化粧品業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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化粧品業界では、市場環境の変化や技術革新に伴い、M&Aが活発化しています。

本記事では、化粧品業界の基礎知識を押さえたうえで、業界におけるM&Aの動向や事例、メリット、成功のポイントなどについて、詳しく解説します。

M&Aの前に押さえておきたい化粧品業界の情報

化粧品業界は多様な製品ラインナップと複雑な販売チャネルを持つ市場です。M&Aについて解説する前に、化粧品業界の定義や、主要な企業、業界ならではの特色といった、基本情報を押さえておきましょう。

化粧品業界の定義

化粧品業とは、化粧品の開発、製造、販売を手がける業種です。

医薬品医療機器等法第2条第3項では、化粧品について「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」と定義しています。ただし、医薬品や医薬部外品としての用途を持つものは除外対象です。

また、化粧品業で扱う化粧品は、主に以下の5つのカテゴリに分けることができます。

  • ・スキンケア化粧品:洗顔料や化粧水など
  • ・メイクアップ化粧品:口紅やファンデーションなど
  • ・ヘアケア化粧品:シャンプーやコンディショナーなど
  • ・ボディケア化粧品:ボディクリームなど
  • ・フレグラウンス化粧品:香水やコロンなど

こういった多様な製品群は、化粧品業界の幅広さと奥深さを物語っています。

代表的な企業

化粧品業界には多くのプレイヤーが存在します。なかでも以下の5社は、日本市場における代表的な企業といえるでしょう。

  • ・花王株式会社
  • ・株式会社資生堂
  • ・株式会社コーセー
  • ・株式会社ポーラ・オルビスホールディングス

これらの企業は、国内外で幅広い製品ラインナップと強力なブランド力を持っています。

化粧品業界の特色

化粧品業界の業態は、販売ターゲットによって、次の2種類に大別できます。

  • ・リテール業態
  • ・プロフェッショナル業態

リテール業態は、一般消費者向けに百貨店、ドラッグストア、Webサイトなどで広く販売する業態です。一方のプロフェッショナル業態は、サロン専売品など業務専用に開発された商品を法人向けに販売する業態です。

いずれにしても、利益構造は販路によって大きく異なります。メーカーから直接消費者に販売する場合は、仲介手数料が無いため高利益となりますが、百貨店やドラッグストアなどの小売店に卸す場合は、卸価格での販売となるため利益率は低下します。なお、法人向けの販売では、ディーラーを介して美容室やエステサロンなどの店舗に販売するのが一般的です。

大手化粧品会社の多くは、自社で工場を持ち、開発からマーケティング、販売PRまでを一貫して行う垂直統合型のビジネスモデルを採用しています。このアプローチにより、品質管理の徹底と市場ニーズへの迅速な対応を実現し、競争力を維持しています。

化粧品業界のM&A動向・市場規模

化粧品業界のM&A動向と市場規模は、近年大きな変動を経験しています。

新型コロナウイルス感染拡大前は、インバウンド需要の増加と好調な国内需要により、化粧品市場は成長を続けていました。しかし、感染拡大期に入ると、パンデミックによる外出自粛、テレワークの普及、マスク着用の一般化により、国内外の需要が大きく減少しています。

2022年に入ってからは、市場はわずかに回復し、国内市場規模は約8,500億円に達しました。この回復傾向は、消費者の生活様式の変化に対応した新製品の開発や、デジタルマーケティングの強化などが寄与したと考えられます。

化粧品の市場規模及びインバウンド需要

引用:コロナ禍の化粧品出荷、輸出状況を2022年中心にふり返る

世界市場に目を向けると、日本以外のアジアブランドが著しい成長を遂げています。特に韓国市場の躍進は目覚ましく、世界第2位の化粧品輸出額を誇るまでに成長しました。韓国ブランドの成功は、革新的な製品開発、効果的なマーケティング戦略、そしてK-POPなどの文化的影響力によるものと分析されています。

この状況下で、日本の化粧品業界は新たな課題に直面しています。今後は、韓国をはじめとしたアジア圏を含めたグローバル市場におけるシェア確立が重要になるでしょう。

化粧品業界のM&A事例

近年、化粧品業界では事業拡大や競争力強化を目的としたM&Aが活発化しています。ここでは、業界内外の企業による特徴的なM&A事例を紹介し、その戦略的意図と、期待される効果について見ていきましょう。

