会社売却の相場はいくら? 売却額に影響を与える要素や価格を高めるポイントを解説

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会社の売却金額の相場について

会社売却の相場とは、企業を売却する際の価格の目安を指します。ただし、不動産のような明確な相場表があるわけではなく、企業規模、業種、業界動向、将来性、経営状態、ブランド力、買い手との相乗効果、M&Aスキームなどによって変動します。中小企業では、時価純資産に営業利益の数年分を加える考え方が、簡易的な目安として用いられることがあります。

会社売却を考えたとき、多くの経営者が最初に気にするのが「自社はいくらで売れるのか」という点です。しかし、会社売却の価格は不動産のように明確な相場表があるわけではなく、企業規模、業種、業界の成長性、将来性、財務内容、ブランド力、買い手との相乗効果など、さまざまな要素が重なって決まります。さらに、株式譲渡や事業譲渡といったスキームの違いによっても、最終的な条件は変わります。適正な売却価格を把握するには、評価方法の違いを理解し、自社の強みと課題を整理したうえで準備を進めることが欠かせません。

また、M&Aの意味や基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


会社の売却金額の相場は?

会社売却の価格には、明確な相場は存在しません。会社の売却価格は、買い手企業との交渉や、市場動向、会社の将来性など、さまざまな要素によって変動するためです。しかし、中小企業のM&Aでは、簿価純資産や時価純資産に数年分の利益を加え、売却価格の目安とする場合があります。加算する利益の種類や年数は案件によって異なり、中小企業庁の「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」では、税引後利益や経常利益などを用い、年数は通常1~3年とされています。

会社売却の金額に影響する要素

会社売却の価格を左右する主な要素としては、以下が挙げられます。

それぞれ見ていきましょう。

企業規模

企業規模は、会社の売却価格に影響する要素の一つです。売上高や利益、資産規模などが大きい企業は、評価額も大きくなる傾向があります。
ただし、規模だけで価格が決まるわけではなく、収益性や財務状態、成長性、事業上のリスクなども含めて評価されます。

業種

会社の売却価格を検討する際は、業種ごとの事業特性も考慮されます。例えば、製造業では設備や技術力、IT業では人材や知的財産、小売業では店舗網や顧客基盤など、買い手が重視するポイントは業種によって異なります。
また、許認可や登録が必要な業種では、その取得状況やM&A後の承継可否も重要です。株式譲渡と事業譲渡では許認可の扱いが異なる場合があるため、取引スキームを含めて確認する必要があります。
このように、業種特有の資産や強み、規制上の条件などが、売却価格や取引条件を左右します。

業界動向

業界全体の市場環境や今後の見通しも、会社の評価に影響します。市場の拡大や業界再編が進み、買収ニーズが高まっている場合は、買い手候補が増え、価格交渉を進めやすくなる可能性があります。
反対に、市場の縮小や競争激化が進んでいる場合は、将来の収益性に対する懸念から、評価が慎重になることがあります。ただし、業界が厳しい状況にあっても、独自の技術や安定した顧客基盤などを持つ企業は、個別に評価される可能性があります。
業界の成長性や再編動向、買収ニーズの変化を把握し、自社がどのような位置にあるかを整理しておくことが重要です。

将来性

買い手企業は、売り手企業の将来性にも注目しています。将来的な収益が期待できる新技術を開発している場合や、成長市場への展開が見込まれる場合は、将来の収益性が評価に反映される可能性があります。
一方、事業計画の不確実性が高い場合や、特定の経営者・従業員への依存度が高い場合は、M&A後の事業継続性が懸念されることがあります。特許や新規事業の実績など、将来性を裏付ける情報を整理しておくことが重要です。

経営状態

会社の経営状態も、売却価格に影響する重要な要素です。収益性や財務状態が安定しており、借入金の返済能力に問題がない企業は、買収後のリスクが低いと評価されやすくなります。また、適切な会計処理が行われ、財務情報の信頼性が確保されていることや、コンプライアンス体制が整っていることも、買い手の判断に影響します。
一方、経営者への依存度が高い場合や、売却後の引き継ぎ体制が不透明な場合は、M&A後の事業継続性が懸念され、評価や取引条件に影響する可能性があります。事前に業務の引き継ぎ方法や経営体制を整理し、買い手が事業を継続しやすい状態を整えておくことが重要です。

