事業承継に潜むリスクと対策 回避するためのポイントについても解説

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事業承継に潜むリスクと対策について

事業承継は企業の将来を左右する重要な局面です。準備が不十分なまま進めると、さまざまなリスクが表面化しかねません。経営体制の混乱や税務トラブル、後継者問題など、事前に把握しておくべき課題も多岐にわたります。

そこで本記事では、事業承継に伴う代表的なリスクと、その具体的な対策について丁寧にわかりやすく解説します。

このページのポイント

~事業承継に潜むリスクと対策とは?~

事業承継には、経営体制の混乱や株式の分散、税務・法務リスク、後継者育成の不備など、見過ごされがちな問題が多数存在します。親族・従業員・第三者承継のいずれにおいても、承継プロセスの段階ごとに発生するリスクを把握し、実務上の適切な対策を講じることが安定した承継の鍵となります。

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事業承継におけるリスク対策の必要性

事業承継は企業の未来を託す極めて重要なプロセスですが、その過程には多くのリスクが潜んでいます。

例えば、後継者の経営能力不足が業績の悪化を招いたり、自社株の分散によって経営権が不安定になったりする事態が想定できます。また、税務面での対応が不十分なまま相続や贈与が発生すれば、納税負担が重くなり、資金繰りに支障を来すことになりかねません。承継時の情報不足や準備不足が従業員や取引先に不安を与え、社内の混乱につながるケースもあります。

これらのリスクは親族内承継・親族外承継を問わず発生するものです。企業の存続と成長を確実なものとするためにも、早期からリスクを洗い出し、適切な対策を講じましょう。

親族内承継におけるリスクと対策

親族内承継は企業文化や理念を継承しやすい一方で、以下のようなリスクが存在します。

各リスクの詳細と対策について見ていきましょう。

自社株の分散・経営権の分裂

親族内承継において注意すべき点の一つが、自社株の分散による経営権の分裂リスクです。

相続の際には、経営に関与しない親族であっても遺留分の権利を有しているため、株式が意図せず複数人に分かれてしまう事態が起こり得ます。その結果、議決権が分散し、経営判断の遅れや意思決定の混乱を招くおそれがあります。

また、株式が分散した状態で、経営の方向性をめぐる親族間の対立が起きると、企業の信用や組織の一体感にも悪影響がおよびかねません。

こうしたリスクを回避するには、後継者に株式を集中させるための明確な計画が必要です。代表的な対策として、以下が挙げられます。

対策①遺言書の作成

自社株の分散を防ぐためにまず検討すべきなのが、遺言書の作成です。被相続人が後継者に株式を集中させる旨を遺言書に明記しておけば、相続発生時に法的効力をもって、遺産分割をコントロールできます。

これにより、他の相続人が遺留分を主張する事態への対策となり、親族間のトラブルを未然に防ぐ助けになります。

対策②持株会社の設立

持株会社を設立することも、親族内承継のリスクを減らすうえで効果的な手法の一つです。自社株式を持株会社に移管し、その持株会社の経営権を後継者に集中させることで、経営における意思決定を一元化できます。特に、事業承継すべき会社が複数存在する場合には有効な手法になります。

実質的には後継者がグループ全体を統括する立場となるため、株主構成が複雑な場合でも経営権を安定させやすくなります。また、将来的な株式の分散リスクにも備えられることから、長期的な視点での経営体制構築に有効です。

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対策③生前贈与による株式整理

計画的な生前贈与による株式の整理も、分散リスクを回避するうえで有効です。相続が発生する前に、段階的に後継者へ株式を移転しておくことで、実質的な経営権の集中を実現できます。

また、贈与税の特例制度を活用すれば、税負担を抑えつつ承継を進めることも可能です。ただし、税務上のルールや期限には注意が必要であるため、信頼できる専門家と連携して進めることが成功のカギとなります。