リベルタとアフラ

2024年2月、株式会社リベルタは、化粧品や健康食品、美容関連商品の製造販売を手がける株式会社アフラの株式を取得し、子会社化しました。

このM&Aにより、リベルタは自社グループが持つ国内外の販路やエステ市場に対して、アフラの商品を効果的に拡販することが可能となりました。垂直統合により、両者の強みを活かしたシナジー効果の好例といえるでしょう。

ショーエイコーポレーションとファインケメティックス

2021年8月、株式会社ショーエイコーポレーションは、株式会社ファインケメティックスの子会社化を実施しました。

両社の技術力と経験を融合することで、製品開発力の向上や生産効率の改善が期待され、化粧品業界における競争力強化につながると期待されます。

ショーエイコーポレーションは、このM&Aにより、化粧品および医薬部外品メーカーとしての地位を確立することを目指しています。この動きは、OEM事業からブランドメーカーへの転身を加速させる戦略的ステップという位置づけです。

ユーグレナとサティス製薬、日本ビューテック

2024年2月、株式会社ユーグレナは、同社を完全親会社とし、株式会社サティス製薬と日本ビューテック株式会社を完全子会社とする簡易株式交換を実施しました。

この複合的なM&Aは、各社の強みを最大限に活かすことが目的です。ユーグレナの基礎研究力および営業・マーケティング力と、サティス製薬グループ(日本ビューテックを含む)の化粧品に特化した研究開発力および製品開発力を組み合わせることで、新たな価値創造を目指します。

特筆すべきは、この統合によってスタートアップや小規模企業の化粧品ブランド開発・成長支援を推進する点です。これは、化粧品業界におけるオープンイノベーションの促進と、業界全体の活性化につながる可能性を秘めています。

株式会社ナノエッグとエア・ウォーター・リアライズ株式会社

2024年2月、株式会社ナノエッグは、同社の一般消費者向け化粧品事業をエア・ウォーター・リアライズ株式会社に譲渡しました。

この事業譲渡は、両社の強みを活かした相乗効果を狙ったものです。買い手となったエア・ウォーター・リアライズ株式会社は多岐にわたる事業を展開しています。そのノウハウを活用することで、譲渡された化粧品事業の商品やサービスの質を向上させることが期待されています。

両者は、この事業譲渡により、顧客満足度の向上や新たな市場開拓の可能性が広がるとの考えです。化粧品業界外の企業との連携は、新たな視点や技術をもたらし、業界に新風を吹き込む可能性があります。

ジェイフロンティア株式会社とウェルヴィーナス株式会社

2024年3月、ジェイフロンティア株式会社は、ウェルヴィーナス株式会社の子会社化を実施しました。

この戦略的なM&Aの主な目的は、サプリメントおよび化粧品分野における事業拡大と収益力強化です。

買い手となったジェイフロンティアは、このM&Aによって取扱商品のポートフォリオを拡充し、より幅広い顧客ニーズに対応することが可能となる見込みです。これにより、市場シェアの拡大や新規顧客の創出が期待されます。

また、両社の経営資源や技術を統合することで、研究開発力の強化や生産効率の向上も見込まれます。このM&Aは、化粧品業界における水平統合の典型的な事例といえるでしょう。

化粧品業界でM&Aを活用するメリット

化粧品業界においてM&Aを活用する主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • ・短期間で化粧品事業を開始できる
  • ・効率的な技術・ノウハウ獲得や販路開拓につながる

それぞれ見ていきましょう。

短期間で化粧品事業を開始できる

化粧品事業を一から立ち上げる場合、拠点の設立、人材の確保、そして化粧品製造販売業の許可取得など、多くの時間と労力を要します。OEM(委託製造)を採用する場合でも、製品の企画・設計から販売戦略の確立まで、自社で取り組まなければならない課題は少なくありません。これらの手続きには膨大な時間と手間がかかるだけでなく、業界特有のノウハウがなければ失敗のリスクも大きいといえます。

一方、M&Aを通じて既存の化粧品事業を買収すれば、確立された経営資源をそのまま活用できます。M&Aのプロセスさえ完了すれば、一から設備や人材を確保する必要が無く、短期間で化粧品事業を本格的に開始することが可能です。また、取引先やブランド価値などの無形資産も即座に獲得できます。

効率的な技術・ノウハウ獲得や販路開拓につながる

化粧品開発には、原料の選定から製法の確立、安全性試験、効能評価など、多岐にわたる専門知識とノウハウが必要です。これらの技術やノウハウを一から構築していくには、膨大な時間とコストを要します。

さらに、化粧品業界はトレンドの変化が激しく、消費者ニーズも多様化しています。製品のデザイン性や機能性など、あらゆる面で迅速な技術獲得と製品開発が求められる環境にあります。