ブランド力・知名度

ブランド力や知名度も、会社売却の価格に影響を与えます。長年の実績があり、市場での評価が高い企業は、買い手企業にとって魅力的な買収対象となる場合があります。
例えば、強いブランドを持つ企業は、買い手にとって新規市場参入の足がかりとなるため、通常の評価額に一定の上乗せが期待できる場合があります。
ただし、ブランド価値が、経営者など特定の個人に依存している場合は、売却後の維持が難しく、リスクと見なされる可能性もあります。

シナジー効果

買収後にどのような相乗効果(シナジー効果)が見込まれるかも、売却価格に影響する要素です。例えば、買い手企業が新市場への参入を目的としている場合、売り手企業がその市場での顧客基盤を持っているのであれば、売却価格にプラスの影響を与える可能性があります。また、共同事業の展開やコスト削減が実現できる場合も、買い手企業の評価が高まります。
そのため、自社がどのような形で買い手企業の成長に貢献できるのかを明確にし、シナジー効果をアピールすることが重要です。

M&Aスキーム

M&Aには株式譲渡や事業譲渡などさまざまなスキームがあります。どのスキームを選択するかによって譲渡対象や引き継ぐ範囲が変わるため、会社売却の価格にも影響します。
株式譲渡は、会社の株式を譲渡して経営権を移転する方法です。会社全体は存続するため、資産や負債、契約関係、従業員との雇用関係なども原則として会社に帰属したまま維持されます。そのため、会社全体の価値やリスクを踏まえて価格が検討されます。
一方、事業譲渡は、特定の事業や資産・契約などを切り出して譲渡する方法です。譲渡対象を個別に定められるため、対象範囲や引き継ぐ資産・負債の内容によって価格が変動します。
最終的な売却条件は、スキームごとの特徴や税務・法務上の影響、買い手企業との交渉によって決定されます。専門家の助言を受けながら、自社に適した方法を慎重に検討することが重要です。

会社売却時の評価額の算出方法

中小企業のM&Aでは、会社の売却価格の目安を求める簡便な方法として、年買法(年倍法)が用いられる場合があります。年買法は、簿価純資産や時価純資産に数年分の利益を加算して、売却価格の目安を算出する方法です。
一方、企業価値を評価するアプローチは、大きく次の3種類に分けられます。

一つずつ解説していきます。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、市場の取引価格をもとに企業価値や株式価値を算出する方法です。特に、上場企業を対象とするケースや、類似の上場企業と比較できるケースに多く用いられます。M&A市場や株式市場のデータを参考にするため、一定の客観性を確保しやすい評価方法です。
マーケットアプローチには、市場株価法、類似会社比較法、類似取引法、取引事例法などがあります。本記事では、代表的な方法として以下の2つを紹介します。

市場株価法

対象会社が上場している場合に、市場株価をもとに株式価値を算定する方法です。一定期間の平均株価などを用いて評価するケースがあります。

類似会社比較法(マルチプル法)

類似会社比較法(マルチプル法)とは、対象会社と類似の業界に属する上場企業を選び、その企業の財務指標(PER、PBR、EV/EBITDA倍率など)を参照して算出する方法です。対象企業が非上場でも利用できます。
マーケットアプローチは、実際の市場データを使用するため、客観性の確保に優れています。ただし、類似企業の選定や市場の変動に左右されやすく、業種や企業の個別事情を完全に反映するのは難しいという側面もあります。

インカムアプローチ

インカムアプローチ

インカムアプローチは、企業が将来生み出す「収益力」や「キャッシュフロー」に着目し、割引計算などを用いて現在価値を求める方法です。将来性が高い企業や安定したキャッシュフローが見込める場合に適しています。主に以下の3つの方法があります。

DCF法(Discounted Cash Flow法)

DCF法とは、将来のキャッシュフロー(FCF)を一定の割引率で現在価値に換算し、事業価値を算定する方法です。一般的には、算定した事業価値に現預金などの非事業資産を加え、有利子負債を控除して株式価値を求めます。将来の収益力を反映しやすい一方、事業計画や割引率の設定によって評価額が大きく変わる点に注意が必要です。

