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投資における損切りは、損失を最小限に抑えるための重要な戦略といえます。損切りをする際には、損失を受け入れる覚悟を持ち、冷静な判断を下すことが求められます。また、損切りのタイミングやルールを設定し、感情に惑わされずに機械的に実行することが重要です。
本記事では、損切りの意味、メリットと実践方法などについて詳しく解説します。
損切りについての理解を深めるために、本記事をご活用ください。
このページのポイント
~損切りとは?~
損切りは、投資で損失が発生した時にその損失を確定させるためにポジションを決済する行為。価格が下がった場合、さらなる損失を防ぐために損切りを行う。損切りは、失敗を認めて損失を受け入れる行動でもあり、ポジションは未決済の取引状態を指す。
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目次
1. 損切りとは
損切りとは、投資で保有しているポジションが損失を出し始めた時に、その損失を確定させるためにポジションを決済する行為をいいます。
損切りの基本的な定義としては、以下のようなものがあります。
・投資での損失確定
投資商品の価格が下がって損失が発生している場合に、さらなる損失を防ぐために損切りを行います。損切りにより、損失額を確定させることが目的となります
・自分自身の過ちを認める行動
損切りという言葉は投資の分野で使われますが、これは自分の失敗を認め、損失を受け入れる行動を取ることも指します。
なお、ポジション(Position)とは、「建玉」とも呼ばれ、株式取引やFX取引、先物・オプション取引などにおいて、評価損益(含み損益)が発生している、手仕舞いされずに「未決済のまま残っている取引の状態(持ち高)」をいいます。<
1-1. 損切りの具体例
損切りをより具体的に説明すると、含み損が発生している状態で株式等の投資資産を売却し、損失を確定させることです。含み損とは、投資資産の価格が購入時よりも下がっており、売却したら損失が出る状態をいいます。
例えば、株価1,000円のときに100株購入した株式が、株価が600円に下がっているとします。株価600円で売却すれば、損失は4万円で確定し、それ以上に損失がふくらむことはありません。つまり、損切りすれば、損失を最小限に抑えられる可能性があります。
2. 損切りのメリット
損切りは、その時点で損失を確定させます。損失が出てしまうのは、感情として、惜しいと思う方もたくさんいるでしょう。損失を受け入れることには、誰でも抵抗感を感じるかもしれません。しかし、損切りすることで得られるメリットも主に以下のようなものがあります。
- 損失を確定できる
- 投資した人のメンタルの負担が軽くなる
- 他の投資機会を得ることができる
それぞれ順に説明していきます
2-1. 損失を確定できる
損失を確定できることが損切りの一番のメリットといえます。これは、損失を最小限に抑え、投資資金を守るための重要な戦略ともいえます。損切りを行わずに損失が発生している資産を長期間保有し続けることは塩漬けと呼ばれますが、塩漬けにする一番のデメリットは、損失が拡大してしまう可能性が高いことです。仮に株価が下がっていても、「近いうちに株価が回復する」と期待してしまいます。売却後、株価が上がったら後悔するかもしれません。しかし、株価はなかなか期待通りには動きません。株価の下落が一時的で、再び上がるという根拠があれば、損切りしないこともあり得ますが、根拠がない場合、含み損が発生している状態で保有し続けることはリスクにしかなりません。そのため、損失を最小限に抑えることが損切りのメリットの1つといえます。
2-2. 投資した人のメンタルの負担が軽くなる
保有している株式の株価が下がっているということは、資産が減っていることになるため、投資した人のメンタルへのダメージは小さいとはいえませんし、塩漬けにしている期間は株価を常に気にしてしまいます。そのため、損切りを行うことによって、その心理的負担を減らすことができることもメリットといえます。
2-3. 他の投資機会を得ることができる
株式投資で利益を得たいなら、有望な銘柄を選ぶべきです。株価が下がっている銘柄を塩漬けにしていると、いつまでもその銘柄に拘束されてしまいます。売却すれば、その売却資金で他の有望な銘柄に投資することも可能です。損切りの決断ができないばかりに、利益を得られる機会を逃してしまうことも考えられます。損切りをすると一時的に損失が出てしまうのはやむを得ませんが、株式投資はその後取り返す機会は多くあります。現時点での損失にこだわり過ぎず、長い目で損得を考えることが重要といえます。そのため、他の投資機会を得ることができるのもメリットといえます。
3. 損切りのタイミング
次に損切りのタイミングについて説明します。損切りのタイミングを決定する際の重要なポイントは、主に以下のとおりです。
- 損切りラインの設定
- テクニカル分析の活用
- 冷静な判断と感情のコントロール
- バッファーの設定
それぞれ順に説明していきます。
3-1. 損切りラインの設定
1つ目は損切りラインの設定です。
損切りを行うためには、あらかじめ損切りラインを設定しておくことが必要です。一般的な目安としては、購入価格の5~10%の損失が発生した時点で損切りを行うことが推奨されています。ただし、個々人の投資スタイルやリスク許容度によって適切な損切りラインは異なります。
3-2. テクニカル分析の活用
2つ目はテクニカル分析の活用です。
テクニカル分析の中でも、移動平均線を活用する方法があります。移動平均線は一定期間の株価の平均値を示し、現在の株価が移動平均線を割り込んだ場合には損切りを実行するというルールを設定することができます。移動平均線は株価のトレンドを把握するために非常に有用です。
なお、テクニカル分析(Technical Analysis)は、チャート(Chart)を使うことから「チャート分析」とも呼ばれ、過去の値動きをチャート(グラフ)で表し、そこからトレンドやパターンを把握し、今後の価格(レート)の展開を予測するものをいいます。また、移動平均線とは、一定期間の終値を平均し、チャート上に折れ線グラフで描画するインジケーター(指標)のことをいいます。英語では、Moving Average(MA)と訳します。イメージ図は以下のとおりです。