M&Aの活用は、こうした課題への効果的な対応策です。既に確立された技術やノウハウを持つ企業を買収することで、自社に無い新しい知見や専門技術を即座に取り入れることができます。また、両社の強みを組み合わせることで、シナジー効果が生まれ、市場に無い革新的な商品やサービスを生み出す可能性も高まります。

加えて、M&Aは新たな販路の獲得にも有効です。特に、異なる顧客層や地域をターゲットとする企業との統合は、市場シェアの拡大や新規顧客の創出に直結します。

化粧品業界におけるM&A成功のポイント

化粧品業界でのM&Aを成功に導くには、業界特有の規制や市場動向を十分に理解し、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、法規制への対応と競争優位性の確保という2つの重要なポイントに焦点を当て、M&A成功への道筋を探ります。

化粧品規制に留意する

化粧品業界でM&Aを成功させるには、複雑な法規制環境への深い理解と、適切な対応が不可欠です。

化粧品事業の運営には、「薬機法」「景品表示法」「化粧品の成分に関する法規則」「適正包装規則」「法定表示」など、多岐にわたる法規制の遵守が求められます。

特に注意が必要なのは、薬機法、不当景品類及び不当表示防止法に定められた化粧品の広告規制です。これらの規制に違反すると、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。

M&Aを実施する際は、対象企業が現行の規制に従って適正に事業を運営しているか、そして取引後も継続して規制を遵守できるかを慎重に確認することが重要です。このデューデリジェンスプロセスを通じて、潜在的なリスクを特定し、必要な是正措置を講じることで、M&A後の円滑な事業統合と適法な事業継続を確保できます。

他社と差異化を図れる強みをもっているか確認する

化粧品市場は競争が激しく、他社との差異化が成功の鍵を握ります。M&Aを検討する際は、対象企業が持つ独自の強みや差異化要因を慎重に評価することが重要です。

製品の品質、ブランド価値、新製品開発力、環境への配慮など、さまざまな観点から対象企業の競争優位性を分析します。例えば、独自の有効成分や革新的な製剤技術、強力なブランドロイヤリティ、効果的なマーケティング戦略などは、重要な差異化要因となり得るでしょう。

また、化粧品業界では消費者の需要が常に変化しているため、市場トレンドに迅速に対応できる新製品開発力とイノベーション能力も重要な評価ポイントです。対象企業が、持続的に新製品を生み出し、市場ニーズに応える能力を持っているかを見極めることが必要です。

さらに、長期的な競争力維持の観点から、対象企業が市場トレンドや技術進歩に対応できるマーケティング戦略を有しているかも確認しましょう。デジタルマーケティングの活用、サステナビリティへの取り組み、グローバル展開の可能性など、将来を見据えた戦略的視点も評価の対象となります。

これらの要素を総合的に分析することで、M&A後の事業成長と市場での競争優位性確保の可能性を適切に判断できます。強みを持つ企業とのM&Aは、市場での地位を強化し、長期的な成功につながる戦略的な選択となり得るのです。

化粧品業界における今後のM&Aの課題と展望

化粧品業界のM&A動向は、市場環境の変化や技術革新に伴い、新たな局面を迎えています。特に注目すべき点は、他業種からの参入増加と、海外展開を目的としたM&Aの活発化です。

まず、他業種企業による化粧品業界への参入が増加傾向にあります。この背景にあるのは、化粧品製造のOEM(他社への製造委託)システムの発展です。

OEMの活用により、自社で製造設備を持たなくても化粧品の製造が可能になりました。さらに、Eコマースの普及により、販売チャネルの構築も容易になっています。これらの要因が、化粧品業界への参入障壁を大幅に引き下げ、他業種からの新規参入を促進しています。

こうした状況下で、化粧品業界への迅速な参入を実現する有効な手段として注目を集めているのが、M&Aです。既存の化粧品企業を買収することで、ブランド、技術、販路を一挙に獲得できるため、今後もM&Aによる業界参入は増加すると予想されます。

一方、国内市場に目を向けると、インバウンド需要は好調を維持しているものの、国内需要は頭打ちの傾向です。この状況を打開するため、多くの化粧品会社が海外市場、特にアジア諸国への進出を積極的に推進しています。新たな需要の獲得による利益維持・向上が、その主な目的です。

海外進出を成功させる戦略として、現地企業とのM&Aが重要な役割を果たしています。現地企業の買収や提携により、市場知識、販売網、規制対応ノウハウなどを効率的に獲得できるため、今後もこの傾向は続く見込みです。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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