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経営者保証について
経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が連帯保証人となり、会社が返済できない場合に個人として返済を求められる仕組みです。中小企業の信用力を補完する手段として用いられますが、法人の債務と経営者個人の責任が結び付くため、資金調達だけでなく保証解除や事業承継・M&A時の確認事項とも関係します。
経営者保証は、中小企業の資金調達を支える一方で、経営者本人の負担や将来の承継判断にも影響し得る論点です。近年は、保証に依存しない融資を広げるための制度整備も進んでおり、制度や実務上の動向を踏まえて整理しておくことが重要です。
本記事では、経営者保証の基本的な仕組みやメリット・デメリット、近年の動向、負担軽減に関わる制度や相談先について解説します。
経営者保証とは
経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が連帯保証人となる仕組みです。経営者個人が企業の債務について保証債務を負い、万が一企業が返済できなくなった場合には、経営者個人が企業に代わって返済を求められます。
経営者保証は企業の信用力を補完し、金融機関がリスクを軽減する手段という位置づけです。一方で、経営者個人に大きな負担が生じる可能性があることから、近年は「経営者保証に関するガイドライン」などを踏まえ、経営者保証に依存しない融資を広げるための取り組みも進められています。
経営者保証のメリット
経営者保証のメリットとしては、信用情報が十分でない中小企業でも、経営者の個人保証によって融資が実現しやすくなる点が挙げられます。
保証があることで、金融機関はリスクを軽減できるため、金利の引き下げや融資額の増額といった借入人である企業にとっての好条件を提示する場合もあります。結果として、企業は必要な資金を確保しやすくなり、事業拡大のチャンスを得ることが可能です。
経営者保証のデメリット・問題点
経営者保証は、資金調達をしやすくする一方で、経営者個人に大きな負担が生じる可能性があります。会社の返済が難しくなった場合だけでなく、事業承継やM&Aの場面でも課題になることがあるため、主なデメリットを押さえておくことが大切です。
経営者個人が返済義務を負う可能性がある
経営者保証は、企業の資金調達を支援する一方で、経営者個人が大きなリスクを負う仕組みです。
企業の業績が悪化し、借入金の返済が困難になった場合、保証人である経営者個人が返済を求められます。経営者個人による返済も難しい場合には、預貯金や不動産などの個人資産が差し押さえられたり、最悪の場合、自己破産に至ったりするケースもあります。
このようなリスクは、経営者本人の心理的負担となり、新規事業への投資や早期の事業再生、廃業の判断など、本来必要な経営判断をためらう要因になることもあります。
事業承継やM&Aの障壁になる場合がある
事業承継の場面では、後継者が経営者保証を引き継ぐことに不安を感じ、承継をためらう可能性があります。会社の借入に対して個人保証を求められると、経営者としての責任に加え、個人資産への影響も考慮しなければなりません。
また、M&Aや会社売却でも、経営者保証は重要な確認事項です。例えば、M&Aにおいて最も多く活用される「株式譲渡」という手法では、売り手の株主が売り手経営者などから買い手に変わります。このとき、対象会社の資産・負債や契約関係は原則として対象会社に残ります。ただし、株主が変わったとしても、売り手経営者が金融機関に対して提供している経営者保証が当然に解除されるわけではありません。
経営者保証は、会社ではなく経営者個人に紐づくものです。そのため、株式譲渡によって売り手経営者が株主や経営者の立場を離れたとしても、保証解除には金融機関との調整が必要になります。
そのため、事業承継やM&Aを検討する際は、保証の有無や解除方針を早い段階で確認することが大切です。
経営者保証に関する近年の動向
経営者保証は中小企業の資金調達を支えてきた一方で、経営者の思い切った事業展開や円滑な事業承継、早期の事業再生を妨げる要因になることが課題とされてきました。
こうした背景から、国や金融機関では、経営者保証を当然の前提とするのではなく、企業の財務状況や事業性、ガバナンス体制などを踏まえて融資を判断する方向へと見直しが進められています。
経営者保証に依存しない融資に向けた環境整備が進んでいる
経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて、「経営者保証に関するガイドライン」や「経営者保証改革プログラム」を軸とした環境整備が進められています。
