更新日
資本性ローンについて
資本性ローンとは、返済順位の劣後性や長期返済といった条件により、負債でありながら自己資本とみなされる特殊な融資制度です。財務体質の強化や信用力の向上に役立つ一方で、期限前返済ができないことや継続的な報告義務があることも理解したうえで活用する必要があります。
資本性ローンは、自己資本比率を改善しながら資金調達を進めたい企業にとって重要な選択肢です。通常の借入とは異なり、財務面の見え方や信用力に影響するほか、無担保・無保証人で利用しやすい点にも特徴があります。一方で、返済方法や報告義務には独自の条件があるため、制度内容を正確に理解しておくことが重要です。
本記事では、資本性ローンの定義や、通常のローンとの違い、具体的な制度内容や活用上の注意点まで、詳細に解説します。
資本性ローンとは
資本性ローンとは、資本と負債の両方の性質を併せ持った特殊な融資制度のことです。
通常のローンが返済義務のある負債として扱われるのに対し、資本性ローンは返済順位が劣後し、返済期間が長期であるため、自己資本として認識される点が特徴です。資本と負債の中間的な性質を持つことから、「メザニン(中二階)ローン」と呼ばれることもあります。
代表的な制度としては日本政策金融公庫が提供する資本性ローンが挙げられます。返済は原則として契約期間の満了時に一括で行い、それまでの期間は利息のみを支払う仕組みです。
資本性ローンは、企業の財務体質を強化し、自己資本比率を高める手段として効果的です。また、担保や保証人を必要としないため、創業間もない企業や資産の乏しい企業にとっても利用しやすい制度となっています。
資本性ローンを活用するメリット
資本性ローンを活用する主なメリットは以下のとおりです。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
自己資本の増加により財務体質を強化できる
通常のローンでは、借入金は負債として計上されるため、自己資本比率が下がり、財務体質の悪化を招く可能性があります。一方で、資本性ローンは一定の要件を満たせば金融機関の資産査定上は自己資本とみなされるため、借入額が増えても自己資本比率が高まります。これは、資本性ローンが通常の借入とは大きく異なる点です。
資本性ローンを活用すると財務面が改善され、その結果金融機関からの信用力が高まるため、追加の融資も受けやすくなります。
無担保・無保証人で融資を受けられる
資本性ローンの大きな特徴の一つが、担保や経営者保証を必要としない点です。
通常のローンでは不動産や経営者個人の保証が求められることが多いため、資産の少ない企業にとっては、こうした条件が融資を受ける際の大きな障壁となります。そのため、創業間もない企業や財務状況が不安定な企業では、資金調達そのものを断念せざるを得ない場合もあるでしょう。
一方で、資本性ローンは無担保・無保証人での利用が可能であるため、こうした企業でも柔軟に資金を確保することが可能です。さらに、経営者の個人資産に影響が及ばないことも、精神的な負担を軽減する要素となります。
このように、資本性ローンは条件面における優位性によって、資金調達の可能性を広げる制度として期待されています。
既存株主の持株比率に影響しない
株式を発行して資金調達を行うと、新たな出資者が株主として加わるため、基本的にその分だけ、既存株主の持株比率は希薄化します。そのため、既存の株主の経営への影響力が低下したり、意思決定の安定性が損なわれたりしかねません。
これに対し、資本性ローンでは株式の発行を伴わないため、持株比率に変動が生じることはありません。こうした既存の出資構成を維持しながら資金を確保できる点は、経営権を手放したくない経営者にとって大きな魅力となるでしょう。
特に、既にベンチャーキャピタルなどが出資している企業では、持株比率を保ったまま追加の資金調達が可能である点が有利に働きます。このように、資本性ローンは経営の独立性を保ちつつ資本を強化したい場合に効果的な手段です。
業績に応じて金利が変動する
通常のローンでは、固定金利や市場の金利動向に連動する変動金利が用いられるのが一般的です。そのため、企業の業績とは無関係に、一定の金利が適用されます。
一方、資本性ローンでは企業の業績に応じて金利が変動する仕組みが採用されているため、収益状況に合わせた柔軟な資金調達が可能です。業績が好調な場合は金利が上昇し、逆に低調な場合は金利が引き下げられる仕組みになっているため、経営が苦しい局面でも金利負担を抑えることができ、資金繰りを安定させることが可能です。
ただし、業績が改善すれば返済額が増えるため、将来的な負担が増える点には注意しなければなりません。資本性ローンは、こうした変動金利制度を通じて企業の成長を支援する仕組みといえるでしょう。
日本政策金融公庫による資本性ローン
資本性ローンのなかでも代表的な制度が、日本政策金融公庫の提供する公的融資です。ここでは、その内容や条件を事業区分ごとに詳しく見ていきます。
国民生活事業
国民生活事業は、日本政策金融公庫の部門の一つで、小規模事業者や個人事業主を対象とした融資を担当しています。この部門が取り扱う資本性ローンは、創業したばかりの企業や、経営再建中の事業者でも申し込みやすいことから、実際に多くの企業から資金調達の手段として活用されています。
| 融資対象 |
次の①および②を満たす法人または個人企業
|
|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 用途 | 設備資金および運転資金 |
| 返済期間 | 5年1ヶ月以上20年以内 |
| 金利 | 0.50%〜3.95% |
