フィットネス(スポーツジム)業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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フィットネス業界は近年、急速な変化を遂げています。高齢化社会や健康志向の高まりを背景に市場が拡大する一方、競争も激化しています。このような環境下で、多くの企業がM&Aを活用した成長戦略を模索中です。

本記事では、フィットネス(スポーツジム)業界のM&A動向を、最新の市場規模データや注目の事例と共に詳しく解説します。メリットや成功のポイントについても触れていますので、今後の経営戦略に活かしたい方は、最後までご参照ください。

M&Aの前に押さえておきたいフィットネス(スポーツジム)業界の情報

フィットネス業界は近年、多様化と二極化が進んでいます。M&Aを検討する前に、業界の定義や主要企業、特色を押さえておきましょう。

フィットネス(スポーツジム)業界の定義

フィットネスクラブとは、事業者が募集した会員を対象に、室内の運動施設において、インストラクター・トレーナーなどの指導員を配置したうえで、スポーツ・体力向上などのトレーニング方法を教授する事業所のことを指します。

室内プール、フィットネスジム、スタジオから構成されているケースが大半です。それに加えて、ミニアリーナやゴルフ練習場、スパ・サウナ・エステなどが併設されている施設が多数存在します。

マンツーマンレッスンが売りのパーソナルジムも、首都圏を中心に店舗展開が進行中です。

代表的な企業

フィットネス(スポーツジム)業界で代表的な企業は、以下のとおりです。

  • ・株式会社コナミスポーツクラブ
  • ・セントラルスポーツ株式会社
  • ・株式会社ルネサンス
  • ・株式会社ティップネス

これらの企業は、全国に多数の店舗を展開し、業界をリードしています。

フィットネス(スポーツジム)業界の特色

フィットネス業界は、主に5つの業態に分類されます。

業態概要
総合型 ジムだけでなく、スイミングやヨガ、ピラティスなど多様なサービスを提供するタイプ ・コナミスポーツクラブ
・セントラルスポーツ
・スポーツクラブルネサンス
・メガロス
24時間セルフ型 トレーナーをつけずに、自分自身でトレーニングを行う24時間営業のタイプ ・chocoZAP(チョコザップ)
・エニタイムフィットネス
・ファストジム24
・JOYFIT(ジョイフィット)
ターゲット限定型 高齢者向けや女性専用など、特定のターゲットに重点を置いているタイプ ・カーブス
・Bodies(ボディーズ)
成果志向型 顧客が望む成果を出すことを目的に、トレーナーの指導のもとトレーニングを行うタイプ ・RIZAP(ライザップ)
郊外型 駅前ではなく、住宅地など郊外で施設を構えるタイプ ・ホリデイスポーツクラブ

フィットネス(スポーツジム)業界の特色として、会員の高齢化が進んでいることが挙げられます。セントラルスポーツやルネサンスでは、この5年間で50代以上の会員数が、全体の半数以上を占めるまでになっています。

一方で、初心者を含め、近年20代〜40代を中心に人気なのが、パーソナルジムです。パーソナルジムの価格帯は高めですが、プロのトレーナーがマンツーマンでレッスンを行ってくれることもあり、注目を集めています。

トレーニング時のフォームの習得や、食事指導などの管理が徹底されることが多く、ボディメイクに効果的といわれています。

フィットネス(スポーツジム)業界のM&A動向・市場規模

フィットネス業界は、近年急速な成長を遂げています。AZWAY社が実施した「2024年に挑戦したいこと」についてのアンケートでは、「筋トレ・フィットネス」が第4位※にランクインしました 。(※複数回答あり)

この結果は、新型コロナウイルス感染症の流行による在宅時間の増加や健康意識の高まりにより、筋トレ・フィットネスへの関心が集まっていることを示しています。

こうした傾向を反映して、2024年度にはフィットネス市場全体の売上高が、コロナ前並みの7,000億円に達する可能性があると予測されています。

2022年度 フィットネス運営企業 損益状況

参考:「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2023年度)|帝国データバンク

一方で、業界内での二極化も進んでいます。2022年度の損益を見ると、41.7%の企業が増益を達成したものの、業績が悪化した企業の割合も5割を占めており、明暗が分かれる結果となりました。

赤字に転落した企業の多くは、水道光熱費の高騰に加え、常駐するトレーナーの人件費の上昇が影響しています。さらに、月額料金が安価なジムが増加し、競争が激化した結果、収益力が低下したことも原因の一つです。

