設備工事(内装工事 )業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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内装工事業界におけるM&Aは、近年ますます活発化しています。少子高齢化による人口減少や新築住宅の着工数減少といった市場環境の変化に対応するため、内装工事業者がリフォーム市場に参入する動きが見られます。

本記事をご覧いただければ、内装工事業界の市場動向やM&Aの事例、活用するメリット、成功のポイントについて理解することが可能です。内装工事業界でM&Aを検討している経営者様や、今後の経営戦略に役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。

M&Aの前に押さえておきたい内装工事業界の情報

内装工事業界の概要を把握することは、M&Aを成功させるために重要です。

内装工事業界の定義

内装・外装業界とは、建築工事の最終段階として内装工事や外装工事を請け負う業界です。具体的には、以下のような現場が含まれます。

  • ・テックス工事(繊維板などの建材を、部屋の天井や壁に設置する作業)
  • ・室内工事
  • ・壁紙工事
  • ・店舗外装工事

内装工事は作業工程ごとに専門性が求められ、床仕上げ工、鋼製下地組立工、壁装工など、それぞれの領域に分類されているのが標準的です。

なお、500万円以下の小規模工事の場合は許認可が不要なため、関連業務を行う事業者が内装・外装工事を担当することもあります。

代表的な企業

内装工事業界で代表的な企業は、次のとおりです。

  • ・大和ハウス工業株式会社
  • ・清水建設株式会社
  • ・鹿島建設株式会社
  • ・株式会社竹中工務店

内装工事業界の特色

内装・外装工事は全工事の最終段階にあたり、新築住宅の着工戸数や建設市況と連動して、市況が変動します。主な収益基盤は、民間工事と公共工事です。仕事の受注は、以下の2パターンに大別されます。

一つは「一括請負」という方式です。大手業者が工事一式を受注し、一部が下請けの設備工事業者や内装仕上工事業者に再発注されます。

もう一つは「別途工事」として、建設業者とは別に、設備工事業者や内装仕上工事業者が独立して、発注者から請け負う方式です。

内装工事業界の動向・市場規模

新築住宅の着工数は減少傾向にあり、それに伴い内装工事の依頼も減少しています。

国土交通省の「新設住宅着工戸数の推移」によると、2006年(平成18年)度に約128万戸あった新築住宅の着工数(総戸数)が、2022年(令和4年)度には約86万戸まで減少しているのが近況です。

新築住宅の着工数減少の原因としては、少子高齢化による人口減少や、30〜40代の未婚者の増加などが考えられます。人口減少や未婚者の増加は社会問題となっており、今後も新築住宅の着工数低減が続く可能性があります。

一方で、高齢化の進行によるバリアフリー対応の需要増加や、新型コロナウイルス感染症の影響による在宅時間の増加により、リフォーム市場は成長傾向です。新築住宅を専門としていた内装工事業者が、リフォーム市場に参入する動きも見られます。

新設住宅着工戸数の推移

引用:令和5年度 住宅経済関連データ|国土交通省

内装工事業界のM&A事例

ここからは、内装工事業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。実例から学べるポイントをその都度解説していますので、順番に見ていきましょう。

山元とウエタニ

株式会社山元は2022年2月、AJキャピタルから株式会社ウエタニの全株式を取得し、完全子会社化しました。

譲渡側のウエタニは、関西エリアで商業施設や宝飾・時計などの高級ブランド店を主要顧客として、内装工事・家具什器製造事業を行っています。譲受側の山元は、全国の百貨店を中心とする商業施設や、ブランド店舗向けの什器レンタル・販売事業などを展開しています。

譲渡側は、全国規模の営業基盤とサービス提供力を持つ企業への承継による認知度向上・事業成長を、譲受側は営業基盤の強化を目的として行われたM&Aです。

JKホールディングスと三栄社

2022年3月、JKホールディングスが三栄社の全株式を取得し、完全子会社化が実施されました。

譲渡側の三栄社は、神奈川・千葉・秋田を拠点に、合板・建築資材の販売や内装工事等の事業を展開しています。譲受側のJKホールディングスは、建材卸売・小売、合板製造・木材加工、住宅設計・施工・販売、外装工事等の事業を行う企業グループの持株会社です。

本件は、譲受側の小売セグメントの拠点拡充を意図して行われています。

東宝ファシリティーズとシコー

東宝ファシリティーズ株式会社は2021年11月、株式会社シコーの全株式を取得し、完全子会社化しました。

譲渡側のシコーは、商業施設の内装工事監理業務等を強みとする内装工事会社です。譲受側の東宝ファシリティーズは、清掃・設備管理・警備のほか、ビルの総合マネジメント事業や、賃貸物件管理代行・施設運営代行事業などを展開しています。

