事業拡大とは? 種類やメリット・デメリット、進め方や事例について解説

更新日


「事業拡大」は企業を成長させるうえで重要な戦略の一つです。具体的な方法としては、新たな市場や顧客層の開拓、製品やサービスの拡充などが挙げられます。

市場環境が目まぐるしく変化する昨今においては、その時々の状況に柔軟な姿勢で対応しつつ、事業拡大を目指すことが重要です。

そこで本記事では、事業拡大の概要や、メリット・デメリット、実施する際のプロセス、成功させるためのポイントなどについて解説します。成功事例も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

このページのポイント

~事業拡大とは?~

事業拡大は、企業が成長を続けるために欠かせない戦略であり、新市場の開拓や新規顧客の獲得、製品・サービスの拡充などを通じて売上や利益を伸ばすことを目指す。リソースやリスクを伴うものの、適切に実施すれば高い収益性が期待できる。特に、ポストコロナ時代では市場環境の変化に対応しながら事業拡大を進める企業が増加している。本記事では、事業拡大の概要やメリット・デメリット、具体的な進め方と成功事例を解説する。

無料で相談する

関連タグ

  • #M&A
  • #M&A関連記事
  • #M&A用語集
  • #事業拡大とは?

1. 事業拡大とは

事業拡大とは イメージ画像

事業拡大は、企業の成長を持続的に支える手段の一つです。具体的には、新市場への進出や、新たな顧客層の開拓、製品やサービスの拡充を通じて、売上や利益を向上させる戦略を指します。

多くのリソースを必要とし、組織も複雑化しがちなため、リスクも伴いますが、適切に実行されれば高い収益性をもたらすでしょう。

特に、ビジネス環境が激変したポストコロナ時代においては、積極的な事業拡大を図る企業が増加傾向にあります。

1-1. 事業拡大の目的・必要性

事業拡大の目的は、企業の利益や売上を向上させ、持続的な成長を実現することです。

近年はデジタル化・グローバル化の進展により、顧客ニーズや市場トレンドの変化スピードが加速しています。このような環境で企業が生き残るためには、変化に取り残されることのないよう、成長を持続させることが必要があります。

事業拡大は、企業が停滞リスクを回避し、競争力を維持・強化するうえで、非常に重要な戦略の一つです。

1-2. 事業拡大の手法

事業拡大の主な手法は、次の2つです。

  • 既存事業の拡大
  • 新規事業への参入

既存事業では市場シェアや売上を伸ばし、新規事業では新たな市場や収益源を獲得できます。それぞれの手法について解説します。

既存事業の拡大

既存の事業と顧客層で売上を伸ばす戦略です。具体的には以下が挙げられます。

  • 新地域や新国への進出
  • 販売チャネルの拡充
  • 製品の改良
  • マーケティング強化

また、M&Aを活用した技術や人材の獲得も有効です。同業他社を買収すれば、短期間で市場シェアを拡大し、競争力を強化できるでしょう。ただし、M&Aを成功させるためには、事前の市場調査やニーズ分析が特に重要になります。

新規事業への参入

既存事業と異なる市場や顧客層に進出し、新たな収益源を確保する戦略です。代表的な例としては、以下が挙げられます。

  • 新製品やサービスの開発
  • 新地域・新国への進出

新規事業への参入は、既存事業のノウハウの活用が難しく、大きな設備投資が必要なケースも多いため、既存事業の拡大と比較するとリスクが大きい傾向にあります。

しかし、M&Aを活用すれば、これらのリスクを軽減しつつ迅速に新規事業をスタートできる可能性があります。

例えば対象の市場で実績のある企業を買収すれば、ノウハウや市場シェアを短期間で獲得できるでしょう。また、自社と買収する企業のノウハウが融合することで生まれる相乗効果(シナジー効果)に期待できる点も、M&Aを活用する利点です。

M&Aを活用した新規事業については、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。

関連記事
シナジーとは?~ビジネス上の意味やシナジー効果を生む手法について解説~
新規事業のM&Aとは?~増加の理由やメリット、成功させるためのポイントを解説~

2. 事業拡大を行うメリット

事業拡大の主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • 収益源を拡大できる
  • リスク分散が可能になる

これらのメリットは、企業の競争力を強化する基盤となります。

2-1. 収益源を拡大できる

事業拡大に成功すれば、新たな収益源の創出につながります。

既存事業を拡充すれば、アップセルやクロスセルによって既存顧客からの収益向上が可能です。新規事業に参入できれば、新たな顧客層を獲得でき、収益基盤が拡大されるでしょう。