2024年3月15日には、一定の要件を満たす中小企業が保証料を上乗せすることで、経営者保証を提供しないことを選択できる制度や、経営者保証付きのプロパー融資を無保証の信用保証付き融資へ借り換える制度も開始されました。
また、M&A後も売り手経営者の保証が残るトラブルなどを踏まえ、2024年8月30日に改訂された「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、金融機関への事前相談や最終契約における経営者保証の扱いについても対応が明確化されています。
このように、新規融資や既存借入の見直しだけでなく、M&A・事業承継の場面も含め、経営者保証の負担を軽減するための制度・運用の整備が進んでいます。
なお、ガイドラインや主な支援制度については、後述の「経営者保証の負担軽減に向けた主な取り組み・制度」で詳しく解説します。
経営者保証なしの融資割合が増加している
制度や運用の見直しに伴い、実際に経営者保証に依存しない融資も増加しています。金融庁の資料によると、新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合は上昇を続け、2024年度には5割を超えました。
画像出典:「経営者保証に依存しない融資慣行」の着実な浸透に向けた取組状況
また、既存融資を含むストックベースでも、無保証債権の割合は約3割に達しています。経営者保証は引き続き融資実務上の重要な論点であるものの、保証を当然の前提とせず、企業の状況に応じて融資を判断する動きが着実に広がっています。
経営者保証の負担軽減に向けた主な取り組み・制度
経営者保証の負担を軽減するため、国や関係機関では、経営者保証に関するガイドラインや改革プログラム、M&A時の対応方針、信用保証制度などを整備しています。ここでは、経営者保証の見直しや保証なし融資の検討に関わる主な取り組み・制度について解説します。
| 制度・取り組み | 概要 | 活用できるケース |
|---|---|---|
| 経営者保証に関する ガイドライン |
保証契約や保証債務整理に関する基本的な考え方を示した自主的ルール | 新規借入時に保証なし融資を検討したい場合・既存保証の見直しを相談したい場合 |
| 経営者保証改革プログラム | 経営者保証に依存しない融資慣行の確立を進めるための政策的な取り組み | 金融機関の説明対応や、近年の制度整備の方向性を確認したい場合 |
| 中小M&Aガイドライン | M&A時の経営者保証の扱いや、M&A支援機関に求められる対応を示した指針 | M&A・会社売却時に売り手経営者の保証解除が課題になる場合 |
| 経営者保証なしの融資を 促進する信用保証制度 |
保証料率の上乗せや借換えにより、経営者保証なしの融資を検討しやすくする制度 | 新規借入や、既存の経営者保証付きプロパー融資の見直しを検討したい場合 |
経営者保証に関するガイドライン
経営者保証に関するガイドラインは、金融機関が中小企業に融資を行う際、合理的な保証契約を実現するため、全国銀行協会と日本商工会議所が策定し、2014年2月から適用が開始された指針です。経営者保証に依存しない融資を促進することで、経営者の負担を軽減し、企業が積極的な事業展開を行いやすい環境を整備することが目的です。
これは「中小企業・経営者・金融機関に共通の自主的なルール」と位置づけられており、法的な拘束力はないものの、関係者が自発的に尊重し遵守することが期待されています。このガイドラインを活用することで、経営者保証なしでの資金調達や既存保証の見直し、保証債務整理時の個人破産回避などを検討しやすくなります。
また、その後は「事業承継時に焦点を当てた特則」や「廃業時における基本的考え方」も示され、企業のライフステージに応じた対応が整理されました。
経営者保証に関するガイドラインの概要
経営者保証に関するガイドラインの制度概要は以下のとおりです。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 主な関係者 | 中小企業、経営者、金融機関共通 |
| 経営者保証なしで 融資を受けるための3要件 |
|
| 期待できる効果 |
|
| 利用のタイミング |
|
経営者保証に関するガイドラインに則った融資制度の例
ガイドラインに基づき、金融機関では多様な融資制度が提供されています。例として、以下に日本政策金融公庫の代表的な制度を紹介します。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 経営者保証 免除特例制度 |
一定の要件を満たす場合に、経営者保証を免除して融資を受けられる制度
|
| マル経融資 (小規模事業者経営改善資金) |
商工会、商工会議所または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者を対象にした無保証人融資制度
|
