ROA(総資産利益率)とは? 計算方法と活用例について詳しく解説

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ROA(総資産利益率)について

ROA(総資産利益率)とは、企業が保有する総資産をどれだけ効率的に利益へ結び付けているかを示す財務指標です。日本語では総資産利益率と呼ばれ、当期純利益などの利益を総資産で割って算出します。ROEやROIとは対象範囲が異なり、会社全体の資産活用効率を把握する際に用いられます。

企業の経営状態を把握するうえで、売上や利益の額だけを見ても十分とはいえません。どれだけの資産を使って、どれだけ効率的に利益を生み出しているかまで見てはじめて、収益性の実態が見えてきます。そこで重要になるのがROAです。ROAの読み方は「アールオーエー」です。英語の「Return on Assets」の頭文字を取った略称で、日本語では「総資産利益率」とも呼ばれます。

ROAは、会社全体の資産活用効率を示す代表的な財務指標であり、経営改善のヒントを得る場面だけでなく、M&Aで買収候補企業の収益性を比較する際にも活用されます。ただし、ROAだけで企業の良し悪しを判断することはできません。業種特性や投資フェーズ、ROE・ROIなど他の指標との関係を踏まえて見る必要があります。

本記事では、ROAの意味・求め方から、他の財務指標との違い、目安となる数値、M&AにおけるROAの活用例などを解説します。

また、M&Aの意味と基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


ROAとは

ROAとは、会社が保有する資産をどれだけ効率的に利益に結び付けているかを示す指標をいいます。ROAの数値が高いことは、利益が効率的に創出されていることを示すことになります。また、ROAは会社全体の収益性を示す指標であり、特に中小企業では、経営の目標設定や効率性の指標としてROAがよく利用されています。
ROAの数値が低い会社は、保有資産に見合う利益を十分に生み出せていない可能性があります。ただし、ROAの水準は業種や投資フェーズによっても異なるため、一概に高いから良い、低いから悪いとはいえません。

ROAの定義

ROAとは「Return on Assets」の略で、「総資産に対してどれだけの利益を生み出したか」を示す収益性指標です。ROAは一般に総資産に対する利益率を指し、分子には営業利益・経常利益・当期純利益などが用いられます。本記事では、基本形として当期純利益ベースで説明します。 株主資本だけでなく負債を含む会社全体の資産を基準とするため、ROAは、ROEと比べると財務レバレッジの影響を受けにくく、企業全体の資産効率を把握しやすい指標です。
ROAの計算式(当期純利益ベースの基本形)は以下のとおりです。

ROAの計算式

ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

なお、分母となる総資産には期首・期末の平均値(期中平均)を用いるケースと、期末残高を用いるケースがあります。企業間比較や時系列比較を行う場合は計算方法を統一することが重要です。

ROEとの違い

ROAと似た用語としてROE(Return On Equity:自己資本利益率)があります。ROE(自己資本利益率)は、自己資本(純資産)を使ってどれだけ利益を上げたかを示す指標で、以下の計算式で求められます。

ROEの計算式

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

比較項目 ROA ROE
分母となる資本 総資産(自己資本+負債) 自己資本(純資産)のみ
主な視点 経営者・企業全体の効率 株主視点の収益性
財務レバレッジの影響 受けにくい 受ける(借入増加でROEは上昇)

また、「ROE=ROA×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)」という関係式が成立します。同じROAでも借入を増やすことでROEを高めることができますが、その分財務リスクも上昇します。M&Aの場面では、この関係を理解したうえで双方の指標を組み合わせて評価することが求められます。

ROIとの違い

ROAと似た用語としてROI(Return On Investment:投下資本利益率)もあります。ROI(投下資本利益率)は、特定の事業や投資案件に投下された資本に対する利益率を示す指標です。

ROIの計算式

ROI(%)= 特定の事業活動からもたらされる利益 ÷ 特定の事業に対して投下された資本 × 100

比較項目 ROA ROI
対象範囲 企業全体の総資産 特定の投資案件・事業
主な使用場面 財務分析・企業評価全般 個別投資判断・プロジェクト評価
定義の厳密性 財務諸表上の総資産を基礎に算定されるが、分子に用いる利益には一定の幅がある 目的に応じて柔軟に定義されることが多い

