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事業承継の流れについて
事業承継の準備は、できるだけ早期に始めるべきですが、何から始めれば良いのかわからないと悩む経営者も少なくありません。特に中小企業では、日々の業務に追われるなかで、事業承継に向けた計画の策定や後継者の育成は後回しになりがちです。
そこで本記事では、事業承継のスケジュール例や準備について解説します。また、主な事業承継スキーム(親族内承継・親族外承継・第三者承継)ごとの流れについても紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
このページのポイント
~事業承継の流れ~
事業承継は段階的な準備が求められる経営課題であり、後継者の選定・育成、関係者への周知、株式や資産の移転、PMIまで一連の流れを理解することが重要です。親族・従業員・第三者承継それぞれで進行プロセスが異なるため、適切な手順設計が成功の鍵となります。
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事業承継のスケジュール例
事業承継は短期間で完了するものではなく、一般的には5年から10年ほどの期間を要します。時間をかけて準備することで、後継者の育成や資産の整理、社内外の関係者との調整といった各プロセスを、より確実に実施できるでしょう。
下表は、親族内承継または従業員承継を想定したスケジュールの具体例です。
事業承継スケジュールの目安
| 時期の目安 | 主な取り組み内容 |
|---|---|
| 5~10年前 |
|
| 5~7年前 |
|
| 3~5年前 |
|
| 2~3年前 |
|
| 1~2年前 |
|
| 承継時(0年) |
|
| 承継後1~2年以内 |
|
企業の規模や業種、経営者や後継者の事情によって最適な期間は異なるため、自社の状況を見極めながらスケジュールを立てなくてはなりません。また、状況に応じてスケジュールを見直していく柔軟さも大切です。
事業承継を進めるための準備
事業承継を円滑に進めるためには、以下の準備が必要です。
それぞれ見ていきましょう。
事業承継の必要性を認識する
前述のとおり、事業承継には5年から10年ほどの時間を要します。そのため、早い段階で経営者が事業承継の必要性を認識することが、最初の一歩といえるでしょう。準備が間に合わなければ、経営の継続が危ぶまれる事態に発展する可能性もあります。
次のような兆しが見られる場合は、事業承継を真剣に検討すべきタイミングとなります。
- 経営者の年齢が60歳を超えている
- 社内や親族に後継者候補が見当たらない
- 売上や利益が頭打ちとなり、今後の方向性に悩んでいる
- 主要顧客や金融機関などから後継者不在を懸念されている
円滑な承継のためには、早めの着手と、周囲からの助言に耳を傾ける姿勢が重要です。
現在の経営状況・経営課題等を把握する
事業承継計画の策定に向け、自社の経営状況や課題を明確にしましょう。
自社の強み・弱み、資産や負債の内訳、従業員構成、株主構成、業界の将来性といった事柄を丁寧に洗い出し、「見える化」していきます。これにより、解決策が検討しやすくなり、計画策定や後継者育成に役立てられるでしょう。
さらに、外部の専門家によるサポートを受ければ、より客観的かつ効率的な分析が可能となります。
事業承継計画を策定する
事業承継計画とは、承継の時期や手法、後継者の育成方針などを明文化し、全体像を整理するためのものです。この計画書には、企業理念や業績の現状、経営課題、承継の手法、株式や資産の移転方法といった情報を盛り込みます。
親族内承継や従業員承継を想定する場合には、関係者との対話を重ねて意見を集約し、計画の内容を丁寧に共有することが大切です。専門家の力を借りれば、より実効性の高い計画を構築することも可能となるでしょう。
なお、計画は一度作成すれば終わりではなく、定期的に見直しを行い、時代や会社の状況の変化に応じて柔軟に更新していくことが重要です。これにより、常に現実的な方針に沿って承継を進めていくことが可能となります。
親族内承継による事業承継の流れ
親族内承継は比較的取り組みやすい一方で、感情や相続の問題が絡みやすいことから、慎重な進め方が求められます。具体的な流れは以下のとおりです。
1.親族の中から後継者を選定する
親族内承継は、後継者候補の意思と適性を見極めることから始まります。なかでも、経営に前向きかどうか、会社を継ぐ意思を長期にわたって持ち続けられるかといった点は、重要な判断材料です。候補者の適性は、社内外の評判や第三者の意見を参考にしながら、客観的に判断するように心がけましょう。
