サクセッションプランとは? 目的やメリット・デメリット、実施の流れ、成功の秘訣を解説

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サクセッションプランとは、企業の持続的な成長と安定的な経営を実現するために、次世代リーダーを計画的に育成し、円滑な事業承継を目指す戦略的取り組みです。近年の経営環境の変化や経営者の高齢化に伴い、その重要性が増しています。

本記事では、サクセッションプランの目的や、メリット・デメリット、取り組む際の流れ、成功のポイントなどについて解説します。代表的な導入事例も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

このページのポイント

~サクセッションプランとは?~

サクセッションプランとは、企業や事業の後継者を育成する計画のことです。将来的に経営幹部や重要ポストを担う人材を選定・育成し、事業継承を円滑に進めるために重要な戦略です。特に経営リスクの軽減と組織の持続的成長に役立ちます。適切なサクセッションプランが策定されていれば、経営者不在のリスクを軽減し、スムーズな移行が可能になります。企業の規模や業種を問わず実施可能であり、企業の未来を支える不可欠な仕組みです。

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サクセッションプランとは

サクセッションプランとは、企業や事業の後継者を育成する計画のことです。将来的に経営幹部や重要ポストを担う人材を選定・育成し、事業継承を円滑に進めるために重要な戦略です。

特に経営リスクの軽減と組織の持続的成長に役立ちます。例えば、何らかの事態で現経営者が退任した場合、経営者不在の状態が長期化してしまうと、企業の活動が停滞し、取引先や従業員に不安を与えかねません。このとき、適切なサクセッションプランが策定されていれば、それにしたがって適切な後継者が選定され、スムーズな移行が可能になるでしょう。

サクセッションプランは、企業の規模や業種を問わず実施可能であり、企業の未来を支える不可欠な仕組みです。

人材育成との違い

人材育成とサクセッションプランは共に人材に焦点を当てますが、目的や対象に明確な違いがあります。それぞれ見ていきましょう。

人材育成の特徴

人材育成は、企業が必要とする能力を備えた人材を育てることを目的としています。一般従業員から管理職まで幅広い範囲を対象とし、人事部門が主導で進めます。職務スキルやリーダーシップ能力など、業務遂行に必要な知識・能力を包括的に向上させることが主眼です。

サクセッションプランの特徴

サクセッションプランの対象は、経営幹部や経営者候補といった、特定のポジションに限られます

また、経営層が直接関与し、長期的な視点で計画的に育成を進めることも特徴です。具体的には、後継者候補が実践的なスキルを磨き、経営理念を深く理解する機会が提供されます。

サクセッションプランは経営者を中心に据えた計画的育成であり、汎用的な人材育成とは異なる役割を果たします。

後任登用との違い

後任登用とサクセッションプランは、共に後継者の選定を目的としますが、その方法とアプローチに違いがあります。

後任登用は、前任者の部下や同僚など、職務分野や年齢が近い者から短期間で選定されることが一般的です。選定プロセスは迅速ですが、長期的な育成計画を伴わないため、後任者が役割に十分適応できないリスクがあります。

一方、サクセッションプランは、企業の長期的な成長を見据えて、育成を含む計画を段階的に進める点が特徴です。選定対象には、現状のスキルだけでなく、将来性やリーダーシップ能力も考慮されます。加えて、育成期間が長期にわたるため、経営理念や企業文化を深く浸透させながら、必要なスキルや知識を着実に習得できる仕組みとなっています。

これらの違いから、サクセッションプランは単なる人材選定ではなく、組織全体の将来性を左右する重要な経営戦略であるといえます。

サクセッションプランの目的・必要性

サクセッションプランの主な目的・必要性として、以下の2点を紹介します。

  • 企業成長の継続性確保のため
  • コーポレートガバナンスコード・ISO30414の遵守のため

それぞれ見ていきましょう。

企業成長の継続性確保のため

現経営者の能力がどれほど高くても、経営者が永続的に業務を遂行することは現実的ではありません。そのため、企業が持続的に成長し続けるためには、適切なサクセッションプランが不可欠です。

事業承継を知る _ 中小企業庁
出典:事業承継を知る _ 中小企業庁

2023年、経営者の平均年齢は60.5歳と、過去最高を記録しました。経営者の高齢化により、体調不良や引退、さらには突然の逝去により、経営者不在となるリスクが増加しています。

もしも後継者の選定や育成が行われていない状態で経営者が不在となった場合、企業活動が停止するおそれがあります。

また、急ぎで後継者を選定しても、十分な育成がなされていなければ、その後継者が適切な経営判断を下せず、企業の業績が悪化するリスクは否めません。

さらに、このような状況では従業員の士気を下げたり、取引先や顧客からの信頼を損なったりして、離職や顧客離れを引き起こす可能性があります。

こうしたリスクを軽減し、企業が長期的に成長する基盤を整えるためにも、計画的な後継者の育成が重要です。質の高い経営者人材を育てることで、企業の安定的な発展が期待できるでしょう。