参考:挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)|日本政策金融公庫
融資の限度額は7,200万円と設定されており、設備投資や運転資金など、さまざまな事業活動に充てることが可能です。また、返済期間は5年1ヶ月以上20年以内であり、元金は満了時に一括返済と定められているため、満期日までの間に支払うのは利息のみです。
なお、金利は業績に応じて変動し、赤字の場合は最低金利が適用されます。さらに、担保や保証人を必要としない点も大きな特徴であり、金融機関の資産査定上は、実質的には融資にも関わらず自己資本として扱われるため、追加の融資も受けやすくなります。
ただし、利用にあたっては、10年分の事業計画書の提出が必要で、四半期ごとに経営報告も行わなければなりません。
中小企業事業
中小企業事業は、日本政策金融公庫が中堅規模以上の中小企業を対象に実施している融資部門のことです。この部門の資本性ローンは、経営改善や企業再建、新たな事業展開などに取り組む中小企業の資本強化を支援することを目的としています。
| 融資対象 | 新規事業、経営改善、企業再建などに取り組む方であり、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果(新たな雇用または雇用の維持)が認められる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業などに取り組む方。 |
|---|---|
| 融資限度額 | 15億円 |
| 用途 | 多目的な資金需要に対応 |
| 返済期間 | 5年1ヶ月以上20年以内 |
| 金利 | 0.50%〜3.95% |
参考:挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)|日本政策金融公庫
融資を受けるためには、新企業育成貸付・企業活力強化貸付・企業再生貸付のいずれかの適用要件を満たさなければなりません。それだけでなく、地域の雇用に貢献する事業や、地域社会にとって不可欠な事業、高度な技術を有する事業であることも必要です。
なお、こちらも融資の元金は満了時に一括で返済し、金利は変動制と定められています。また、担保や保証人を必要とせず、受けた融資は金融機関の資産査定上は全額自己資本として扱われる点も、大きなメリットといえるでしょう。
融資限度額は最大15億円であるため、長期的かつ多様な資金ニーズに対応できます。なお、申請する際には、詳細な事業計画を作成し、継続的に経営状況の報告を行わなければなりません。
資本性ローンを活用するデメリット・注意点
資本性ローンには、上述のようにさまざまな利点がある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
それぞれ見ていきましょう。
期限前の返済ができない
資本性ローンでは、契約期間よりも前に元金を返済することは原則として認められていません。そのため、たとえ資金に余裕が生じたとしても、途中で完済したり、他のローンに借り換えたりすることはできません。
また、元金は一般的な融資のように月々に定まった額を返済するのではなく、契約終了時に全額をまとめて一括返済するように定められています。したがって、満期日に高額な資金が必要となる点には注意しなければなりません。
さらに、融資期間中に支払う金利に関しては、業績に応じて変動する点にも注意が必要です。業績が不振であれば低金利となり企業の負担は軽くなりますが、業績が回復すれば金利が上昇し、想定以上の利息負担が続く可能性があります。
こうしたことから、資本性ローンを活用する際には、長期的な資金繰りと返済計画を見据えたうえで、制度を利用しなければなりません。
四半期ごとに事業報告書の提出や経営状況の報告が必要
資本性ローンを利用する企業は、四半期ごとに事業報告書を提出しなければなりません。報告書には、売上高や利益、キャッシュフローといった経営数値のほか、今後の見通しや経営課題についても記載する必要があります。
これは、資本性ローンを提供する側の金融機関が企業の経営実態を把握し、継続支援の可否や金利の判断材料とするためです。ただし、不十分な報告や虚偽記載を行うと、信用低下につながり、融資条件の変更や支援の打ち切りに発展することもあります。
こうしたことから、定期的に必要なデータを取りまとめ、内部で共有・保管する体制を整えておくようにしなければなりません。
まとめ
資本性ローンは、自己資本とみなされる性質を活かして財務基盤を強化しながら資金調達を行える制度です。無担保・無保証人で利用しやすく、既存株主の持株比率に影響しない点も特徴ですが、期限前返済ができないことや四半期ごとの報告義務には注意が必要です。制度内容や返済条件を正しく理解し、長期的な資金計画を踏まえて活用することが、財務基盤の整備と今後の事業展開を考えるうえで重要です。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
よくある質問
- 資本性ローンとは何ですか?
- 返済順位が劣後し、長期返済を前提とすることで、金融機関の資産査定上は自己資本とみなされる特殊な融資制度です。資本と負債の中間的な性質を持つため、メザニンローンと呼ばれることもあります。
- 通常の融資と資本性ローンの違いは何ですか?
- 通常の融資は負債として扱われますが、資本性ローンは一定の要件を満たすことで自己資本として認識される点が異なります。あわせて、返済順位が劣後し、元金は満了時に一括返済となる点も特徴です。
- 資本性ローンのメリットは何ですか?
