざまなリスクが生じます。なかでも注意が必要なのが以下の2つです。

それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。

当事者の合意だけでM&Aを実施できないリスク

届出の要件を満たすM&Aは、当事者間の合意だけで自由に進められるものではありません。公正取引委員会に届出を行い、審査を受けた結果、独占禁止法の企業結合規制に抵触すると判断されてしまうと、M&A自体が認められない可能性もあります

そのため、M&Aを計画する段階で、企業結合規制に該当しないかどうかを慎重に確認し、法的なリスクを回避するための対応をしなければなりません。

届出・審査によるM&Aの長期化リスク

届出の要件を満たすM&Aは、進行が遅延し、長期化するリスクがあります。

まず、公正取引委員会への届出が受理されてからの30日間は、M&Aを実行することができません。この期間中に行われる審査は「第一次審査」と呼ばれ、取引が市場競争に与える影響が確認されます。ただし、独占禁止法上の問題がないことが明らかであり、届出企業が待機期間の短縮を申し出た場合には、この禁止期間を短縮することが可能です。
しかし、第一次審査で問題が解決しない場合は、「第二次審査」に進むことになります。この場合は、さらに詳細な調査や追加資料を提出しなければなりません。また、その審査期間は、150日から300日程度もかかってしまいます。

第二次審査に進むケースは全体の約1%程度と少数ですが、M&Aの進行が長期化するリスクがあるため、事前にスケジュールへの影響を考慮しておくことが大切です。

独占禁止法に違反した場合どうなる?

一般に、独占禁止法に違反した企業は、以下のような処分や懲罰などを受けることになります。

順番に解説します。

刑事罰や過料を受ける

独占禁止法に違反した場合、(M&Aの場面では問題となることは考えにくいですが)違反行為の内容に応じて刑事罰または過料が科されることがあります。

刑事罰の対象となるのは、特に市場競争に深刻な影響を与える行為です。こうした違反の場合、その重大性に応じて厳しい罰則が適用されます。

例えば、不当な取引制限(カルテルや談合など)や私的独占、事業者団体による競争制限行為に対しては、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される可能性があります(独占禁止法第89条)。また、これらの行為が未遂であっても、必ずしも処罰の対象から外れるというわけではありません。

行政命令に違反したものの刑事罰の対象にならなかった場合や、違反行為の内容が軽微だった場合は、過料が科せられます。例えば、公正取引委員会の排除措置命令に違反した場合であれば、50万円以下の過料が科されることがあります(独占禁止法第97条)。

このように、独占禁止法違反には厳しい法的責任が伴うため、M&Aを実施する際は違反リスクを十分に把握し、適切な法令遵守を行わなければなりません。

ちなみに、独占禁止法の第89条、第90条、第97条には、違反行為の具体的な内容と、その量刑が、以下のように書かれています。

違反行為の内容 量刑
  • 不当な取引制限(第三条)
  • 私的独占(第三条)
  • 事業者団体による、一定の取引分野における競争の実質的な制限(第八条)
  • 上記行為の未遂
五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金(第八十九条)
  • 不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定、又は国際的契約(第六条)
  • 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限(第八条)
  • 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。)の機能又は活動を不当に制限
二年以下の懲役または三百万円以下の罰金(第九十条)
  • 排除措置命令に違反したもの(その行為につき刑を科するべきときは、この限りでない。)
五十万円以下の過料(第九十七条)

行政処分を受ける

独占禁止法に違反した場合、刑事罰だけでなく、行政処分の対象にもなります。主な行政処分としては、「排除措置命令」と「課徴金納付命令」の2つがあります。

排除措置命令

排除措置命令とは、独占禁止法に違反した企業や団体に対して、違反行為の即時停止と市場競争の回復を目的として、必要な措置を命じるものです。この命令が下されると、不当な取引制限や私的独占などの行為を是正することが求められます。

例えば、(M&Aの場面では問題になりにくいですが)価格カルテルが発覚した場合には、価格引き上げの合意を破棄し、その内容を関係者に周知するだけでなく、再発防止策の実施を行わなければなりません。また、公正取引委員会への経過状況報告をはじめとする附属的措置も求められます。