このような状況下で、業界内でのM&Aの動きも活発化しており、経営の効率化や事業の多角化を目指す動きが見られます。今後も、市場の拡大と競争の激化が同時に進行するなかで、M&Aを通じた業界再編が進むと予想されます。

フィットネス(スポーツジム)業界のM&A事例

フィットネス業界では、市場の変化や競争の激化に対応するため、さまざまなM&Aが行われています。ここでは、近年注目を集めた主要なM&A事例を紹介します。

これらの実例から、業界の動向や各社の戦略を読み取ることができるでしょう。

テーオー総合サービスとオカモト

株式会社テーオーホールディングスは、連結子会社の株式会社テーオー総合サービスが運営するスポーツクラブ事業を、株式会社オカモトへ譲渡しました。

背景には、少子高齢化や競争の激化、さらには新型コロナウイルス感染症の影響による業績悪化があります。一方、オカモトは既にスポーツクラブ事業を行っており、対象事業とのシナジー効果を見込んで今回の譲渡に至りました。

この事例は、厳しい経営環境下での事業再編の動きを示しています。

ケイズグループとRIPPLE

株式会社ケイズグループは、パーソナルトレーニング事業を展開する株式会社RIPPLEと資本提携し、一部株式を取得しました。さらに、事業集約の一環として、RIPPLEのオンライン部門をケイズグループが事業譲受しています。

整骨院の最大手であるケイズグループは、治療だけでなく、予防にも力を入れている企業です。今回の事業譲受により、オフラインでのサービス提供に加えてオンラインも展開して、顧客のニーズに応えることを目的としています。

アトラグループとOne Third Residence

アトラグループ株式会社が、株式会社One Third Residenceの全株式を取得し、子会社化しました。両社は以前から合弁会社を設立し、Fitness Mirror(ミラー型のオンライントレーニング用デバイス)の事業を進めてきました。

今回の子会社化は、さらに強固な協力関係を構築し、事業をスピーディーに進めることを意図しています。また、アトラグループはFitness Mirrorの価値を、鍼灸接骨院やデイサービスにも活用していく予定です。

この事例は、フィットネス業界とヘルスケア業界の融合を表しています。

ルネサンスとBEACH TOWN

株式会社ルネサンスは、アウトドアフィットネスを展開する株式会社BEACH TOWNの株式の過半数を取得しました。

ルネサンスがマネジメントを支援することで、アウトドアフィットネスの事業拡大が可能になるだけでなく、ルネサンス自身の企業価値も向上すると考えられています。

さらに、ルネサンスは地域健康推進部内にPPP(Public-Private Partnership)チームを立ち上げ、積極的に公園の整備事業を行う予定です。

屋内外のフィットネス事業の統合と公共施設との連携という、新たな展開を示す事例です。

ファミリーマートとフィットイージー

株式会社ファミリーマートは、運営していた全5店舗のフィットネス施設を、フィットイージー株式会社に事業譲渡しました。

健康志向の高まりを受けて、ファミリーマートはコンビニ併設ジムを展開し、コンビニとのシナジー効果を見込んでいましたが、期待通りの成果が得られませんでした。一方、フィットイージーは今回の事業譲受を皮切りに、全国展開を計画しています。

この事例は、異業種参入の難しさと、専門企業による事業拡大の動きを示しています。

フィットネスクラブ

フィットネス(スポーツジム)業界でM&Aを活用するメリット

フィットネス(スポーツジム)業界でM&Aを活用することにより、ブランド力の向上、優秀な人材の確保、会員数の増加など、さまざまなメリットが得られます。

これらのメリットは、競争が激化する業界での生き残りと成長に大きく貢献します。

ブランド力・宣伝効果が高まる

フィットネス(スポーツジム)業界のように、複数店舗を展開する業種では、M&Aによってブランド力・宣伝効果の向上が期待できます。

事業をゼロから始める場合、看板や広告の出稿には多くの初期投資が必要となり、集客に結びつくまでには時間を要するのが一般的です。

M&Aによって相手企業が有する店舗を自社に取り込み、展開店舗数が増えれば、店舗の看板が広告代わりになり、多くの人の目に留まることで集客につながります。また、店舗数の多さが自社の成長率の証拠となり、顧客からの信頼性にもつながります。

