経営者保証とは? 活用するメリットやデメリット、負担軽減に活用できる制度を解説

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経営者保証は、中小企業の経営者が、資金調達を円滑に進めるうえで重要な制度です。ただし、経営者個人が大きなリスクを負う可能性もあります。

本記事では、経営者保証の基本的な仕組みや、メリット・デメリット、負担軽減策について詳しく解説します。

このページのポイント

~経営者保証とは?~

経営者保証は、企業が融資を受ける際に経営者個人が保証人となり、企業の債務返済を支援する制度。万が一企業が返済不能となった場合、経営者の個人資産が返済に充てられる。企業の信用力を補完し、金融機関のリスク軽減策として機能する。

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1. 経営者保証とは

経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が保証人となる制度です。経営者の個人資産が企業の債務返済の担保として用いられ、万が一、企業が返済不能に陥った場合、経営者個人の財産が返済に充てられます。経営者保証は企業の信用力を補完し、金融機関がリスクを軽減する手段として位置づけられています。

2. 経営者保証のメリット

経営者保証のメリットとしては、信用情報が十分でない中小企業でも、経営者の個人保証によって融資が実現しやすくなる点が挙げられます。

保証があることで、金融機関はリスクを軽減できるため、金利の引き下げや融資額の増額といった借入人である企業にとっての好条件を提示する場合もあります。結果として、企業は必要な資金を確保しやすくなり、事業拡大のチャンスを得ることが可能です。

経営者保証のメリット イメージ画像
出典:経営者保証 _ 中小企業庁

中小企業庁によると、2020年度は約80%の中小企業が、融資の際に経営者保証を提供していました。このことから、経営者保証は企業の信用力を補完する重要な手段として利用されていることがわかります。

3. 経営者保証のデメリット・問題点

経営者保証は、企業の資金調達を支援する一方で、経営者個人が大きなリスクを負うことになります。企業の業績が悪化し、返済が困難な状況に陥った場合、経営者個人が返済義務を肩代わりしなければなりません。

経営者による返済も困難な状況に陥ると、経営者の個人資産が差し押さえられる可能性があり、最悪の場合、自己破産に追い込まれることもあります。このリスクによって経営者の心理的負担が増大し、積極的な事業展開が阻害されるケースも少なくありません。

また、事業承継の際には、後継者が個人保証のリスクを避けようとするため、事業承継そのものが難航することがあります。これは日本経済の活性化や、中小企業の成長を妨げる大きな課題として認識されています。

4. 経営者保証なしでの融資に対応している金融機関の割合

経営者保証は、企業の資金調達を容易にする一方で、経営者個人が負うリスクの大きさが問題視されています。中小企業経営者の負担を軽減しつつ、円滑な資金調達を実現するために、経営者保証なしの融資促進が重要な課題です。

以下では、経営者保証なしの融資の対応状況について、政府系金融機関・信用保証協会と民間金融機関における対応状況を、それぞれ解説します。

4-1. 政府系金融機関・信用保証協会

政府系金融機関や信用保証協会は、経営者保証なしの融資において、比較的高い実績を示しています。以下の表に2023年度の実績を示します。

金融機関名 割合
日本政策金融金庫 58.8%
商工組合中央金庫 70.7%
信用保証協会 31.6%

出典:政府系金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績(令和5年度)
信用保証協会における「経営者保証に関するガイドライン」活用実績(令和5年度)

2023年における政府系金融機関全体の経営者保証不要の融資割合は約60%で、2022年の約53%と比較して、着実な進展が見られます。この数値は、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫の実績を合わせた平均値です。

ただし、金融機関間で取り組み状況にはばらつきがあり、信用保証協会では31.6%にとどまることから、無保証融資の浸透に課題があるといえます。

これらの取り組みは、中小企業の成長を支えるため、今後さらに強化が求められるでしょう。

4-2. 民間の金融機関

民間金融機関においても、経営者保証に依存しない融資への取り組みが進められています。以下の表に、過去3年間の実績を示します。

年度 割合
2021年度 30.7%
2022年度 33.9%
2023年度 47.5%

民間金融機関における2023年度の経営者保証不要の融資割合は47.5%であり、2021年度の30%から顕著に増加しています。このデータからは、後述の「経営者保証に関するガイドライン」が一定の効果をもたらしていることがうかがえます。

