適時開示とは? 適時開示制度の概要、適時開示が求められる会社情報などをわかりやすく解説

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日本の金融商品市場の機能は、国民の有価証券による資産運用と企業の有価証券の発行による長期安定資金の調達を適切かつ効率的に結び付けることによって、国民経済の発展に資することにあります。

この機能が十分に発揮されるためには、市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼が確保されていることが必要であり、有価証券について適切な投資判断材料が提供されていることが前提となります。

このような投資判断材料の提供の機能を果たす制度として、金融商品取引所の適時開示制度と金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書など)が併存しています。

本記事では、適時開示制度の概要、適時開示が求められる会社情報、開示時期と開示方法、罰則、会社情報の開示の適正性の確保について、詳しく解説します。本記事が適時開示制度の理解にご活用ください。

このページのポイント

~適時開示とは?~

上場会社は投資家に対して適時、適切な会社情報の開示が求められ、これは健全な金融市場において重要な役割を果たす。金融商品取引所は、法定開示とは別に「適時開示等に関する規則」を定め、上場会社に対して投資判断に影響を与える情報の開示を求めている。特に、企業環境が変化する中で、正確かつ迅速な情報提供の重要性が増している。

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1. 適時開示制度とは

上場会社の株式は、金融市場において一般の投資家によって売買されており、上場会社が投資家に対して適時、適切な会社情報の開示を行うことは、健全な金融商品市場の根幹をなすものといえます(東京証券取引所有価証券上場規程401条)(以下、「上場規程」)。
そこで、金融商品取引所は、金融商品取引法に基づく法定開示とは別に、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則」を定め、その開設する金融商品市場に上場された上場会社に対して、投資家が投資判断を行うに際して重要な会社情報が生じた場合に、これを適時、適切に開示することを求めています。
金融商品市場においては発生する各種の会社情報によって売買が大きな影響を受けることが多いことなどから、投資者にとって、適時開示は大変重要なものとなっています。特に近年のように、企業を取り巻く環境の変化が著しい時代にあって、投資者が的確な投資情報を入手するための一層の環境整備が求められている中、最新の会社情報を迅速、正確かつ公平に提供する適時開示の重要性が、より一層高まっています。

2. 会社の情報開示の種類

会社情報の開示制度には、法定開示及び適時開示以外に任意開示があります。そこで、法定開示、適時開示、任意開示の違いを説明します。

2-1. 法定開示、適時開示及び任意開示の違い

会社情報の開示制度は以下のように区分されます。

  • 法定開示は、金融商品取引法や会社法に基づく開示をいう
  • 適時開示は、東京証券取引所をはじめとする証券取引所の規定に基づく開示をいう
  • 任意開示は、会社が実施する任意の開示であり例えば、CSR報告書等がある

特に、証券取引所に上場している上場会社の株価は、当該会社の経営状況等を反映し、常に変動しているため、投資判断に有益な開示情報が、上場会社によって適切に公開される前提となっている必要があります。そこで、このような投資判断材料の提供機能を果たす制度として、金融商品取引法に基づく情報開示制度(法定開示。有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書など)と証券取引所における情報開示制度(適時開示)があります。

法定開示と適時開示は、投資家の投資判断に資する情報を提供する点で共通していますが、開示の対象および時期、開示方法等が異なっています。
法定開示、適時開示及び任意開示の違いをまとめると以下の表になります。

法定開示 適時開示 任意開示
主な趣旨・目的
  • 財務・企業情報等の開示を確保
  • 投資者保護、株主・会社債権者の権利行使保護
  • 重要な会社情報を投資者に適時に提供
  • 投資者保護
会社の事業活動の状況やPR等を幅広いステークホルダーに発信
ポイント 正確性・十分性 適時性・速報性 自発性・積極性
開示方法 EDINET(金融庁が運営) TDnet(証券取引所が運営) TDnet、報道機関への情報提供、自社ホームページ等
関連法令等 金融商品取引法、会社法 有価証券上場規程、同施行規則等 なし
対象 金融商品取引法適用企業
(上場企業、過去に有価証券届出書を提出した企業等)
上場企業
(東京、名古屋、福岡、札幌の証券取引所)1
すべての企業
開示書類 金融商品取引法に基づく開示書類
  • 有価証券報告書
  • 四半期報告書
  • 半期報告書
  • 臨時報告書
  • 親会社等状況報告書
  • 公開買付届出書
  • 大量保有報告書
金融商品取引法に基づく開示書類
  • 上場会社の情報
    • 決定事実
    • 発生事実
    • 決算短信、四半期決算短信
    • 業績予想、配当予想
  • 子会社等の情報
(例)
  • CSR報告書
  • 環境報告書など
受付時間 原則平日9:00〜17:15 原則平日17:00まで(夜間、休日は事前に相談) -
罰則等 あり あり -

