タックスシールドとは? キャッシュフローへの影響やM&Aにおけるメリットを解説

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タックスシールドについて

企業が支払う法人税は、利益が多いほど高額になります。そのため、税務上の利益をいかに抑えるかが、企業のキャッシュフローの改善に影響します。こうした税負担の軽減に役立つのが「タックスシールド」です。

本記事では、タックスシールドの基本的な仕組みや種類、M&Aにおける活用メリットや経営判断への影響などについて、詳しく解説します。

このページのポイント

~タックスシールドとは?~

タックスシールドとは、損金算入できる費用により税負担を軽減し、キャッシュフローを改善する仕組みです。減価償却費や利息などが代表例で、税率の変動や資本コストにも影響します。M&Aでは企業価値評価や資金調達戦略と密接に関係し、実務上の分析が不可欠です。

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~その他 M&Aについて~

タックスシールドとは

タックスシールドとは、税務上「損金」として認められる費用を活用して、企業の課税所得を減らし、法人税などの税金を軽減する仕組みのことです。
代表的なものに減価償却費や支払利息などがあります。これらを活用し、税負担を軽減することで、キャッシュフローを改善したり、新たな投資や設備導入の費用にあてたりして、財務体制の強化を図れます。
特にM&Aや大規模な設備投資など、将来の収益とキャッシュフローを重視する意思決定では、タックスシールドの影響を正しく把握することが重要です。この仕組みは財務戦略の一環として企業価値の向上にも貢献するため、経営者や財務担当者にとって押えておくべき重要な知識といえるでしょう。

タックスシールドに活用できる費用

タックスシールドの効果を活用できる主な費用として、以下の4つを紹介します。

それぞれの仕組みと注意点について、詳しく見ていきましょう。

借入金の利払い

借入金の利息は、税金を計算する際の費用として税務上認められており、タックスシールドの代表的な要素です。
支払った利息の分だけ課税対象となる利益が減少するため、結果として法人税などの税負担の軽減が可能です。この効果を活かすことで、借入による資金調達がキャッシュフローの改善につながる可能性があります。例えば、設備投資や事業拡大を目的とした借入でも、利息が損金として認められることで税金の負担が軽減されます。
ただし、借入額が過剰になると返済負担が経営を圧迫するため、税務上のメリットと財務の健全性の両立を図らなければなりません。
活用するうえでは、節税と資金計画のバランスを取る視点が重要です。

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減価償却費

減価償却とは、固定資産の取得価額を耐用年数にわたって分割し、毎年償却費として計上する仕組みです。
この償却費は現金の支出を伴わないにも関わらず、税務上の損金として認められており、税負担の軽減に活用できます。法定耐用年数にしたがって安定的に償却費を計上できるため、継続的にタックスシールド効果を得ることが可能です。また、設備投資の際には、将来のキャッシュフローを見積もるうえで必要となります。
なお、減価償却には定額法と定率法があり、どちらを採用するかによってその節税効果や資金計画への影響が異なります。

定額法

定額法は、固定資産の取得価額を耐用年数で均等に分割し、毎期同額の減価償却費を計上する方法です。この方式ではタックスシールド効果も毎年安定して得られるため、長期的な資金計画が立てやすくなるでしょう
初年度の節税効果は小さいものの、平準化された費用処理が可能で、特に安定した経営を目指す企業に向いています。会計処理が簡単で導入もしやすいため、中小企業でも広く利用されています。

定率法

定率法は、初年度に多く、年々減少する金額で減価償却を行う方法です。
この方式では初期に大きなタックスシールド効果を得られるため、初期投資の回収を早めたい場合に有効です。キャッシュフローの早期改善を図りたい企業や、資産価値の早期低下が想定される業界で多く利用されます。M&Aでは、初期の資金流出を抑える手段として評価されることもあります。
ただし、年数が経過するごとに償却費が減るため、タックスシールド効果の持続性には注意が必要です。

除却損・売却損

除却損や売却損は、固定資産を廃棄した場合や、帳簿価額よりも低い金額で売却した場合に発生する損失であり、税務上の費用として認められます。このような損失は課税所得を減少させるタックスシールド効果を生み出し、法人税などの税負担の軽減に利用可能です。
例えば、老朽化した設備や不要となった資産を除却する際、その未償却残高を損金として計上すれば、財務上の負担を和らげ、投資回収や再投資の計画にも好影響が期待できます。
ただし、除却損や売却損はあくまで一時的な損失であるため、継続的な節税効果は期待できません。そのため、計画的な資産管理と税務戦略を連携させることが重要です。