譲渡側・譲受側とも、建設関連事業の業容拡大や、技術力・営業力の強化を狙って行われたM&Aです。

ヨシックスホールディングスと芝産業

2021年10月、ヨシックスホールディングスは芝産業の全株式を取得しました。

譲渡側の芝産業は、関東で大手飲食チェーンを主要顧客として、店舗内装の設計・施工・監理事業を手がける企業です。譲受側のヨシックスホールディングスは、「や台ずし」を中核ブランドに位置付ける飲食チェーンの運営事業や、店舗内装などの建装事業等を展開する企業グループの持株会社です。

本件は、飲食チェーンの迅速かつ低コストでの出店戦略を支える、建装事業の強化を目的として行われました。

ヤマタホールディングスとコナン住建

ヤマタホールディングス株式会社は2021年7月、株式会社アースから有限会社コナン住建の全株式を取得し、完全子会社化しました。

譲渡側のコナン住建は、建築資材販売・内外装工事等の事業を展開する企業です。譲受側のヤマタホールディングスは、注文住宅や不動産売買のほか、カフェ・レンタルスペース運営、アパレル・雑貨・家具販売等の事業を行う、ヤマタグループの持株会社です。

少子高齢化による新築住宅着工数の減少予測に対し、譲受側の建築資材の仕入れ力強化と、施工力確保によるリフォーム事業拡大を意図して、M&Aが行われました。

内装工事業界でM&Aを活用するメリット

内装工事業界でM&Aを実施すると、次のようなメリットがあります。

技術がある職人を確保できる

内装工事業界では人材不足の問題が深刻化していますが、M&Aを行うことにより、正社員などの人員が足りない状況を解消できます。

専門的な知識や技術を有する優秀な人材を確保することで、教育コストの削減も可能です。

自社で内装工事を実施できる

建設会社やリフォームなどの施工部門を抱える管理会社が、内装工事業者を買収した場合、受注から施工までを自社内で完結できるメリットがあります。

一連のプロセスを内製化することで、施工体制を強化できるほか、業務効率化が期待できるなど、バリューチェーンの強化につながります。

受注拡大につながる

同じ内装工事業界内や隣接する業種の企業とM&Aを実施した場合、相手企業の持つ実績やノウハウ、資産を活用し、短期間での事業規模の拡大が可能です。

資産には設備や不動産等の有形資産だけでなく、顧客や取引先、仕入先なども含まれます。業界内でのシェアを高めたい場合、同業界内の他社を買収するケースも増えています。

内装工事業界におけるM&A成功のポイント

内装工事業界では、施工を行う従事者の「技術力」が、非常に大切な経営資源です。

対象企業がどのような人材を保有しているのか、どのような領域に強みがあるのかなどを事前にリサーチし、自社の弱い面を補完できる、もしくは優れた点を増強できる要素を持つ相手の選定が求められます。

内装工事業界の特性として、遠方の大規模な業者よりも、小規模でも地域で信頼を得ている業者に依頼する傾向があります。

そのため、他地域への参入を考える際には、事業規模だけに注視せず、地域における実績やブランド力を選定基準の一項目として盛り込んでおくと良いでしょう。

内装工事における今後のM&Aの課題と展望

内装工事業界における今後のM&Aには、多くの課題があります。以下に、主な内容を紹介しますので、展望と合わせて確認しましょう。

技術承継問題の解決策としてのM&Aの活発化

内装工事業が属する日本の建設業界は、技術承継が大きな課題です。就業者の高齢化が進行し、60歳以上の技能者が、全体の約4分の1(25.7%)を占めています。

60歳以上の技能者が引退していくなか、労働人口の減少も伴い、技術やノウハウの承継が深刻化しています。後継者不在の問題を背景に、建設業界のM&A件数は増加しており、今後も事業の生き残りのために一層活発化していくでしょう。

異業種とのM&Aの増加の見込み

国内の景気鈍化や原材料価格の高騰が続くなか、市場の縮小傾向により、受注競争は激化しています。限られた案件のなかで確実に利益を上げていくためには、生産性の向上が必要です。同業種間のM&Aによる経営基盤強化はもちろんのこと、最新技術を有する他業種とのM&Aが増加していくと予測されます。

特に内装工事は少人数でも対応可能で、設備投資も少なく済むため参入のハードルが低く、異業種からでも参入が比較的容易です。他社との差別化を図る内装工事業者と、内装工事業への参入を狙う異業種企業とのマッチングにより、業種を超えたM&Aがより増えていくとの見積りがなされています。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 課長高橋 祐基
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長
高橋 祐基

生命保険会社を経て、独立系ブティックでアドバイザリー業務に従事。
当社参画後は、建設業界の大型M&Aや上場企業からのカーブアウト等、数々の成約実績を有する。


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