しかし、政府系金融機関と比較すると割合は低いため、さらなる普及が期待されます。特に中小企業への負担軽減を目指した支援策の強化が必要です。

5. 経営者保証の負担軽減に活用できる支援策・制度

経営者保証による負担を軽減するため、政府や金融機関はさまざまな支援策や制度を整備しています。以下では、具体的なガイドラインや融資制度を詳しく解説します。

5-1. 経営者保証に関するガイドライン

経営者保証に関するガイドラインは、金融機関が中小企業に融資を行う際、合理的な保証契約を実現するために政府が示した指針です。経営者保証に依存しない融資を促進することで、経営者の負担を軽減し、企業が積極的な事業展開を行いやすい環境を整備することが目的です。

例えば、金融機関は経営者保証が必要な場合、義務として具体的な理由の説明が必要としています。この義務は2022年6月30日に改定され、2023年4月1日から正式に施行されたことで、透明性が増し、契約の信頼性も向上しました。

ガイドラインには法的な強制力は無いものの、中小企業や金融機関が自発的に取り組むことが期待されています。

制度概要

経営者保証に関するガイドラインの制度概要は以下のとおりです。

項目 内容
対象
  • 中小企業経営者
  • 金融機関
  • 信用保証協会
  • 中小企業支援機関
要件
  • 法人と経営者が明確に区分・分離されている
  • 法人のみの資産や収益力で返済が可能
  • 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている
期待できる効果
  • 経営者保証に依存しない融資を受けられる
  • 既に契約している経営者保証を見直せる
利用のタイミング
  • 新規に借入を行う際や既存の借入について経営者保証を外してほしい場合
  • 事業承継を行う際に経営者保証が障害となっている場合
  • 保証債務の整理を経営者保証ガイドラインに基づいて行いたい場合

参考:経営者保証 _ 中小企業庁

経営者保証に関するガイドラインに則った融資制度の例

ガイドラインに基づき、金融機関では多様な融資制度が提供されています。以下に代表的な制度を紹介します。

制度 詳細
経営者保証免除特例制度
  • 経営者保証を外して融資を受けられる制度
  • 2018年に適用要件が大幅に緩和され、免除対象が拡大

【融資額】

  • 適用した融資制度の融資限度額
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
  • 商工会、商工会議所または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者を対象にした無保証人融資制度

【融資限度額】

  • 最大2000万円

【返済期限】

  • 運転資金:7年以内(1年以内)
  • 設備資金:10年以内(2年以内)
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
  • スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む事業者を対象とした無保証人融資制度

【融資限度額】

  • 7,200万円

【返済期限】

  • 5年1ヶ月以上20年以内
生活衛生改善貸付
  • 生活衛生関係の事業を営む小規模事業者であって生活衛生同業組合等の長の推薦受けた事業者を対象とした無保証人融資制度

【融資限度額】

  • 最大2,000万円

【返済期限】

  • 運転資金:7年以内(1年以内)
  • 設備資金:10年以内(2年以内

5-2. 経営者保証改革プログラム

経営者保証改革プログラムは、経営者保証に依存しない融資慣行をさらに加速させる目的で、政府主導により開始されました。

このプログラムは、経営者ガイドラインの運用開始後に策定され、中小企業の負担軽減や円滑な資金調達を支援するための具体的な施策を展開しています。

項目 内容
対象 中小企業経営者
金融機関
支援機関(商工会議所・中小企業診断士等)
支援分野

【スタートアップ創出促進保証】
新規創業や成長を目指す中小企業への保証付き融資を実施

【民間金融機関による融資】
経営者保証を不要とする融資商品の提供を推進

【信用保証付融資】
信用保証協会による経営者保証を伴わない保証付き融資を拡大

【中小企業のガバナンス】
財務情報の開示や法人の独立性向上を支援

実施期間 2023年度から2025年度までの3年間

6. 経営者保証に関する相談窓口

経営者保証に関する相談を希望する経営者は、以下の窓口が利用可能です。

  • 中小企業再生支援協議会
  • 経営者保証ホットライン

また、各地の商工会議所や商工会でも、経営者保証に関する一般的な相談や情報提供を行っています。さらに、取引金融機関の相談窓口では、融資条件や経営者保証解消に関する具体的な相談が可能です。

これらの窓口を適切に活用することで、経営者保証の課題解決が期待できるでしょう。

7. まとめ

経営者保証は企業の資金調達に役立つ一方で、リスクを伴う制度でもあります。そのため、相談窓口や支援制度を活用して、負担を軽減することが重要です。中小企業や経営者は、こうした情報をもとに、自社に最適な対応策の検討をおすすめします。

また、M&Aキャピタルパートナーズでは、経営者保証の問題を含む中小企業の課題に対するアドバイスや支援を行っています。経営に関する不安を抱えている方は、ぜひお問い合わせください。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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