3-3. 冷静な判断と感情のコントロール
3つ目は冷静な判断と感情のコントロールです。
株価の下落によって感情的になってしまうことがありますが、冷静な判断が重要です。損切りラインやテクニカル分析の結果に基づいて冷静に判断しましょう。感情に左右されないようにするためには、ルールを決めて感情をコントロールすることが非常に大切といえます。
3-4. バッファーの設定
最後はバッファーの設定です。
損切りラインを設定する際には、バッファーを設けることも考慮するべきです。バッファーとは、損切りラインを割った状況でも一定の回復期間を設けることです。これにより、一時的な値動きによる誤った損切りを防ぐことができます。ただし、バッファーを設ける際には、絶対的な損切りラインも設定しておくことが重要です。
4. 損切りのルール
損切りを適切に行うためには、ルールを設定して実践することが重要です。そこで、ここからはルールの設定、ルールの遵守及びルールの見直しと改善について、順に説明していきます。
4-1. ルールの設定
ルールの設定は以下のステップで行います。
Step1:損切り幅の決定
第一に、損切りする価格の幅を決めます。これは、個々人の投資スタイルやリスク許容度によって異なります。
Step2:損益比率の考慮
損切り幅を決める際に、目標の損益比率も考慮します。例えば、損切り幅が利益幅の半分以下になるように設定すると、総合的に利益を生み出しやすくなります。
Step3:保有ポジションの確認
損切りのタイミングを逃さないように、保有ポジションを常に把握する必要があります。
4-2. ルールの遵守
損切りのルールを設定したら、主に以下の点に注意して遵守します。
・機械的な実行
損切りルールを設定したら、感情に左右されずに機械的に淡々と実行しましょう。冷静な判断ができるようになります。
・ルール破りを避ける
自分で設定したルールを厳守します。ルールを破ると判断力が鈍り、損失が拡大する可能性があります。
・逆指値注文の活用
逆指値注文を使用すると、自動的に損切りが実行されます。事前に損切りの価格を設定することで、感情に左右されずに損切りできます。
ここで、逆指値注文とは、その言葉から想像すると指値注文の逆と思われますが、具体例をもとに簡単に説明します。
まず、通常の指値注文は、例えば、「株価400円の指値で買い注文」を出せば、株価が400円のときに注文が成立します。「株価600円の指値で売り注文」であれば、株価が600円のときに注文が成立します。
しかし、逆指値注文では、「株価400円の逆指値で買い注文」で設定すると、株価が400円以上になった時に市場に買い注文が発注されます。同様に、「株価600円の逆指値で売り注文」であれば、株価が600円以下になった時に市場に売り注文が発注されます。
4-3. ルールの見直しと改善
ルール設定後は、以下のプロセスでルールを見直しと改善をしていくことになります。
・結果の分析
過去の取引結果を分析して、損切りルールの効果を確認します。効果的なルールと改善の余地があるルールを見極めることが重要です。
・ルールの改善
分析結果を踏まえて、ルールを改善しましょう。損切り幅や損益比率の見直しにより、より効果的な損切りができる可能性があります。
・自己反省と学習
損切りが失敗した場合でも、自己反省し、次の投資で生かしましょう。ミスを繰り返さずに学び、損切りに関する知識や経験を積極的に学ぶことが重要です。
5. 損切り時の留意点
損切りは、損失を最小限にするために行いますが、失敗すると逆効果になることもあります。そのため、損切り時の留意点を最後に説明します。
5-1. 両建てしない
両建てとは、信用取引(証券会社に委託保証金を預け、それを担保に売買を行う方法)において使われる手法のことで、同じ銘柄の売りポジションと買いポジションの両方を保有することです。FX取引では、損失回避やリスクヘッジのために、同じ通貨ペアの両建てを行うことがあります。株式の信用取引では、両建てすると、株価が上昇したときには買いポジションを決済し、株価が下落したときには売りポジションを決済することで利益が得られます。つまり、両建てにより損失を回避できることになります。一方、FX取引の場合には、両建てにより必ずしも損失を回避できるとは限りません。 FX取引で両建てをすると、スプレッド(コスト)がかかります。また、FX取引ではスワップポイント(通貨間の金利差)も関係してくるため、為替相場による損益だけから決済のタイミングを判断するのは難しいでしょう。そのため、FX取引で損切りを考えるときには、両建てという手法は避けた方が無難といえます。
5-2. ナンピン買いしない
ナンピンとは、投資において、損失を平均化するための手法です。株式投資でナンピンする場合には、株価が下がっているときに敢えて同じ銘柄を買い足します。ナンピン買いをすれば、平均取得単価を下げ、利益が出るハードルも下げられます。例えば、株価1,000円のときに100株購入した場合、平均取得単価は1,000円です。株価が800円に下がったときに追加で100株購入すると、平均取得単価は900円となります。つまり、ナンピン買いした後は、株価が900円を超えれば利益が出ることになります。ナンピン買いは、計画的に行うことが大切です。無計画にナンピン買いすると保有している株式数が増えるため、株価が下がった場合の損失も大きくなってしまいます。ナンピン買いをするなら、何回までといったルールを決めておくのが重要といえます。
6. まとめ
今回は損切りについて説明しました。
損切りとは、含み損が出ている状態で株式等を売却することです。損切りすれば損失が確定しますが、損失を最小限に抑えられる可能性があります。長期的な利益を得るためには、損切りが必要な場面もあることを認識することが重要です。
しかし、損切りは思わぬ損失を出してしまうリスクもあることから、経営者であれば、リスク管理を徹底するためにも適宜、資産運用の専門家に相談して進めることが重要です。
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