家電業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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  • #家電業界 M&A

業界の定義

家電製造業とは、家電を製造する事業のことを指し、家電を販売する家電量販店業界とは別の業種である。家電とは、家庭や個人で利用する電気機器のことを指し、大きく分けて「白物家電」と「黒物家電」がある。

「白物家電」には、電気や熱エネルギーを利用した製品が分類され、厨房機器(冷蔵庫等)や空調・住宅関連機器(エアコン等)、衣料衛生関連機器(洗濯機等)が代表的なものとしてあげられる。「黒物家電」にはテレビやパソコン、オーディオが分類される。今回は、主として「白物家電」について説明していく。



業界の特色

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日本において家電は高度経済成長期から急激に普及し、特に白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫は当時「三種の神器」と言われた。「三種の神器」によって家庭の家事作業を劇的に軽減させ、現代社会の多くの家庭で生活に欠かせないものとなった。

高度経済成長が終焉した1970年代後半以降、「三種の神器」を始めとする家電は多機能化することで、他社との差別化をはかり、成長していった。その結果、日本メーカーの家電製品は機能性が高く、耐久性もあり安心して使用できることから「メイド・イン・ジャパン」とも呼ばれるようになった。

しかし、家電製品の機能競争ももちろんのこと、それ以上に価格競争が激しく、近年においては低価格が強みの韓国、台湾、中国など海外勢の存在感が強まっている。加えて2000年代以降は、日本でも大手メーカーの一世代前の技術を活用して生産し、安く販売する家電メーカーの台頭が著しく、長く続いたデフレ経済とリーマンショックの影響、さらにネット通販の普及などにより家電の販売価格は下落の傾向にある。



市場の規模

経済産業省が発表した「生産動態統計調査」によると、2019年の家庭用電気機器の国内出荷額は、前年比2.1%増の2兆4,678億円で4年連続で市場規模が拡大していることがわかった。

製品別に出荷額を比較すると成長しているのは、洗濯機が前年比7.1%増の1,791億円、食器洗い乾燥機が前年比6.7%増の338億円、エアコンが前年比4.7%増の1兆3,571億円、温水洗浄便座が前年比3.3%増の842億円、電気かみそりが前年比2.4%増の381億円、自然冷媒ヒートポンプ式給湯機が前年比11%増の1,089億円などとなっている。一方で、出荷額が前年よりも下がったのは、冷蔵庫が前年比8.8%減の2,981億円、掃除機が前年比6.5%減の501億円、除湿機が前年比3.6%減の92億円などとなっている。

企業別に売上を比較すると、日立グローバルライフソリューションズ株式会社が4,653億円、パナソニック株式会社(アプライアンス)が2兆5,926億円、三菱電機株式会社(家庭電器)1兆902億円、東芝ライフスタイル株式会社が820億などとなっている。



課題と展望

家電製造業界の課題としてあげられるのが、海外家電メーカーの国内市場におけるシェア拡大である。韓国、台湾、中国を中心とした海外家電メーカーは低価格が強みであり、国内家電メーカーは、価格競争に勝つことが厳しい状況となっている。

そのため、国内家電メーカーは、高機能・高価格なプレミアム家電の販売にシフトして収益性向上を図っている。また、人口減少により国内需要の伸長が厳しい状況であることから海外展開が今後の生き残りに必要となっている。



家電業界のM&A動向

家電製造業界のM&Aから、それぞれの家電メーカーがどの事業を成長させたいのかが顕著にみてとれる。家電製造業界の特徴としては、海外展開とIoT事業の強化に焦点を当てたM&Aが主流となっている。

2020年、日立グローバルライフソリューションズ株式会社と欧州を中心に世界145カ国以上で家電事業を展開しているトルコのアルチェリク社は、合弁会社の設立に合意し株式譲渡契約を締結した。この株式譲渡契約により、日立グローバルライフソリューションズ株式会社は海外白物家電事業を新設した会社に移管し、その会社の60%の株式をアルチェリク社に譲渡することが決まった。

2018年、パナソニック株式会社は、IoTハードウェアの企画・開発・販売を行なう株式会社Cerevoの新会社である株式会社ShiftallをM&Aした。パナソニック株式会社は、今までのモノ中心の事業モデルから脱却し、他社との協業を含むオープンイノベーションによって、IoTやAI技術に基づくサービスの提供を行っている。このM&Aにより、株式会社ShiftallがもつIoT家電への技術・リソース・ノウハウを最大限に活用することが期待された。

2016年、ソニー株式会社は、イスラエルのアルティア社をM&Aした。ソニー株式会社は、複数のグループ会社を持つ総合家電メーカーで、M&Aによる海外進出を積極的に行っている。アルティア社は、高速データ通信規格「LTE」のモデムチップ技術と関連ソフトウェアの開発事業を保有している会社で、イスラエルに本社を置きアメリカや中国、台湾に子会社がある。アルティア社の通信用半導体は高性能かつ低消費電力、そして低コストであり、事業拡大が見込まれるIoT機器分野への高いシナジー効果が期待され、M&Aが行われた。



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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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