株式併合とは? 株式併合の目的やメリットとデメリットを解説

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株式併合について

株式併合は、自社の株式を併合し、発行済株式数を減らす手法です。コスト削減や株価の最適化といったメリットがあるものの、その実施には株主総会の特別決議や厳格な法的手続きが必要です。

ここでは、株式併合の基本的な仕組みから、メリット・デメリット、実施する際の手順や注意点まで、経営者の視点に立って詳しく解説します。

このページのポイント

~株式併合とは?~

株式併合とは、企業が発行済株式数を減らす手法です。主な目的は、株式管理の効率化、株価の最適化、少数株主の整理、事業承継の円滑化など。本記事では、株式併合の仕組み、株式分割との違い、メリット・デメリット、具体的な手順、実施時の注意点について詳しく解説します。

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株式併合とは

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株式併合とは、複数の株式を統合して、発行済株式数を減少させる手法です。企業の株価調整や管理コスト削減などを主な目的として採用されます。

株式併合における株式数の考え方

例えば、既に3,000株を発行している企業が、3株を1株に併合する場合、株式併合後の発行済株式数は以下のようになります。

3,000株 × 1/3 = 1,000株

また、株式併合を実施すると株式総数は減少しますが、株主が保有する株式の資産価値は理論上ほとんど影響を受けません。なぜなら、併合後の1株の価値は、併合前の複数株の価値と等しくなるよう調整されるためです。3株を1株に併合する場合、併合後の1株あたりの価値は、併合前の3倍になります。

ただし、株式併合の比率によっては、以下のような課題が生じる可能性があります。

  • 端数株の発生(1対3の併合で、3で割り切れない株数を持つ株主が発生する)
  • 単元未満株の発生(例:150株が50株になり、100株未満となる)

これらの端数株や単元未満株式は、株主に不利益をもたらす可能性があります。そのため、株式併合の実施には株主総会の特別決議が必要です。

株式分割との違い

株式分割のイメージ

株式分割は、既存の株式を細分化して発行済株式数を増加させる手法です。1株あたりの価値を下げ、投資家の購入ハードルを下げることを目的に実施されます。既存の株式を併合し、発行済株式数を減らす株式併合とは真逆の戦略です。

また、株式分割は取締役会議で決定し、即時に効力を発生させることができます。これは株主総会決議や、株券提供公告などを必要とし、一定の期間を要する株式併合との大きな違いです。

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株式併合の目的・メリット

株式併合の主な目的やメリットは、次のとおりです。

以下で、一つずつ解説します。

株式の管理コストの軽減

発行済株式数が増え、株主が増加すると、株主総会の運営費用や招集通知の発送費用など、株主管理に関わるさまざまなコストが増大しがちです。株式併合により、発行済株式数を減らすことで、こうしたコストを削減し、株主管理の効率を高めることが可能です。

株価の最適化

株価が著しく下落すると、投資家からの評価が下がったり、企業のイメージが低下したり、資金調達が困難になったりと、さまざまな経営上の課題に直面します。また、株式の取引が行われにくくなり、市場流動性の低下も招きます。

株式併合は、このような状況を改善する効果的な手段です。株式併合により株式の供給量が減れば、市場における希少性が高まって需給バランスが改善され、株価を適正に調整することができるでしょう

少数株主の排除

少数株主の存在は、時として企業の意思決定プロセスに影響を及ぼします。よくあるのは、会社方針に対して反対意見を持つ少数株主の存在により、事業運営の円滑な推進が妨げられるケースです。

このような状況への対応策として、株式併合を活用したスクイーズアウト(少数株主の締出し)が有効です。会社が少数株主の株式を強制的に買い取ることで、経営の意思決定を円滑化することが可能となります。株式併合により株式数を1桁未満に減らすことで、実質的な株主権の制限を実現し、効率的な株主構成の最適化を図ることができます。