| 挑戦支援資本強化特別貸付 (資本性ローン) |
スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む事業者を対象とした無保証人融資制度
|
| 生活衛生改善貸付 | 生活衛生関係の事業を営む小規模事業者であって生活衛生同業組合等の長の推薦を受けた事業者を対象とした無保証人融資制度
|
経営者保証改革プログラム
経営者保証改革プログラムは、経営者保証に依存しない融資慣行の確立をさらに加速させるため、2022年12月に金融庁・経済産業省・財務省が連携して策定したものです。
このプログラムは、経営者保証に関するガイドラインの運用開始後に策定され、中小企業の負担軽減や円滑な資金調達を支援するための具体的な施策を展開しています。
プログラムの一環として金融庁の監督指針が改正され、2023年4月以降、金融機関が経営者保証を求める場合には、その具体的な理由や必要性を事業者に説明し、記録に残すことが求められるようになりました。これにより、融資判断の透明性が増し、金融機関と企業間のコミュニケーションや契約の信頼性が向上しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 |
|
| 支援分野 |
|
中小M&Aガイドライン
中小M&Aガイドラインは、中小企業がM&Aを円滑かつ適切に進めるための基本的な考え方や、仲介者・FAなどのM&A支援機関に求められる対応を示したものです。
2024年8月に公表された第3版では、売り手側の経営者保証を買い手側へ移行する想定であったにも関わらず、実際には移行されず、売り手経営者に保証が残るといったトラブルを踏まえ、経営者保証の取扱いに関する内容が拡充されました。
主なポイントは、以下のとおりです。
- 金融機関への事前相談
- M&A成立前のできるだけ早い段階で、経営者保証の解除・移行について金融機関へ相談する
- 借換えによる解除
- 金融機関の審査を経て解除することが難しい場合は、買い手側の資力による借換えも検討する
- 最終契約への反映
- M&A後に解除を行う場合は、買い手側の義務として保証解除を位置づけ、必要に応じて解除・補償条項などを設ける
- 買い手側の確認
- M&A支援機関が、買い手の財務状況や事業実態、契約を履行する能力などを確認する
参考:「中小M&Aガイドライン」を改訂しました(METI/経済産業省)
また、M&A支援機関には、売り手経営者に対して保証解除ができないリスクを説明し、金融機関や専門家への事前相談を案内することも求められています。買い手側にも、金融機関の審査に必要な情報提供へ協力し、売り手経営者の保証が残らないよう配慮することが示されています。
このように、第3版では、M&A成立後に売り手経営者だけが保証債務を負い続ける事態を防ぐため、当事者やM&A支援機関が事前に確認すべき事項が整理されました。
経営者保証なしの融資を促進する信用保証制度
2024年3月15日から、法人である中小企業者が一定の要件を満たした場合に、保証料率の上乗せなどにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度の取扱いが開始されました。
これは、経営者保証改革プログラムの一環として、経営者保証に依存しない融資慣行の確立をさらに進めるために創設されたものです。主な制度は以下のとおりです。
| 制度 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 事業者選択型経営者保証 非提供制度 |
一定の要件を満たす中小企業者が、保証料率を上乗せすることで、経営者保証を提供しないことを選択できる制度 |
|
| 事業者選択型経営者保証 非提供促進特別保証制度 |
上記制度の活用を促進するため、上乗せされる保証料率の一部を国が補助する時限的な制度 |
|
| プロパー融資 借換特別保証制度 |
既存のプロパー融資のうち、経営者保証付きの借入を、経営者保証なしの信用保証付き融資へ借り換える制度 |
|
参考:保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します|中小企業庁
これらの制度により、従来は経営者保証が必要とされていた中小企業でも、一定の要件を満たせば、保証料率の上乗せや借換えによって経営者保証なしの融資を検討しやすくなっています。ただし、利用可否は企業の財務状況や金融機関・信用保証協会の審査によって異なるため、検討する際は事前に確認することが大切です。
経営者保証を見直すために押さえておきたい考え方
経営者保証なしでの融資や既存保証の解除を検討する際は、制度の有無だけでなく、自社が金融機関からどのように評価される状態にあるかを確認することが大切です。