また、複数の候補がいる場合には、法定相続人間の公平性や家族内の合意形成を重視しましょう。特に、兄弟姉妹間での利害対立が表面化してしまうと、経営の安定性にも影響を及ぼしかねません。そのため、選定にあたっては早い段階で方針を明確に示し、透明性の高いプロセスを意識することが大切です。
2.後継者を育成する
後継者の育成は、一朝一夕で進むものではありません。実務経験を積ませることはもちろん、他社での勤務や役員との同席、取引先・金融機関との同行など、幅広い場面での学びが必要です。
なかには、親の代とは異なる方針で経営したいと考える後継者もいるでしょう。だからこそ、育成期間中に経営理念のすり合わせを行い、後継者自身のビジョンを育てることが欠かせません。
また、経営やマネジメントのスキルは、外部の専門機関のプログラムを活用することでより実践的に学べます。こうした育成を行えば、自社だけでは得られない視野や判断力を養うことができるでしょう。
3.会社資産・経営権の承継手続きを行う
親族内承継では、株式や事業用資産を相続・贈与・譲渡といった方法で後継者に引継ぎます。その際、株式の分散を避け、議決権を集中させることで、経営の安定を図りましょう。
税負担を抑えるための工夫としては、事業承継税制の活用や、持株会社の設立といった施策も効果的です。また、相続トラブルを未然に防ぐため、遺言書の作成や家族間の事前協議を行うことも欠かせません。
こうした手続きは複雑かつ多岐にわたるため、税理士・弁護士・司法書士などの専門家と連携しながら進めると良いでしょう。
4.関係者へ周知する
親族内承継では、従業員や取引先、金融機関などの関係者に対して、計画的に情報を共有することが大切です。その際、後継者の資質や実力を伝え、「十分な能力があるのだろうか?」という疑問や不安を払拭しなければなりません。
そのためには、後継者が承継前から現場に関与し、関係者との信頼関係を築く努力を重ねることが効果的です。日常のコミュニケーションを通じて、リーダーとしての姿勢を周囲に認識してもらいましょう。
また、正式な承継発表にあたっては、社内外に対して透明性の高い説明を行い、不安や混乱を招かないように配慮する必要があります。誠実な説明と丁寧な対応が、円滑な承継の基盤となります。
親族外承継(役員・従業員承継)による事業承継の流れ
親族外承継は、社内の役員や従業員への承継を指します。以下のような流れで実施されます。
1.役員・従業員の中から後継者候補を選定する
親族以外の社内人材から後継者を選ぶ際は、これまでの業績や会社への理解度、周囲との関係性などを総合的に判断します。以下は、候補として挙げられることが多い社内人材の例です。
共同創業者
共同創業者は、創業期から経営者と苦楽を共にし、事業の成長を支えてきた存在です。理念の共有度や企業文化への理解も深く、従業員や取引先からの信頼も厚いため、経営の継続性という観点から非常に有力な後継候補となります。また、これまでの意思決定や実務面において経営者と一体となって関与してきた経験があるため、引継ぎ時の混乱も少なく済む傾向があります。
一方で、現経営者と同世代であることが多いため、長期的な視点で次の次の世代まで見据えた承継プランが描きづらい点には注意が必要です。
共同創業者を後継者とする場合は、どのような期間を想定して引き継ぐのか、また次世代の後継者候補をどのタイミングで育成していくかといった計画を事前に定めておきましょう。短期的な安定か、中期的な経営の橋渡しかといった役割を明確にしながら、承継の方針を整えなければなりません。
役員
専務や常務など、日常的に経営に深く関わっている役員は、事業承継における現実的かつ有力な選択肢の一つです。経営方針や社内事情を把握しており、従業員や取引先からも顔が知られているため、承継後の事業運営が比較的スムーズに進みやすいでしょう。特に、経営者よりも年齢が若く将来性のある人材であれば、長期的な経営体制の構築にもつながります。
ただし、役員層には同等の経験・実績を持つ人物が複数いるケースもあるため、人選に際しては細心の注意が必要です。選定方法に不透明さがあると、社内に派閥が生まれたり、信頼関係の亀裂を招いたりするリスクがあります。
そのため、業績や貢献度だけでなく、リーダーシップや従業員からの信頼、本人の承継に対する意欲といった点も含めて、総合的に判断することが重要です。
将来が期待される従業員
従業員のなかにも、経営者としての資質を備えた有望な人材がいる可能性があります。
例えば、工場長や部門リーダーなど、重要なポジションで責任を持って業務に取り組み、成果を積み上げている従業員などが候補となるでしょう。こうした人材は、日頃から現場を的確にマネジメントし、課題解決に主体的に取り組んでいるため、組織内外からの信頼が厚いことが多いです。
役員としての経験が無い場合でも、将来のリーダーとしての素地が備わっていれば、十分に経営者として成長していくことが期待できます。
2.株式承継の準備を行う