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事業承継の迅速化

株式併合は、事業承継においても有効な手法です。

例えば、大株主が亡くなり、相続によって株式が複数人に分散した場合、株主総会での意見対立や意思決定の停滞を招く可能性があります。株式併合によって株式を集約し、できるだけ分散しないようにすることで、こういったリスクの回避が可能です。

また、第三者承継を目指す場合においても、株式併合で株式を集約させ、経営権や支配権を掌握しやすい状態にしておくことで、買い手の意欲が高まり、スムーズな事業承継を実現しやすくなります。

株式併合のデメリット

株式併合にはメリットだけでなく、次のようなデメリットもあります。

メリットとデメリットの両方を把握したうえで、慎重に検討することが大切です。

株主が権利を失う場合がある

株式併合は株主の権利に直接的な影響を与える可能性があります。

株式併合によって1株未満の端数が生じると、その端数分は会社による強制買取の対象となります。これにより、端数分を保有していた株主は金銭的な対価を受け取りますが、同時に株主としての権利を喪失することになるのです。

特に非上場企業の場合、株式の流動性が低く、追加の株式取得が困難であるため、この問題はより深刻です。株主にとって、権利の喪失は企業に対する不平等感や不満を生む要因となるため、関係悪化につながるリスクがあります。

株価が上がることで購入のハードルが高くなる

株式併合による発行済株式数の減少は、1株あたりの株価の上昇を引き起こします。この変化は、企業価値自体の変動ではなく、投資に必要な最低金額の上昇を意味するものです。

上記のような株価の上昇は、既存・新規を問わず投資家の、購入判断に影響を与えます。投資家は企業の将来性や安定性だけでなく、必要投資額も重要な判断材料とするためです。

結果として、これまで投資可能だった層が資金面での制約により投資をためらうようになり、株価の低下や資金調達の困難化を招く可能性があります。

株式併合の流れ

株式併合の実施には、会社法に基づく厳格な手続きが求められます。各段階での要件と期限を正確に把握し、適切に対応することが重要です。

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1.株主総会の招集

株式併合の実施が取締役会で決定されたときは、株主総会を招集する必要があります。株主への招集通知は、会社法第299条1項に定められた期限に従い、原則として株主総会の1週間前までに通知しなければなりません。

また、株主買取請求権を行使する株主は、株主総会が開催されるまでに、株式併合に対して反対する旨を通知する必要があります。そのうえで、株主総会の特別決議に反対しなければなりません。

2.事前書面の備置き

次に、株主総会での決議事項を記載した事前書面を作成します。作成した事前書面は、会社法第182条の2第1項に基づき、株主総会の2週間前か株主への通知日のうち早い日から、効力発生後6ヶ月間に渡り継続して備え置く必要があります。

なお、事前書面には、併合比率、効力発生日、種類株式に関する事項、その他の株主の判断に必要な情報が詳細に記載されていなければなりません。株主は、この事前書面を閲覧することで、株式併合の内容を把握し、株主総会での議決権行使の判断材料とすることができます。

3.株主総会の開催・決議

株主総会を開催し、株式併合に関する決議を行います。株式併合を行うには、会社法第180条2項に基づき、下記の事項を株主総会の決議によって定める必要があります。

  • 併合の割合
  • 併合の効力発生日
  • 種類株式発行会社の場合、併合する株式の種類
  • 効力発生日における発行可能株式総数

取締役は、株主保護の観点から、株式併合を実施する必要性や株主が受ける影響について詳細な説明を行わなければなりません。また、この決議は特別決議事項となり、議決権の過半数を持つ株主の出席(定款により1/3以上の割合まで引き下げることも可能)のもと、その3分の2以上の賛成を得る必要があります。

4.決議された事項を通知・公告する

株主総会で決議された内容は、法令に基づき、株主と登録株式質権者に対して通知、または公告による周知が必要となります

通常は効力発生日の2週間前までに行いますが、1株未満の端数が生じる場合は、20日前までが期限となります。これにより、株主が十分な検討期間を確保できるようにしています。