ROAが「企業全体として資産をどれだけ効率良く活用しているか」を示すのに対し、ROIは「ある特定の投資に対してどれだけのリターンがあったか」を示す点が最大の違いです。M&Aにおいては、対象企業の経営効率をROAで評価しつつ、買収後の投資回収をROIで試算するなど、使い分けることが有効です。

ROAの計算方法

ROAの具体的な計算方法には、主に以下の2つのアプローチがあります。それぞれ順に説明します。

当期純利益と総資産をベースにした計算方法

当期純利益ベースのROAの計算式は以下のとおりです。

ROAの計算式

ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

分母となる総資産とは、BS(貸借対照表)上の「流動資産」、「固定資産」、「繰延資産」の合計です。分子の当期純利益とは、売上高からすべての費用・税金を差し引いた最終的な利益(当期純利益)を指します。目的と状況によっては、営業利益や経常利益を用いる場合もあります。

【ROAの計算例】

当期純利益 2億円
総資産 50億円

上記の場合のROAの計算式

2億円 ÷ 50億円 × 100 = 4.0%

この場合、50億円の資産を活用して2億円の当期純利益を生み出したことになります。後述する参考水準(5%前後)をやや下回るため、資産効率の改善余地があると判断される可能性があります。

売上高当期純利益率と総資産回転率をベースにした計算方法

ROAは以下のように「売上高当期純利益率」と「総資産回転率」の積に分解することもできます。この分解はデュポン分析(DuPont Analysis)と呼ばれます。

ROA(%)
= 売上高当期純利益率(%)× 総資産回転率(回)
=(当期純利益 ÷ 売上高)×(売上高 ÷ 総資産)× 100

デュポン分析を活用すると、ROAが低い原因が「利益率の問題」なのか「資産の回転率の問題」なのかを切り分けて分析できます。経営改善の方向性を特定するうえで非常に有効な手法です。

【デュポン分析の計算例】

売上高 40億円
当期純利益 2億円
総資産 50億円

売上高当期純利益率

2億円 ÷ 40億円 × 100 = 5.0%

総資産回転率

40億円 ÷ 50億円 = 0.8回

ROA

5.0% × 0.8回 = 4.0%

この例では、売上高当期純利益率は5.0%と一定の水準にあるものの、総資産回転率が0.8回と低いためROAが4.0%にとどまっています。この場合、遊休資産の削減や在庫の最適化など資産効率の改善に取り組むことがROA向上への近道となります。

ROAの目安

ROAの目安は業種によって大きく異なりますが、一般論としては5%前後が一つの参考水準とされることがあります。ただし、実際には同業他社比較や過年度推移を踏まえて判断することが重要です。以下の数値はあくまで参考レンジであり、企業規模・会計方針・市況によって変動します。

製造業 3〜5%程度。設備投資が大きく総資産が膨らみやすいため、他業種より低くなる傾向がある。
IT・サービス業 8〜15%程度。有形固定資産が少ないため、総資産が相対的に小さくROAが高くなりやすい。
金融業・銀行業 0.3〜1.0%程度。預金等の負債を多く抱えるため総資産が膨大となり、ROAは低くなる。
小売業 3〜5%程度。在庫・店舗資産が大きく、回転率の高さが鍵となる。

大規模な設備投資を行った年度は一時的にROAが低下することがありますが、その後ROAが上昇に転じていれば投資が成果を上げていると推測できます。ROAは単年度の数値だけでなく、複数期の推移とあわせて判断することが重要です。

ROAを利用することでわかること

ROAに着目することで、主に以下の2点を把握することができます。それぞれについて、詳しく説明していきます。

資産を効率的に活用できているかどうか

ROAからは、資産を効率的に活用できているかを知ることができます。一般的に、ROAが高い会社は資産を有効活用して効率良く利益を生み出していると評価されます。一方でROAが低い会社は、現状の資産に見合った利益を出せていないと見なされます。ROAを改善するためには、活用していない資産を処分することや無駄な費用を抑えることで利益を増やすことが必要です。このように、ROAは経営改善に向けた手掛かりの1つとして用いられます。
また、デュポン分析と組み合わせることで、ROAが低い原因が「利益率の問題」なのか「資産の回転率の問題」なのかを特定し、具体的な経営改善策を打つことができます。