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税務負担の増大

親族内承継においては、贈与税や相続税といった税務面での負担が大きなリスクとなることがあります。

特に自社株の評価額が高い企業では、株式を後継者に承継させるだけで多額の納税資金が必要となるため、後継者やその家族の資金繰りに深刻な影響を及ぼすこともあります。場合によっては、納税のために株式や事業用不動産の一部を手放さざるを得ず、結果として経営の安定性が損なわれるリスクも否定できません。

こうした税務上の負担を軽減するには、次のような対策が重要です。

対策①事前の株価評価と納税シミュレーション

まず取り組むべきは、専門家による自社株の評価と納税額のシミュレーションです。これにより、将来的に発生する税負担を具体的に把握でき、納税資金の準備を計画的に進めることが可能になります。

また、納税に必要な資金の確保に向けて、生命保険の活用や金融機関からの借入といった選択肢も検討しやすくなるでしょう。

対策②事業承継税制の活用

事業承継税制とは、一定の条件を満たすことで納税を猶予または免除できる制度です。この制度を活用することで、後継者が株式を取得した際、ただちに多額の納税義務が生じる事態を防ぐことができます。

ただし、この制度を適用するためには、「特例承継計画」の提出をはじめとした細かな要件を満たさなければなりません。制度の内容は毎年見直される可能性もあるため、最新情報の確認と共に、専門家と連携して、制度利用の適否を判断しましょう。

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対策③持株会社の活用や評価引き下げ策

株式の評価額そのものを引き下げる工夫も、税務リスクの対策として有効です。

例えば、持株会社を設立して株式を集約させれば、直接の相続対象とする株数を調整できます。また、配当や役員報酬の調整といった手段を講じれば、会社の利益水準を適度にコントロールし、結果として株式の評価額を抑える効果も見込めます。

ただし、これらの施策は法人税法や評価通達などの専門的知識を要するため、税理士や会計士の助言を得ながら慎重に進めることが重要です。

後継者の経営能力不足

親族承継では、後継者に経営者としての能力が十分備わっておらず、企業の業績悪化を招いてしまうケースも見られます。

特に、現場経験が少ないまま経営の最前線に立つと、従業員の戸惑いや社内の混乱を招くおそれがあります。また、「親の後を継ぐ」という義務感にとらわれすぎると、経営に対するモチベーションが低下し、判断力や推進力が鈍ってしまう可能性も否定できません。

こうした問題を防ぐには、次のような対策を行いましょう。

対策①他社経験やOJTによる視野の拡大

後継者候補にはできるだけ早期に、他社への出向や異業種での勤務を経験させましょう。社外での経験をとおして、社内の常識に縛られない柔軟な思考力や、経営判断に必要な多角的な視点を養うことができます。

また、OJTと組み合わせれば、実務と社外経験の双方から能力を高められるでしょう。

対策②社内での役割付与と信頼構築

後継者候補に責任ある役割を付与することは、組織内での信頼形成において極めて効果的です。営業や人事、経理といった部門ごとの実務を担わせることで、従業員との接点が増え、自然とリーダーシップが育まれるでしょう。

また、成果を積み重ねる過程で、周囲の期待や尊敬を得ることができ、経営者としての自覚と責任感も強まります。

対策③外部の専門プログラムの活用

外部の経営塾や事業承継支援プログラムに参加させることも有効です。理論だけでなく、実際の経営事例や失敗事例を通じて、リアルな判断力を身につけることができます。

また、プログラム内でのディスカッションを通じて、第三者からの率直なフィードバックを得られる点も大きなメリットです。これにより、後継者自身の課題を客観的に把握し、自らの行動に反映させる成長の機会となります。

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親族外承継・第三者承継におけるリスクと対策

親族外承継や第三者承継では、親族内承継よりも多くの選択肢から後継者を選定できますが、以下のようなリスクが存在します。

それぞれのリスクと対策を確認していきます。

見えない債務の継承

親族外承継や第三者への売却では、後継者が企業の実態を把握しきれていない状態で手続きを進めてしまい、承継後に大きなダメージを負うことがあります。例えば、買収直後に多額の未計上債務が明るみに出た結果、資金繰りが悪化し倒産に追い込まれるケースが挙げられます。