親族外承継では、後継者の資金力や他の相続人との関係など、さまざまな要素を考慮し、適切な方法を選ぶ必要があります。主な方法は以下のとおりです。
- 経営権だけを譲渡する
- 有償で株式を譲渡する
- 無償で株式を贈与・遺贈する
各方法と詳細と、留意点について整理します。
経営権だけを譲渡する
株式の移転を行わず、代表取締役の交代によって経営権を引き継ぐ方法です。
この方法では、株主総会や取締役会で後継者を新代表に選任し、登記変更を済ませることで承継が完了します。金銭的な負担が小さく、スピーディに進められる点が非常に大きなメリットです。
ただし、株式を保有しないまま経営にあたるため、株主と意見が対立すると、重要な意思決定に制約が生じることがあります。また、前経営者の影響力が残ると、現場の混乱や決裁の遅れにつながりかねません。それだけでなく、将来的に株式の相続問題が顕在化するケースも考えられるため、長期的には株式の取扱いも含めた見直しが必要です。
有償で株式を譲渡する
後継者が自社株を買い取り、経営権と所有権の両方を一体的に承継する方法です。
この方法は、意思決定の自由度が高まり、承継後の経営運営が円滑になりやすいのがメリットです。
ただし、自社株の評価額が高額となるケースも多く、後継者にとっては大きな負担となる場合もあります。そのため、資金調達の方法や支払い条件を工夫することが重要です。
また、この方法では以下のような方法を用いて、資金面での負担を軽減するのが一般的です。
- 自社株評価額を引き下げる工夫を行う(不要資産の整理など)
- 株式の購入代金を分割払いで支払う
- MBOやEBOの仕組みを利用し、銀行やファンドから借入れを行う
株式を無償で贈与・遺贈する
後継者に対して生前贈与や遺贈を行い、株式を無償で譲渡する方法です。
この方法であれば、後継者に資金的な負担をかけずに承継が可能です。
ただし、株式が財産全体の大部分を占めている場合、他の相続人との公平性に配慮しなければなりません。特に遺留分を侵害するような贈与・遺贈は、後日トラブルに発展する可能性があります。
そのため、事前に相続人の間で、株式の贈与や遺贈に関する理解を得ておくことが重要です。
3.後継者を育成する
従業員や役員としての実績がある人物であっても、必ずしも経営者としての視点や意思決定力が備わっているとは限りません。また、社内人材を後継者に選ぶ場合、他の従業員にとっては、かつての同僚が経営トップに立つことに対する戸惑いや不満が生じることもあります。
こうした背景を踏まえ、経営者としての資質を養うためには、段階的かつ計画的な育成プロセスを設けることが重要です。例えば、現経営者の補佐役として経営会議に参加させ、実務を通じて経営判断のあり方を学ばせる機会を設けると良いでしょう。また、金融機関・取引先との商談や交渉の場に同行させれば、社外との関係構築の姿勢や対応力が身につきます。さらに、外部の経営塾や専門研修に参加させ、マネジメントや財務、人材育成といった幅広い知識を体系的に習得させることも効果的です。
リーダーとしての信頼を獲得するためには、周囲からの理解と支援を得ながら、経験と自覚を積み重ねるプロセスが欠かせません。
4.正式な引継ぎを実施する
後継者の選定と育成が完了したら、いよいよ正式な経営の引継ぎを実施しましょう。株主総会や取締役会の決議を経て、後継者が正式に代表取締役に就任し、商業登記の変更手続きを行います。そのうえで、従業員や取引先、金融機関などの関係者に対して新体制を周知し、経営が円滑に引き継がれたことを示します。
役員や従業員への事業承継では、かつての同僚がトップに立つことになるため、社内の信頼関係や感情面への配慮が欠かせません。
第三者承継による事業承継の流れ
M&Aによる第三者承継は、親族や従業員による承継と比べて、手続きや調整事項が多く、専門的な対応が求められます。スケジュール管理や関係者との調整を誤ると、取引の成立や企業価値に大きな影響を与えかねません。
第三者承継の一般的な流れは以下のとおりです。
1.専門家へ相談する
M&Aによる事業承継には、法律・会計・税務・企業価値評価など専門的な知識が必要となるため、専門家のサポートを受けながら進めるのが一般的です。
例えば、法務面では弁護士、財務や会計面では公認会計士や税理士が対応します。また、M&A仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)といった専門機関は、案件全体の進行管理や交渉支援、買い手の探索まで幅広くサポートしてくれます。自社が抱える課題や希望する支援範囲に応じて、適切なパートナーを選定しましょう。
依頼先が決まったら、支援内容や報酬体系などが明記されたアドバイザリー契約を締結し、本格的な準備へと進んでいきます。
2.M&Aスキームを検討する