会社の投資状況の推移

ROAの推移や総資産回転率の変化をあわせて確認することで、会社が成長のための投資をどのように行ってきたかを一定程度推測することができます。会社が長期的かつ継続して成長するためには適切な投資が必須です。投資する金額が大きくなるほど総資産が増えることから、投資を実施した決算年度はROAが一時的に低下することがありますが、その後ROAが上昇に転じていれば投資が奏功して利益を生み出したと推測できます。よって、ROAの推移に着目することで、会社の投資状況をある程度把握することができます。

M&AにおけるROAの活用例

M&AにおけるROAの活用例を紹介します。ROAは、会社が総資産をどれだけ効率的に活用して利益を上げているかを示す指標であり、M&Aの際に相手企業の収益性を評価するために活用されます。
例えば、ある会社がM&Aを検討する際、買収候補となる2社(A社とB社)のROAを比較してみましょう。

項目 A社 B社
総資産 50億円 25億円
当期純利益 2億円 2億円
ROA 4% 8%

この比較から、B社の方が総資産を効率的に活用して高い利益を上げていることがわかります。そのため、投資効率の観点からはB社の方がより魅力的な買収候補と判断される可能性があります。
なお、M&Aでは、ROAが高いか低いかだけでなく、その要因を確認することが重要です。例えば、ROAが低い会社でも、多額の遊休不動産や余剰現預金を保有している場合には、本業の収益性が低いとは限りません。
また、M&Aのクロージング後のPMI(Post Merger Integration:統合プロセス)においても、ROAは経営改善の進捗を測るKPI(重要業績評価指標)として活用されます。買収前後のROA推移を追うことで、シナジー効果の実現状況を定量的に確認できます。

ROAを見る際のポイント

ROAを正確に評価するためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。

単期ではなく複数期の推移を確認する

1期だけの数値ではなく、過去3〜5年の推移を確認することで、ROA改善・悪化のトレンドを把握できます。大規模な設備投資を実施した年度は一時的にROAが低下することがありますが、その後上昇に転じていれば投資が成果を上げていると推測できます。

同業他社と比較する

業種ごとに資産規模・利益率の水準が異なるため、比較対象は同業種・同規模の企業とすることが原則です。ROA(総資産利益率)が業界水準を大幅に下回る企業は、遊休資産の多さや過剰な設備投資が疑われるため、追加的な調査が必要となります。

分母(総資産)の内容を精査する

多額の遊休資産や投資有価証券が含まれている場合、実態の経営効率よりもROAが低く見える場合があります。総資産の内訳を確認し、本業に直結する資産に絞った収益性評価も有効です。

特別損益の影響を考慮する

大規模な資産売却益や特別損失が計上された期は、当期純利益が一時的に変動しROAが通常とは異なる水準になることがあります。特別損益を除いた経常的なROAの水準も確認することが重要です。

ROAの改善方法

次に、ROAを改善する方法を紹介します。主に以下の3つの方法があります。それぞれ順に詳しく説明します。

売上高当期純利益率を上げる

ROAを改善する1つ目の方法として、売上高当期純利益率を上げ、業務効率化やコスト削減を図ることで、利益率を向上させることが挙げられます。
まずは、ROAを以下のように分解します。

ROA(%)
= 売上高当期純利益率(%)× 総資産回転率(回)
=(当期純利益 ÷ 売上高)×(売上高 ÷ 総資産)× 100

ここで、売上高当期純利益率とは、売上高に対して何%が利益として残っているかを示す数値です。具体的には以下の計算式を用いて算出します。

【売上高当期純利益率の計算式】

売上高当期純利益率(%)=当期純利益÷売上高×100

売上高当期純利益率が高いほど、効率的な経営が実践できていることを示しています。ここで、売上高当期純利益率を上げるためには、「経費を増やさずに売上高を増加させる」か「売上高を減少させずに経費を減らす」のいずれかが必要です。しかし、一般的に売上高を増やすと経費も増えることが多いため、短期的に売上高当期純利益率を上げる場合は、経費を減らすほうが効果的といえます。そのため、業務効率化やコスト削減を図ることで無駄を省いたり、利用していない設備の維持費を削減したりするなど、経費削減の余地がないか検討することが重要です。