コーポレートガバナンスコード・ISO30414の遵守のため

サクセッションプランは、コーポレートガバナンスコードにおいて、企業が取り組むべき重要な課題として位置づけられています。

コーポレートガバナンスコードとは、東京証券取引所が定めた企業統治に関するルールです。このルールは、株主をはじめとするステークホルダーの立場を尊重し、企業が透明性と公平性を保ちながら迅速かつ果断な意思決定を行うために策定されました。

コーポレートガバナンスコードでは、サクセッションプランについて以下のように記載されています。

  • 4-1③ 取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。
    出典:コーポレートガバナンスコード

また、ISO30414においてもサクセッションプランの重要性に関する指摘があります。
ISO30414とは、国際標準化機構(ISO)が定めた社内外のステークホルダーへの人的資本に関する報告の指針を定めたものです。そのなかで、サクセッションプランは企業の持続的な成長計画に欠かせない要素であると述べられています。

これらのルールに則った取り組みを行うことで、企業はステークホルダーからの信頼が得られるでしょう。信頼関係が深まれば、従業員の定着率向上や顧客・取引先との良好かつ持続的な関係構築も可能です。その結果、企業全体の成長を後押しすることにもつながります。

サクセッションプランに取り組むメリット

企業がサクセッションプランに取り組む主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • 経営者の不在・交代に伴うリスクを回避できる
  • 育成計画の可視化により人材レベルの向上が期待できる

それぞれのメリットについて、詳細を見ていきましょう。

経営者の不在・交代に伴うリスクを回避できる

計画的な後継者育成は、突発的な経営者不在のリスクを軽減します。

事前に必要なスキルを持つ候補者を育成しておけば、現経営者が突然退任した場合でも経営の連続性が保たれ、企業の混乱や機会損失の回避が可能です。

さらに、長期的な育成により経営理念や文化を継承しやすくなるため、経営交代による企業風土の変化も最小限に抑えられます。これらの準備は、組織の安定と価値向上につながります。

育成計画の可視化により人材レベルの向上が期待できる

適切なサクセッションプランが策定されていれば、明確な育成計画により、経営層は必要な人材要件を整理でき、育成対象者も目指すべき方向性を理解しやすくなります。また、キャリアパスの可視化は従業員のモチベーション向上を促すでしょう。これにより組織全体の人材レベルが底上げされ、企業の競争力の強化にもつながります。

サクセッションプランに取り組むデメリット

サクセッションプランの導入には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  • 長期育成に伴うリソースが必要
  • 育成対象とそれ以外の従業員に格差が生じる恐れがある

デメリットに対しては必要な対策を立てたうえで、導入に取り組む必要があります。

長期育成に伴うリソースが必要

サクセッションプランに取り組む大きなデメリットに、長期的な運用に伴うリソース確保が必要となる点が挙げられます。

サクセッションプランは幹部候補や経営者候補を対象とした育成プランであるため、数年~数十年をかけて取り組むのが一般的です。このような長期的なプランは、立案するだけでも多くの時間を要します。

加えて、経営層が育成担当者となることから、育成コストも増大しやすいです。特に中小企業はリソースの確保が困難になるケースが少なくありません。

さらに、仮に候補者が退職・辞任した場合には、それまでに費やしたコストが無駄になってしまうリスクがある点にも注意が必要です。

育成対象とそれ以外の従業員に格差が生じる恐れがある

サクセッションプランにより、育成対象者とその他の従業員の間に格差が生じる可能性があります。これにより、対象外の従業員が自分のキャリアに対する期待を失い、モチベーションが低下することが考えられます。そういった状況が放置されれば、生産性の低下や離職者の増加につながる恐れは否定できません。

サクセッションプランの策定・実行の流れ

サクセッションプランの策定・実行の流れ

サクセッションプランの成功には、現状の分析から目標設定、育成計画の策定とモニタリングまでの一連のプロセスをしっかりと実行することが必要です。それぞれのプロセスについて、以下で解説します。

1. 現状分析と経営戦略に基づく目標設定

はじめに、組織の現状と将来のニーズを正確に把握し、それに基づいて明確な目標を設定します。経営戦略と一致した後継者育成計画を立案することで、企業の長期的成長を支える仕組みが構築されます。

2. 育成対象となるポジションの検討

自社の経営戦略や目標が明確になったら、それを実現するために育成が必要なポジションを決定します。企業が目指すものにより、取締役、役員、部長など育成すべきポストはさまざまです。

また、どのような人材を何人必要とするのか、内部・外部どちらから選出するのかも、戦略や目標によって変動します。サクセッションプランは単なる人材育成ではなく、長期的な経営戦略の一部であることを理解したうえで、検討を進めましょう。

3. 人材要件の定義づけ

育成対象となるポジションごとに、人材に求める要件を定義づけていきましょう。人材計画に基づき育成が進められるため、可能な限り具体的かつ網羅的に洗い出すことが大切です。人材要件で定めたい項目の例は以下のとおりです。