こうした事態を回避するには、財務・法務・労務を含む包括的なデューデリジェンスを実施することが不可欠です。中小企業では情報の整備が不十分なことも多いため、外部の専門家を活用し、事前にリスクを洗い出しましょう。

十分な調査と情報開示を通じて、両当事者が納得のうえ承継することが重要です。

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組織の混乱

親族外承継では、経営者交代に伴って従業員のモチベーションが低下し、組織内に混乱が生じることがあります。新たな経営陣に対する警戒感や企業文化の違いからくる摩擦は、従業員の離職や業績悪化を引き起こす原因になりえます。

特にキーパーソンとされる幹部社員の離脱は、経営の空白を生むきっかけとなりかねません。こうした事態を防ぐためには、以下の対策が効果的です。

対策①徹底したPMIの実施

第三者承継では、企業文化や価値観の違いから生じる摩擦が、従業員の混乱や業績低下を招く原因となります。そういった事態を抑止するためには、PMI(Post Merger Integration)を徹底し、効果的な統合を図ることが重要です。

具体的には、人事制度や報酬体系の調整、業務フローの統一、社内の情報共有体制の構築など、ソフト面の調整を段階的に行うことなどが挙げられます。さらに、経営理念やビジョンを言語化して共有し、従業員との共通認識を作れば、帰属意識の向上を図れます。

PMIは承継後すぐに行うのではなく、事前に計画を立て、承継と同時に段階的に実施していくのがポイントです。短期的な成果に目を奪われず、長期的な企業価値の向上を見据えて取り組みましょう。

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対策②旧経営者による引き継ぎ支援と従業員との対話

経営者の交代は、従業員にとって心理的な負担が大きく、日々の業務に影響が出る可能性があります。特に、長年信頼されてきた経営者が退任する場合、将来への不安や職場の変化への警戒感が高まる傾向があります。

こうした不安をやわらげるには、旧経営者が一定期間会社に残り、後継者との円滑な橋渡し役を担うことが重要です。従業員との対話を通じて経営方針を丁寧に伝えると共に、不安や疑問に正面から向き合う姿勢が求められます。

また、定期的な説明会や個別面談、意見交換の場を設けることで、従業員は安心感を得られ、信頼関係の再構築が進みます。さらに、従業員の声を経営に反映する工夫や、現場からの提案を積極的に取り入れる姿勢も、組織への定着を促進する有効な要素となるでしょう。

こうした取り組みを継続することが、円滑な承継と企業経営の安定化につながります。

情報漏洩

親族外承継や第三者承継では、承継プロセス初期段階での情報漏洩が大きなリスクとなります。

例えば、「事業承継が予定されている」という事実が意図せず社内外に伝わった場合、従業員の動揺や離職、取引先や金融機関の信頼喪失などが生じかねません。また、SNSや匿名掲示板を通じた拡散も起こり得るため、企業の評判が大きく損なわれる危険性があります。

こうした事態を防ぐには、情報管理を徹底し、承継関係者以外への情報アクセスを極力制限することが必要です。具体的な対策として、以下の3つを見ていきましょう。

対策①秘密保持契約(NDA)の締結

M&Aや事業承継では検討段階から、関係者全員との間で、秘密保持契約(NDA)を締結することが不可欠です。これにより、企業情報の外部流出を法的に抑止し、万一漏洩が起きた場合も損害賠償請求などの対応が可能となります。

特に、買い手候補やアドバイザーとの間では、初期段階からNDAを交わしておき、安心して情報提供ができる環境を整えましょう。開示する情報の範囲をステップごとに分け、必要最小限の情報から段階的に公開していけば、リスクを最小限に抑えられます。

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対策②バーチャルデータルーム(VDR)の活用

企業情報の共有には、セキュリティ機能を備えたバーチャルデータルーム(VDR)の活用が有効です。

VDRは、アクセス権限を細かく設定でき、誰が・いつ・どの情報にアクセスしたかをログで管理できます。これにより、機密情報の不正な持ち出しや漏洩を防止でき、安心してデューデリジェンスを進めることが可能です。