3. 適時開示が求められる会社情報

適時開示が求められる会社情報は、有価証券の投資判断に重要な影響を与える上場会社の業務、運営又は業績等に関する情報です。具体的には次のように区分されています。

3-1. 上場会社の情報

まず、上場会社の情報として、以下の事項があります。

  • 上場会社の決定事実
  • 上場会社の発生事実
  • 上場会社の決算情報
  • その他の情報

より具体的な開示内容は、日本取引所グループのホームページ(https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/info/)に記載されていますが、主なものを抜粋すると以下のような情報があります。

・上場会社の決定事実

  1. 発行する株式、処分する自己株式、発行する新株予約権、処分する自己新株予約権を引き受ける者の募集又は株式、新株予約権の売出し
  2. 合併等の組織再編行為
  3. 公開買付け又は自己株式の公開買付け
  4. 公開買付け等に関する意見表明等
  5. 子会社等の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の子会社等の異動を伴う事項
  6. 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
  7. 特別支配株主による株式等売渡請求に係る承認又は不承認
  8. その他上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項

・上場会社の発生事実

  1. 主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動
  2. 上場廃止の原因となる事実
  3. 親会社の異動、支配株主(親会社を除く。)の異動又はその他の関係会社の異動
  4. 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て
  5. 特別支配株主による株式等売渡請求等
  6. その他上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事実

・上場会社の決算情報

  1. 決算短信
  2. 四半期決算短信

・その他の情報

  1. 投資単位の引下げに関する開示
  2. 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示

なお、M&Aに関係する情報も多々あるため、M&Aを検討している場合にも留意する必要があります。

3-2. 子会社等の情報

次に子会社等の情報として、以下の事項があります。

  • 子会社等の決定事実
  • 子会社等の発生事実
  • 子会社等の業績予想の修正等

より具体的な開示内容は、上場会社の情報と同様に日本取引所グループのホームページ(https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/info/index.html)に記載されていますが、主なものを抜粋すると以下のような情報があります。

・子会社等の決定事実

  1. 子会社等の合併等の組織再編行為
  2. 子会社等による公開買付け又は自己株式の公開買付け
  3. 子会社等の事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
  4. 子会社等における孫会社の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の孫会社の異動を伴う事項
  5. その他子会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事項

・子会社等の発生事実

  1. 子会社等における仮処分命令の申立て又は決定等
  2. 子会社等における免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令に基づく処分又は行政庁による法令違反に係る告発
  3. 子会社等における破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て
  4. その他子会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実

・子会社等の業績予想の修正等

  1. 子会社等の業績予想の修正、予想値と決算値の差異等

なお、上場会社の情報と同様にM&Aに関係する情報も多々あるため、M&Aを検討している場合には留意する必要があります。

3-3. 軽微基準

適時開示が求められる会社情報であっても、金額が僅少であるなど、投資家の投資判断に影響を与えないとされる場合は、軽微基準が適用になり、適時開示が要求されません。軽微基準に該当するかどうかは、上場規程、ガイドライン等に従って判断することになります。
なお、適時開示制度の概要を説明するため、東京証券取引所では、「会社情報適時開示ガイドブック」(以下、「適時開示ガイドブック」)を発行しています。適時開示ガイドブックは、適時開示の内容を詳細に定めたものです。例えば、M&Aを実施する際には担当者は、適時開示ガイドブックに基づき、当該M&Aが適時開示の対象情報かどうかを判断する必要があります。