収益源が強化されることで、企業の成長性や安定性も高まり、資金調達においても有利な条件を引き出せる可能性があります。資金が充実すれば、さらなる事業拡大を狙うこともでき、好循環が生まれやすくなります。

2-2. リスク分散が可能となる

事業拡大を行うことで、収益源が多様化し、経営リスクの分散が図れます。これにより、予期せぬ社会情勢の変化や、市場環境の不確実性にも柔軟に対応できる体制の構築が可能です。

例えば、既存事業が低迷した場合でも、別の事業分野が収益を支えることで、全体への影響を最小限に抑えられます。市場環境が急速に変化する近年において、事業拡大はリスク拡大の観点からも重要な戦略です。

3. 事業拡大を行うデメリット

事業拡大にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットも存在します。

  • 多くの導入・運営コストが必要となる
  • 組織管理が複雑化する可能性がある

事業拡大を成功させるためには、これらのデメリットも考慮したうえで、計画的なアプローチとリソースの管理を行う必要があります。

3-1. 多くの導入・運営コストが必要となる

事業拡大には多額の導入・運営コストが必要です。

具体的には、市場調査や人材の確保、新商品の研究開発、設備投資などが挙げられます。特に、新たな設備の導入や工場の拡張、専門人材の採用などを行う場合は、人件費や固定費が増大するでしょう。

これらのコストは事業開始前に先行投資として支出されるため、回収までに一定の期間を要することを考慮しなければなりません。万が一、収益が想定どおりに伸びなかった場合には、財務リスクが高まる可能性もあります。

そのため、綿密な資金繰り計画を立て、リスクを最小限に抑えつつ事業拡大を実行することが重要です。

3-2. 組織管理が複雑化する可能性がある

事業の拡大は、組織管理を複雑化させるリスクがあります。

社員数の増加により全体像が把握しづらくなり、指示命令系統の混乱が生じる場合があります。組織体制が適切に整備されていない場合、社員のモチベーション低下や予期せぬトラブルが発生する可能性も考慮しなければなりません。

組織管理の複雑化を回避するためには、段階的な事業拡大計画を策定し、適切なマネジメント手法の導入が求められます。

4. 事業拡大のプロセス

事業拡大の基本的なプロセスは、以下のとおりです。

  1. 目的の明確化・戦略策定
  2. 市場・競合分析の実施
  3. 事業拡大計画の策定
  4. リソースの確保
  5. 事業拡大計画の実行と検証・改善

各プロセスについて、それぞれ解説します。

4-1. 目的の明確化・戦略策定

はじめに、自社の現状を把握したうえで、事業拡大によって達成したい目標を具体的に設定します。「新規の顧客を獲得したい」「既存顧客の単価を上げたい」「赤字経営を改善したい」など、目標は企業ごとにそれぞれ異なります。

目標が決まったら、それを実現するための戦略を策定していきましょう。既存事業の拡大か、新規事業への参入か、いずれかを選んだうえで、より詳細なアプローチの検討に進みます。

4-2. 市場・競合分析の実施

事業を展開する市場や、競合他社の分析も重要です。市場の規模や、成長率、顧客ニーズなどを調査すれば、自社の立ち位置や拡大の可能性を評価できます。また、競合他社の強みや動向を把握すれば、差別化戦略を立てるための貴重な情報を得られます。

4-3. 事業拡大計画の作成

事業拡大の実現には、詳細な事業計画書を作成する必要があります。事業計画書は、拡大を成功に導くための基本的な指針となるものです。主に以下のような内容を記載しましょう。

  • 事業拡大の目的
  • 自社の分析結果
  • 市場動向をもとにした戦略
  • 資金計画
  • 必要なリソースの配分 など

事業拡大計画には、できるだけ具体的な内容を明記することがポイントです。そうすることにより、拡大の方向性が明確になり、社内外の関係者への説明や資金調達に役立ちます。

4-4. リソースの確保

事業拡大を成功させるには、以下のリソースを十分に確保する必要があります。

  • 人材
  • ノウハウ
  • 資金
  • 設備
  • 流通体制

リソースが不足すると、事業の基盤が脆弱になり、拡大に失敗するリスクが高まります。リソース確保にはコストが発生しますが、将来的な収益拡大や企業価値向上を考慮した先行投資として位置づけましょう。十分なリソースを用意することで、拡大後の運営がスムーズに進みます