なお、M&Aの場面においては、審査の結果、企業結合が市場競争に影響を与える可能性があるということになっても、ただちに排除措置命令が出されることはありません。むしろ、そうした影響がないように措置を検討することを当事者に求められるケースが多く、当該措置により懸念が解消されるようであれば、企業結合を認めることになります。

課徴金納付命令

こちらはM&Aでは問題となりにくいですが、課徴金納付命令とは、カルテルや入札談合といった独占禁止法違反行為を防止することを目的に、違反者に対して金銭的な不利益を課す命令のことです。課徴金は違反行為によって得た不当な利益を回収し、再発防止を図るための制度として位置付けられています。

公正取引委員会は、事業者あるいは事業者団体が、課徴金の対象となる違反行為を行っていた場合、その事業者に対して課徴金を国庫に納付するよう命じます。この命令は「課徴金納付命令」と呼ばれ、排除措置命令が「命じることができる」のに対し、課徴金納付命令は「命じなければならない」と法律で義務付けられている点が特徴です。

課徴金の金額は、違反行為が行われた期間中(調査開始日から最長10年前まで遡及)における対象商品の売上高、または購入額に、事業者の規模に応じた以下の算定率をかけて算出されます。

違反行為 算定率
  • 不当な取引制限
10%(4%)
  • 支配型私的独占
10%
  • 排除型私的独占
6%
  • 共同の取引拒絶
  • 差別対価、不当廉売
  • 再販売価格の拘束
3%
  • 優越的地位の濫用
1%

※( )内は違反事業者およびそのグループ会社がすべて中小企業の場合

参考:課徴金制度 | 公正取引委員会

ただし、課徴金納付命令には「課徴金減免制度(リニエンシー制度)」と呼ばれる制度も設けられています。これは、関与したカルテルや入札談合について、事業者が自主的に公正取引委員会に報告した場合、課徴金が減免されるというものです。

まとめ

独占禁止法は、市場競争の公平性を守るために定められたルールで、M&Aを実施する際にも遵守しなければなりません。また、一般に独占禁止法に違反した場合には、厳しい刑事罰や行政処分が科されることがあります。

独占禁止法違反をはじめとする法的リスクを回避し、M&Aを円滑に進めるには、専門的な知識と経験を持つアドバイザーのサポートが重要です。



よくある質問

  • M&Aにおける独占禁止法とは何ですか?
  • 独占禁止法は、公正な市場競争を維持するための法律です。M&Aにおいては、株式取得や合併、事業譲受などの企業結合が競争環境に与える影響を審査する役割を担います。
  • どのようなM&Aで事前届出が必要になりますか?
  • 株式取得、合併、事業譲受のうち、独占禁止法で定められた国内売上高などの要件を満たす場合に、公正取引委員会への事前届出が必要になります。
  • 株式取得における届出要件は何ですか?
  • 取得する企業グループの国内売上高合計が200億円を超え、かつ株式発行会社およびその子会社の国内売上高が50億円を超える場合で、取得後の議決権保有割合が20%または50%を超えるときです。
  • M&Aにおける独占禁止法上の主なリスクは何ですか?
  • 主なリスクは、当事者の合意だけでM&Aを自由に実行できないことと、公正取引委員会への届出・審査によってM&Aが長期化する可能性があることです。
  • 独占禁止法の審査でM&Aはどの程度長期化する可能性がありますか?
  • 届出受理後の30日間は原則としてM&Aを実行できません。第一次審査で問題が解決しない場合は第二次審査に進み、さらに150日から300日程度かかることがあります。
  • 独占禁止法に違反した場合はどうなりますか?
  • 違反行為の内容に応じて、刑事罰や過料が科される可能性があります。また、排除措置命令や課徴金納付命令といった行政処分の対象になることもあります。
  • M&Aで独占禁止法違反を避けるには何が重要ですか?
  • 届出要件や企業結合規制への該当可能性を事前に確認し、法的リスクを踏まえて進めることが重要です。専門的な知識と経験を持つアドバイザーの支援を受けることも有効です。

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