5.反対株主の株買い取り

株式併合によって1株未満の端数が生じる場合、株式併合に反対する株主は会社に対し、その所有する株式のうち1株に満たない端数を公正な価格で買い取るよう請求することができます(会社法第182条の4第1項)。

なお、上記の株式買取請求権を行使するには、株式併合に反対する旨を株主総会までの間に会社に通知し、かつ株主総会で株式併合に関する特別決議に反対しなくてはなりません(会社法第182条の4第2項1号)。買取請求自体も、株式併合の効力発生日の20日前から前日までの間に行わなければならない(会社法第182条の4第4項)とされます。

6.変更登記申請

株式併合により、発行済株式総数や種類株式発行会社の種類ごとの株式数に変更が生じた場合、会社法第911条3項9号および第915条1項に基づき、効力発生日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。株券を発行していない場合は、それを証明する書面の準備をしなければなりません。

上記の変更登記の期限は短いため、事前に準備を行い、効力発生後速やかに申請することが望ましいといえます。

株式併合の注意点

ここでは、株式併合の実施にあたって注意するべき点を、2つ紹介します。

株価が下落するケースがある

株式併合は一般的に株価上昇の要因とみなされますが、実際には下落するケースも存在します。特に、経営再建中の企業が実施する場合、株価下落のリスクは高くなる傾向です。

株価下落の主な要因は、株式併合と同時に実施されることの多い第三者割当増資です。第三者割当増資は1株あたりの利益(EPS)を希薄化させるため、株価に下落圧力をかけることになります。

もっとも、株式併合自体は直接的な株価下落要因ではありませんが、第三者割当増資との併用が一般的であることから、株式併合の発表が株価下落を予測させる指標として市場に認識されています。そのため、株式併合を実施する企業への投資やM&Aを検討する際は、以下の要素を総合的に分析する必要があります。

  • 企業の業績動向
  • 財務状況の健全性
  • 株式併合の具体的な目的
  • 併用される可能性のある資本政策
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少数株主の排除を目的とする場合は無効となる可能性がある

株式併合によるスクイーズアウトには法的な対抗手段が存在します。株式併合、株式交換、全部取得条項付種類株式の場合には、株式買取請求権と株式価格決定申立が利用できるのです。これにより、無効とされるリスクは十分に考慮しなければなりません。

また、90%以上の議決権を有する株主による「特別支配株主の株式売渡請求」においても、申立てにより買取価格を争うことができます。

反対株主との買取価格の協議が不調に終わった場合、裁判に発展する可能性があります。このため、スクイーズアウト目的の株式併合を実施する際は、法的リスクを慎重に評価し、その必要性を十分に検討することが重要です。

まとめ

株式併合は、株式管理の効率化や株価の適正化など、さまざまな経営課題を解決する有効な手段です。一方で、株主の権利への影響や法的リスクなど、慎重な検討が必要な側面もあります。専門家のサポートを受けながら、自社の状況に適した実施方法を選択することが重要です。

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よくある質問

  • 株式併合とは何ですか?
  • 株式併合とは、複数の株式を1株に統合し、発行済株式数を減らす手法です。管理コスト削減や株価の最適化などを目的に実施されます。
  • 株式併合と株式分割の違いは?
  • 株式併合は株式数を減らし、株価を調整する手法。一方、株式分割は株式数を増やし、投資家の購入ハードルを下げる手法です。
  • 株式併合のメリットは何ですか?
  • 株式管理コストの削減、株価の最適化、少数株主の整理、事業承継のスムーズ化などが挙げられます。
  • 株式併合のデメリットはありますか?
  • 端数株の発生による株主の権利喪失や、株価上昇による投資家の購入ハードル増加などのリスクがあります。
  • 株式併合の流れを教えてください。
  • ①株主総会の招集②事前書面の備置き③株主総会決議④通知・公告⑤反対株主の買取⑥変更登記申請の流れで進められます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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