4. 開示時期と開示方法

次に開示時期と開示方法について、それぞれ解説します。

4-1. 開示時期

上場会社は、上場規程に基づき、重要な会社情報の決定又は発生時に、直ちにその内容を開示することが必要となります。 一般に、適時開示には適時性や速報性が求められており、法定開示には正確性や十分性が求められていることから、それぞれの開示時期については、原則として、金融商品取引法に基づく法定開示よりも適時開示を先に行うことが予定されていると考えられます。ただし、例外として株式や新株予約権の発行に伴い、有価証券届出書を提出する場合等においては、金融商品取引法に基づく法定開示に先立ち適時開示を行った場合、金融商品取引法上の事前勧誘規制に抵触するおそれがあるとして、金融商品取引法に基づく法定開示が適時開示の前(または同時)に行われることがあります。上場会社においては、適時開示と法定開示の先後関係については、適宜、弁護士等の法律の専門家にご相談のうえ当該案件ごとに慎重に判断する必要があります。

4-2. 開示方法

東京証券取引所に上場する会社は、上場規程に基づく情報開示については、東京証券取引所が運営するTDnet(Timely Disclosure network)を利用して開示することになります。TDnetとは、東証への事前説明、報道機関への開示、開示資料のファイリング、公衆縦覧などを総合的に行うことができるシステムです。任意開示の場合も、TDnetを利用して開示することが推奨されています。TDnetの仕組みについては、下図のとおりです。

インジケーター

5. 罰則について

次に罰則について、法定開示に違反した場合と適時開示に違反した場合に分けて説明します。

5-1. 法定開示に関して違反した場合

法定開示に関する違反内容としては、不開示、開示遅延、虚偽開示、不十分な開示、その他必要な手続の不実施など多岐にわたります。特に金融商品取引法における書類は一般投資家に公開される開示文書であり、それらの開示文書に虚偽の記載がなされると社会に与える影響が極めて大きいことから、虚偽記載に関しては金融商品取引法上の刑事責任の中でも厳しい罰則が用意されている点に注意が必要です。その他、金融商品取引法の開示規制の実効性確保措置として、罰則のほかに行政処分(訂正命令や課徴金など)があります。

5-2. 適時開示に関して違反した場合

上場会社が会社情報の適時開示義務に違反し、かつ東京証券取引所が必要と認める場合、取引所は、適時開示義務に違反した旨を公表することができるとされています(上場規程508条)。
上場会社が会社情報の適時開示義務に違反し、かつ当該上場会社の内部管理体制等について改善の必要性が高いと認めるときは、当該上場会社が発行者である上場株券等を特設注意市場銘柄に指定することができるとされています(上場規程503条)。
また、内部管理体制等について改善の見込みがないと東京証券取引所が判断する場合は、上場を廃止することがあります(上場規程601条)。
上場会社が会社情報の適時開示義務に違反し、改善の必要性が高いと認めるときは、当該上場会社に対して、その経緯及び改善措置を記載した報告書(改善報告書)及び改善状況報告書の提出を求めることができるとされています(上場規程504条、505条)。
上場会社が会社情報の適時開示義務に違反し、当該上場会社が東京証券取引所の市場に対する株主及び投資者の信頼を棄損したと東京証券取引所が認めるときは、当該上場会社に対して、上場契約違約金の支払いを求めることができるとされています(上場規程509条)。

6. 会社情報の開示の適正性の確保

上場規程412条によると、上場会社は、会社情報の適時開示等の節の規定に基づき会社情報の開示を行う場合は、次の各号に定める事項を遵守するものとされています。

  1. 開示する情報の内容が虚偽でないこと
  2. 開示する情報に投資判断上重要と認められる情報が欠けていないこと
  3. 開示する情報が投資判断上誤解を生じせしめるものでないこと
  4. 前3号に掲げる事項のほか、開示の適正性に欠けていないこと

そのため、上場会社の場合には、上記の事項を遵守するために必要な内部管理体制を整備し、運用することが必要となります。

7. まとめ

今回は適時開示制度について解説しました。
M&Aを検討している経営者にとっても適時開示制度はM&Aに関する情報を適時、適切に開示することが求められるため、この制度の概要を理解しておくことが重要です。しかし、M&Aにかかる適時開示制度は、詳細に規定されているため、法律やM&Aの専門家に相談して進めることが望ましいと考えます。
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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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