  • 経営に関する知識があるか
  • リーダーシップ能力があるか
  • コミュニケーション能力があるか
  • 戦略的な思考があるか
  • グローバルな視点があるか
  • リスク管理能力があるか
  • 変革を推進する能力があるか

4. 育成対象者の選定

サクセッションプランの成功には、適切な育成対象者の選定が欠かせません。人材要件が明確になったら、それに基づいて潜在的な後継者候補を特定します。

この際、多様性と公平性を考慮し、将来の組織ニーズに応じた人材を選出することが重要です。また、現状の能力だけでなく、長期的なポテンシャルも見極めることが、効果的な候補者選定につながります。

選出方法は、自薦や他薦、試験、人事アセスメントなどがあります。自社の状況に最適な方法を選びましょう。

5. 育成計画の策定

選定された後継者候補に対して、それぞれに応じた育成計画を策定します。この計画は、OJTや研修、ローテーションなど多様な育成手法を組み合わせ、総合的なスキルを養成するものです。

また、計画の進捗を確認するために中間目標を設定することも重要です。これにより、計画の有効性を高め、後継者育成のスムーズな実施が可能になります。

6. 実行とモニタリング・見直し

策定した育成計画を着実に実行し、その進捗を定期的にモニタリングすることが必要です。後継者候補の評価を定期的に行い、計画の有効性を検証します。

さらに、組織のニーズや外部環境の変化に応じて計画を柔軟に見直すことが重要です。これにより、個々の成長に適応した育成を実現し、後継者としての能力を最大限に引き出すことが可能になります。

サクセッションプランを進めるポイント

サクセッションプランを円滑に進めるには、経営層の積極的な関与や明確な基準の設定が重要です。また、計画の柔軟性を保ちつつ、十分な育成期間を確保することも求められます。

経営層の主導的な関与と選定基準の明確化により信頼性を確保する

サクセッションプランには経営層が主導的に関与し、その重要性を組織全体で共有することが必要です。経営トップが明確な意思を示すことで、計画の実効性が向上するでしょう。

また、後継者の選抜基準や育成プロセスを透明にすることで公平性が保たれ、従業員の信頼を得ることが可能です。こうしたアプローチは、組織全体の理解と協力を引き出し、計画を成功に導きます。

後継者のポストや成長段階に合わせた柔軟な育成方針を立てる

後継者に求められる能力は、役職や部門によって大きく異なります。

例えば、経営企画部門では戦略的思考力が重視される一方、現場管理職では実行力やリーダーシップが求められるでしょう。

そのため、育成計画は固定的であってはならず、必要なスキルや特性を洗い出したうえで、ポストに応じた最適なプランを設計することが大切です。

また、ポストだけでなく、後継者個人への最適化も求められます。環境変化や個人の成長に応じて、計画を柔軟に修正できる仕組みを整備しましょう。

育成完了までに十分な期間を確保する

後継者育成には、長期的な視点が欠かせません。

東京商工会議所の調査では、後継者候補を選定してから決定するまでに3年以上かかった企業が約4割、決定後に事業承継が完了するまで3年以上必要とした企業が約5割に上るとの結果が報告されています。

このデータからも、後継者が成長し、自信を持って役割を担うためには、十分な期間が必要であることが明らかです。計画的なスケジュールのもとで育成を進めることで、事業承継の成功率が大きく向上します。

サクセッションプランの導入事例

最後に、実際に企業が取り組んだサクセッションプランのうち、代表的な例を3つ紹介します。自社で取り入れる際の参考にしてください。

株式会社りそなホールディングス

りそなホールディングスは、「りそなNext」という次世代経営者育成プログラムを実施しています。このプログラムは、30代後半から40代の若手管理職を対象に、2年間の集中的な育成を行うサクセッションプランです。

具体的には、経営シミュレーションや実際の経営課題への対応を通じて、実践的なスキルを磨きます。こうした長期的なプログラムにより、組織の中核を担う経営者候補を計画的に育成しています。

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタは、グローバル規模でのサクセッションプランを導入している企業の一つです。将来の経営幹部候補を世界中の拠点から選抜し、多様性を活かした計画的な育成を実施しています

また、異文化理解力やグローバルリーダーシップの向上を目指し、国際的な人材交流プログラムを積極的に活用し、国際競争力を備えた次世代リーダーの育成を実現しています。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、「トヨタウェイ」という企業理念に基づいたサクセッションプランを展開しています。この計画は、現場主義と改善精神を重視し、次世代リーダーを育成するものです。

さらに、定期的な人事ローテーションを導入し、多岐にわたる業務経験を通じて幅広い視野を持つ人材育成も実施しています。トヨタ独自のアプローチにより、長期的視点で経営者育成を進めています。

まとめ

サクセッションプランは、企業の持続的成長と安定的な経営に欠かせない戦略です。長期的な視点で計画的に後継者を育成することで、経営の継続性を確保し、組織全体の競争力を高めることが可能です。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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