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アーンアウトの税務・会計処理について
アーンアウトの実務で最も注意すべきは、会計・税務処理の判断です。
M&A契約において「一定の成果が出たら追加で支払う」というアーンアウト条項が設定されるケースがあります。ただし、この対価は契約時点で金額が確定していない“条件付き”であることから、処理方法を誤ると大きなトラブルにつながるおそれがあります。
会計基準の違い(日本基準・IFRS)、立場の違い(買い手・売り手)、さらに個人か法人か、こうした条件によって処理のルールも変わります。
本記事では、アーンアウトの基本的な構造を整理した上で、税務・会計処理における実務上の要点を、基準別・立場別にわかりやすく解説します。
アーンアウトについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
このページのポイント
~アーンアウトの税務・会計処理とは?~
アーンアウトにおける税務・会計処理は、日本基準とIFRSで考え方が異なります。買い手・売り手、個人・法人の立場によっても処理が分かれ、のれん計上や課税区分の判断が重要になります。条件付き対価特有のリスクや実務上の注意点を整理することが求められます。
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~その他 M&Aについて~
アーンアウト条項に関する税務・会計処理は複雑化しやすい
アーンアウトとは、M&Aにおける条件付き対価の一種であり、一定の業績目標や条件を達成した場合に分割で支払われる仕組みです。
一般的な支払対価(確定対価)とは異なり、将来の不確実性を伴うため、企業価値のギャップを埋める役割を果たす一方で、会計・税務処理が複雑化します。会計上の処理は会計基準(日本基準・IFRS)によって異なり、税務面では個人なのか法人なのかによって課税区分が変わります。
このように、アーンアウトについては、制度としての理解に加え、会計および税務処理の違いを正しく把握しておくことが、実務上欠かせません。
アーンアウトの会計上の処理
アーンアウトに関する会計処理は、日本基準とIFRSとで異なります。特に、評価方法や収益認識のタイミングに違いが見られ、それぞれの基準に応じた適切な対応が必要です。
| 評価方法 | 収益認識のタイミング | |
|---|---|---|
| 日本基準 | 実績ベース | 条件達成をもって収益と認識 |
| IFRS | 公正価値見積もりベース | 取引時点または条件達成見込み時点をもって収益と認識 |
以下では、日本基準・IFRSの基本的な考え方について整理し、実務上注意すべきポイントを解説します。
日本基準
日本基準においては、条件達成をもって収益として認識します。そのため、評価方法は実績ベースです。
買い手企業
アーンアウトは「条件付取得対価」として扱われ、支払いが確実となり、かつ時価が合理的に算定可能になった時点で、のれんとして追加計上されます。
追加計上されるのれんは、企業結合日時点で認識されたものと仮定し、過年度分の償却費を修正する必要があります。ただし、過年度決算自体を遡及修正することは不要です。
なお、条件が達成されなかった場合には、追加的な会計処理は発生しません。
売り手企業
売り手企業では、アーンアウトによる追加収入は、条件達成時に収益として認識されます。条件付取得対価が確定するまでは、売却益の金額は未確定の状態です。会計処理はその後の税務申告にも影響を与えるため、慎重な対応が求められます。
IFRS
IFRSでは、取引時点または条件達成の見込みが立った時点をもって収益として認識します。見積もりベースの評価方法となり、将来キャッシュフローの合理的な見積もりが可能であれば、収益を先行認識するという原則があります。
買い手企業
IFRSにおいては、アーンアウトは取得日の公正価値で評価され、M&A対価に含めて初期認識されます。条件付取得対価の公正価値の変動は、取得日後の損益に反映されますが、のれんには影響を与えません。
なお、IFRSでは条件付対価に係るリスクとリターンを継続的に反映する原則が採用されています。そのため、買い手企業は毎期末に公正価値を再評価し、その差額を損益として計上する必要があります。
売り手企業
売却時点でアーンアウト対価の公正価値を見積もり、将来の受取見込みを含めて収益を先行して認識するケースがあります。
条件達成時には実額で調整されるため、見積もりの精度が会計処理の正確性を左右します。これにより、実際の対価受領よりも早く利益計上が求められる可能性があります。
アーンアウトの税務上の処理
アーンアウトに関する税務処理は、買い手・売り手の立場や、個人・法人の違いによって大きく異なります。取扱いを誤ると税負担が増大するため、適切な対応が求められます。
買い手企業
買い手企業が支払ったアーンアウト対価は、損金として認められず、株式取得原価に加算されるのが原則です。アーンアウト対価を損金計上できない場合、支払額全体が課税所得に影響を与えないため、買い手側にとって不利な処理となる可能性があります。
ただし、業績目標の未達時に支払い義務が消滅するような契約形態であれば、一部損金算入が認められるケースもあります。そのため、アーンアウト条項を設定する際には、支払い条件や目標設定を慎重に設計し、税務負担を最小化するスキーム構築が重要です。
売り手企業
| 個人の場合 | 法人の場合 | |
|---|---|---|
| 所得区分 | 雑所得(総合課税対象) | 譲渡益(法人税の対象) |
| 注意点 | 最高税率約55%が適用される可能性がある | 税務と会計の認識が乖離するケースがある |
売り手が個人の場合、一般的にアーンアウト対価は「雑所得」として扱われます。最高税率約55%が適用される可能性があり、総合課税の対象です。譲渡所得として認められるためには、クロージング時点で対価が確定している必要がありますが、アーンアウトは条件付きであるため、通常は該当しません。その結果、株式譲渡の一括受領よりも税負担が増加することがあります。
一方、売り手が法人の場合、アーンアウト対価は譲渡益として認識されますが、その事業年度の他の益金と合算して法人税等が課税されます。ただし、アーンアウトはクロージング時点で金額が確定していないため、収益認識のタイミングには注意が必要です。また、税務上の処理が会計処理と乖離するケースもあるため、会計と税務の整合性に十分留意する必要があります。
アーンアウトの会計・税務処理に関するポイント
アーンアウトは、取引条件や達成基準によって会計・税務処理が大きく異なるうえ、日本基準とIFRSでも取扱いが分かれています。判断を誤ると、のれんの処理や税負担に大きな影響を及ぼす可能性があるため、条件設定やスキーム設計が重要です。
適切な見積もりや基準選択のもと、正しくプロセスを進めるためにも、M&A実務に詳しい専門家の助言を受けながら進めることが大切です。
まとめ
アーンアウトは条件設定や会計基準によって、会計・税務処理に大きな違いが生じます。日本基準とIFRSの相違点を十分に理解し、適切な会計処理と税務対応を行うことが重要です。
専門家の助言を得ながら慎重に進めることで、税務リスクを回避し、M&A取引の成功に近づけることができます。
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よくある質問
- アーンアウトの税務処理で注意すべき点は?
- 買い手は取得原価に加算するのが原則であり、売り手は個人なら雑所得、法人なら譲渡益として処理します。
- 日本基準とIFRSでアーンアウトの会計処理はどう違いますか?
- 日本基準は条件達成後に収益を認識、IFRSは見積りに基づき取得時点で収益を認識します。
- アーンアウトはいつの時点で課税されますか?
- 日本基準では条件達成時、IFRSでは見積もり可能な場合は先行認識され、売り手の立場でも課税タイミングが変わります。