特に、サービスが飽和状態にあるフィットネス(スポーツジム)業界において、早期に店舗を拡大することは、市場優位性を確立するうえで大きなメリットです。

優秀なトレーナーやインストラクターを雇える

フィットネス(スポーツジム)業界では、優秀なスタッフの確保は必須です。

現在では24時間営業で、自分自身でマシンを自由に使ってトレーニングできる、いわゆる「放置型ジム」も増加しています。その一方で、優秀なトレーナーやインストラクターの存在は、ジムにとって大切な資産となります。

自社で採用活動を行い、技術を高めるにはコストや時間を要しますが、M&Aを実施すれば即戦力となり得る人材の確保が可能です。有望なトレーナーやインストラクターを雇用することで、自社内にノウハウを蓄積でき、後進の育成にも役立てられます。

会員数を増やせる

ジムの会員数を増やせる点も、フィットネス(スポーツジム)業界でM&Aを実施するメリットの一つです。経済産業省の「フィットネスクラブの動向」によると、2020年以降スクールの会員数および利用者数は、ほぼ横ばいで推移しています 。

フィットネス事業を展開する店舗は、2020年度末以降からも1,000店超増と急拡大しており 、激化する市場競争のなかで生き残るためには、会員の獲得が不可欠です。M&Aを実施すれば相手企業の会員を引き継ぐことができ、自社の会員数を増やせます。

会員増により収益性を高められれば、新たなトレーニング器具・プログラムの導入、施設の拡充など他社との差別化ポイントを生み出すことができ、さらなる入会者の獲得、ひいては経営基盤の強化につなげられます。

フィットネス(スポーツジム)業界におけるM&A成功のポイント

フィットネス(スポーツジム)業界でM&Aを成功させるには、綿密な調査と幅広い視点が欠かせません。ここでは、業界特有の成功ポイントについて解説します。

綿密な調査を実施する

フィットネス(スポーツジム)業界のM&Aを成功に導くためには、相手企業のリサーチを徹底することが大切です。確認したい主なポイントは、以下をご覧ください。

  • ・会員数
  • ・トレーナー・インストラクター数
  • ・トレーナー・インストラクターの技術力
  • ・トレーニング器具の管理状態
  • ・財政状況
  • ・立地、交通の利便性 など

例えば、相手企業が有するさまざまなトレーニング器具をM&Aで承継したケースです。承継後に自社での利用を考えていたにも関わらず、管理状態が悪くすべて買い替えなければならなくなった場合、予想外のコストが発生し、結果的に損害を被るリスクがあります。

また、店舗数の増加で一見好調に感じられても、財務状況を詳しく見ると、多くの債務を抱えている場合もあります。信頼に足る取引相手であるかを判断するための綿密なリサーチは、M&A成功のカギです。

取引相手の候補を広げる

フィットネス(スポーツジム)業界のM&Aを成功させるためには、M&Aの相手を広い選択肢から検討することが大切です。

例えば、自社がフィットネス業を展開している場合、脱毛・まつ毛・ネイルなどのサロン、整体院、サプリメントショップなどは、身体のケアを行うという観点や顧客層の親和性の高さから、シナジー効果が期待できます。

他社には無い、新たなサービスの提供による顧客満足度向上は、新規市場の創出による新たなニーズの発見につながる可能性が高まります。このように、業界の枠を超えた視点で相手企業を検討することで、M&Aの成功確率を高めることが可能です。

フィットネス(スポーツジム)業界における今後のM&Aの課題と展望

フィットネス(スポーツジム)業界の顧客は高齢者も多く、深刻化する少子高齢化社会に伴い、需要は増加しています。新型コロナウイルス感染症を筆頭に、各種疾病の流行による健康意識への高まりも追い風となり、今後もますますニーズは高まっていくとの予想です。

フィットネスのサービス形態は、放置型かつ低価格のサービスと、サポート付きの高価格のサービスという二極化が進んでいます。特に放置型サービスの増加が著しく、市場激化の一因となっています。また、コロナ禍以降、オンラインおよび非接触型のフィットネスも注目を集めている状況です。

各社は、変動する市場に合わせたサービスの提供および事業構造の変革に迫られており、今後は一層、介護や医療業界、IT・デジタル業界など異業種とのM&Aも活発化していくでしょう。業界の変化に対応するため、M&Aは重要な戦略ツールとして、ますます注目されると考えられます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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