タックスシールド額の計算方法

減価償却によるタックスシールドを例に挙げ、計算方法を解説します。
減価償却費によるタックスシールド額は、該当する期間の減価償却費の金額に、実際に企業が支払う全体の税率である実効税率を乗じて算出するのが基本的な計算方法です。
計算式は以下のとおりです。

タックスシールド額 = 減価償却費 × 実効税率

例えば減価償却費が1億円、実効税率が30%だった場合は、以下のように計算します。

2億円 (減価償却費)×30%(実効効率) = 6,000万円(タックスシールド額)

2億円の減価償却費によって、本来支払うべき6,000万円の税金が減額されます。

税率がタックスシールド効果に与える影響

実効税率が高ければ高いほど、同じ減価償却費でも節税効果が高くなります。上記条件で実効税率が25%だった場合を考えてみましょう。

減価償却費 実効税率 タックスシールド額

2億円

30%

6,000万円

2億円

25%

5,000万円

このように、税率が5%変わるだけで、タックスシールド額に1,000万円の差が生じることになります。そのため、設備投資や借入を検討する際には、税率が将来的にどのように変動しそうかを見越すことが、意思決定に影響を与えます。
さらに、税制改正によって法人税率の見直しが行われる可能性もあるため、注意が必要です。長期的なキャッシュフローの予測や企業価値評価(DCF法など)を行う際にも、税率に関する前提条件をしっかりと確認し、必要に応じた調整が求められます。
また、海外展開を行っている企業の場合には、国ごとの法人税率の違いも考慮し、グローバルな税務戦略のなかでタックスシールドの影響を分析する必要があります。

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M&Aにおけるタックスシールドのメリット

M&Aにおいてタックスシールドは、買い手と売り手の双方に以下のようなメリットをもたらします。

それぞれ見ていきましょう。

【買い手】買収資金調達における資本コストの軽減

M&Aにおいて、買収資金の調達方法は、税負担や資本コストに直結する重要な要素です。

買収資金を借入(負債)によって調達する場合、その支払利息は税務上の費用(損金)として認められます。この損金算入によって課税所得が圧縮されるタックスシールド効果が発生し、税金を抑えることが可能です。LBO(レバレッジド・バイアウト)のように、買収資金の大部分を借入でまかなうスキームでは、この効果が大きくなります。
借入による資金調達は、新株発行と異なり既存株主の持株比率を維持できるため、経営権を保ちながら節税と資本コストの軽減を同時に実現可能です。また、買収後のキャッシュフロー改善や資金繰りの安定にも貢献する手段として有効であり、戦略的な資本政策の一環として位置づけられます。

【売り手】節税余地の提示による企業価値の向上

タックスシールドとは、支払利息などを損金として計上することで法人税の支払額を軽減する仕組みです。買収を検討する企業にとって、このような節税効果が期待できる対象企業は、投資対効果の高い魅力的な買収先として評価されやすくなります。

まとめ

タックスシールドは、税負担を軽減しキャッシュフローを改善する有効な手段です。特にM&Aでは、買収資金の調達や企業価値評価に大きな影響を与えるため、経営戦略や税務計画と連動して正しい活用が重要です。

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よくある質問

  • タックスシールドとは何ですか?
  • タックスシールドとは、損金算入できる費用によって課税所得を減少させ、法人税などの税負担を軽減する仕組みです。
  • タックスシールド効果がある費用には何がありますか?
  • 減価償却費、支払利息、除却損・売却損などが該当します。いずれも税務上の損金として扱われます。
  • タックスシールドの計算方法は?
  • 代表例として、タックスシールド額 = 減価償却費 × 実効税率 で計算します。税率が高いほど効果が大きくなります。
  • タックスシールドはM&Aにどんな影響がありますか?
  • 買い手には資本コストの軽減、売り手には節税余地による企業価値の向上といったメリットがあります。
  • 実効税率の変動はどのように影響しますか?
  • 実効税率が上がればタックスシールドの効果は増加し、下がれば効果は減少します。意思決定時の前提として重要です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社執行役員 コーポレートアドバイザリー部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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