タックスシールドとは? キャッシュフローへの影響やM&Aにおけるメリットを解説

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タックスシールドについて

タックスシールドとは、税務上損金に算入できる費用を活用して課税所得を減らし、法人税などの税負担を軽減する仕組みです。減価償却費や支払利息などが代表例であり、キャッシュフローの改善や企業価値評価、M&Aの資金調達判断にも影響を与える重要な論点です。

タックスシールドは、企業の税負担とキャッシュフローを考えるうえで重要な財務論点です。損金として認められる費用を活用すれば、課税所得を抑えて法人税の負担を軽減できるため、投資判断や資金調達の考え方にも影響します。特に借入を伴うM&Aや設備投資では、節税効果が資本コストや企業価値評価に関わるため、仕組みを正確に理解しておく必要があります。

本記事では、タックスシールドの仕組み、活用できる費用、計算方法、税率の影響、M&Aにおけるメリットについて解説します。

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監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


タックスシールドとは

タックスシールドとは、税務上「損金」として認められる費用を活用して、企業の課税所得を減らし、法人税などの税金を軽減する仕組みのことです。
代表的なものに減価償却費や支払利息などがあります。これらを活用し、税負担を軽減することで、キャッシュフローを改善したり、新たな投資や設備導入の費用に充てたりして充てたりして、財務体質の強化を図れます。
特にM&Aや大規模な設備投資など、将来の収益とキャッシュフローを重視する意思決定では、タックスシールドの影響を正しく把握することが重要です。この仕組みは財務戦略の一環として企業価値の向上にも貢献するため、経営者や財務担当者にとって押さえておくべき重要な知識といえるでしょう。

タックスシールドに活用できる費用

タックスシールドの効果を活用できる主な費用として、以下の3つを紹介します。それぞれの仕組みと注意点について、詳しく見ていきましょう。

借入金の利払い

借入金の利息は、税金を計算する際の費用として税務上認められており、タックスシールドの代表的な要素です。
支払った利息の分だけ課税対象となる利益が減少するため、結果として法人税などの税負担の軽減が可能です。この効果を活かすことで、借入による資金調達がキャッシュフローの改善につながる可能性があります。例えば、設備投資や事業拡大を目的とした借入でも、利息が損金として認められることで税金の負担が軽減されます。
ただし、借入額が過剰になると返済負担が経営を圧迫するため、税務上のメリットと財務の健全性の両立を図らなければなりません。
活用するうえでは、節税と資金計画のバランスを取る視点が重要です。

減価償却費

減価償却とは、固定資産の取得価額を耐用年数にわたって分割し、毎年償却費として計上する仕組みです。
この償却費は現金の支出を伴わないにも関わらず、税務上の損金として認められており、税負担の軽減に活用できます。法定耐用年数にしたがって安定的に償却費を計上できるため、継続的にタックスシールド効果を得ることが可能です。また、設備投資の際には、将来のキャッシュフローを見積もるうえで必要となります。
なお、減価償却には定額法と定率法があり、どちらを採用するかによってその節税効果や資金計画への影響が異なります。

定額法

定額法は、固定資産の取得価額を耐用年数で均等に分割し、毎期同額の減価償却費を計上する方法です。この方式ではタックスシールド効果も毎年安定して得られるため、長期的な資金計画が立てやすくなるでしょう
初年度の節税効果は小さいものの、平準化された費用処理が可能で、特に安定した経営を目指す企業に向いています。会計処理が簡単で導入もしやすいため、中小企業でも広く利用されています。

定率法

定率法は、初年度に多く、年々減少する金額で減価償却を行う方法です。
この方式では初期に大きなタックスシールド効果を得られるため、初期投資の回収を早めたい場合に有効です。キャッシュフローの早期改善を図りたい企業や、資産価値の早期低下が想定される業界で多く利用されます。M&Aでは、初期の資金流出を抑える手段として評価されることもあります。
ただし、年数が経過するごとに償却費が減るため、タックスシールド効果の持続性には注意が必要です。

除却損・売却損

除却損や売却損は、固定資産を廃棄した場合や、帳簿価額よりも低い金額で売却した場合に発生する損失であり、税務上の費用として認められます。このような損失は課税所得を減少させるタックスシールド効果を生み出し、法人税などの税負担の軽減に利用可能です。
例えば、老朽化した設備や不要となった資産を除却する際、その未償却残高を損金として計上すれば、財務上の負担を和らげ、投資回収や再投資の計画にも好影響が期待できます。
ただし、除却損や売却損はあくまで一時的な損失であるため、継続的な節税効果は期待できません。そのため、計画的な資産管理と税務戦略を連携させることが重要です。

タックスシールド額の計算方法

減価償却によるタックスシールドを例に挙げ、計算方法を解説します。
減価償却費によるタックスシールド額は、該当する期間の減価償却費の金額に、実際に企業が支払う全体の税率である実効税率を乗じて算出するのが基本的な計算方法です。
計算式は以下のとおりです。