配当還元法

将来支払われる配当金を予測し、割引現在価値を求める方法です。配当政策が安定している会社や少数株主持分の評価など、配当に着目した評価が適している場合に用いられることがあります。

収益還元法

会社の将来収益を現在価値に割り引いて算定する方法です。DCFほど複雑ではありませんが、同様に将来の収益予測が必要になります。
インカムアプローチは、将来の成長戦略やシナジー効果などの個別の事情を考慮しやすい点がメリットです。しかし、収益予測の精度が重要であり、前提条件の設定によって評価額が大きく変動するため、慎重な分析が求められます。

コストアプローチ

コストアプローチ

コストアプローチは、企業が保有する資産・負債に着目し、純資産価値をもとに株式価値を算定する方法です。代表的な方法には、簿価純資産法と時価純資産法があります。また、純資産に数年分の利益を加算する年買法が用いられる場合もあります。
コストアプローチは、比較的簡便に算定でき、現在の資産価値を反映しやすい点が特徴です。一方、将来の成長性や収益力を評価に反映しにくい側面がある点には注意が必要です。

簿価純資産法

帳簿上の資産から負債を差し引いた額(純資産)を評価額とする方法です。会計上の数値がそのまま反映されるため計算が容易ですが、時価との乖離が大きい場合には適切な評価にならない可能性があります。

時価純資産法

時価純資産法とは、簿価純資産法を修正し、資産・負債を時価で評価し直して純資産を算定する方法です。
より実態に近い価値を反映できますが、時価評価には手間がかかります。

年買法(年倍法)

純資産に加えて「営業権(のれん)」を考慮するため、営業利益×一定年数(3〜5年など)を上乗せする形で株式価値を算定する方法。中小企業の売却相場をシンプルに把握する際に、最もよく用いられる。

コストアプローチは、比較的少ないデータで実施でき、直感的に理解しやすいのがメリットです。年買法を活用すれば、一定程度の収益力やブランド価値を考慮した評価も可能です。

ただし、現時点の資産価値を基準に評価するため、インカムアプローチほど将来性を反映しにくい側面があります。

会社売却価格を高めるためのポイント

ここでは、会社売却の価格を高めるためのポイントを5点紹介します。ポイントを押さえて、より有利な条件での売却を目指しやすくなります。

財務状況を見直す

買い手企業は、会社や事業の評価にあたって財務情報を重視します。そのため、財務の健全性が価格交渉の重要な基盤となります。会社の売却価格を高めるためには、財務状況を見直し、健全化を図ることが求められます。
例えば、赤字部門や将来性の低い事業を整理すれば収益性の向上が見込めます。また、経費削減やコスト構造の最適化を進めれば、利益率が改善され、買い手企業にとって魅力的な買収対象となるでしょう。
さらに、売掛金や在庫管理を徹底し、資金繰りを安定させることも重要です。資金繰りが円滑であれば、買い手企業は投資リスクを低いと判断し、価格交渉にプラスに働く可能性があります。また、不要な資産や過剰在庫を整理し、借入金を圧縮するなど、バランスシートの改善に取り組むことも重要です。

健全な経営を行う

会社の売却を成功させるためには、財務面だけでなく、経営の安定性も重要な要素です。M&Aにおいては、経営の透明性や継続性が高く評価されるため、経営基盤の整備が求められます。まず、コンプライアンス体制を強化し、法令遵守を徹底することが重要です。企業の不正リスクやトラブルを未然に防ぐことで、買い手企業に対する信頼を高めることができるでしょう。
また、従業員が安定して定着している企業は、M&A後も事業を継続しやすいと評価される可能性があります。あわせて、業務プロセスの標準化やマニュアル化を進め、特定の経営者や従業員に依存しない体制を整えておくことも重要です。経営者や幹部のマネジメント体制も、M&A後の事業継続性を判断する要素の一つです。