- 自己資本比率の改善による財務体質の強化、無担保・無保証人で利用しやすいこと、既存株主の持株比率に影響しないこと、業績に応じて金利が変動することが主なメリットです。
- 日本政策金融公庫の資本性ローンにはどのような制度がありますか?
- 日本政策金融公庫では、国民生活事業と中小企業事業で資本性ローンが用意されています。国民生活事業は小規模事業者や個人事業主向け、中小企業事業は中堅規模以上の中小企業向けの制度です。
- 資本性ローンの金利はどのように決まりますか?
- 金利は固定ではなく、企業の業績に応じて変動します。業績が低調な場合は金利負担を抑えやすく、業績が改善すると金利が上昇する仕組みです。
- 資本性ローンは途中で返済できますか?
- 原則として期限前返済はできません。元金は契約期間の満了時に一括返済するため、満期時の資金計画を事前に立てておく必要があります。
- 資本性ローンを利用する際の注意点は何ですか?
- 四半期ごとに事業報告書の提出や経営状況の報告が必要です。加えて、長期的な資金繰りと返済計画を見据え、必要なデータを継続的に管理できる体制を整えることが重要です。
M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)
M&A関連記事
M&A基礎
目的別M&A
- 事業承継とは
- 事業承継とM&Aの違い
- 事業承継M&A
- 「事業承継」と「事業継承」の違い
- 事業承継問題
- 後継者不足の実態
- 事業承継における課題
- 事業承継対策の必要性
- 事業承継を実施するタイミング
- 事業承継の流れ
- 事業承継計画
- 事業承継計画書の記載項目
- 事業承継のチェックリスト
- 事業承継における後継者選定
- 事業承継における後継者育成
- 親族内承継
- 親族外承継
- 従業員への事業承継
- 第三者承継
- 親族内承継と第三者承継の比較
- 後継者のいない会社を買う
- 事業承継の主要スキーム比較
- 持株会社を活用した事業承継
- 事業承継信託
- 事業承継ファンド
- 医療法人の事業承継
- 事業承継に向けた資金調達方法
- 事業承継補助金
- 事業承継で活用できる融資
- 事業承継における生命保険
- 事業承継税制
- 事業承継の税務対策
- 事業承継と資産移転
- 事業承継時の消費税の取扱い
- 承継時の債権・債務の取扱い
- 地位承継
- 包括承継
- 許認可の承継
- 株式相続
- 株式の贈与
- 自社株贈与
- 事業承継士
- 事業承継の専門家
- 事業承継コンサルティング
- 事業承継特別保証制度
- 事業承継に潜むリスクと対策
- 事業承継に伴う労務管理リスク
- 会社売却と事業承継の違い
M&Aスキーム
M&Aプロセス
企業価値評価
M&Aリスク
デューデリジェンス
M&Aファイナンス
M&A税務
M&A法務
用語・その他
- バスケット条項
- 当期純利益
- 資産除去債務
- XBRL
- 特別決議
- 譲渡承認取締役会
- 大量保有報告
- 適時開示
- 法務のポイント
- インサイダー取引
- チャイニーズ・ウォール
- 匿名組合
- キラー・ビー
- クラウン・ジュエル
- グリーン・メール
- ゴールデンパラシュート
- ジューイッシュ・デンティスト
- スタッガード・ボード
- スケールメリット
- ストラクチャー
- 利益相反
- 源泉徴収
- プロキシー・ファイト
- パールハーバー・ファイル
- Qレシオ
- MSCB
- IFRS
- 現物出資
- コントロールプレミアム
- ゴーイング・プライベート(Going Private)
- バックエンド・ピル
- パックマン・ディフェンス
- EV(事業価値)
- 売渡請求
- 株主価値
- レバレッジ効果
- 減損価格
- アーンアウト
- シャーク・リペラント
- スーイサイド・ピル
- ティン・パラシュート
- 低廉譲渡
- 監査法人
- 相対取引
- 範囲の経済
- アナジー効果
- 債券
- 純有利子負債(ネット デット)
- ホールディングス
- COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)
- ディスクロージャー
- 会社法
- ROA(総資産利益率)
- 国際租税条約
- 役員報酬
- SWOT分析
- アンゾフの成長マトリクス
- サクセッションプラン
- ドラッグアロング
- 累進課税
- 総合課税と分離課税の違い
- キャピタルゲイン
- インカムゲイン
- 資本と負債の区分
- 益金不算入
- タックスシールド
- 繰越欠損金
- スタンドアローン・イシュー
- ロックド・ボックス方式
- 特定承継
- プットオプション
- 埋没費用(サンクコスト)
M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由
創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。
-
明瞭かつ納得の手数料体系
創業以来変わらない着手金無料などの報酬体系で、お相手企業と基本合意に至るまで無料で支援致します。
- 関連ページ -
-
豊富なM&A成約実績
創業以来、国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。
- 関連ページ -
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