また、郵送やメールといった従来型の情報提供手段と比べて、情報管理の手間を大きく削減できるため、効率的な承継プロセスが実現できます。

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対策③従業員の心情に配慮した情報共有

従業員にとって、会社が売却される・経営者が交代するという情報は極めてセンシティブです。そのため、情報を開示するタイミングや方法には細心の注意を払わなければなりません。

なお、具体的な取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 経営陣以外への情報共有を極力避ける
  • 買い手候補との面談や交渉は社外で実施する
  • データの管理・閲覧履歴の記録を徹底する
  • 郵便物を自宅受取や局留めにする

事業価値の毀損

親族外承継、特にM&Aによって代表者が交代するケースでは、企業の信用力やブランドイメージが損なわれる可能性があります。長年にわたり構築してきた顧客や取引先との関係が「代表者の人柄や信頼」を前提としている場合、新しい経営陣に対して不安を抱かれるリスクがあるためです。

こうした事業価値の毀損を避けるためには、以下のような対策の実施が求められます。

対策①顧客・取引先との信頼関係維持

承継による関係悪化を防ぐためには、承継前から主要顧客や取引先との関係性を丁寧に維持することが重要です。特に、大口の取引先に対しては、個別の説明会や訪問などを通じて、代表者交代の経緯や今後の方針について誠実に伝える姿勢が求められます。

「変わらぬ価値を提供し続ける」と明言することで、顧客の不安感を払拭し、信頼関係を継続しやすくなります。

対策②ブランド方針・対外姿勢のすり合わせ

承継後にブランドの印象が大きく変化すると、顧客や市場に混乱を与える恐れがあります。特に、承継によって製品やサービスの品質、価格、姿勢に違いが出ると、「以前の会社と違う」と受け止められかねません。

そのため、承継前の段階で買い手とブランドの方針や市場への姿勢を共有し、「どの部分を維持するか」「どこに変化を加えるか」といった点を明確にしておく必要があります。こうしたメッセージを発信することで、ブランド価値の毀損を防ぎ、円滑な引き継ぎが実現できます。

事業承継リスクを回避するためのポイント

事業承継を円滑に進めるためには、リスクが表面化する前に、十分な備えをしておくことが大切です。実際に、後継者の育成が間に合わなかったり、納税資金の準備が不足していたりすることで、承継後に大きなトラブルに発展するケースもあります。

経営者が元気なうちから、後継者を選び育てることが重要です。あわせて、株式の整理や税金対策も段階的に進めていきましょう。また、事業承継計画書を作っておくと、承継の流れや役割分担が明確になり、関係者との話し合いもスムーズになります。

なお、こうした作業は専門的な知識が必要となるため、税理士や弁護士などの専門家に相談しながら進めることが推奨されます。

まとめ

事業承継には、親族内・親族外を問わずさまざまなリスクが伴います。しかし、早期の準備と的確な対策を講じることで、これらのリスクは大幅に軽減できます。

ただし、後継者育成や株式整理、税務対応まで、多岐にわたる課題を総合的に整理し、継続的な事業運営を支えるためには、専門家の力が不可欠です。

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よくある質問

  • 事業承継ではどのようなリスクが発生しますか?
  • 後継者の経営能力不足や株式の分散、税務負担の増大、従業員の動揺、情報漏洩など多岐にわたるリスクが想定されます。
  • 自社株の分散を防ぐにはどうすればいいですか?
  • 遺言書の作成や持株会社の設立、生前贈与による株式の集中が効果的です。
  • 税務リスクへの具体的な対策はありますか?
  • 株価評価と納税シミュレーション、事業承継税制の活用、評価引き下げ策などが挙げられます。
  • 従業員や取引先の不安をどう解消すればいいですか?
  • PMIの実施、旧経営者の引継ぎ支援、関係者への丁寧な説明と対話によって信頼関係を構築することが重要です。
  • 情報漏洩対策には何をすべきですか?
  • 秘密保持契約(NDA)の締結、VDRの活用、慎重な情報管理によって情報漏洩のリスクを低減できます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社執行役員 コーポレートアドバイザリー部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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