タックスシールド額 = 減価償却費 × 実効税率

例えば減価償却費が2億円、実効税率が30%だった場合は、以下のように計算します。

2億円 (減価償却費)×30%(実効税率) = 6,000万円(タックスシールド額)

2億円の減価償却費によって、6,000万円の税負担軽減効果が生じます。

税率がタックスシールド効果に与える影響

実効税率が高ければ高いほど、同じ減価償却費でも節税効果が高くなります。上記条件で実効税率が25%だった場合を考えてみましょう。

減価償却費 実効税率 タックスシールド額

2億円

30%

6,000万円

2億円

25%

5,000万円

このように、税率が5%変わるだけで、タックスシールド額に1,000万円の差が生じることになります。そのため、設備投資や借入を検討する際には、税率が将来的にどのように変動しそうかを見越すことが、意思決定に影響を与えます。
さらに、税制改正によって法人税率の見直しが行われる可能性もあるため、注意が必要です。長期的なキャッシュフローの予測や企業価値評価(DCF法など)を行う際にも、税率に関する前提条件をしっかりと確認し、必要に応じた調整が求められます。
また、海外展開を行っている企業の場合には、国ごとの法人税率の違いも考慮し、グローバルな税務戦略のなかでタックスシールドの影響を分析する必要があります。

M&Aにおけるタックスシールドのメリット

M&Aにおいてタックスシールドは、買い手と売り手の双方に以下のようなメリットをもたらします。

【買い手】買収資金調達における資本コストの軽減

M&Aにおいて、買収資金の調達方法は、税負担や資本コストに直結する重要な要素です。

買収資金を借入(負債)によって調達する場合、その支払利息は税務上の費用(損金)として認められます。この損金算入によって課税所得が圧縮されるタックスシールド効果が発生し、税金を抑えることが可能です。LBO(レバレッジド・バイアウト)のように、買収資金の大部分を借入でまかなうスキームでは、この効果が大きくなります。
借入による資金調達は、新株発行と異なり既存株主の持株比率を維持できるため、経営権を保ちながら節税と資本コストの軽減を同時に実現可能です。また、買収後のキャッシュフロー改善や資金繰りの安定にも貢献する手段として有効であり、戦略的な資本政策の一環として位置づけられます。

【売り手】節税余地の提示による企業価値の向上

タックスシールドとは、支払利息などを損金として計上することで法人税の支払額を軽減する仕組みです。買収を検討する企業にとって、このような節税効果が期待できる対象企業は、投資対効果の高い魅力的な買収先として評価されやすくなります。

まとめ

タックスシールドは、支払利息や減価償却費などの損金算入できる費用を通じて税負担を軽減し、キャッシュフローを改善する仕組みです。効果の大きさは実効税率によって変わるため、計算方法だけでなく税率前提も含めて判断する必要があります。とくにM&Aでは、買収資金の調達方法や企業価値評価に直結するため、税務面の効果と財務健全性の両立を踏まえて活用することが重要です。買い手の資本コスト軽減や売り手の企業価値訴求にも関わる論点として、実務上の理解を深めておく必要があります。



よくある質問

  • タックスシールドとは何ですか?
  • 税務上損金として認められる費用を活用して課税所得を減らし、法人税などの税負担を軽減する仕組みです。キャッシュフローの改善にもつながります。
  • タックスシールド効果がある費用には何がありますか?
  • 借入金の利払い、減価償却費、除却損、売却損などがあります。いずれも税務上の損金として扱われることで、税負担の軽減に活用できます。
  • タックスシールド額はどのように計算しますか?
  • 代表例である減価償却費によるタックスシールド額は、減価償却費に実効税率を乗じて計算します。計算式は『タックスシールド額=減価償却費×実効税率』です。
  • 実効税率が変わるとタックスシールド効果はどうなりますか?
  • 実効税率が高いほど同じ費用でも節税効果は大きくなり、実効税率が低いほど効果は小さくなります。税率の前提は意思決定に大きく影響します。
  • 減価償却費はなぜタックスシールドに使えるのですか?
  • 現金支出を伴わなくても税務上の損金として認められるためです。費用計上によって課税所得を減らし、継続的な税負担の軽減につながります。
  • M&Aでタックスシールドはどのように活用されますか?
  • 買い手は借入による買収資金調達で支払利息を損金算入し、資本コストの軽減を図れます。売り手にとっても、節税余地が評価されることで企業価値向上につながる場合があります。
  • タックスシールドを活用する際に注意すべきことは何ですか?
  • 税務上のメリットだけでなく、借入負担や資金計画、税率変動の影響も踏まえて検討することです。節税と財務健全性の両立が重要です。

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