第三者承継では、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併など、さまざまなM&Aスキームの中から、自社の状況や目的に最も適した手法を選定する必要があります。
特に中小企業では、後継者不在の背景に加え、事業の再編や負債整理といった課題も考慮しなくてはなりません。
将来の事業戦略や税務・法務面も踏まえたうえで、多面的な角度から検討し、最適な方法を選択しなければなりません。
3.譲渡先候補を選定する
第三者承継を進める際には、まず会社名などを伏せた匿名性の高いノンネームシートを作成し、譲渡先候補を募ります。この書類の目的は、自社の業種や規模、おおまかな地域や強みなどを簡潔に記載し、買い手の関心を引くことです。
その後、反応のあった候補者に対しては秘密保持契約(NDA)を締結し、詳細な企業情報を記載した企業概要書を開示します。
こうしたプロセスを通じて、信頼関係を築きながら、自社の理念や事業と相性の良い譲渡先を見極めていきます。
4.トップ面談・基本合意締結を行う
譲渡先候補との意向が一致した段階で、経営者同士によるトップ面談を実施します。この面談の目的は、経営理念や事業への思い、承継後のビジョンなどを率直に伝え合い、相互理解を深めることです。
中小企業における事業承継では、理念の共感や人間的な信頼関係が極めて重要とされるため、面談は複数回にわたることもあります。面談を通じて信頼が醸成された後は、譲渡価格や雇用維持、ブランドの取扱いなど、承継における重要条件を丁寧に整理し、両者の合意をもって基本合意書を締結します。
5.最終契約とクロージング
基本合意書の締結後、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、譲渡企業に対して財務、法務、税務などの詳細な調査を行い、承継対象企業に重大な問題が無いかを慎重に確認するプロセスです。
問題があれば価格や条件に関する話し合いを行いますが、見当たらなければ最終契約書を締結します。その後、株式や事業資産の正式な移転手続きが進められ、対価の支払いが済んだらクロージングは完了です。
最後に登記変更などの法的手続きを実施することで、経営権および所有権が後継者に正式に移転します。
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6.PMI(経営統合)の実施
M&Aによる事業承継が完了した後は、PMI(Post Merger Integration)を実施します。これは旧経営体制から新体制への移行を指し、組織文化や経営理念の継承、人材配置の見直し、業務フローの統一など、多方面にわたる調整が求められます。
特に事業承継の場合、従業員や取引先の不安を最小限にとどめるために、情報共有や説明の機会を丁寧に設けることが大切です。また、旧経営者が一定期間アドバイザーとして関与することで、新体制への移行を円滑にし、社内外の信頼確保にもつながります。
PMIの成否は、承継後の企業価値や組織の安定性に大きく影響するため、計画的かつ慎重な対応が不可欠といえるでしょう。
まとめ
事業承継は、自社の将来を左右する重要な経営課題です。後継者の選定から引継ぎ、PMIに至るまで、各ステップでの的確な判断と準備が求められます。
M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、中小M&Aガイドラインを遵守し、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬がすべて無料、簡易の企業価値算定(レポート)も無料で作成。秘密厳守にてご対応しております。
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よくある質問
- 事業承継にはどれくらいの期間がかかりますか?
- 一般的には5〜10年程度が目安とされており、後継者育成や資産整理、承継手続きなどを段階的に進める必要があります。
- 事業承継の準備で最初にすべきことは何ですか?
- 経営者自身が事業承継の必要性を認識し、経営課題や自社の現状を把握することが出発点となります。
- 親族内承継と従業員承継の違いは何ですか?
- 親族内承継は家族間での引継ぎで、感情や相続面の調整が必要です。従業員承継は社内の人材に承継するもので、組織理解が進んでいる一方で資金や株式の扱いに注意が必要です。
- 第三者承継ではどのような手続きが必要ですか?
- 専門家への相談から始まり、譲渡先の選定、基本合意、デューデリジェンス、契約締結、クロージング、PMIまでの一連の手続きが必要です。
- 後継者の育成にはどんな方法がありますか?
- 経営会議への参加、外部研修、商談への同行、経営理念の共有などを通じて、段階的に経営者としての資質を養っていきます。