4-5. 事業拡大計画の実行と検証・改善

計画が整ったら、いよいよ実行段階に進みます。新製品やサービスの開発、販売チャネルの拡大、マーケティング活動などを展開していきましょう。

同時に、売上や顧客の反応、市場シェアなどの効果を検証し、必要に応じて改善を行うことが大切です。このサイクルを繰り返すことで、事業拡大の成果を最大化できます。

5. 事業拡大を成功させるポイント

事業拡大を成功させるポイントは、適切な市場選択と実行のタイミングです。それぞれの要素を戦略的に計画することで、リスクを抑えながら成長を目指せます。

5-1. 将来を見据えた市場選択を行う

市場選択の精度は、事業拡大の成否を大きく左右する要素です。既存事業を広げる場合でも、新規市場に進出する場合でも、需要があるか、顧客層に適しているかを十分に分析する必要があります。

市場選択の際におすすめなのが、アンゾフの成長マトリクスを活用する方法です。アンゾフの成長マトリクスは、「製品」と「市場」を軸に、「既存」と「新規」に分類し、最適な成長戦略を示す分析方法です。事業拡大に適した戦略を効率的に導き出せるでしょう。

市場選択を行う際には、現在の市場状況だけでなく、将来性にも目を向けることが大切です。市場の成長率や競合の動向を把握し、自社の強みを活かせる市場を選びましょう。

関連記事
アンゾフの成長マトリクスとは?~4つの戦略や活用するメリット、ポイント、事例を解説~

5-2. 自社の現状分析のうえ適切なタイミングを見極める

事業拡大を成功させるためには、自社の現状を正しく分析し、最適なタイミングで実行に移さなければなりません。適切なタイミングとは、資金や人材といったリソースが、十分に確保されているときです。

一方、経営状況が悪化している場合でも、事業拡大が必要になることがあります。その場合、慎重な判断のもとに計画を立て、リスクを最小限に抑える実行が求められます。

事業拡大のメリットとリスクを十分に理解し、自社の現状を踏まえてタイミングを見極めることが必要です。

6. 事業拡大を行った企業・事業の事例

事業拡大に成功した具体例として、以下の3社のケースを紹介します。

  • 楽天グループ株式会社
  • ソニーグループ株式会社
  • YouTube

いずれも、戦略的な計画と実行に基づき、成長を遂げた企業です。

6-1. 楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は、事業拡大の成功例として知られています。

同社は元々「楽天市場」というECサイトからスタートしましたが、これまで積極的にM&Aを活用し、多様な事業を展開してきました。

さらに、楽天会員を軸に国内外で70以上のサービスを提供する「楽天経済圏」を構築することで、ユーザー基盤を拡大し、事業を成長させています。この戦略により、楽天は多角的な事業運営を可能にし、他社との差別化を図ることに成功しました。

6-2. ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社は、ゲーム、音楽、映画、金融など幅広い分野で事業を展開しています。

元々は計測器の研究と製造を行う企業として設立されましたが、自社のノウハウを活かして関連性の高い分野へ進出しました。

ソニーはこのアプローチ方法により、多角的な事業展開が可能となり、グローバル企業としての地位を確立しています。成長の背景には、自社技術の活用と市場ニーズの的確な分析がありました。

6-3. YouTube

YouTubeは、事業転換による拡大に成功した例です。当初は「Tune In Hook Up」というマッチングサイトとして設立されましたが、ユーザーの利用状況を観察し、動画共有に特化するサービスへと方向転換しました。

その結果、YouTubeは世界最大規模の動画共有プラットフォームとなり、広告収入やプレミアムサービスの導入などで多角的な収益化を実現しています。顧客ニーズをとらえた柔軟な戦略が成功を支えています。

7. まとめ

市場環境が目まぐるしく変化する昨今において、事業拡大における持続的な成長は欠かせないものです。事業拡大に成功して収益源を強化できれば、融資も受けやすくなり、さらなる事業拡大も狙える好循環が期待できるでしょう。

事業拡大の手法としては、既存事業の拡大と、新規事業への参入が挙げられます。このうち新規事業への参入はリスクが高いですが、M&Aを活用すればリスクを抑えながら事業拡大を実現することも可能です。

M&Aを活用した事業拡大を検討する際には、ぜひ、M&Aキャピタルパートナーズをご活用ください。豊富な実績と専門知識で、お客様のニーズに最適なM&Aソリューションをご提案いたします。相談は無料で受け付けておりますので、お気軽にお問い合せください。


ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

詳細プロフィールはこちら

M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。