特に重要になるのは、法人と経営者個人の資産・経理を明確に分けること、法人のみの資産や収益力で返済できる財務基盤を整えること、金融機関に対して財務情報を適時適切に開示することです。
これらは、経営者保証に関するガイドラインでも重視されており、保証なし融資や保証解除を検討するうえでの基本的な考え方として押さえておきましょう。ただし、実際に保証を解除できるかは、会社の財務状況や借入内容、金融機関の判断によって異なります。
経営者保証の解除に向けた具体的な要件や手順については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
経営者保証に関する相談窓口
経営者保証に関する相談を希望する経営者は、以下の窓口が利用可能です。
- 中小企業活性化協議会
- 経営改善、事業再生、再チャレンジなどに関する相談
- 経営者保証ホットライン
- 金融機関による経営者保証の説明や対応に関する相談
- M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク
- M&A・事業承継時の経営者保証に関する情報共有・相談
また、各地の商工会議所や商工会でも、経営者保証に関する一般的な相談や情報提供を行っています。さらに、取引金融機関の相談窓口では、融資条件や経営者保証解除に関する具体的な相談が可能です。
これらの窓口を適切に活用することで、経営者保証の課題解決が期待できるでしょう。
まとめ
経営者保証は、融資の実現可能性を高め、条件面で有利に働く場合がある一方、返済不能時に経営者の個人資産が返済に充てられるという大きなリスクを伴います。差し押さえや自己破産の可能性、心理的負担、事業承継の障害といった問題もあるため、経営者保証の負担を軽減するための取り組みを理解しておくことが重要です。近年は、経営者保証に依存しない融資が広がり、「経営者保証に関するガイドライン」では法人と経営者の区分・分離、返済能力、財務情報開示といった考え方も示されています。改革プログラムや各種融資制度、相談窓口を活用し、自社の状況に応じた負担軽減策を検討しましょう。
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よくある質問
- 経営者保証とは何ですか?
- 経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が連帯保証人となる仕組みです。会社が返済できなくなった場合、経営者個人が企業に代わって返済を求められることがあります。
- 経営者保証のメリットは何ですか?
- 信用情報が十分でない中小企業でも、経営者保証によって融資を受けやすくなる場合があります。金融機関がリスクを軽減できるため、金利の引き下げや融資額の増額など、条件面で有利に働くこともあります。
- 経営者保証にはどのようなリスクがありますか?
- 会社の返済が困難になった場合、経営者個人が返済義務を負う可能性があります。返済が難しいと、個人資産の差し押さえや自己破産に至ることもあり、経営判断や事業承継に影響する場合があります。
- 経営者保証なしの融資は増えていますか?
- 経営者保証に依存しない融資は増加傾向にあります。金融庁の資料では、新規融資件数に占める経営者保証に依存しない融資の割合が2024年度に5割を超え、既存融資を含むストックベースでも無保証債権の割合が約3割に達しています。
- 経営者保証に関するガイドラインとは何ですか?
- 経営者保証に関するガイドラインとは、金融機関が中小企業に融資を行う際の保証契約や、保証債務の整理に関する考え方を示した自主的なルールです。経営者保証なしの融資や既存保証の見直しを検討する際の考え方として活用されています。
- 経営者保証なしの融資や既存保証の見直しでは何が重要ですか?
- 法人と経営者個人の資産・経理を明確に分けること、法人のみの資産や収益力で返済できる状態を整えること、金融機関に財務情報を適時適切に開示することが重要です。実際の可否は、会社の財務状況や金融機関の判断によって異なります。
- 事業承継やM&Aでは経営者保証をいつ確認すべきですか?
- 事業承継やM&Aを検討する際は、できるだけ早い段階で経営者保証の有無や解除方針を確認することが大切です。株式譲渡などで株主や経営者の立場が変わっても、売り手経営者の保証が当然に解除されるわけではないため、金融機関との調整が必要になります。
- 経営者保証について相談できる窓口はどこですか?
- 中小企業活性化協議会、経営者保証ホットライン、M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク、商工会議所・商工会、取引金融機関の相談窓口などが利用できます。相談内容に応じて適切な窓口を確認することが大切です。
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