他社との差別化につながる自社の強みを強化する

他社との差別化ポイントが明確な企業は、より高い評価を受けやすくなります。
例えば、長年培ってきたブランドや顧客からの信頼が強みとなる場合、買い手企業にとって既存の顧客基盤を活用できるメリットが生まれます。特に、ロイヤルカスタマーの獲得や高い継続率を示すデータがあると、安定した収益基盤を持つ企業として評価される可能性があります。
また、他社が容易に模倣できない技術や知的財産は、買い手にとっての戦略的な価値となり、価格交渉にプラスに働く場合があります。

適切な売却時期を見極める

会社の業績や将来性が評価されやすい時期に売却を検討することも重要です。業績が伸びている時期や、将来の収益について具体的な見通しを示せる場合は、買い手企業の関心を得やすく、価格交渉にプラスに働く可能性があります。
また、業界の成長や法改正、新技術の普及などによって事業機会が広がる場合も、企業の将来性が評価される要因となります。ただし、市場環境や業界動向が売却価格に与える影響は、企業ごとの収益性や競争力によって異なります。
売却を急ぐと、十分な準備や買い手候補の比較ができず、希望する条件で交渉しにくくなることがあります。余裕を持って準備を始め、自社の業績や市場環境を踏まえて売却時期を検討することが大切です。

専門家の活用

会社売却では、企業価値の評価や買い手候補の探索、条件交渉、契約手続きなど、幅広い専門知識が求められます。M&Aの専門家を活用することで、市場動向や自社の強みを踏まえて買い手候補を検討し、条件の整理や交渉を円滑に進めやすくなります。
また、買い手によるデューデリジェンス(DD)に備え、財務・税務・法務に関する資料を整理し、懸念事項を事前に把握・改善しておくことも重要です。専門家の支援を受けながら準備を進めることで、交渉中のトラブルや手続きの停滞を抑え、より良い条件での売却につながる可能性があります。

まとめ

会社の売却価格を高めるためには、財務の見直しや経営の健全化、企業の強みの強化が重要です。さらに、適切な売却時期を見極め、専門家を活用することで、より良い条件での売却につながる可能性があります。



よくある質問

  • 会社売却の相場はどのように決まりますか?
  • 会社売却の価格に明確な相場はありません。企業規模、業種、業界動向、将来性、経営状態、ブランド力、シナジー効果、M&Aスキームなど複数の要素によって変動します。中小企業のM&Aでは、簿価純資産や時価純資産に数年分の利益を加え、売却価格の目安とする場合があります。ただし、利益の種類や年数は案件によって異なり、実際の売却価格は当事者間の交渉によって決まります。
  • 会社売却の価格に影響する主な要素は何ですか?
  • 主な要素は、企業規模、業種、業界動向、将来性、経営状態、ブランド力・知名度、買い手とのシナジー効果、M&Aスキームです。これらの要素が総合的に検討され、実際の評価や売却条件が決まります。
  • 会社売却時の評価額はどのように算出しますか?
  • 代表的な算出方法には、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチの3つがあります。市場の比較データを使う方法、将来収益を現在価値に割り引く方法、純資産価値を基準にする方法があり、企業の性質や目的に応じて使い分けます。
  • インカムアプローチとは何ですか?
  • インカムアプローチとは、企業が将来生み出す収益力やキャッシュフローに基づいて現在価値を求める評価方法です。記事では、DCF法、配当還元法、収益還元法が紹介されており、将来性を反映しやすい一方で、前提条件によって評価額が変わりやすい特徴があります。
  • コストアプローチではどのように会社を評価しますか?
  • コストアプローチでは、企業が保有する資産と負債に着目し、純資産価値を基準に評価します。記事では、簿価純資産法、時価純資産法、年買法が紹介されており、中小企業の売却価格の目安を把握する場面で使われることがあります。
  • 会社売却価格を高めるには何が重要ですか?
  • 財務状況の見直し、健全な経営体制の整備、自社の差別化要因の強化、適切な売却時期の見極め、専門家の活用が重要です。特に、収益性や資金繰りの改善、強みの明確化、デューデリジェンスへの備えが評価向上につながります。
  • 専門家を活用するメリットは何ですか?
  • 専門家を活用することで、市場動向や自社の状況を踏まえた評価、買い手候補の探索、条件交渉、デューデリジェンスへの準備を進めやすくなります。手続き上のリスクや懸念事項を早期に把握することで、円滑なM&Aや、より良い条件での売却につながる可能性があります。

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