銀行業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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業界の定義

銀行は金融機関の一種であり、預金の受け入れ・資金の貸し出し・為替取引などを行う。中央銀行である日本銀行は、銀行券(紙幣・貨幣)の発行を行う「発券銀行」であり、一般の銀行、長期信用銀行は「普通銀行」とされる。
日本銀行以外の特殊銀行・共同組織金融機関および株式会社商工組合中央金庫も普通銀行には含まない。普通銀行も長期信用銀行も会社法に基づいて設立される株式会社の形態をとっている。



業界の特色

銀行業界イメージ画像

銀行は都市銀行と地方銀行の2つに分けられる。

都市銀行とは、東京や大阪などの大都市に本店を置いて全国規模の業務展開をしている普通銀行を指し、金融庁の銀行免許一覧によると、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社りそな銀行の4行のことを指す。都市銀行はメガバンクと呼ばれることが多い。

これらの都市銀行は、普通銀行のみならず信託銀行や証券会社、地方銀行など様々な金融機関を傘下に収めており、日本の銀行業界において大きな存在感を持っている。また、旧長期信用銀行である新生銀行や、旧日本債券信用銀行であるあおぞら銀行といった旧長期信用銀行は、大手企業に高度な金融サービスを提供しているが、これらは都市銀行とは呼ばない。

一般社団法人全国地方銀行協会の会員である普通銀行のことを地方銀行という。地方銀行は、各都道府県に本店を置き、各地方に集中して営業・サービス業務を展開している。信託銀行は、顧客からお金・株・土地など資産を預かり、その管理と運用を行う資産管理代行・信託業務を行う銀行のことをいう。他人財産を自己の名義として預かり、自己の資産と分別管理する信託業務は大半の年金基金や投資信託が活用しており、金融市場において欠かせないインフラストラクチャーになっている。


市場の規模

全国銀行協会が公表した、「全国銀行預金・貸出金等速報」によると、全国銀行(全国銀行協会に加盟する銀行)の実質預金は、2022年4月末で883兆8,845億円となり、前月末比3兆7,363億円、0.4%増、前年同月末比では23兆9,318億円、2.8%増となった。前年同月末比増加は、187か月連続と長期にわたって実質預金が増加し続けている。

実質預金、前年同月末比増減率の推移グラフ
出典:全国銀行 預金・貸出金速報(グラフ)
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/stats/month1_01/yokashi03712.pdf


一方の貸出金は、542兆5,084億円で前月末比1兆1,935億円、0.2%減、前年同月末比では6兆7,279億円、1.3%増となり、前年同月末比は8か月連続で増加している。




貸出金、前年同月末比増減率の推移グラフ
出典:全国銀行 預金・貸出金速報(グラフ)
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/stats/month1_01/yokashi03712.pdf


売上をベースとした市場規模をみてみると24兆円であり、企業別では、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループが6兆6,075億円(純利益1兆1,308億円)、株式会社三井住友フィナンシャルグループが4兆1,111億円(純利益7,066億円)、株式会社みずほフィナンシャルグループが3兆9,630億円(純利益5,304億円)、株式会社りそなホールディングスが8,447億円(純利益1,099億円)となっている。

銀行業界では、業務粗利益も重要な経営指標になっている。銀行業のビジネスモデルにおいては「資金利益」「役務取引等利益」「特定取引利益」「その他業務利益」の4つの収益がある。金利収入である資金利益は銀行全体の70%を占める収益の柱となっている。しかし、マイナス金利政策の影響を受けて減収が続いており、銀行経営に影響を与えている。

手数料収入である役務取引等利益は、インターネットバンキングの普及や役務取引等費用の増加などにより減少した。

銀行自身が有価証券や土地を購入して得られた配当や利回り、あるいは転売して得られた転売益を特定取引利益といい、外国通貨や国債等債券の売買益などその他業務利益は銀行にとって大きな収益源とはなっていない。




課題と展望

銀行に定期預金を開設しても低金利であるため、個人にとってはメリットを感じることが難しい状況といえる。個人の資産運用は、株式や債券に投資するようになっているため、銀行に資金が集まらなくなり銀行が運用できる資金が不足することになる。収益源を確保するために新しいビジネスモデルの再構築が求められている。

銀行が提供するインターネットバンキングやスマートフォンアプリ等に対して、使いにくいという声が多くあがっている一方で、ITベンチャー企業により、使い勝手の良いサービスが続々と登場している。今後もこの傾向は継続する見込みであり、新規プレイヤーによるシェア拡大が想定される。

新型コロナウイルス感染症の影響による世界的な不況と、それによる金利低下も、銀行業界には向かい風となるだろう。働き方の変化もある。

フィンテック(Financial Technology)が進むとIT&AIが支店業務の大半をまかなえることになり、人の手を必要とする作業が大きく減少する。よって、その余剰人員をどう活用するかといったヒューマンリソースの観点でも、課題解決を図る必要がある。




銀行業界のM&A動向

銀行業界は、M&Aによる業界再編が進んでいる。その背景は1990年代後半から2001年にかけて行われた「金融ビッグバン」による大規模な規制緩和によるものである。金融ビッグバンにより金融機関の垣根がなくなり、銀行同士のM&Aやグループ再編、異業種による参入などが活発に行われた。これにより1,000行あった銀行は、191行に半減した。

-2016年から行われているマイナス金利政策により、特に中小規模である銀行の収益性が低下しており、財務基盤強化を目的としたM&Aも多く見られる。フィンテックの技術を獲得するために、高度技術を保有するベンチャービジネスを大手銀行がM&Aするケースも多くなっている。

また、海外への事業展開のための海外企業のM&Aも増加している。

-2022年4月、株式会社青森銀行と株式会社みちのく銀行は経営統合のため、持ち株会社を共同設立することを発表した。両行は支店同士の距離も近く、効率化を考え、店舗の統廃合も進めていく方針だ。この統合は、独占禁止法における「経営統合によりシェアが高くなっても、再編成を認める」という特例法が初適用されることになるだろう。

-2019年4月、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社である株式会社三菱UFJ銀行はインドネシア共和国の大手商業銀行PT Bank Danamon Indonesia, Tbk.の発行済株式を追加取得し、連結子会社化した。このM&Aにより、同社のインドネシア経済の発展への貢献が図られた。

-2019年4月、株式会社新生銀行は保険代理業を営むファイナンシャル・ジャパン株式会社の全株式を既存株主からの譲り受けにより取得し、連結子会社化した。このM&Aにより、顧客の多様なニーズに応える販売チャネルの拡大・構築が図られた。

-2005年三菱東京フィナンシャルグループとUFJホールディングス(2002年三和銀行と東海銀行がM&A)がM&Aし、株式会社三菱UFJフィナンシャルグループが誕生した。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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