総資産を減らす

次の方法は、総資産を減らすことです。
ROAは「利益÷総資産×100」で求められることから、分母である総資産を減らすことでROAの改善が期待できます。会社の資産を洗い出したうえで、不要な資産がないかを確認する必要があります。
例えば、利益につながらない土地や建物などの遊休資産の売却や在庫管理の最適化を図ることは、総資産を減らしROAを高めるうえで有効といえます。

総資産回転率を上げる

最後に総資産回転率を上げることも、ROAを改善する方法の1つといえます。
総資産回転率とは、総資産をどれだけ効率的に活用して売上を上げたかを示す指標です。総資産回転率は以下の計算式で算出されます。

【総資産回転率の計算式】

総資産回転率(回)=売上高÷総資産

総資産回転率が高いほど、効率的に総資産を活用できていると評価するのが一般的です。総資産回転率を上げるには、「総資産を増やさずに売上高を増加させる」か「売上高を減らすことなく総資産を減少させる」のいずれかが必要です。そのため、効果的な販売戦略や在庫回転率を改善するなどして売上高を増やすか、遊休資産を処分するなどして総資産をスリム化するといった対応が必要となります。

まとめ

ROAは、会社の経営状態を測るための財務指標の1つで、M&Aにおいても投資案件を同じ目線で比較するうえで有用な指標です。デュポン分解(売上高当期純利益率×総資産回転率)と組み合わせることで、ROAが低い原因を特定し、的確な経営改善策を打つことが可能になります。ただし、業種ごとに適正水準が大きく異なるため同業他社との比較が前提となる点、単年度の数値だけでなく複数期の推移や総資産の内容とあわせて評価することが必要な点に留意し、他の業績指標と組み合わせて総合的に判断することが重要です。



よくある質問

  • ROAとは何ですか?
  • ROAとは、企業が保有する総資産をどれだけ効率的に利益へ結び付けているかを示す財務指標です。日本語では総資産利益率と呼ばれ、会社全体の資産活用効率を把握する際に使われます。
  • ROAはどのように計算しますか?
  • ROAは、当期純利益を総資産で割り、100を掛けて算出します。基本形は「ROA(%)=当期純利益÷総資産×100」です。目的によっては、営業利益や経常利益を分子に用いる場合もあります。
  • ROAとROEの違いは何ですか?
  • ROAは総資産を基準に会社全体の資産効率を見る指標です。一方、ROEは自己資本を基準に株主視点の収益性を見る指標です。ROEは借入などの財務レバレッジの影響を受けやすい点がROAとの違いです。
  • ROAとROEはどちらを重視すべきですか?
  • 目的によって異なります。株主視点で収益性を評価したい場合はROE、経営者として企業全体の資産効率を把握したい場合はROAが有用です。M&Aでは財務レバレッジの影響を排除して比較できるROAが補完的に活用されることが多く、両指標を組み合わせた分析が推奨されます。
  • ROAとROIの違いは何ですか?
  • ROAは企業全体の総資産に対する利益率を示す指標です。一方、ROIは特定の事業や投資案件に投下した資本に対する利益率を示します。ROAは企業全体の財務分析、ROIは個別投資判断で使われることが多い指標です。
  • ROAの目安はどのくらいですか?
  • ROAの目安は業種によって異なりますが、一般論として5%前後が一つの参考水準とされることがあります。ただし、製造業、IT・サービス業、金融業、小売業などで水準は大きく異なるため、同業他社や過年度推移と比較して判断することが重要です。
  • M&AではROAをどのように活用しますか?
  • M&Aでは、買収候補企業が総資産をどれだけ効率的に利益へ結び付けているかを比較するためにROAが活用されます。買収後のPMIでは、ROAの推移を確認することで、経営改善やシナジー効果の実現状況を測るKPIとしても使われます。
  • ROAを見る際の注意点は何ですか?
  • ROAは単年度の数値だけで判断せず、複数期の推移や同業他社との比較、総資産の内訳、特別損益の影響を確認することが重要です。遊休資産や一時的な損益がある場合、実態よりもROAが低く、または高く見えることがあります。

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